【僕と彼女と猫の事件簿~2の眼~】

0.
「うぅぅぅ」
 そこに、猫はいた。

1.
「お願い!お願いお願いお願い!お願いONEGAIお願いお―」
「分かった分かった。そう騒ぐなよ」
「本当!?わ、やった。おっちゃんありがとう!」
 ちっ、言ってしまった。
「じゃ、詳しいことは後でね。友達に電話入れないと」
 俺は板垣仁瑛(いたがきじんえい)。漁師をしているイカした中年のおっさん。赤ん坊のころから可愛がっている親戚の一花由佳璃(いちばなゆかり)ちゃんから1000回ほど「お願い」と撫で声で唱えられ続けていたが、ついに折れてしまった。
 夏休みに別荘か。まったく、お嬢様もいいとこだぜ。
まるで、推理物のドラマみたいだ。

2.
 8月18日。
 俺は船を操って蛇俸(じゃほう)島へ向かっている。若いカップルを乗せて。途中居眠り運転らしきことを行っていたが、まぁ、気付かれていない。
 というか、寝ている間に蛇俸島に着いていた。
「みっくん、無人島で何しようか」
「決めてないのかよ」
「うん。何をしたらいいんだろう、3日間」
「……?由佳璃、ちょっと失礼なこと言うが、どこに泊まるかとかちゃんと考えてるんだろうな……」
「みっくん、『…』よく使うね」
 まさにその通りだ、と俺は思った、というより盗み聞きしてた。
「大丈夫だよ