1
「支障! お帰りなさいです!」
ガキが玄関で俺を迎える。
………て。
「支障ってなんだよ! 師匠だろーが! いきなり変換ミスすんなーっ!」
ひとつの台詞に感嘆符を3つ使うという突っ込みとしていかほどか検討すべきことを吐き、荷物は重いからガキに持たす。
絶対今の文読みにくいよな。
知ぃらねぇっと。
ガキ。
なぜここにいるのか目下不明の家出少年。
年はだいたい12、3くらいで、短い黒髪のよく似合う元気そうなフツーの少年。
1ヶ月前、ひょんなことで同棲することになったが、まあ、寂しくなくなったからよしとする。
「今日もお話聞かせてください!」
「うん、じゃ、今回は談筆」
「談筆、ですか?」
「あ、いや。今の台詞は読者様宛てのだよ。ガキに話す内容で何があったか理解してほしいっていうあれ」
「はぁ、あれですか」
「そう、あれ」
「今日は、11体目、|鹿須洲屡痲《しかすするめ》の話だ。ま、つい昨日のことだけどな」
では、話を始めよう。
「いつもの如し、抜けるような晴天の日のことだった……」
「そっからですか!?」
あれ、なんか悪いこと言ったかな。
「んじゃ、どっから言えばいいんだよ」
「いや、やっぱどうぞ」
今回描写少ないよな。
ま、会話文だからいっか。
「ノアの箱舟を連想させるほどの大雨の日のことだった……」
「て、変わってる!?」
「気候変動だよ」
「へっ!?」
う~ん、リアクションいまいちだなぁ。
ま、小学生にそこまで求めてもあれか。
「もう少し省略してください。細かいとこまでいらないんで、ほら、尺の関係もあるし……」
「小学生が尺とか言うなっ!」
……短縮すればいんだろ。
「するめっていうかわいい女の子がいてそのこを泣く泣く俺は壊しましたとさ! 終わりっ!」
「はやっ!」
あれだな、もしこの小説がアニメになったら(ならないけど)このパートだけは経費削減のために映像なしでラジオっぽく放送されそうだな。
…………雑談だよっ!
「んじゃ、あれだ。しかたないから以下回想シーンでいくか。そのほうが分かりやすいだろ」
「始めからそう言ってくださいよ」
あれ、そういえばさっき会話だけでいくぜ宣言したような…………?
ま、いっか。
2.
~あ刈、なんと哀れ・Γとκフで・灘う:-
今日も私は異端η換。
・
9月27日、隙の・娃と・裏腹に。A抜けるような晴膳の眺ツ
.しかし・はたして「晴れ」f・好印徐・のでしFぇか腺
@ホоノは計り知・∇せん、雨が愁「ォです,私塹。
雨・好町のなら、ーれはそう、噪の気持ぁと同じでし蛯、。
ケ私の悲哀・庇歎「オ"ト弔・・ごとく、升銅掴嫌・精然・す…
岳ット"ィ顔起き上完り、箪yの京ぷ今日の桷を
m馬しぶす゛
j ・あE今日あ私で飲深チち・-
-
チ` ・ 繊 ■
~今日は買出たの日ナす。
J・ 囲狸ぷいるのは苦ぇやこヌてす・、死・のmもっといや・
死ぬ「フ「ェ)}なら生きなきれ「フなりぺヲケツB
サたて、生メォる柑めノわ拭ぷκツッゐ・ろりま┿・腺
JM
ツセか・、今日「フ詞で」出し・鋭稔ま「キ。
θり返旭を出て、騒穐しい綺麗な町へ殪ぺす腺
田舎だというのに、ここは暖Λいで換゛
、そんな蝶さを、痔m唾ましm伺いまw。
。妬みレそれηヘ願ェヤクゃ 望みのそ脣です:
ハ
・ アこのみネヘ優しいです。
~アんり糸に対しぶも弾勧く、匚Λッ接たてくれむ7。M
だ「ゥ「辯A私はみんなの・イナは笑顔を方スます・
ζかわツ「・ね、優しい誰かは言ってくれます。
それが嬉しくて、今日の私は買出しに行きます。
そうして、曲がり角を曲がるときです。
そこを曲がれば商店街です、みんなが優しく迎えてくれます。
「寝坊だーっ、あいつに殺されるーっ!」
そんな嘆叫が轟いたかと思うと、私は背の高い男の人とぶつかりました。
「きゃ」
つい、私は声を上げます。
エコバッグがどこかへ飛んでいきます。
それにつられて飛んでいきそうな私の体を、受け止める方がいました。
「あ、ごめん。大丈夫?」
さきほどぶつかってしまった男の方です。
私が頭を打たないように、支えてくれたのです。
「あ……」
支えてもらいながら、私はどうにか体制を戻します。
「いやぁ、ごめんなさい。寝坊したもんで」
軽い口調で、それでも丁寧に彼は言います。
「では」
彼はもう用がないというように、私に一礼して去ぎていきます。
私は、かっこいい方だなぁ、と思いながら、その背中を眺めていました。
今日の私は買出しに行きます。
■
その次の日です。
今日の私は買出しに行きません。
が、今日の私は散歩に行きます。
散歩は初めてです。
なぜ散歩に行くのか。
昨日のお方に会えるかもしれなからです。
まだお礼を言っていません。
私はあのお方に会わなければなりませんし、それに会いたいのです。
私は待ちます。
私は待ちます。
私は待ちます、昨日の角で。
気付けばあたりは真っ暗になっていました。
彼は結局、来ませんでした。
■
次の日。
その翌の日。
また次の日。
私は待ちました。
私は待ちました。
私は待ちました、いつもの角で。
そうして、4日待った昼。
彼は、現れたのです。
「あ、この前の」
彼は私を覚えてくれていました。
「あ、あの……」
言おうと思っていた言葉がうまく出てきません。
「はい?」
彼は私が何か言おうとしているのに気付き、立ち止まっていてくれます。
「えっと……これからなにかお仕事はございますか?」
考えと違うことを私は訊きます。
う~ん、と彼はわざとらしく唸って。
「いいえ、ありませんね。久々に平和な一日です」
久々に平和な一日です。
耳を言葉が響きます。
ああ、今日は平和なんだ。
「お食事でも、ご一緒にいかがです?」
まだ言おうとしていたことは言えてません。
「こちらこそお願いします。ちょうどこんな平和なお昼時にはかわいい方とランチがいいなぁと思っていたところでして。この前のこともちゃんと謝りたいですし。えっと……どこへ行きましょうか」
早口にキザなことを言われた気がするが、それを快く感じました。
「では、いいところを知っています」
ありがとうは、まだ言ってません。
10月1日の私は、デートに行きます。
3.
「んじゃ、俺は明太子スパゲッティ」
彼はランチメニューの隅のほうにあったマイナー料理を注文しました。
さして感動するわけでもなく――もちろんただの昼食にいちいち感動していては体が持ちませんが――だからといって好物を見るようにメニューを眺め、そう一言、注文したのです。
見れば見るほど不思議で、魅力的な方です。
私は既に「スウィートスパゲティ」と一言で注文を済ませていましたが――それはこの店で一番人気の料理で、私も未だ食してはいませんが、とても美味しいそうです――彼は迷う素振りを全く出していなかったというのにとても長い時間を有したのです。
さして悪びれることもなく料理を待ちます。
「えっと……この前はごめんなさい。どこか怪我しなかった…ですか?」
彼は丁寧な口調でそう言い放ちます。
何度目でしょうか、謝れたのは。
「いいえ、その……受け止めてくださったので」
私は消え入る声でそう呟きます。
なぜでしょうか、彼の前では声が小さくなります。
彼に届いたでしょうか、今の声は。
「ああ、あれはまた失礼しました。とっさのことだったので、見も知らぬ人に体を触られてさぞ不快でしたでしょう。ほんと、ごめんなさい」
深々と彼は頭を下げます。
どうやら聞こえたようですが、どうも食い違ってしまったようです。
「いえ、私を触った方はいままでひとりもいなかったんです」
また、先ほどよりも消え入る声。彼は聞き取れたでしょうか。
「え!? そ、そんな」
「…………?」
彼は何を驚いたのでしょうか。
「私のような異端に、触ろうとするものなど、ただひとりもいません」
「…………………」
彼は何も返してきません。聞こえなかったのでしょうか。
それでも、私は話を続けます。
「見るからに異端の私には、虚しかありません。虚愚虚言、虚現空憂。私にはそんな言葉がお似合いです。こんな、炎天の宴楽に来れるだけで異常というのです。慟言奈落、耕尾轍態。そんな言葉でいいんです。異端は異端として生きていく糸口を見つけないといけないんです。こんな楽光だれが想像したでしょう。誰でもない、私です。私の夢が、具現化したのです。こんな――」
「印みたいなことを言うね、君」
私の、言葉を、彼は、冷たい口調で、遮――
印?
今、この方「印」と――
印。
印――
「印って――」
私はつい彼に問い詰めます。
「あ、いや。独り言だよ」
彼は慌てたように弁します。
一度言った言葉には責任が伴うのに。
あ、そうか。
そういうことか。
こんな異端に幸せがくるなんておかしい。
最初から――気付いていたはずなのに。
だったら――ここは危険だ。
「あの……帰ります」
「え、ちょっと!」
結局、スウィートスパゲティの味はお預けです。
今日の私は、家へ帰ります。
ああ、今日も私は異端です。
4.
「で、そのあとどうしたんです?」
「うん? この後あいつから電話があってさ、洲屡痲っていうその子が人形だったことに気付いたんだ。だから、壊した」
「へぇ。なんかむなしい話ですね」
「ああ、だから詳しいことは言わなくていいだろ。んで、なんでお前正座なんだ?」
「そんな、会話文じゃ読者の方々も気付かないから、そんなのどうでもいいじゃないですか」
「ま、今回はノット描写だからな。ま、題名もろ「ガキの正座」ってなってたのに」
「てことで、題名どおり胡坐かけ」
「………はい」
「現在ガキ胡坐かき中」
「そんなの台詞じゃなくてちゃんと描写してくださいよ」
「やだよ。ほら、ここまでオール会話文」
「これ絶対読みにくいですって」
「うん。別にいーじゃん」
「そういえば、その洲屡痲っていう子が「印」に反応したのはどういうことなんです?」
「うん? あれだよ、伏線だよ」
「でも印ってもう壊しましたよね」
「時系列的にはそうだが、まだ印との話は投稿してねぇよ。なんで時系列ばらばらで投稿するんだろうな、面倒臭ぇのに」
「ところで、この会話って実際大丈夫なんですか? 登場人物が自分たちの――」
「いいじゃねぇか。ギャグだよ、ギャグ。読みにくくても、読めればいいんだよ」
「出ました! 名言!」
「ま、あと2体だな。人形」
「……そうですね。ところで僕と師匠の初対面とかは投稿しないんですか?」
「あ、それカット」
「がーン」
「あ、それと別に全部の人形の話を投稿するわけじゃねぇよ。そんなだらだらと13篇も続けられねぇだろ」
「ま、こんな会話オンリーパートがある時点でもう続けられない気がしますけどね」
「それに」
「それに?」
「あ、いや。ネタバレはだめだ。お前のせいで危なかったじゃねぇか! 感動のラストがぁ」
「いや、支障もラスト知らないでしょ?」
「支障ってなんだよ。変換ミス多くないか?」
「死傷!」
「こえーよ! だれが死傷じゃ! 師匠だ。いっそのこと平仮名でいい」
「ほ、ほんとですか!?」
「いやまて。そしたら『ししょう』に師匠と支障と死傷と私娼と刺傷と四勝と――」
「はい。そんな四章でした。お楽しみいただけたでしょうか。いや、絶対楽しくないね。では、またいつかお会いしましょう!」
こうして、11体目の鹿須洲屡痲の話を閉じる。
「あ、会話オンリーが!」