母親たち悪魔の演説(人類を支配します)

決断はそなたたちにある

父親や女中たち人間で、悪魔をやっつける!
(実際のところ悪魔の正体は人間なので、そんなに手ごわい相手ではない)

少年が変容する。これは実はテストだったのである。人間が生命体として十全な階梯に位置しているのかのテストだったのである。あなたたちは合格した。母親たちは人間だったのだ。

ユートピア宣言(本当の演説)

父親、母親、女中はもとの家に戻る

母親は満身創痍
父親はこの母親がちゃんとした人間であったことを知り、情が寄り、支えていこうと決心する。
女中はみずから暇を請い、家を去る。
(女中はそれ以降の父親を知らない)


現在:
女中は「わたし」に、現在父親がどうしているのかを訊く。わたしは知らないと答える。父親とは教育機関に入る前から別離していると。

生まれてから入学するまでの記憶のなかの父親を、わたしは元女中に語る。
父親はその後、悪魔たちを崇めるあの宗教に入信し、果てはその牧師にまでなった。その宗教の教典によると、その入信者同士から生まれた子は、新たなる人類、として、原罪のない人として生まれるという。
わたしはその一人だった。
だというのに、「わたし」は当たり前のように人に差別心をいだくし、他の子たちもそうだったし、原罪のあるなしに、差異はまったくなかった。
「わたし」は徐々にその宗教に疑問をいだくようになる。そして父親にことわりも入れずに退会届を出す。
(*第五部で明かされるが、この退会届を書いたことによって、既に一文分の執筆を済ませていた。したがって「わたし」は第四部執筆後に命を落とすことになる……。)

女中「母親のことについては、なにもお話にならないのですね」
わたし「えっ?……ほんとだ……あれ?……」
 わたしは母親についての記憶が大幅に欠如していることに気付く。

女中「では私はこれで」
女中は当時と比べてまったく年を取っていない。そのことに疑問を抱いたわたしは、失礼ですが、と前置きをしてから、背中にそのことを訊く。
しかし女中は微笑んで、「いつか、ええ、あと一文くらい書き終えた後ぐらいに、あなたにも分かるようになると思いますよ」

寮に戻って荷物の整理(さすがに面倒を見切れないということで、教育機関からの追放を命じられた)

「母親だけではなくて……なにか、なにか――とんでもないことを忘れているような気がします」→退会届