遺言は物語のように 時系列
実在世界 鏡の世界

主人公、来るかもしれない戦争に備えて、大長老に心臓をくり抜かれ、最強の人間兵器「人形」となる。年ゆえに事情を知らぬ幼馴染は彼女への態度を変えることもなく遊びによく誘ったりしていたが、幼馴染の親が「あれは人間ではない」として息子を遊ばせないように叱る。しかし幼馴染を含め数人のこどもたちは、それよりも友情を優先した。
魔王討伐隊それぞれの幼少期
大魔法戦争勃発
…約束の日に、大栄を極めていた魔法一族が他の魔法により滅ぼされるであろうという伝説。たかが言い伝えと見なされていたが、軍事力の高かった闇(K)の一族に危惧を感じ、青(C)の一族が軍事力を強化。これがK側からは伝説に乗じた対戦準備に捉えることができるため、Cの中央地域への地下通路を密かに制作した。これが赤(M)の一族の一部が住んでいる村を通っていたため、M側に発見され、糾弾。明らかな戦争意思の現れみなされ戦争が勃発した。いわゆる「脆弱性を動機とした戦争(wars of vulnerability)」である。K、C、MそしてCと有効な関係にあった黄(Y)の一族の四大魔法一族すべてが同盟・同盟破棄を経ながら四つ巴の過酷な戦争となった。
魔王討伐の旅開始
戦中
残骸となったある街で、Mの3人(主人公の幼馴染♂x1、その男のいとこにあたる姉妹2人)と弓使いの男(ブルース鏡)の戦闘。Mの3人が死ぬ。
 
戦争の終結
なにも生み出さないまま、すべての一族が甚大な被害を受けるだけの結果で終わる。(魔法一族の戦争であったため、武器の生産もさほど大きなものではなく、経済の発展につながるようなものではなかった。文字通りなにも生まない戦争だったのだ)
魔王討伐成功
半年間の空白
M唯一の生き残りとなった主人公は森の奥に建てられた歪んだ小屋で、無為な毎日を送る。
GDPの急激な低下
ブロントたちの故国は武器の生産を主としていた。しかし魔王討伐を果たしたことにより、討伐隊や自衛軍など、魔物のためにあった舞台へ武器を供給する必要がなくなってしまい、武器の需要が下落する。結果多くの失業者が出ることなるが、民衆は国家ではなく魔王討伐隊に責任の所在を求めた。
第一章 猫の訪問
小屋に猫が訪れ、Kの元軍師ホルストから手紙を受け取る。一族の壁を越え、今こそ魔法一族の復興のために立ち上がろうという内容だった。自我を取り戻しつつある主人公に身の危険を感じ、小屋を覆い隠していた森が主人公に襲いかかるが、主人公が一帯を焼け野原にする。そこへコボルトの群れとブルース鏡が訪れ、戦闘。コボルトたちとブルース鏡は死ぬ。
記者会見
魔王討伐隊は無為な記者会見を求められ、10人が肩を並べて座った。会見では経済悪化の責任をただ討伐隊に求め、謝罪を求めるばかりの質問ばかりが投げかけられ、次第に会場は劣悪な雰囲気になっていく。記者のひとりがマゼンダに回答を要求するが、顔を青ざめたマゼンダは言葉に詰まり、反論することも、無視することもできず困惑した態度を見せ、ミドリに舌打ちをさせた。マゼンダは、討伐隊の足手まといだった。そしてひとつの生卵がマゼンダめがけて飛ばされる。マゼンダを溺愛し、彼女に依存しているブロントは咄嗟にそれを受け止めるが、飛び散った卵黄がマゼンダの頬に付着し、それを見たブロントは激昂。会場は暴徒の嵐に包まれる。
前編
  新しい仲間
そこへ猫の飼い主、ヌルが現れる。彼はホルストの協力者だった。彼の瞬間移動魔法で主人公は凍った鏡の泉に訪れる。泉の畔に、古ぼけた屋敷。そこでホルストとティンクに出会う。ホルストの口から、戦争のきっかけともなった伝説の話を聞かされる。しかしあの伝説には続きがあった。いわく、あの戦争は「魔王」誕生の序章に過ぎないのだと。戦争で滅び凋落してゆく一族をまとめあげ、以前以上の栄華へと導いてくれる魔法の王が誕生するのだと。ホルストたちの目的は、伝説の通りに魔王を誕生させるための“鍵”を見つけ出すことだった。

ミドリやルファ、リンなどのように別の故国を持っている討伐隊員を長期的にこの国に滞在してもらうという理由と、討伐達成の報酬という名目も込めて、政府から10人全員が生活できる屋敷を支給される。それは立派な建物だったが、与えられたタイミングは最悪だった。経済悪化の戦犯たちがなぜあんな立派な建物に住んでいるのかと、マスコミからの非難が殺到する。マゼンダはブルースやミドリなどからのあからさまな嫌がらせを陰で受けながら、憂鬱な日々をその屋敷で過ごす。
  鳥の巣
ティンクいわく、その“鍵”とは魔法書というものであるらしい。伝説に出てきた武器のことだが、そんなものが実在するわけがないと主人公は言う。しかし半信半疑のまま、ティンクに誘導のもと一行は鳥の巣を訪れる。ガーゴイルの集落だ。巣の中を見せてくれというホルストの頼みをガーゴイルの長は拒否する。他者が巣に足を踏み入れるのはガーゴイルの神を冒涜する行為である、そしてなにより、ガーゴイルの神が魔王などという架空のならず者のしもべであるはずがないから、そんなものがここにあるわけないとして。しかしその拒否を無視してティンクが巣に突撃、ガーゴイルの長が取り乱している間に、ティンクは中から「雷の書」を持ってきた。鳥の巣を後にし、重たいからという理由で雷の書は主人公が持つことになって道中を歩いて行ったが、途中、不審な影を見つける。すると雷の書がいきなり煌きだし、主人公は雷の魔法を放出していた。Yの一族でない主人公が、雷魔法を扱えるはずがない。主人公は魔法書の効果に目を丸くする。攻撃が当たったところを覗くと、そこにはつけてきたらしいこどものガーゴイルの死体があった。
ルファの雷の書がなくなる事件が起こる。盗まれたのでは? という声が討伐隊内で上がり、ブロントの知らぬ裏でマゼンダに疑いの目が向けられる。マゼンダは魔法使いだったが、ティンクやルファと比べると、もはや居てもいなくても戦力に変わりがないほど魔力が劣っていた。動き回るのも鈍く、テミやリンと比べて回復役としても劣っているといわざるをえない人材だった。マゼンダが魔王討伐の日まで生き残ることができたのは、マゼンダ以外が強かったから、そしてマゼンダがいなければ隊長であるブロントのモチベーションに障ったからに他ならない。そして雷の書は魔法書の中でも強力な威力を放つ。討伐後の、武器の重要度が落ちた現在で、マゼンダが盗んだとしても。不思議ではない。それがミドリたちの主張だった。
だが、唯一マゼンダに対して関心を持っていないリンが、マゼンダをかばう。憶測だけで決めつけるのは良くないという、リンなりの正義感からによるものだったが、マゼンダは彼女に唯一の救いを感じた。
  雪原
今度は一行は雪原に訪れる。ここには、氷の書があるらしい。足を踏み入れると、コボルト(コボン鏡)が一匹顔を出した。通り過ぎるだけなら見逃してやる、だがこの場所に用があるのなら我々と戦闘をしてからだ、とそのコボルトは言う。そのコボルトは、以前主人公が戦ったコボルトとは違い、二足歩行だった。そしてそのコボルトは名を有していた。コボルトにも、文化に生きる派閥があるらしい。血を嫌うホルストは、氷の書の事情を話し、戦う意思はないことを説く。しかしコボルトは氷の書をちらつかせ、これが欲しいのなら、奪ってみろと聞く耳を持たない。戦闘狂だ。ホルストが溜息をついているうちに、主人公は一歩を踏み出した。そうして、二冊目の魔法書を手に入れた。

屋敷の中庭のベンチで、リンと並んで昼食の弁当を食べる。リンはマゼンダと食事を共にすることに、いやな顔ひとつしなかった。リンは、愛用の「零」と書かれた手拭いで口を拭く。どうして「零」と書かれているのかと聞くと、故国の発音では、自分の名前と少し発音が似ているのだとリンは言った(中国語では「零」は「li2ng」(リィン)と発音する)。そこへ、ルファがやってきて、憤怒した様子でマゼンダになにやら捲し立てた。どうやら、氷の書まで盗まれたらしい。リンがなだめるのも聞かず、ルファは一頻りマゼンダを罵倒した。マゼンダは胸の痛みを感じる。そこへブロントがメディアの撮影から帰ってきて、ルファを殴り、蹴った。やめて、やめてとマゼンダは懇願するが、ブロントは怒りをルファにぶつけるばかりで言うことを聞かない。
氷の泉
二冊の魔法書を手に入れ、一旦一行は元の屋敷に戻った。これまでの移動手段は全てヌルによる瞬間移動魔法で、戻ろうと思えばいつでも戻れたのだが、その屋敷は我が家に帰ったような落ち着きを感じさせた。雷の書と氷の書を並べて、ティンクは唸る。主人公は若干の不信感をティンクに対して懐いた。そもそもなぜティンク