感想公開:2017.07.16(ツイッター)


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作品情報
アーティスト名:happyender girl
EPタイトル:Apple pie (EP)
収録曲数:5曲
全曲作詞作曲:せせせ
ボーカル:初音ミク
掲載URL:https://cicada-sss.bandcamp.com/album/apple-pie-ep

感想

1. Apple pie [in the room]
 イントロから没入感。シンバルとドラムの組み合わせが気持ち良かったり、とーんとーんと余韻を連続させるような音だったりとか、いろいろな音が小刻みに組み合わさる気持ち良さ。それなのに雑多な感じはまったくなくて、限られた数で聴かせているような手慣れた小気味良さを感じました。
「て(e)~」で終わらせる歌詞の連続もやっぱり気持ち良い。歌詞の表現としても序盤の「嫌いな人には言わないで」「知らない人には言わないで」を後半でドッキングして「知らない人には言わないで/愛してるなんて言わないで/いっそ嫌いでいてくれたら」と繋げているのが好き。ほかにも「電柱畑でつかまえて」「数回目 涙ためて 干からびるほどに熱おびて」みたいに単体を抜き出しても気持ち良い表現だなって思うところも多く、そういう、回想を想起するままに並べて、綺麗な描写を連続させているのが気持ちいいなーと聴いていました。小伏さん気持ちいいばっかり言ってんな。

2. Oolong tea [iced]
 これまた小気味よい電子音。テンポのいい電子音やドラム、ボーカルが耳に心地よくて好きです。最後の低い歌声から一気に持ち上げてインパクトを出すせせせの王道演出も好き。
 電車で「これが着くのと夜が来るのどっちが早い」かと問えるくらい遠くへ旅立っていく「君」と、その見送りをする「僕」。少ない言葉で言い表された「僕」の未練と、表現のバランスがとても好きでした。
「プラットホームに切り離される前に僕は空を見てる」とか、電車が来たら線路の上の空や雲(=兎?)が見えなくなってしまう口惜しさが良く出ている。「君の薄い喉が烏龍茶を飲み込んでなにやら青かった」も、すごい表現だなと舌を巻いてました。喉を青いって言い表すセンスすごいでしょ。すごい。「言いたいことを言えたなら死んでもよかった/笑ってさよならできたならどうなってもよかった」という直截的な歌詞を差し込むタイミングも素晴らしかったです。めっちゃ好き。

3. 七月十九日
 牧歌的な雰囲気を漂わせる一曲。この流れにこの曲を入れたのが面白いなぁと。あんなに夏真っ盛り、ともすれば夏が終わってしまうという2曲を並べた後に、「もうすぐなつやすみ」ですから。曲もとても綺麗で素敵です。ずっと聴いていたくなる。

4. 斜陽
 そしてここで格好いいせせせギターが出てくる。序盤と終盤のギターのこの反復好きです。黙って俺についてこいみたいな感じで引っ張ってくれるギターですね(比喩)。1:19~1:25あたりの変化も気持ちいい。
「鉄格子を嵌められ無常にも慣れ/幼稚な思慕に別れは告げられず/求めた一歩は震えて踏み出せず/それでも愛を 救いを 幸せを」という部分や、青春を過ごす子たちを「少年少女たち」というように一歩引いた目線で捉えている歌詞が、他の曲とも相まって作品に深みを出してるなーと。

 回想される当時の悲痛さと、それを回想している現在の悲痛さとの、両面が表されている、胸を突く曲でした。表現としては「茹だった風が静かに花を揺らしていた」が好きです。

5. Oolong tea [reminiscent]
 ピアノが染み入る。いろんな音が手の届かない深いところで流れている。まさに[reminiscent]で、冷えた烏龍茶はもうぬるくなってしまった。
 すごく尖がったことをされているはずなのに、曲の表現としてこれ以外にはないなと思わせるほど明快なものを感じますし、そもそもが曲として聴き入らされる。すごい曲ですし、大好きです。 そしてこれを聴いた後に再度[iced]を聴くとまた新しい味わいになって良い……。すごい……。

以上です。


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