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16□ コンタクト


 火事ほのおのせいで 家がなくなって
 わたしの私物は 眼鏡だけ
 だから友達の家 居候

“ぼくの友達の! えーっと! ナントカちゃん!”

 その女の子は 明朗活発で
 自由気ままに生きてるのが だいたいよく見えた
 眼鏡越しの 新しい家
 半年間だけ お世話になります
 結構なが

“眼鏡 似合わないねー!”

 いきなり失礼 変わった子
 両親さんに挨拶をして お礼も言って
 その直後あとに

“コンタクトありゅよ! りゅりゅよ!”

 フレームのない世界しかい
 耳が軽くなった なんだか聞こえもよくなって
 なんでこの子がコンタクト持っているのかは知らないけれど
 なんで飴玉がおまけなのか分からないのだけど

 門外漢
 もうとっくに 諦めていたはずなのに
 透き通ったような錯覚 新しい世界

 学校に行くと なぜかみんなが寄ってきて
 一時だけの 人気者
 どうせ忘れ去られる たぶんそうなるのは分かっているのだけど

 例えば
 目が合うたび逸らすことに飽きてしまって
 疲れた先に
 きみがいたとしたら

 気付いたときにはきみを見ていて
 なぜだかきみも わたしを見ていて
 ちなみに 居候先の女の子はみんなを見ていて

 新しい世界
 燃えた後は 灰になるわけじゃなかった
 お母さんも お父さんも
 間違っていたんだ




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© 2012 Kobuse Fumio