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ダイヤフラッシュ!宝石の魔法


 怪獣が街に現れた。小学校からの帰り道だったダイゴは、数百メートル向こうでビルを壊す怪獣を見て、腰を抜かした。その咆哮がダイゴの腹の奥に響く。
「な、なんだありゃあ」
「あれは、オリハルコン怪獣、オリハルゴンだよ」
「う、うわっ!」
 いつの間にかダイゴの傍で人形が浮いていた。いや、生き物なのか? 拳大のでかい目玉がふたつ、熊のお人形さんのような顔にくっつている。真横一文字の口は動かないのに、それは喋った。
「ボクは宝石界の王様、ダイヤモン。悪いやつに人形にされちゃったんだ。あの怪獣も、そいつがこの世界に放ったんだよ」
「そ、そんな……」
「お願いだ。ダイゴくん! ボクに力を貸して!」
「なんで俺の名前を」
「それくらい分かるよ。君の宝石のように純真な気持ちが、ボクに教えてくれるんだ。さあ、ボクの力を貸してあげる。あの怪獣をやっつけて! ダイゴくん!」
 人形がぴょんぴょんとダイゴの周りを跳ねる。ダイゴは引いた腰のまま後じさった。
「そんな、俺にあんなの倒せるわけないだろ」
「倒せるよ。きみにダイヤの魔力を捧げれば」
「ダイヤの魔力?」
「ものは試しだよ。さあ、行くよ!」
「そんな、俺まだ倒すなんて言ってな――」
 その瞬間、ダイヤモンの両目がぎらぎらと光り輝いた。その光がダイゴの体を包み込む! ダイゴの背負っていたランドセルや、来ていた服が光に溶け、光がスライムのように粘質を持ってダイゴの体に纏う。それらはダイゴの体を急激に成長・変容させた。ぐ、ぐ、と背が伸びて、ぐ、ぐ、と胸が膨らむ。光がおさまったとき、ダイゴはティーンエイジャーの魔法少女になっていた。
「なんだこりゃあ!」
「成功だ! さあ、宝石魔法少女ダイヤ! 必殺技だ!」
「最高モース硬度! いっきまーす! うわ、なんだこれ口が勝手に」
「行くんだ! ダイヤフラッシュプリズムパワーだ!」
「ダイヤフラッシュプリズムパワー!」
 ダイヤの輝きが光線となってオリハルゴンへと飛んでいく。オリハルゴンにそれは直撃した。そして怪獣は蒸発した!
「やったね! ダイゴくん!」
 こうして、宝石魔法少女しょうねんの戦いが始まった。


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