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ほらあなた、またわたしを捨てるのね。


〝あなた、ほら、またそんなことして。あなたの髪は短すぎて、ゴムじゃ結えないのよ。忘れたの。あなたは女の子じゃないのだから、ほら、わたしに構ってないで遊んできなさいな。
 じぇんだー? 難しい言葉を使うのね。そんな幻想に惑わされちゃだめ。わたしはわたし、あなたはあなた。わたしはあなたの代わりにはなれないし、あなただって、わたしの役はいやでしょう? いやじゃないの。
 あなた、ほら、またそんなことして。わたしの口に、がさつに重ねるの。そのときのわたしが、どんな気持ちかなんて考えにないのでしょう。あなたの欲望のままに動いているのでしょう。
 不思議なきもち。いつもそうなの。あなたは汗でびしょびしょで。わたしもそうよ。汗ではないのだけれどね。
 あなた、ほら、またそんなことして。わたしが纏っているものを、すべて剥いでしまうんだわ。それをゴミ箱に捨てて、もうずっと裸のままにしようとするんだわ。わたしが、なんの抵抗もできないことを知って。
 あなた、ほら、またそんなことして。わたしが空っぽになってしまったら、もう用済みなのね。
 わたしはまた捨てられるのね。〟

 ――とか、〝ペットボトル〟片手に擬人化してみるのも悪くないとおもう。
 そんな部活帰り。俺の幻覚。


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© 2012 Kobuse Fumio