左に大きな丸い靄。右には小粒の砂が散る。
それらが次第につながって、ひとつの波打つ浜になり、まぶたのうらを横切った。
私は眠っている。
音を立てずに波がさざめく。寝息に合わせて上下に揺れる。
息を吸うときは手前に満ちて、息を吐くときは引いていく。
手前に寄りすぎて、ふちが見えなくなることもある。見えなくなると暗くなる。
まぶたのうらに何も見えなくなる。
そして再び波が引き、薄暗いスクリーンが映し出された。
「、 」
幾度かの波の往来を見た後、目が覚めた。目を開けただけのようでもあった。
カーテンを閉め切っただけでは日の光を遮るには不十分で、明暗が混ざり合い部屋に靄を生み出している。ざらざらとした砂粒のような光が無数に散らばっていて、布団から出られなかった。
数日休んだ程度では起き上がれなかった。スマホの電源はおとといから切っていた。もう何も考えたくなかった。
眠気は収まらず、まぶたのうらと同じ部屋の景色が、揺りかごのように揺れている。そのまま再び眠りに落ちた。
左に大きな丸い靄。右には小粒の砂が散る。
寝ても覚めても、見るのはまぶたのうらばかり。