空のお星さまは、いつもきみを見守ってくれているよ。
お母さんがそう言っていた。
それからしばらくしてぼくは死んだ。ぼくは一生を終え、星になった。
木星くんはいつも以上に落ち着きなく、赤いうずを回していた。いったいどうしたのだろう?
「どうしたの? 木星くん」
「いやね、地球くんが最近ぎらぎらしてるのが気に入らないのさ」
「ぎらぎら?」
確かに地球くんは、最近体の周りがきらきらしているような気がする。
「地球くん、それなあに?」
「ああ、これ? これは最近流行りのスペースデブリさ。綺麗だろ?」
「そうだね」
それからしばらくしてぼくは死んだ。ぼくは星としての一生を終え、綺麗になった。
綺麗になったぼくは空の下に帰ってきた。
そこにはたくさんのものを綺麗だと感じるたくさんの生き物がいた。
かれらが「綺麗」だと感じると、ぼくの存在感は強まった。
そのうちかれらは滅んでしまった。ぼくは綺麗としての一生を終え、星になるつもりだったけど、星は滅んでいた。
仕方がないのでぼくは存在感になった。
宇宙の崩壊が始まっていた。原子核くんが死んで、中から中性子くんが逃げ出していた。
中性子くんは陽子くんになった。陽子くんは死んでしまった。
ぼくは徐々に居場所をなくしていた。
ぼくはなくしていた。になった。
なくしていた。になったぼくはたくさんの居場所を得ることができた。
なくしていた。が求められる場所はたくさんあったからだ。
あまりにたくさんだったので、ぼくは分裂した。
なくしていた。はたくさんある。になった。
たくさんある。は素粒子になった。
素粒子は今までずっと一緒にいてくれた時間になった。
時間は昔になった。
昔であるぼくは、かつて存在感があった綺麗な星になった。
空のお星さまは、いつもきみを見守ってくれているよ。
シリコンでできた生き物が我が子に対してそう言っていた。
ぼくは二人の生命体に見つめられて、かれらになりたいな、と思った。