-


トップへ戻る200文字小説一覧


雲の先


 雲が暮れ、寒気深まる、午前四時。一寸先の空は不透明。
 造形はなだらかな高低、オーケー。飛行船は完成を間近に控えていた。
 あの分厚い空の向こうに願う、未知なる世界。誰も踏んだことがない一歩なら、飛んでいけばいい。
 仕様書通りの魔法。夢から醒めるのは阿呆のすること。果報はもうじき訪れる、だろう。
 完成すれば飛んでいく。不透明から透明へ。それだけを糧に生きてきた。
 あの星のなかへと、夢を乗せた飛行船は潜っていく。


トップへ戻る200文字小説一覧
© 2018 Kobuse Fumio