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一生の絵


 たった一枚の絵にこだわる絵描きがいた。20×20平方センチメートルという狭いキャンバスに、何度も構図を検討し、色を重ね、ときに最初から描き直して、一枚の完成に一生を捧げた。一生をかけて技術を磨き、一生をかけて審美眼を養い、一生をかけて絵と向き合った。そうして完成した一枚は、芸術の極致に達していた。
 絵描きは人生の締め括りにその絵をコンテストに提出した。
 優勝したのは別の絵描きが数日で描いた作品だった。


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© 2018 Kobuse Fumio