2011年7月‐9月ツイノベまとめ
〈歌〉
彼は歌っていた。それがどんな歌なのかと問われると、どうも答えずらいが。
歌詞なんて分からない。いや、そもそも無いのだろう。これはいわゆる、コーラスに値するのではないだろうか。
よくよく考えてみれば、彼はなぜ歌っているのだろう。私の墓の前で。
〈あれ〉
「あれだよ、あれ」
ケンタが、まるでボケた老人のようにそう言う。
「あれってなんだよ」
俺は鬱陶しそうに答えた。客観的にはともかく、俺自身からしても鬱陶しそうなそれだった。
「あれなんだけどなー」
ケンタは構わず言う。単語が出てこないようだ。
「まったく……」
俺こそが老人なのに。
〈世界の原理はキミなんだ〉
ねえ、キミは知っているかい?
世界の原理を。
いや、知らないだろうなぁ、そもそも、興味すらないだろう。
だってね、キミこそが世界なのだから。
〈日記:肝試し〉
肝試しに行ってきた。
僕は脅かす役にまわったのだけれど、とっても怖かったね。怖かったよ。
また行きたくなったような、もう行きたくなくなったような、そんな感じ。
なにせ、キミの顔がね……。
〈意味不明〉
例えば――いきなり例示だなんて、おかしな話だけど――君がこの世の神になったら、どうする?……そうだね、君ならきっとそう答えるだろうと思っていたよ。君のことは、お人形さんのように手玉にとっているのさ。嘘だけどね。え? なぜそんなことを訊いたのかって? それは、君が。
〈寝顔〉
もうとっくに眠ったと思っていた友人が、ふいに現れた。
そんなときの驚愕はなかなかのものだ。もしかしたら、寝言なのかもしれない。
そう思いを馳せつつ、私は友人の顔を覗きこんだ。 案の定というべきか、それは寝顔だった。
ものすごく可愛かった。
〈独り言〉
テレビが独り言を投げ交わしている。それは独り言なのだから、と私は無視して、パソコンのキーを軽快に打つ。
雑音の中にある無音、そんな空間で私はツイートする。親しき人、されど知らぬ人が、今日も馴れ馴れしく話しかけてくれる。
テレビが泣いても笑っても、私はキーを打ち続ける。
〈鏡〉
「鏡よ鏡、あの人がきっと愛してくれる者はだあれ?」と、あなたを頭の片隅において私は呟いた。
頬をチークで染めて、まつげをカールさせながら。
「きっとそれは、あなたです」
鏡が答えた。
赤のルージュをひいて、私は喜ぶ。
鏡の中のあの人に、私は愛のくちづけをした。
〈ハーゲンthat's...〉
庶民の夢ともいえる、ハーゲンダッツというものを俺は食べている。しかもタダで! タダだぜ? 友達の奢りなんだぜ? いいだろう。自慢だよ自慢。まるで夢のようだようん。夢のようなアイスを夢のように食べたんだぜ。友達の奢りだぜ? 何度も言ってわりぃけど、そんな夢をみたんだ。
以上9作品。タイトルはツイート当時に付けたもの。
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© 2011 Kobuse Fumio