ジルバは引きこもりだった。鎧にこもった引きこもり。
部屋の中にいれば快適だったから、出る必要がなかった。
彼は誰とも顔を合わせることもせず、誰かのために働くこともせず。ただモニターに映る仲間の様子と、魔物と闘っている自分(全自動)の様子を眺めていた。コーラとスナック菓子を脇に置いて。
「ジルバ遅い! おいてくわよ!」赤毛の仲間が彼の鎧を叱咤する。
「そんな鉄おいてけアル!」三つ編み娘がいつにもましてからい毒舌を吐いた。
討伐隊は魔王の城を攻めていた。ここさえ落とせれば、彼らの願いは果たされるのだ。
コボルトやゴブリン、ガーゴイルたちを相手に一進一退の戦闘を繰り広げる仲間たち。魔法と剣と、弓と拳が行き交う戦場。
そして魔王と対峙する隊長。彼の鋭い切っ先が黒い幻に振り下ろされる!
そして討伐は達成された。
仲間たちが勝鬨をあげる。おのおの勝利に酔いしれ、長かった旅路を思い出しうれし涙を流していた。
「おー、終わったかー」
ジルバは鎧の中で、ぼりぼりとスナック菓子をほうばるのだった。