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潮風の色のように


 去年の風はしおらしかった。あのときは爽やかな快い風だったのに。一年経った今では、去年のこの風にはただウンザリするばかりだった。
 昨日、ブロントと別れた。一年間の交際だった。お互いそりが合わないことは昔から知っていたのに、好き合えばそんなものも気にならなくなると思っていた。でも二人のズレは徐々に大きくなっていくばかり。人って、我慢しちゃいけないのね。って、別れた後に得た教訓はそんなこと。
 だから去年の今日にタイムスリップした。去年の私とブロントは、海辺にいた。ここであいつは、告白したんだ。
 遠くで二人の様子を観察する。私の目はきらきらと輝いていた。きっとこの潮風からも甘い匂いを感じ取っていることだろう。あのときの私はそうだったから。ブロントが顔を真っ赤にして、彼に合わせてやんちゃしようと染めた私の髪みたいに真っ赤にして、思いを告げる。
「ちがうのよ」私はそう呟いて、ただ二人を見守った。




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