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運動会


「魔王城で運動会やるよ」魔王様が仰った。
 ミリンは城の周辺に蒸気を発生させる。城外の魔物に遊んでいるところを見られたら示しがつかないから、そうやって城内の様子を隠すのだ。
「別にそんなことしなくてもいいのに」
「だめですよ魔王様」
 魔王様はその暗黒の瞳を揺らして、ふぅん、と仰る。魔王様はご自身のカリスマ性に自覚がない。
 いつの間にやらその腕に丸いボールを抱えている。いつの間に用意したのか。ミリンは溜息をついた。
「はーい城内のみんな集合ー。ドッジボールやるよー」
 魔王城で働くゴブリンやコボルト、ガーゴイルなどが庭に集まる。人型の魔物ばかりなので、ぐーとぱーでチーム分けをした。
 ミリンは魔王様とは敵チームになった。
「じゃー試合開始ー!」
 魔王様がボールを投げる。ミリンはそれをキャッチした。
「負けませんよ。魔王様」
 スポーツは公平だ。遊びを重視する魔王様なら尚更、接待プレイなんて必要ない。ミリンはほくそ笑む。彼女はなんだかんだと言ってボールで遊ぶのが好きだった。
 ボールを振りかぶる。そして放った。オーガにぶつかる。人の頭の形をしたボールはぐにゃりと歪み、その血が霧に混ざっていった。


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