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ほうせき


 週末の朝やっているアニメ番組にはまった時期があって、まあ今も好きなんだけど、とにかく特にはまっていた時期があって、そのとき見ていたアニメのひとつに言葉を話せるぬいぐるみのペットと一緒に日常をどたばた過ごしていく少し不思議な作品があった。そのぬいぐるみは本物の動物のように排泄もする。あ、いや本当に動物なんだけど、その異様な姿をごまかすためにぬいぐるみという体裁を装っていたのだっけ。ともかくぬいぐるみは排泄をする。朝のアニメで排泄排泄とうるさい話だが、でも決して臭い話ではなくて、まあつまり、その排泄物は宝石だったのだ。
 高価な宝石。ルビーにサファイアしまめのう。彼らはきちんと愛情をもって育ててあげるとそれだけ上質な宝石を排泄した。
 で、それを見てピンっ。ときたってワケ。

「はあ。さいですか」
 テミとティンクが呆けたあほ面で私の説明を聞いている。まあなに、説明はしたくてやっている(のと一応の説明義務を果たすためにやっている)だけであって、理解してもらわなくても構わないから、別によい。
「それでマゼンダは、うんこの研究をしてたってことなんだ。あっほらしーなー」
 ティンクはある程度は話を聞いていたみたいで、そう言ってぐっと両腕を上げた。ずっと座っていて凝ったのだろう。
「あほらしくない。あほらしくないよ。だって宝石なんだよ? うんこだけど」
「うんこじゃん」
「うんこだけど」
 とりあえず! と言って場を制する。テミがつまらなそうに椅子の座席を指で撫でていた。
「あんたたちには実験台になってもらうから。さっきサインもらったしいいよね」
「え! なにそれ!」
「聞いてませんよそんなの」
「説明はしたじゃん」
「まっどさいえんてぃすとメ!」
 どうとでも言え。私はポケットの中に忍ばせておいたリモートコントローラーのボタンを押した。椅子が拡張されふたりの体を拘束した。
 座席の中央部が開き下部に受け皿が現れる。
「じゃ。綺麗な排泄をよろしくね」
 そういって二人に注射器を刺した。

 結果。
 別段愛情を注いでいたわけではなかったので、限りなく透明に近い宝石が錬成されたのだった。


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