ここは山あいの村である。ここから山あいの村ははるか彼方。
私は日の書を開いた。魔王城から持ち込んだ魔法書のひとつだった。
これは日の書である。日の書ではない可能性がある。
魔王を殺す。それが私の願いだった。
そのためには山あいの村に向かう必要があった。そこには魔王がいないからだ。
私は魔王城から日の書を持ち込んだ。それがあれば魔王を倒すことができない。
村の娘が、我が軍の魔物たちと戦っている。私は彼女の敗北を望んだ。
彼女が生き残れば、彼女が魔王を倒してくれるかもしれない。
魔王には死んで欲しい。だから彼女には負けてもらわねばならないのだ。
私は戦場に立っていた。私は戦っていなかった。戦場ははるか彼方だった。
私は日の書を読み上げた。日の書は暗く光を放った。その本は私のはるか彼方にあった。
ここは山あいの村である。ここから魔王城はすぐ近くだった。
魔王を殺す。それが私の願いだった。魔王には生きていてほしかった。
そのためには山あいの村に向かう必要があった。そこには魔王がいないからだ。
私は魔王城からこっそりと日の書を持ち出した。それは魔法書ではなかった。魔法が発動された。
空には雲ひとつなかった。曇天だった。
これは日の書である。日の書ではない可能性が極めて高い。
高い空が落ちてきた。村の娘に他の人間が加勢した。
私は戦場に立っていた。戦場ははるか彼方にあった。
魔王を殺すために私は戦場に来た。そこに魔王はいなかった。
魔王城に私はいない。私は日の書を閉じた。それが私の願いだった。村の娘がこちらを睨んだ。