-


トップページテンミリオン15分即興一覧


地獄にて大地


 大地の精霊は魔王城のカタコンベを進んでいた。勇者たちが魔王を討伐した後の、主のいない世界。しかしそこには魔王が残した財宝と、それを守る殺人機構が所狭しと張り巡らされている。
 ここは地獄だ。と大地は思う。勝手知ったる精霊ならまだしも、ここに人間が足を踏み入れたらどうなるか。方向感覚を狂わせる暗い霧、連撃を打ち続けてくるコボルトの大群や、地上では見られない大蛇。一歩踏み出すごとに攻撃的な意思が襲い掛かってくる。
 城の中央部、財宝の隠されている部屋へと向かう。大地は、地を司る精霊としての能力が幸いし、地獄も気ままな一人旅だった。たとえ視界を潰されても、地に張った根の足が方向を示してくれる。
 そうして危うげなく財宝部屋へと到達した。
 宝石のあしらわれた指輪に、時代錯誤的遺物。まったくあいつはどこからこんなに集めてきたのか。そこには古今東西の宝が結集されていた。これらの宝は時間をかけて魔力を生じさせ、その力がこの城の頂点へと集約される。この財宝は、魔王のよみがえる源なのだ。
 魔王には悪いが、おいたをした友人にはもう少し眠っていてもらわないといけない。
 大地は財宝から目ぼしいものを漁り、持ち帰ることにした。指輪なんか水の精霊にやれば喜びそうだ。

 ところが。

 竜の咆哮。大地の体が吹き飛ばされた。地面から根の足がえぐれ、感覚が麻痺する。
 財宝を守る番人がいたのだ。
 まったく魔王め、くたばっても食えないやつだ。
 竜が大きく炎を吐いた。


トップページテンミリオン15分即興一覧