星のまたたく昼だった。ミドリが空を指でなぞると、そこに星が生まれる。夜しか認められていないはずのその魔法を、彼女は昼間に決行したのだった。
ミドリは大きく肩を上下させる。やってやったのだという興奮が全身に響き渡る。
魔王城の窓辺から、闇の精霊は空を見ていた。すると昼間なのに空に星がまたたいた。ひとつではなくたくさんの。満点の星空が、昼の明るさのなかで浮かび上がっている。白に白を重ねたかのような光景だったが、どこが空で、どこが星か手に取るようにわかった。それくらい星はきらびやかだった。
闇の精霊は、ああ、と思った。魔王としての力は盗人に奪われてしまった。だがそれは誰にも悟られないようにしていた。
はじめの村で、ブロントを含めた五人の少年少女は、空の異変を目の当たりにしていた。世界中の人が空を仰いでいた。
ついに魔王が世を我が物にしようとしている。人々は直感した。これは災厄の前兆だ。
魔物たちもまた、その星空を魔王様による意思だと受け取った。
魔物たちは活発に人間を襲うようになった。
ルファは闇の精霊からの密命を受けて、アマゾネスのならず者を追いかけていた。極刑に処せ、との命令だった。ミドリを倒せば自然とその力は本来あったところへと帰っていく。
力を求めはじめたものは、より強い力を求めるようになる。ミドリはルファと対峙した。