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チームプレー


「魔王様、お呼びですか」
 執事のガーゴイルが扉の前でささやく。
「うむ。入れ」
 魔王の声に従い扉が開き、玉座に腰かけている魔王を視認する。玉座と比して魔王の体はあまりに小さく、足が床に着かないことを取り繕おうと、魔王は足を組んでいる。
 そのいつもの光景を一瞥し、ガーゴイルは足を踏み入れた。溜息をつきながら。
「む。ガーグ、お主なにを溜息をついている」
 そりゃあ呼び出されたんだからね。どうせ魔王様のことだ、また面倒なわがままをふっかけてくるに違いない。
 だからといってその溜息の理由を説明するわけにもいくまい。
「いえいえ。これはガーゴイル特有の呼吸方法でございますよ、魔王様。ひっひっふー、の親戚にございます」
「ふん。まあなんでもよいわ。それよりもガーグよ――わらわは格好よくなりたいぞ」
「はぁ。格好いい、とは」
 魔王とはいえそのみてくれは人間の幼児である。格好いいという形容とは程遠いところにあるのは相違ない。
「ほら、この前殺した十人の人間どもがおったろ。あれはなんとなく、格好良かった」
 ははぁ。あの魔王討伐隊に影響されたのですね。確かに連携を組み我ら魔物に立ち向かう姿は、敵ながら見事なものでした。殺しちゃいましたが。
「そこでじゃ。わらわも、どうにかあやつらみたいに格好良くのぉ」
「でしたら魔王様、ちょうど良いではありませんか」
「うむ?」
「ほら。前から私めが提案しておりましたでしょう。魔王城にいる精鋭を集めて、人間の王を討伐する隊を作るのです。もちろんリーダーは魔王様、あなたで」
 魔王が玉座から降りる。床に立っている姿を見ると、彼女は玉座の背よりも低かった。
「ふむ。悪くない」
 こうして人間討伐隊は結成された。


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