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青に鴉


「小鴉先輩って、彼女いるんですか?」
 後輩が聞く、放課後の雨。わざわざそんなことを聞きに来たのか、暇なんだな。何が嬉しいのか、そう言うと彼女らは頬を引き上げて沸き立った。
 雨が降るから部活は中止だ。その決定が下されるまでの間、運動部の面々は教室でたむろしていた。ホームルームの直後に教室に残っているのが我ながら珍しくて、新鮮で、それだけでこの教室がなにか特別なものに思えた。
「あれ、なんでこんなに人いるの」
 ふと、見知った声が聞こえた。咄嗟に聴覚のほうへと目を向ける。
 どこかから帰ってきた青井が、廊下側の扉から中を覗いていた。
「ああ、雨だからか」
 そう言って入ってくる。
「クロウがいるの珍しいね」
「あ、ああ」
 通りすがりに声をかけられる。雨のじとっとした空気のせいか、顔のまわりが汗をかいてきたようだった。
 運動部ではない青井と、同じ放課後を過ごす。雨の日の教室は、なにか、特別だった。


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