妖精は人の思い出を食べて生きているの。
だから妖精に出会ったら嫌なことを思い出して。
きっと不味いと思って見逃してくれるから。
幼い頃に、祖母から聞いた言葉。
ティンクに出会うまで、ずっとその作り話を本当だと信じ込んでいた。
魔王討伐を目指す道中にて、魔物に囚われていた妖精を助け出した。
助けた彼女に私が最初にかけた言葉が、
「食べないでね」
だった。ティンクはきょとんとした顔で、「なんで食べるの?」と答えた。そのときに自分の思いこみを知ったのだった。
「まったくね、マゼンダはねー、ガクシャのくせに変な勘違いばかりしてるんだかラ!」
馬車の荷台で揺られながら、足で宙を蹴る。それを真似してか、ティンクも私の肩のうえで同じように足をばたつかせた。
「悪かったよ。いきなりあんなこと言って」
魔王城は目前だった。私たちの宿敵との対決はあと数日後に控えていた。
これまで一人も仲間が欠けることなく、魔物を倒し続けてきた。
仲間の士気も上々で、だからこうして、ティンクとの出会いを笑い種にできている。
「地獄のような日々も、もうすぐ終わる……」
ふいに、荷台でうずくまっていたクロウが呟いた。
「地獄? クロウはそんなにつらかったの?」
そう笑いかけるけど、クロウは返事をしなかった。無口な子だし、いつものことだった。
さあ、もうすぐ魔王城だ。
最後の戦い、仲間5人でがんばろう。