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昔の話


「雪がすごいですね! ジャングル育ちの私はもうドン引き! 股引き! 虫の息ですよ!」
 そういう割にはルファは元気にはしゃいでいた。雪が珍しいのだろう。借りた防寒着に雪がまとわりつくこともいとわずに、道の脇に積み上げた雪に飛び込んでいく。エルフは人間よりもずっと長寿だというが、それでも新鮮なものに出会うこともあるのだろう。
 そう告げるとルファはいえいえ、と首を振る。頭に乗っていた雪がぼとりとこぼれた。
「確かにエルフは人間よりも寿命の長い種族ですが、それと私の年齢とは別じゃないですか。私は人間の年でいえば、まだ13歳なんですよ」
 確かにそれはそうだ。若いエルフがいたっておかしなことではない。
 自分の知見の甘さを詫びながら、私は雪で団子を作って見せた。雪が珍しいのならそれを活用した遊びもまた珍しいはずで、それをルファはきっと喜んでくれるだろうから。
「それは! 噂の! 雪だるまですね!」
 私としては雪合戦のただの団子を作ったつもりだったが、雪だるまに方向転換しても構わないだろう。拳より小さなそれを、ルファに手渡す。少しずつ転がして、大きくしていったらいいですよ。
 ルファは可愛らしい嬌声をあげながら団子を転がしていく。よく一人でそんなにはしゃげるものだ。
「私はね、雪って雲みたいにふわふわしてるんだと思ってたんですよ。でも! これが本当の感触なんですね!」
 ルファは雪をばあっと掻き混ぜてみせる。
「銀狼さんの毛皮のほうが、とってもふわふわです!」
 ルファはそう言って笑顔を見せるのだった。


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