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一室の語り


「それでね、今日は村内会の方が、お菓子をくださって。テミさん、これどうぞって。私、味はわからないんだけど。とても上等なものらしくてね。なんでも、王国から仕入れた代物だそうで。これなんだけど、ほら、かわいいのが綺麗に並んでいるでしょう。こんなにたくさん。でもね、日持ちはさほど良くないらしくってね。ちょっとね、あのひとそういうところが抜けているのよ。子どもがいないこと知っているはずなのに。こんなにたくさん、どうしましょうね。近所の子たちに配るのもはばかられるし。だって、私まだ村内会のひとたち把握できていないんですもの。もしあげた子の親が会員の方だったら、私、とんだ無礼者でしょ。ただでさえ引っ越してきたばかりで、右も左もわからないっていうのに、穏便に生きたいものでしょう? あなたのような静かなひとばかりだったら良かったのにね、そうはいかないのよ。村内会って、とても神経使うの。波風立てたくないのよ。だから、しばらくはそこでじっとしていてよね。あなた、生きているときだって寡黙だったんだから。でもほんと、このお菓子どうしましょうね」




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