ウィスプは今まさに死に絶えようとしていた。ここは極寒の雪原。吹雪がウィスプの炎に容赦なく吹き付ける。風前の灯し火という言葉がとってもよく似合うな、そう思いながらウィスプは生への諦念を感じ始めていた。
ああ、死ぬまでにもっと色々燃やしたかったな……。消えゆく意識のなか、白くぶつかり合う雪の景色を眺める。
しかし。何者かが、ウィスプを抱きすくめた。
「うぉお、あったけえだよ」それは雪原の主、コボルトであった。
ウィスプはコボルトの巣に運ばれた。「神様だ……!」ウィスプは命の恩狼に畏敬のまなざしを向ける。巣の中では、もう立派な炎に回復していた。
「生きた炎かありがてえだなあ! これが冬の神様ってもんだべ」ウィスプは嬉しくなった。神様だと形容した相手に、神様だと呼ばれたのだ。
ウィスプはそれから、雪原の炎として幸せに働いたという。
魔物の矜持? なんのことやら。