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リレー小説(お題:初心なリンが改造手術を受けている)

執筆:Gamygyn、u17、咲耶(執筆者別に色分けする

「うう、私、これから何されるんだろう……」
 そんな後悔の言葉が口を突いて出る。彼女は今、無機質な色の手術台に乗せられ。手足をベルトで拘束されているのだ。
 さっきまで、公園でともだちとかくれんぼをして遊んでいるはずだった。ここなら見つからないだろうという場所を見つけて、息をひそめていた。けれども気づけば無機質な壁。
 怖くて自らの身体を抱こうとしても、ベルトが邪魔をする。見慣れた景色はどこにもない。そんな彼女の目元には涙がたまるばかり。
「お母さん!助けて!」そう叫んでも、助けに来るものなどいるはずもない。その代わりに、白衣に身を包んだ男が、白く長い髪を引きずりながら現れた。
「ハッハッハ!何をそんなに怖がっているんだい!」
 男は、石膏のように生気のない顔に反した、快活な声音でいう。
「怖がる必要はないさ!君はこれから、誰よりも幸せな人生を送れるのだからね」
「おじさん誰!ここから出して!おうちに帰して!」
 彼女の必死の叫びは意に介さぬ様子で、男は手にしている医療箱を手術台の上に置いた。
 ぱかっと口を開けた箱から出てきたものは、なんとも言い難い変な色の液体が入ったアンプルたち。男はそれを愛おしそうに見つめる。彼女はその笑顔を見て直感した。あの変な液体で、自分は改造されてしまうのだと。…しかし逃げられない。どうする。
「大丈夫だよ、ちょっと、眠るだけだからねー」男はシリンジにアンプルの液体を取ると、ためらいなくリンの腕に注射した。
「いやっ!」そんな、短い悲鳴も空しく、哀れな少女は一瞬のうちに昏倒してしまった。
「さて……、君は最強の美少女戦士サイボーグになるんだ……」怪しい男は満面の笑みを浮かべる。しかし、医療箱の中を見て愕然とした。
「あっ……、ロボットアームも、メスも、バッテリーも入ってない!」
 しかしロボットレッグは残っていた。男は安堵の表情を浮かべ、レッグのつまさきに内臓されているナイフを取り出す。
「ないよりはマシか」
 …………。
 目が覚める。夢だったならよかったのに、そこはやはり無機質な壁の中だった。
 しかし、何かが違う。リンはあたりを見渡す。拘束していたベルトがなくなっている。代わりに手術台から何か配線のようなものが伸びていて、部屋の隅のコンセントにつながっている。なんだろう、と手を伸ばそうとするも、何も動かない。代わりにその配線が連動して揺れた。
 なんでだろう?不思議に思った彼女は一度腕を引っ込める。もう一回。しかし何も動かない。
「どうして……」彼女は、腕を上げようとする。すると奇妙な物が彼女の視野に入ってきた。
 それは、肌色の太い棒であった。だが、人の腕ではない。皮膚というべき物は肌色ながら光を反射している。一度見ただけでは何か判断できなかったが、それがマネキンの脚と判断するにはそう時間がかからなかった。マネキンの脚に、黒くて太い配線が繋がっているのだ。
「何これ!」哀れなサイボーグは叫ぶ。
 幸いなことに脚は生身のものだった。ベルトも外れている。手術台を飛び降りて駆けだす。無機質な両腕があまりに重くて、転びそうになる。
 壁の一か所から微かな光が差し込んでいた。その光がマネキンの脚で反射しているのだ。壁に突進すると容易にそれは開いた。まばゆい光が眼前を覆う。
「あぁ、外だ……!」
 外はなんでもない街の一角だった。近くにいつもの公園も見える。そのまま駆けだして逃げようとした。けれど。
 がくん。
 と体が停止する。腕から延びた配線が、ぎりぎりまで張り詰めていた。
「あ、リンちゃん!」
 聞こえたのは紛れもなく、さっきまで遊んでいたともだちの声。リンは線に引っ張られる己の両腕を見た。こうなったら、引きちぎるしかない。
「せいっ!!」
 腕を高く上げ、地面に向かって勢いよく振り下ろした。叩きつけられた腕、というか足は砕け散り、すべすべな腕が出てきた。線もちぎれ、彼女は晴れて自由の身になった。
「みーつけた!次はリンちゃんが鬼だよ!」
「えへへ、見つかっちゃった。じゃあ10数えるから、早く隠れてね!」
 イタズラっぽく笑うともだちにタッチされたリンは、すぐ近くの木の幹に顔を伏せた。ゆっくりと大きな声で数を数える。さっきまでのことなど無かったように、公園には平穏が広がっていた。


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