2014.10.28


トップへ戻るテンミリオン二次創作一覧に戻る


インタビューズ


ブロント
 えっインタビュー? あーすまんがそういうのは魔王討伐を果たしてからにしてくれる? 俺たちそんなインタビューを受けるような身分じゃねえし……え? ブロントさんマジイケメン? マジ隊長の鑑? いやーそれほどでもぉ。まあまあ、そこにお掛けになって。

 ああ、そうだな。最初討伐隊は5人だった。だがいまでは10人だ。隊長のカリスマ性が人を集めたってのもあるが、彼らはほとんど自分から集まってくれたんだ。一人だけ、金払ったやつがいるにはいるけどな……。弓使いに魔法使い、僧侶に鎧に格闘家に。誰一人として今では欠けることのできない大事な仲間だ。ほんとに、ごちゃごちゃといろいろな面子が揃っちまったが、そうだな、俺はこの10人なら魔王にだって勝てると信じているさ。なにせ相手はたったの一人なんだからな。

 魔王討伐を果たしたら何がしたいかって?……そうだなぁ、まずはみんなでパーティー開きたいよな。ぱぁーっとさ。リンにシャンソンとか歌わせて。まあ俺たちが本当に勝てるかとも限らねえ、あまりそういう話はしないでくれ。士気に関わるからな。

 俺はこの仲間が大好きだ。きっとあんたがそのインタビュー映像を持ち帰った頃には、俺たちのうちの何人かは、もしかしたら全員は、死んでいるかもしれねえ。でもな、俺たちはぐちゃぐちゃになっても魔王の首を勝ち取ってやる。名誉も金もなにもいらねえ。それが俺の願いだ。
 他の奴らにもインタビューするんだろ? きっとみんなそう言うだろうぜ。

 俺の宝くじ賭けてもいい。

ブルース
 魔王討伐した後かぁ、そうだなぁ……。僕は、魔王討伐が無事終わったら、絵描きになろうと思っているんだ。
 そのエピソード、とまではいかないけれど、僕のこどもの頃の話を紹介するよ。

 あれは、そうだなぁ、僕が初等教育を受け始めてすぐか、受ける前かくらいの頃だったと思う。
 僕の町に、ある女の人が引っ越してきたんだ。その頃は魔物の暴走がちょうど激しくなった頃だったから、住んでいるところを襲われて引っ越してくる人っていうのはそんなに珍しくはなかったよ。

 ……でも、その女の人もただの移民のひとりにすぎなかったのだけど、僕にはとても不思議に見えたんだな。だってその人は、服よりも生活用品よりも、画材をたくさん抱えて町に入ってきたのだから。あれはなんだろう。僕は不思議に思って、それから数日間、彼女の様子を窺ったよ。

 小さな町だから、彼女がどこに住んでいるかも分かった。窓を覗くと、彼女はいつもキャンバスに向かって筆を走らせているんだ。自分で調合したらしい絵具をパレットに載せてね。それで数日の間覗いているうちに、彼女が僕に気づいちゃったんだ。最初は気づいても無視されていたんだけど、僕が頻繁に見に来るから、いらいらしたのかもね、彼女はカーテンを閉めてしまった。

 うん。悲しかったよ。
 でも、違ったんだ。それからしばらくして、僕の家に一枚の絵が届いた。それは、彼女が描いた僕の絵だった。
 驚いたよ。絵に描かれた僕は、青い髪をしていて、怖い顔をして。そして弓を持って魔物と戦っていたんだもの。
 ……まさか。僕が弓を習い始めたのは初等教育を終えてからだ。
 彼女の絵は、予言していたんだよ。僕の将来をね。

 あの絵は魔物と戦っている僕だった。あの絵が予言しているのは、今の僕だ。それより先の僕は描かれていない。
 だから僕は、魔物と戦う必要のない時代になったら、絵描きになるんだ。
 絵描きになって、自分の将来を、描いていきたいなって。語りすぎちゃったかな。

 まあ、あれが予言の絵なのではなくて、ただ僕が絵に影響されて弓使いになっただけなのかもしれないけどね。

ティンク
 私は愛を求めていた。
 私は魔物だ。
 よって魔物は愛を求めている。

 ……なんでもないわ。ただのつまらない三段論法。
 たまにね、自分でもわからなくなるの。私が人間なのか、魔物なのか。
 どちらでもない。確かにそうかもしれない。私は妖精なのだから。
 でも、だったらルファはどう? あの人は人間でしょう? 実際はエルフのくせに。
 エルフは人間の大きさをしているし、羽根も生えてないし、限りなく人間に近い生き物だわ。
 いいえ、あれはもはや人間よ。ただ、ちょっと耳がとんがっているだけ。
 魔王もそうだわ。きっとあれも突き詰めれば人間なのよ。あなたはそうは思わない?

 人間とは、何か。散々語りつくされた人間の詭弁よ。答えなんて知らないし、あるのかどうかもわからない。
 でもそのうちのひとつに、気に入っている答えがあるの。
「人間とは愛と欲望を別離する生き物である」ってね。
 わけわかんないわよね。きっとこれを言った人も意味わかって言っていないんじゃないのかしら。
 とても立派な詭弁よ。立派過ぎて私、好きになっちゃったの。

 人間とは愛と欲望を別離する生き物である。
 私は愛と欲望の違いがわからない。
 よって私は人間ではない。

 わかる? 私の三段論法。
 でもこれだけは言えるの。
 人間でも人間でなくても、私って可愛いでしょ、って。
 ふふふ。私の可愛さにみんな人間でなくなっちゃえばいいんだわ……。
 そ。だからね、私の願いは有名になって「みんなに欲望のままに愛される」、そんなアイドルになること。魔王討伐? そんなのただの踏み台よ。

ジルバ
 討伐後の願い? んなもんねえよ。いや、べ、別に話すのが恥ずかしいわけじゃねえよ。
 ん? 過去の話でも自慢話でもなんでもいい? そうか、だったらまあ、話せることもいくらかあるぜ。

 俺の自慢はなんといっても、この槍捌きだな。これに限ってはブロントにもクロウにも負ける気がしねえぜ。周囲の雑魚どもを蹴散らし、さきがけやしんがりを務める俺の槍は、鎧よりも鎧らしいこの隊の鉄壁だったんだ。

 だが、俺には弱点もあった。自慢じゃねえが、これに限っては誰にも勝てる気がしねえ、そんな弱点が。
 なにかって? ああ、それはお察しの通り、この足よ。踏んばったり蹴ったりするには何の問題もねえ。槍を振り回しながら一緒に鍛えられてっからな。問題は力じゃねえんだ。速さだ。
 そう、俺は鈍足だったのさ。

 置いてけぼりにされなかったのかって? そりゃされたさ。俺は防御に関しては完璧だからな、もちろん魔法をくらったらひとたまりもないが、鎧と槍には絶対の自信を持っていた。だから仲間たちも安心して先に行ったさ。え? さっきさきがけと言ったじゃないかだって?……まあ、気にすんな。

 でも、ある日俺はもらったんだよ。「天馬の靴」をな。羽根のついた靴だった。
 最初はティンクが靴でも持ってんのかって思ったよ。違ったと分かった後も、なんだかヘンテコな靴だなと思った。でもブロントの奴が言うんだ。「おまえコレ履けよ。これで速くなれるぞ」って。おいおい悪徳商法かよとか思ったけどさ、金はとらないみたいだし、押しピンも入ってねえみたいだし、しぶしぶ履いてやったんだよ。

 それからどうしたって? はは、見りゃわかるだろ。おれは幸福の靴を手に入れたんだ。
 ああ、幸せだよ。俺の攻防がパワーアップしたんだからな。
 俺の武器が増えたってことさ。もう魔物なんて絶対に近づかねえ。鎧に、槍に、そしてこの「臭い」があればな……。

ルファ
 ジャングルで一番の大木。わたくしはよく、その木を相手にして剣や魔法の練習をしていました。
 枝になにかぶらさげて剣を振り回すのもいいですし、矢を放つにも最適で。それに魔法を放っても受け止めてくれる大木でした。
 それはただの木でしかありませんでしたが、まるでジャングルすべてを見渡しているような鷹揚さを感じさせて、わたくしも、その木には一種の尊敬の念を懐いていたのです。まあ、尊敬している存在に魔法をぶつけるって、いま考えると矛盾している気もしますけどね。

 ある日のことでした。その日はひときわアマゾネスとの対立が拮抗し、いよいよ戦況が佳境になった頃でした。ついに戦争が終わるのではないか、そろそろ勝負がつくのではないか、お互いがそう感じていたことでしょう。矢の応酬はとどまることを知らず、戦闘は深化していきました。
 周囲には傷だらけの部下やアマゾネス。そしてわたくしは、ついにミドリと一騎打ち。互角の戦闘が続き、ようやくわたくしの氷の手が彼女の喉を掻っ切ろうかとする刹那のこと。
 あの大木が突如――こちらに倒れてきたのです。わたくしは瞬時自分の任を忘れ、ミドリへのとどめを中止し別の魔法を発動しました。大木を倒させまいとしたのです。気づけば、横でミドリも大木を支えています。彼女もこの木に思い入れがあったのでしょう。

 最終的に、木は倒れてしまいましたし、戦闘も中断してしまいました。
 でもいまは、それで良かったと思っています。

テミ
 ヒロインといえばやっぱり私ですよね。主人公の勇者とともに旅をする回復役の女僧侶、ああ、この私を差し置いてほかに誰にヒロインが務まりましょう。おほほほ。おほほほほ。えっ録画してる?……おほん。ええ、ヒロインといえばやはりマゼンダにリン、ミドリにティンクたちでしょう。私たち討伐隊の女性陣はみんな、性差的なものなんてまったく見せない強さを誇っているんですよ。マゼンダは炎の魔法が得意でして、敵なんて[ピー]しちゃいますし、ティンクも妖精ならではの魔法で敵をぶっ[ピー]できちゃうんですよ。リンとミドリは武闘派で、男性陣もたじたじの腕力で[ピー]を[ピー]して[ピー][ピー][ピー]。えっ録音もしている?……おっほん。ええ、みんなおしとやかな方たちでございますのよ。なにせヒロインでございますからねぇ。清らかに、美しく、私たちは討伐隊の殿方をお支えしているのですわ。あらやだ、三時のおやつの時間……。おーいこらブロントぉ! ドーナツ持ってこいやああん?……あら。うふふ。彼ったらそういう嗜好でいらっしゃいますの。ご他言はならさないでくださいね。うふふ。うふふ。

クロウ
――お名前をどうぞ。
クロウ:クロウだ。
――クロウさん、討伐後の願いや、ご自身をよく表しているエピソードなどあれば教えてください。
クロウ:いや、すまないが特に話すことはない。
――うん、そう言うと思っていました。なのでクロウさんだけ対話形式ですよ。恥ずかしいですね。
クロウ:…………。
――ということで具体的に質問を進めていきます。クロウさんは、なぜ魔王討伐隊に入られたのですか?
クロウ:生きるためだ。討伐隊に入らねば、俺は殺されていた。それに金も手に入らなかった。
――ああ、ギャラック率いる魔物の軍に入っていたのですよね。では、なぜ魔物の仲間になっていたのでしょう?
クロウ:それも、生きるためだ。
――ふむ。クロウさん、魔物の仲間になる前も、いろいろと職を転々とされているようですね。
  門番や警備員、花屋のバイトなどをされていたようですが。
クロウ:おまえ、一体どこでそれを。
――クロウさんからです。
クロウ:そうだったな。良い小遣い稼ぎになった。礼を言う。
――いえいえ。クロウさんの働く理由、それはおしなべてお金にあるようですね。
  討伐隊のお仕事は、金銭的な面ではいかがですか?
クロウ:それは昨日食べた。
――えっ。えー……お口チャックってことですかね。
  では、インタビューは以上です。クロウさん、貴重なお時間をありがとうございました。
クロウ:俺のおやつ……。

マゼンダ
 私は赤色が嫌いだった。この髪が、憎くて憎くて仕方なかった。
 この赤毛は代々受け継がれている遺伝の赤毛。あの親の赤い血が私の中に流れている、それはとても、おぞましいことだから。

 でもそうではなかった。この髪は、遺伝によるものだけではなかったんだ。
 そのことに気付いたのは、ガーゴイルが一匹、町を襲いに来たあの日だった。
 あの日、私たちはまだ初等教育を受けているくらいの年齢だった。ガーゴイルが家屋を崩し、咆哮をあげる。
 他の村みたいにこの町も潰されてしまうんだ、私はそう確信した。その諦念が相手にも伝わったのかもしれない、ガーゴイルが私めがけて飛んできた。でも死にたくない。私は死にたくない。
 直前、私は強く願っていた。

 気づけば、周りは真っ赤で。
 恐ろしく燃えた夕日が、私を見ていたんだ。
 焼けて動かないガーゴイルが目の前にいて。
 私は頭が真っ白になった。

 そして知ったの、この赤毛は、私の魔力のしるし。炎の赤毛だったんだって。
 今? そうねえ今は好きよ。私って強いしね。

ミドリ
 アタイらが討伐隊に入る前の、エルフとアマゾネスがドンパチやっていた頃のことだ。
 アタイは、武器を調達しようとジャングルから一番近い町に足を運んでいた。
 いつもは頭の回る部下をつれていたんだが、その日はアタイ一人だった。なにせ人手不足がひどかったからな、みんなエルフとの戦闘に忙しかったんだ。その中で長であるアタイが、むしろ部下たちに守られているだけ余裕があったから、一人での武器の買い出しを買って出たってわけなんだ。

 まあ、ということでアタイは町に来たわけだ。アタイは町に入って最初に目についた武器売りに話しかけたよ。彼らは絨毯を広げ武器を披露する、いわゆる行商というやつだった。売っている物は斧や弓、弓矢、アタイの求めていた武器とぴったりだった。

 でもなんというか、頭の回る部下がいなかったもんで、というかアタイが馬鹿だったもんで……。
 そいつらにアタイは騙されちまったんだ。金を多く巻き上げるなんて優しいもんじゃねえ、あいつらはアタイが武器を買ったのを見計らって自らの腹をナイフで傷つけ、アタイの仕業に見せかけた。
 アタイは頭に血が上っちまってそれで……それでアタイは、買った武器もろとも身ぐるみ剥がされ牢屋に放り込まれてしまった。

 笑えるだろ。長ともあろう者が、自分の潔白を証明するだけの口上も持ち合わせてはいなかった。
 それにアマゾネスは変な目で見られがちだからな。疑われるのは容易いのさ。

 もう出られねえ。アタイがいなけりゃ部下たちもエルフに負けちまうかもしれない。もうおしまいだ。
 そう思ったよ。
 けれど、牢屋にぶち込まれて一日目の夜、救いの手があったんだ。きっと真っ先に駆けつけてくれたんだろう。
 誰が来たと思う?
 エルフの長だったんだよ。
「あなたは、わたくしに倒されなくてはいけません。こんなところでくたばってもらっては困ります」
 あいつはそう言って、牢屋からアタイを連れ出したんだ。

リン
 うちの素手? うーんそんな特殊にはなってへんで。ただの素手や。
 もちろんめっちゃ修行したから、スライムの粘液もウィスプの炎もへっちゃらやけど、でも生まれたときからうちの手は、うちの手なんや。

 うん。よく言われんねん。リンおまえその素手外しちゃえよって。そんなことできへんわ。
 サイボーグちゃうっちゅうんねん。岩を砕いても鉄に穴をあけても、うちの手はうちの手なんや。武器じゃない。

 うちな、この手で赤ちゃん抱くのが、将来の夢やねん。うちは討伐終わったらお嫁さんになる!
 それとかな、あんよしてる赤ちゃんをおいでおいですんねん。そのための手なんやで、うちの素手は。
 決して武器じゃない。ほんまに、これだけは覚えとってほしいんや。
 うちの手は、人の手や。

 ……ってなんやねんその反応は!
 オチないわ!

2014.10.28
This report is brought to you by MAOU,
and thanks to shiftup.net

トップへ戻るテンミリオン二次創作一覧に戻る