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ピギュピの誕生


ウィスラム「ピギギ!?」
ミドリ「なんだと! すぐに戦闘体勢だ!」
ウィスラム「ギギッ! ピギギピギ!」
ミドリ「えっどういう意味?」
ウィスラム「ピ、〈ギギギギピ〉ギッピピギ?」
ミドリ「当たり前じゃねえか」
ウィスラム「ピギッ、ピギギギ、ギッギギピピギッピピ!」
ミドリ「お前なに言ってるんだよそんなつまらん冗談……マジだ……」
ウィスラム「…………」
ミドリ「どうしよう……」
ウィスラム「ギギュピギギ?」
ミドリ「んなの知るかよ。俺が一番知りてえよ」
ウィスラム「〈ギギギギピ〉」
ミドリ「どうしよう。ウィスラムぅ、俺どうすればいいんだよぉ!」

 彼女は縋るようにウィスラムをその腕に抱えた。しかしすぐに離れ、腰を地に落とした。
 炎に焼けた手の平を見て、彼女は一層顔を青くする。
 それから三日が経った。

ウィスラム「ピピギュピギギ」
ミドリ「そうだなぁ」
ウィスラム「ピピピピギピピギギギギギ」
ミドリ「最近さあ、お前の言葉もだんだん分からなくなってきたんだ」
ウィスラム「ッ」
ミドリ「終わったんだよ。俺も、お前も、俺たちは」
ウィスラム「ギギギギギギギギピピ」
ミドリ「ごめんな、ウィスラム。これで、お別れだ」
ウィスラム「〈ギギギギピ〉……」
ミドリ「その名前で呼ばれるのも、もうおしまいだ。おれは、人として生きていくよ」
ウィスラム「ギギギ、ギギギュギギピピ!」
ミドリ「さよなら、だ」

 彼女はジャングルへと去って行った。そこで見かけた人間たちの集落へ向かうのだという。
 ウィスラムは一人になった。共に過ごしてきた同族の彼女は、人になってしまった。

 ウィスラムは旅に出た。世界を見てまわった。ときには草原に、ときには山あいの村に。
 どこかへ赴くたびに、人と魔物が争っている光景を見た。メテオを奪われたこともあった。
 戦場を見るたびに、彼はその火を弱めるのだった。

 いつしかジャングル付近に戻ってきていた。しかしジャングルに踏み入る勇気はなかった。
 ジャングル東の飛翔の地。そこには傷を負った魔物たちが集っていた。争う意思のない者たちだった。
 ウィスラムはここに暮らすことを決めた。

 しかし、あの人間たちはここにも現れる。

ミドリ「あ!」
ブロント「どうしたミドリ」
ミドリ「あのウィスプは」

 そして、最悪の形で再会のときは訪れた。


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