「ピギギ!?」
「なんだと! すぐに戦闘体勢だ!」
「ギギッ! ピギギピギ!」
「えっどういう意味?」
「ピ、〈ギギギギピ〉ギッピピギ?」
「当たり前じゃねえか」
「ピギッ、ピギギギ、ギッギギピピギッピピ!」
「お前なに言ってるんだよそんなつまらん冗談……マジだ……」
「…………」
「どうしよう……」
「ギギュピギギ?」
「んなの知るかよ。俺が一番知りてえよ」
「〈ギギギギピ〉」
「どうしよう。ウィスラムぅ、俺どうすればいいんだよぉ!」
彼女は縋るようにウィスラムをその腕に抱えた。しかしすぐに離れ、腰を地に落とした。
炎に焼けた手の平を見て、彼女は一層顔を青くする。
それから三日が経った。
「ピピギュピギギ」
「そうだなぁ」
「ピピピピギピピギギギギギ」
「最近さあ、お前の言葉もだんだん分からなくなってきたんだ」
「ッ」
「終わったんだよ。俺も、お前も、俺たちは」
「ギギギギギギギギピピ」
「ごめんな、ウィスラム。これで、お別れだ」
「〈ギギギギピ〉……」
「その名前で呼ばれるのも、もうおしまいだ。おれは、人として生きていくよ」
「ギギギ、ギギギュギギピピ!」
「さよなら、だ」
彼女はジャングルへと去って行った。そこで見かけた人間たちの集落へ向かうのだという。
ウィスラムは一人になった。共に過ごしてきた同族の彼女は、人になってしまった。
ウィスラムは旅に出た。世界を見てまわった。ときには草原に、ときには山あいの村に。
どこかへ赴くたびに、人と魔物が争っている光景を見た。メテオを奪われたこともあった。
戦場を見るたびに、彼はその火を弱めるのだった。
いつしかジャングル付近に戻ってきていた。しかしジャングルに踏み入る勇気はなかった。
ジャングル東の飛翔の地。そこには傷を負った魔物たちが集っていた。争う意思のない者たちだった。
ウィスラムはここに暮らすことを決めた。
しかし、あの人間たちはここにも現れる。
「あ!」
「どうしたミドリ」
「あのウィスプは」
そして、最悪の形で再会のときは訪れた。