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腐ったところてんの話


 冷蔵庫の整理をしようという話になった。マゼンダが珍しく、料理当番であるテミとリンを手伝おうとしたのだが、そのときに開けた冷蔵庫が、あまりにひどい有様だったのだ。
「まったくなによこれ。二人とも掃除さぼりすぎー」
 掃除当番のマゼンダに言われるとどうにも言い返せない。冷蔵庫以外は綺麗に拭かれ清潔を保っているというのに、冷蔵庫のなかに限っては、いつのものかも分からない食材が、隙間なく敷き詰められていたのだ。「いつか使えるかなーと思って、えへへ」物が捨てられないのはともあれその台詞は食材に対して言うことではない。テミも「だって、もったいないんですもん」と頬を膨らませるばかりで、マゼンダの怒りに疑問を示している。
 そんな外野は視界から捨てて、マゼンダは単身冷蔵庫の清掃に取り掛かった。消費期限切れの納豆やわさび、明らかに中身は絞りつくされているのに冷蔵庫に入っているケチャップの入れ物、海を出てから早ンか月になるだろう魚の切り身、残した肉、黒くなったバナナ(なぜ冷蔵庫に入っているの……)、それに、腐ったところてん。ところてんって腐るんだ。マゼンダは心底呆れたように溜息をついた。
 魔王討伐を達成し、女で集まって街で三人暮らし(ミドリは里へ帰った)。それから今までの間、冷蔵庫の惨状を知らずにいたのだから自分がいかに料理をしていなかったかを痛感させられる。マゼンダは自身へも溜息をつく。肩をすくめると腐ったところてんがでっぷりとのろのろした動きで揺れた。
「まったく……」
 そこへ、例のごとく蘇った魔王が、女たちの家を攻めに来た。魔王討伐軍がおのおののんびりとした生活を送っているから、待ちきれなくなったのだろう。「ふはははは、我は何度でも蘇るぞぉぉ!」マゼンダは腐ったところてんを魔王に投げつけた。ところてんはスライムよりもねばねばとした粘液を出しながら、魔王を腐の領域に落とし込め、マゼンダたち三人と一緒に同人誌を作り出しましたとさ。おわり。


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