最終更新:2021.06.26
※数→アルファベット→五十音順(一部例外)。
※ネタバレ防止の配慮をしておりません。ご注意ください。

トップページ感想一覧タイトル一覧表記ルール

映画雑感一覧

007 オクトパシー

1983年日本公開。吹替。原題「Octopussy」
この時代にありふれていた、ぼくちんよちよちされたいんだもん系映画。しょうもないなぁとは思うが一部のアクションは良かった。序盤など特に良い。
テニスプレイヤーであるビジャイ・アムリトラジ演じたエージェント・ビジャイが本作随一の善良かつ有能なキャラで、テニスラケットで応戦しながらのトゥクトゥクカーアクションなんてとても良かったのだが、作中で死なせてしまったのが後味悪い。


10 クローバーフィールド・レーン

2016年日本公開。原題「10 Cloverfield Lane」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
意外と面白かった!
「意外と」というのは本編前半を見ての印象に反して終盤の展開がとても面白かったという意味と、「クローバーフィールド/HAKAISHA」の続編であるにも関わらず前作とかかわりがないという事前知識を得て見ていた印象に翻してきちんと続編になっていたという意味のふたつがある。
まず前者の「意外と」について。この映画は基本的にソリッドシチュエーション系映画として作られている。事故に遭った主人公は気づけば見知らぬ場所に監禁されており、そこがシェルターであり、外の世界は攻撃され危険だと説明される。その状況下での主人公の疑心暗鬼や脱出に備えたあれこれを描いているのだが、これがまずつまらなかった。謎の提示はあるもののその解明ははっきりとはしておらず(たとえばなぜハワードがなぜ写真の女性を娘と偽ったのか、あるいはなぜエメットがそう説明したのか)、謎解き要素は薄い。また、主人公の疑心暗鬼に観客が同調しハワードの行動が善意なのか悪意なのか、何度か印象を改めさせるように展開が交互しているが、実際のところ外の世界が危険だというのは事実であるのに対して、ハワード自身も独善的で危険な思想が見え隠れしていることが明らかになる。つまりは善意かつ悪意ある行動をとっていたのであり、「どっち?」と問う展開と噛み合わせが悪い。(それはそうと、このキャラ造形自体は悪くないと思う。)
後者の「意外と」について。本作は前作とのかかわりがほとんどない。怪獣の設定にも差がみられる。しかし前作と同じような展開を見せられるよりは、本作のようなまったく新しいアプローチで見せてくれたほうが新鮮でよいものだと終盤には思った。まあそれならそうともう少し設定の共通項があったほうがいいのではないかとは思うが。


15時17分、パリ行き

2018年日本公開。字幕。原題「The 15:17 to Paris」
事前情報なく観たので、実話を基にしていたことも、キャストに本人を起用したということも知らなかった。知らなかったので、ラスト、フランス前大統領と肩を組んで一緒に撮った映像を合成だと思ってどんな技術なんだと驚いていた。
面白かったです。人の人生に焦点を当てて、そこにフラッシュバックのように列車の出来事を挟む、映像的な面白さを充分に感じます。旅行のシーンは退屈でしたけど、事件の唐突さを説明(演出ではなく説明)するためには必要。


17歳

2014年日本公開。字幕。原題「Jeune et Jolie」
夫人が短い出演なのに存在感のある演技で良かった。
特にイザベルの頬を撫でるシーンが良い。


1917 命をかけた伝令

2020年日本公開。原題「1917」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)、2021年2月(字幕)
すごい!
「ロープ」のような疑似ワンカット映画。ただし「ロープ」はその時代の技術的に疑似ワンカットにするしかなかったのに対し、本作は意図的にワンカットではなく疑似ワンカットを手法として活用している。
ワンカット風に撮ることによって臨場感が増し、怖さが増している。ワンカットではなくワンカット"風"に撮ることによって、ワンカットの持つ効果をほとんど損ねることなく、広大な空間でのストーリー展開を可能にしている。塹壕から横穴に入って屋内へと舞台を移したり、昼間から夜に時間を変えたりと、ワンカットの物理的な制約をものともせず、ワンカットの効果を利用できている。素晴らしい。
音響もすごく良くて、劇場で見た際、銃声が本当に怖くてすごかった。前述の通りワンカット風に撮ることで空間への没入感を増幅し、音としてもリアルな臨場感を演出してくれるので、どこから銃弾がやってくるのかわからない、敵兵がどこに潜んでいるかわからない怖さがダイレクトに伝わってくる。
手法を活かした素晴らしい映画。面白かった!


2人のローマ教皇

2019年Netflix配信開始。字幕。原題「The Two Popes」
鑑賞年月: 2020年4月
とても面白かった。
前教皇であるベネディクト16世と、現教皇であるホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(フランシスコ)の話。枢機卿を辞職しようと、教皇であるラッツィンガー(ベネディクト16世)の元へと訪れ、繰り広げられる会話劇。
コミカルな場面とシリアスな展開との塩梅が心地よい。


20歳よ、もう一度

2015年日本公開。字幕。原題「重返20岁」
とても良かった。心に残る作品だったと思う。
主人公(若いほう)の歌声がなんといっても美しい。
孫が作曲したラストの曲でPOPになるのも良い。
老いるメカニズムもよい小道具として機能していた。
展開的には少し残るもの、未回収だと思う部分もあったが、エンドロールに入る直前のプロデューサーのカットが効果的。
それと「我」と「她」の使い分けが素敵。


26世紀青年

2008年DVDリリース(日本劇場未公開, 2006年製作)。字幕。原題「Idiocracy」
面白かった。清涼剤のようなコメディ映画。
人類の知能が極端に低下した未来をコメディタッチに描いているが、考察がしっかりしている。AIが機能しており、人間の雇用や資産を管理しているのが様々な描写から窺えた。バカな人間のバカさの描写もうまい。「茂みで……」の意味がわからず、直接的な表現をしてようやく伝わるところとか、良い。
チャップリンがナチスを率いていたことになっているのも笑う。それ映画やがな。
役者の演技が良くて、ちょうどよい感じにばかばかしく、またちょうどよい感じに真面目だったのでよかった。


28日後...

2003年日本公開。吹替。原題「28 Days Later」
なんだこの映画の天才。
話の面白さというよりも、演出、演技、音楽とカメラワークに自由な風が吹いていて、驚く。


28週後...

2008年日本公開。字幕。原題「28 Weeks Later」
ぼくの遺伝子じゃ抑えきれなかったょ……ということだろうか。あるいは無事脱出できたのか。どちらともいえるエンディングを採用する作品はよく見受けられはするが、この作品には合わなかったと思う。
でも基本的に、思っていたよりもずっと面白い映画だった。凶暴で走り回れるゾンビ、自分は好きですよ。普通に怖いしね。
面白さに大いに貢献しているのが、「28日後...」でも使われた本作のテーマソング(In The House-In A Heartbeat)。気分を盛り立てる天才だと思う。あの音楽は素晴らしいわ。
こどもたちの自分勝手な行動によって悲劇が引き起こされたと知っているにもかかわらず、彼らを責めることもなく、かつ彼らの遺伝子がウイルスに免疫がある可能性を考慮して献身的に保護するスカーレット少佐、かっこ良かった。ドイル軍曹もすんばらしいわ。


50回目のファースト・キス

2005年日本公開。字幕。原題「50 First Dates」
上質なラブコメ映画。事故の影響で“ゴールドフィールド症候群”(架空の名称)と呼ばれる、寝るとその日の記憶を失ってしまう症状に見舞われ、何度も同じ一日を過ごしているルーシー。ルーシーに不安なく毎日を過ごしてほしいと画策する家族や周辺の人物の苦労が、如実に描かれている。そしてその繰り返しを打開しようと立ち上がるのが、主人公のヘンリーだ。ルーシーに対する試行錯誤はコメディとしてよく練られていて、同時にヘンリーの成長の描かれる材料となっているので、見ていてすっと通るものがある。
父親と弟が、ルーシーの変化を通して徐々にヘンリーを頼っていくのも、信頼関係の形成過程が丁寧で良かったと思った。
あとエンドロールが波を打っている。面白い。


96時間

2009年日本公開。字幕。原題「Taken」
リーアム・ニーソンええなあ(嘆息)。これはハマる。格好良い。好き。
キムのあまりもの恵まれている娘感が、物語が終わってもなお、空港を走っていく演技に残っていて、そこがなんとなく切ない。それでも父は娘を守るもので、いやほんと、格好良すぎ。


96時間/リベンジ

2013年日本公開。字幕。原題「Taken 2」
親と親の対話。前作で主人公が殺した犯人の、親が復讐を企てて起こった事件。息子が誘拐を働いていたことは認めつつも、子を失った怒りをぶつけることに理由など知るかと啖呵を切る場面には、共感してしまう部分もある。
構造面は前作よりも丁寧で面白かったが、肝心のアクションはパワーダウン。車が衝突し中から逃げる場面や、ラストの疑似リングでの格闘など、少し無理があるシーンが見られて、リーアム・ニーソン映画にしてはあまり満足のいくアクションではなかった。
それにしても娘キム、頑張りすぎである。娘の活躍がすごかった。圧倒的成長である。素晴らしい。その成長度合いが、すべてが片付いた後のラストシーンで見せられていて、それも前作との良い対比になっていたと思う。


96時間/レクイエム

2015年日本公開。字幕。原題「Taken 3」
116分のロングバージョンを視聴。非常に面白かった。
この三部作でやってきたアクションの集大成。


1987、ある闘いの真実

2018年日本公開。字幕。原題「1987」
面白いなぁ。
「タクシー運転手 約束は海を越えて」を既に見ていたため、光州事件については把握していた状態で見れたのもよかった。映画で歴史を学んでもって感じではあるけども、なるほどなぁとなる。


2001年宇宙の旅

1968年日本公開。字幕。原題「2001: A Space Odyssey」
モノリスがヒトザルに知能をもたらした最初のエピソードが、非常に面白かった。やはりあの舞台に現れた直方体の異様な存在感は絵になるものです。知的生命体の姿を出さない、その道具だけを見せ、そしてそれらがどんな存在なのかという説明を完全に省く。そうすることでコズミックホラー的な実感が実体験として出てくるような、そんな映画でした。序盤の3分近い暗闇といい、休憩といい、エンドロール後の暗闇といい、「映像」であることを充分すぎるほどに意識して作られた、名作だと思います。
まあ、月のエピソードと木製探査のエピソードをもう少し融合できなかったのか、とか、こんなにセンスオブワンダー溢れる設定なのに結局AIの反乱がプロットの大半を占めているのはもったいないんじゃないか、とかは考えてしまうわけですが、時代に爪痕を残す名作であることに、違いはありませんね。


A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー

2018年日本公開。字幕。原題「A Ghost Story」
最高でした。泣きそう。
最初のほうは攻めたカメラワーク(遠い位置からの定点視線)で引き込まれ、Mが去ってからは話で引き込まれました。
食べているシーンには、とてもつらくなる。
そうだよなぁ幽霊は生きている人間とは別の時間の進み方をしてもおかしくないし、むしろ自然だよなぁわかるわかる、と強く頷きながらも、さらにその先を見せつけられたすごさ。


AVP2 エイリアンズVS.プレデター

2007年日本公開。字幕。原題「Aliens vs. Predator: Requiem」
え、画質どうしたん?
それはともかく、今回は珍しく、人間には立つ瀬がない。掃除屋プレデター(とても強い)と、プレデターの形質を取り込んだエイリアン(とても強い)との戦い。次元の異なる戦いに巻き込まれた人間たちは、倒すために戦うのではなく、逃げるために戦う。だから最後までプレデターにもプレデリアンにも傷をつけることさえできず、人間たちは終始逃げていくばかりだ。
これは良いな、と思った。他のプレデターを凌駕する掃除屋の強さにとても興奮したし、プレデリアンの効率的な卵の植え付けも進化してるなと思った。人間は彼らに消費されるだけで戦いには参加できないし、道を阻むエイリアンをどうにか倒しながら逃げていくしかできない。核爆弾はもはや諦めの境地だ。
あとジェシーの死に方が好き。


BLEACH

2018年公開。
鑑賞年月: 2020年5月
面白かった!
2018年にこれほどの邦画を作れる体力があったんだ、となった。すごいじゃん。最近の邦画でこんなにいかにも予算バンバン使っていると思える映像が楽しめるとは思わなかった。素晴らしかった。
プロット自体も、もともと原作が面白いのもあり、かつ2時間にうまくまとめられているのもあり、面白かった。なんといってもルキアと一護のやり取りが可愛らしい。
ルキアの処刑がなあなあになってしまっているのは、続編を意識してのことだろう。それを別にしても、話としてのまとまりはある。
せりふ回しの説明臭さや、アクションシーンの手数の少なさ、BGMを使うタイミングのいまいちノレないところなど、細かな微妙な部分が重なる面はあったが、全体的にとても良し。
ルキアが一護に別れを告げるシーンも、よく撮れていたと思う。


CUBE

1998年日本公開。原題「Cube」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
2020年に、10年以上ぶりに見た。
めちゃくちゃドキドキした。大名作。面白かった。素晴らしかった。
初めは頼りになった警官が強迫的な妄言に囚われた殺人鬼になり、初めは頼りにならなかったワースが最後には好感度上がりに上がっていたり。極限状態でのキャラクターの言動がとても自然に作られていて、非常に楽しいことこの上ない。
ずっと昔に、こういうソリッドシチュエーション系のストーリーテリングで、回想を入れずに作り上げるのはたいへんな技量がいるという話を聞いたことがあって、それをまさに体言しているような映画だなとも思った。シチュエーション内で完結している。すごい。
レブン、素因数分解くらいはできるやろ、今までそれよりずっと難しい計算しとったやんという点でひっかかる。天文学的数字でもないし。また因数の種類が1でないときに進んでいるので、つまり素数が含まれていると罠があるという最初の仮説に戻っており、具体的にどういう違いがあったんだろうなという感じはある。まあ2つから4つまでがセーフで5つはアウトとかだったのかもしれないが。


CURE

1997年公開。
鑑賞年月: 2021年6月
すごいものを見た。傑作。ひえー。
何度も重ね塗りするように、敷居(部屋と部屋だったり、部屋と廊下だったり)越しのショットを入れているのが印象的。カメラは何度も、敷居の奥を覗き、終盤には飛び越えもする。間宮の事件をきっかけに、人の心に静かに踏み込んでいく。
間宮(萩原聖人)の受け答えの、真面目に対応したほうがどんどんイラついてしまうようなとぼけ方もすごく良かったし、高部の妻の症状と重ね合わせることで、主人公の内面もどんどん消耗させていける。


Death Note/デスノート

2017年Netflix独占配信開始。字幕。原題「Death Note」
鑑賞年月: 2020年1月
基本的に面白かった。
キャラ設定自体は捻っているが、ストーリー展開自体はほとんど原作に忠実というか、もうちょっと我を出してもいいんじゃない?という感じ。二人組の「キラ」を描き、その仲間割れを中心に描いているのは好印象。だがそれにしては話が散漫で、それでもただ元の話が面白いからこれも面白くなっている感じ。
終わり方はなんか良かった。人間って面白いよな。
たぶんどの映画にもいえることかもしれないけど、外国語母語話者の日本語には字幕をつけてほしい。ぶっちゃけ日本語母語話者の日本語でも思うけど、日本語なら聞き取れるよね?と片言の日本語を字幕なしで話されるとちょっと、混乱する。


DESTINY 鎌倉ものがたり

2017年公開。
節操なくいろいろ出たのが良かったなって思います。
ひとつひとつのエピソードの締め方が良い。


DOOM

2006年日本公開。吹替。原題「Doom」
ええやん。
原作ゲームは他の人がプレイしているのをちらっと見たことがある程度だが、ぽさが出ていてとても良かった。特に後半の一人称視点のガンアクションは見ものであるし、最後の二人の戦闘シーンが好き。


D-WARS ディー・ウォーズ

2008年日本公開。字幕。原題「D-War」
“クソ映画”ってある意味では褒め言葉なんですよ。わざわざ“クソ映画”と言う場合、頭に“愛すべき”とかいったものが省略されていることが多い。少なくともこのページではそうです。
その意味でこの映画は、クソ映画と呼ぶのさえおこがましい。
ヘビと敵側の舐めプと、無駄CGと、小学生が書いたような脚本と、とってつけたようなキスシーンに代表される人物造形と。愛すべき点さえあればこれらのクソ要素はそれでも楽しめる要素になりうるのですが、この映画はただイライラさせるばかり。
上質な映画が観たいという側面、クソ映画が観たいという側面どちらにしても、見て後悔する映画です。


E.T.

1982年日本公開。原題「E.T. The Extra-Terrestrial」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
[オリジナル版]
2020年に初めて視聴。
さすがに古く感じられ、つまらなかった。しかしそれはこの作品がつまらないからというわけではなく、この作品に影響を受けた様々な作品を既に大量に浴びてしまっているからだろう。そういう資料性の観点から見る分には良いだろうが、作品として楽しむには、さすがにもう遅い。そう言い切ってしまえるだけの名作である。


GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

1995年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
久々に見たが、やはり面白かった。
昔見たときはなぜ素子がやたら裸になるのか理解できていなかったが、光学迷彩が人工の皮膚に施されていると説明されていたことに気づく。
あとバトーがとても好き。可愛い。


gifted/ギフテッド

2017年日本公開。字幕。原題「Gifted」
とても良かった。
類まれな才能を持つ7歳の天才、メアリー。彼女の才能を最大限に活かすため手元に引き取りレベルの高い教育を受けさせたい祖母イヴリンと、姉(メアリーの母親)の意思を継ぎメアリーに普通の生活を送らせたい叔父フランク。メアリーの養育権をめぐって二人は争うことになる。
イヴリンの、類まれな才能を持つ子をその才能を活かすために抑圧するのも、結婚し数学から引退させられてしまった自己と、数学の天才である娘・孫を同一視してしまうのも歪んでいる言動だとは思うが、彼女の言動にも芯の通った説得力があるのが苦しい。裁判所での質疑応答の場面、イヴリン(リンゼイ・ダンカン)の語りの迫力には圧倒された。
フランクの、メアリーを他者として捉え、尊重した態度には本当に安心する。時には失敗することもあるが、その失敗を言語化し、素直に謝ることができる。
才能ではなく人を愛する。当然のことだが、それを区別するのは容易なことではない。しかしフランクはそれを実践してみせて、(少々ご都合的ではあれど)あのラストを迎えた、というのは、すっきりとした終わり方だった。ただそれにも増してもやもやとしたものが残る、パンチの利いた映画だ。


GODZILLA

1998年日本公開。原題「Godzilla」
鑑賞年月: 2020年5月(字幕)
ローランド・エメリッヒ監督版ゴジラ。
核実験による悲劇と、それを暴くメディアという構図を取っており、そういう点ではきちんとゴジラ映画している。でもたまにゴジラの鳴き声を聞いてあっそういればこれゴジラだった、と思い出すくらいにはゴジラっぽさは感じられないので、まあ、そういうものとして見ておけば楽しめると思う。自分は楽しかった。


GODZILLA ゴジラ

2014年日本公開。原題「Godzilla」
鑑賞年月: 2019年6月(字幕)
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」がとてつもなく素晴らしかったので、前作であるこれも改めて視聴。当初見ていたときよりは面白く見れた気がする。バトルの展開のさせ方はやはりしょうもないというか流動性がないが、口内にビームを注ぎ込むシーンはやはり素晴らしい。


GODZILLA 怪獣惑星

2017年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
面白かった!
こういうどんでん返し大好き。それにアニメーションも非常に良かった。
キャラの台詞がいわゆる文章的で、雰囲気作りの意味でも分かりやすさの意味でもあまり良い手ではなかったかなという印象。
丹沢が舞台なのもちょっと好き。日本映画でゴジラだから舞台も日本、ていう分かりやすさ、嫌いじゃない。台詞回しもこれくらいはっきりやっておくれ。


GODZILLA 決戦機動増殖都市

2018年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
めっちゃおもろいやん! いいぞいいぞ! 楽しいぞ!
前作でも感じた絵面の良さがパワーアップしている。CGアニメーションによる高い彩度が見ていて楽しいし、メカゴジラシティという設定もとても面白かった。設定厨として育った身なのでその良さはすごくわかるぞ。なにも、四肢のある巨体が動くだけが怪獣ではない。それは数々の先行作品が証明している。
そしてビルサルドの設定も素晴らしい。前作では、地球人のほかに異星人が2種族いるのねくらいにしか把握できていなかったが、ぼんやりしていたその種族像がはっきりと浮き彫りにされた。地球人類とはまったく異なる思想が、この大事な局面で露わになる、非常においしい展開だった。
それとモスラ映画恒例の双子姉妹も登場して、それだけで楽しい。次作の活躍も楽しみだ。
ユウコの台詞で、「まるで捕鯨用の銛みたい」というのがあったが、ここで没入感を削がれる。「地球の思い出がない」と話すユウコが、海でしか使うことのできない銛を例に出すのはおかしいだろう。鯨のことは図鑑か何かで知っていたとしても、銛の中でも特に捕鯨用と形容するあたりには、鯨の大きさを体感的にわかっているような口ぶりになってしまう。それにそもそも例えとしてもうまいとは思えない。微妙な例えでありながら、キャラ造形としては支障になっている、どうしようもない瑕疵だと思った。
それはそれとして、ユウコの死を示す描写として、溶けたナノメタルが目元から零れ落ちるのは、非常にオシャレで良かった。もう体内の上のほうまでナノメタルに侵食されてしまった事実を示しながらも、あたかも涙のように演出し、しかし涙とは似ても似つかないドロっとした液体の流れを見せる。素晴らしいアニメーションだ。


GODZILLA 星を喰う者

2018年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
は? なんでユウコ生きとんねん。って最初はなったけど、ラストのあのエピソードがしたかったのならそれもありだなと納得した。
納得したけど、好きではないな、という感想。単純にNot for me. すごく楽しかったけど、すごくつまらなかった。
まず最後の別れの言葉を伝えたのが、マイナではなくミアナだった点に、なぜ?となる。「人間性」の象徴的存在としてハルオがいるのなら、子を授かり(おそらくフツナの文化においても)妻となったマイナにこそ愛着があるはずで、けれど別れの際のその感情面の描写を省いたところに、制作側の怠慢を感じる。たとえば愛しているからこそ別れを告げられず、彼女と双子であるミアナは近しい存在でありつつも他人であるという距離感があるため、素直に自分のやろうとしていることを伝えられたのだとしたら、そう示せるだけの言動を描いてほしい。本当に些細な描写で充分だから、そういう小さなエッセンスがあるかないかだけで、余韻はまったく異なったものになるはずだ。それほどにキャラクターへの没入深度は大事だろう、と思うが、本作はそこが不充分に感じられた。
キングギドラの描き方は非常に良かった。こちらからは介入できないがあちらからは介入できる、という要素として、「虚数?」という台詞を入れたのがわかりやすくて良かった。モスラの描き方も良かった。生まれずに動かしている。よく考えたものだ。


JSA

2001年日本公開。原題「공동경비구역 JSA」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
真実味の描写に力を入れるあまり、「謎」の回収が雑になってやしないか、という印象。
銃弾の数の謎が、ソフィー少佐に勘付かせる材料とはなっていても、納得のある解答は用意されていないこと(さらっとラジカセと一緒に捨てたとだけ言及されている)など特に。
しかしとても味の出る映画だった。タバコの煙を吐きながら口笛を吹くの、いいよね。


K-19

2002年日本公開。字幕。原題「K-19: The Widowmaker」
ソ連の潜水艦K-19(デッキに大きく「294」)の実話を元にした映画。
クソ上司が改心したと思ったらそのさらに上(国家)がやっぱりクソだったという話。ハリソン・フォード演じるボストリコフがそのクソ上司に該当するのですが、人間ドラマとして彼の成長にはグッとくるものがありました。しかし現実問題、クルーを危険に晒した事実は揺るぎない。
対してリーアム・ニーソン演じるポレーニンの聖人ぶりったらもう! “組織”を守るためにクソ上司をも守り切ったというのもすごい。
アメリカで制作された映画だからそりゃそうなのですが、ソ連を舞台にした映画なのに台詞がすべて英語であるのは、最初違和感が強かったです。なのに文字はキリル文字で。別に作品としてはそういうのも普通なのに。なにか不思議。
献杯。


KCIA 南山の部長たち

2021年日本公開。原題「남산의 부장들」
鑑賞年月: 2021年2月(原語音声・韓国語字幕)
カメラや照明効果については詳しくないが、本作のそれらがあまりに単調でチープに感じ終始気になった。
韓国のこの時代の歴史について事前知識を持ちあわせていないため、どの程度が創作なのかを判断するのは難しいが(まあほとんど創作だろうという目線でいたほうが無難だろう)、それは別として他国の歴史を学べるという意味で興味深い映画だったように思う。その点で、映画の冒頭できちんと出典を提示したのが好印象。
あと血にすべって転ぶシーンが好きだった。


KUBO/クボ 二本の弦の秘密

2017年日本公開。字幕/吹替。原題「Kubo and the Two Strings」
100分という短い中に、大長編ファンタジーを過不足なく納めている快作。折り紙や三味線、灯篭流しといった和風小道具が綺麗に利いているのも素晴らしい。三味線を弾くと折り紙が動き出すのですが、これがね、見ててすごく楽しい。序盤のクボの語りから引き込まれました。
ラストのあれはなんというか、信仰の向きが逆なんだなって思います。聖書的受肉み。「物語」を信じた者が救われた状態にあるというのも、肉体から解放された存在が肉体を得るのも、逆説的な意味で聖書的。色眼鏡かもしれませんが、この聖書的な面と、物語の和風な面が同居しているのが面白かったです。意外とないと思いますよこういうの。
安部公房みもあった。シュルレアリスムではなく、安部公房み。ひとえにサルと虫のせい。
あとやはりなんといっても、映像がすごかったです。ストップモーションなのに動く動く動く。そのうえでストップモーション特有のがたっとした動きも残っているので、その度に「あ!今観ているのはストップモーションだ!(今更)」と気付きを得られて、とても美味しい。
時間が許せば吹替版も観たかった……。雪のところどう訳しているのか気になりますね。
[追記]
後にDVDで吹替版も観ました。上述の雪のところ(sから始まる単語を連想させていくところ)、「空から降りてくるもの」という扱いにしててうまい訳だなぁとなりました。まあ字幕版のサ行という訳も、その直後のサギの群れにまでかけられて、ラストシーンと対応が効いてきますから、それぞれ別でうまいところがあるのですが。
それと吹替版のエンディングテーマ良いですね! 吉田兄弟による「While My Guitar Gently Weeps」、すごくて観た後すぐ買っちゃった。


Love Letter

1995年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
オールタイムベスト級の傑作。めちゃくちゃ面白かったし、すごく胸を突いて、泣きそうになった。
主演二役を演じた中山美穂がすごすぎるし、そのほかの俳優もすごく自然だった。一人二役という大技を使っているにも関わらず、話に没入させる、その手腕の見事さには感服するほかない。
特に山小屋で故人の昔話を3人でするところ、ものすごくじんとなって、素晴らしい演技だった。
「お元気ですか。私は元気です」というあの台詞も、手紙の受け取り手が別人であることをようやく認めて、今度こそ「本人」に向けて伝えようとする思いが何重にも籠っていて、素晴らしい作り。


Mank/マンク

2020年Netflix配信開始。原題「Mank」
鑑賞年月: 2021年3月(字幕)
面白かった。
映画人であればあるほどこれは響く映画だろうな、と思う。自分はただの観客なので「面白かった」という感情で留まるが、一創作者としてはやはり、創作物がもたらす影響について考えこんでしまう。


MEG ザ・モンスター

2018年日本公開。字幕。原題「The Meg」
ステイサムがマジでメガロドンとタイマンしちゃう映画。ステイサム+サメ映画という発想と、それを実現せしめたことには手放しで称賛する。ラスト、生身でメガロドンと戦う姿は期待以上のステイサムである。
ただ、ストーリー的には、途中から冷めてしまった。脇役同士の人間ドラマや、暴れ切らない寸止めの演出が映画の大半を占めていて、話が盛り上がらない。こってりしたものを期待して見に行ったら、非常にあっさりした薄味のものを出された気分だった。


Milk

2019年製作。原題「Milk」
鑑賞年月: 2020年9月(英語字幕)
タイをロケーションにしたタイ語映画。
赤ん坊に母乳を与えるのさえ困難な貧困家庭にあって、主人公が働き先のホテルに泊まっている旅行客の粉ミルクを盗んでしまう話。
貧困がもたらす葛藤をとても丁寧に描いていて好印象だった。


MW-ムウ-

2009年公開。
手塚治虫の傑作漫画の実写映画版。原作が素晴らしいから、映画も楽しめた。人の死にっぷりが気持ちよい。


PiCNiC

1996年公開。
[完全版]
きっつい。
塀の上だけを歩き遠く遠くまで進んでいく。そんな小学生の頃に遊び描いたような光景を、悪意や残酷な現実と隣り合わせのまま映してみせた映画。映像によって作られた作品だからこそ成立することをやっている。BGMの使い方が素晴らしく、メルヘンな劇画が成立している。
あの高さの塀でも、頭から落ちたら死ぬんだよなぁ。首の音を出すシーンが痛々しすぎてウウッとなった。
ツムジの夢に出てくる担任教師もおそろしく怖い。
作中に出た拳銃の弾数を7発にしたのもささやかながらしっかりしている(はず)。
あと透明なランチを食べているシーン、好きすぎる。


PLANET OF THE APES/猿の惑星

2001年日本公開。字幕/吹替。原題「Planet of the Apes」
久々に見たが面白かった。名作。
この作品の続編を脳内で思い描いた思い出が強い(イマジナリー続編)。続編は実在するんです。みなさんの心の中に。


RAW 少女のめざめ

2018年日本公開。字幕。原題「Raw」
髪の毛のシーンと、指のシーンで、吐きそうになった。これ劇場の大きなスクリーンで観てたらやばかったな。
カニバリズム映画を、こういう方法で撮ることができたんだ!と新鮮だった。獣医学科生たちに伝統的に受け継がれる、体育会系的な強要と暴力の数々。その不条理な世界で生き抜くために、ベジタブルの少女は強要通りに肉を食べてしまい、肉の味に目覚めていく話。男性主権的なこの世の中で仕方なく、(特に女性が)その世界に迎合していくことと、その悲劇としてカニバリズムを設置したという発想が、素晴らしい。
だからこそラストの父親の台詞、「お前は解決法を見つけてほしい」に、奥行きが出る。遺伝的に受け継がれてしまうカニバリズムの本能と、伝統的に受け継がれてしまう社会の不条理な体質と。
また、主人公ジュスティーヌの心理描写がすごい。
ただ終盤の布団をめくるシーンが顕著だが、大袈裟なBGMで興覚めしてしまうところがある。


search/サーチ

2018年日本公開。字幕。原題「Searching」
全編端末画面が新鮮なのはもちろん、推理物としてストーリー仕立てもよくできていてよかった。


SING/シング

2017年日本公開。吹替。原題「Sing」
公募式のシステムは旧ムーン劇場とともに崩れ、本人が才能を無料で発信するという構図。発掘するのではなく発掘させる。インターネッツな時代に合っている。
(才能面について)努力する過程を省いて描かれているので、スマートな作りになっている。
ムーンを再起させたのがミーナの才能というのも良いところ。努力はわざわざ描かない。技量があるのはスタートライン。あとはどう発信するかである。
あと斎藤さんの吹替が浮いてなくて良かったです。


SUNNY 強い気持ち・強い愛

2018年公開。
リメイク物として見るならば、相当面白さを保った映画でした。原作映画のシームレスな演出は損なわれているんですが、逆に、原作で難点だったラストの唐突さを改善できています。作品本体の質や、総合的な面白さとしては半減もいいところでしたが、しかし純粋なストーリー面の面白さは損なわれていないというか、損なわずに華麗にジャパナイズできていて、素晴らしい。二番煎じに甘んじるのではなく、日本の90年代を舞台にするうえで、うまく話を再構成できている。看板を見るのが楽しかったですし、選曲も良かった。
シリアスな場面での演技の力強さも良かったです。
ただ、せっかく登場人物の名前を頭文字でSUNNYとできるようにしたのにそれに言及しなかったこと(どころかまったく別の理由付けで済ませたこと)と、裕子への遺言の「もう一言」の場違いさは、非常に残念でした。(その無理がある胸を得られたほど)あんたはもう恵まれているよ、というメッセージならば納得できるのですが、あのタイミングでそこだけ言うのはないやろと。ちょ、性格……ってなりました。


TAG タグ

2018年配信開始(日本劇場未公開)。2018年製作。原題「Tag」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
大人の本気の鬼ごっこという素晴らしいアイディア(実話)を基に作られた映画。アイディア自体が素晴らしいので、ある程度新鮮に楽しむことはできるが、かといって映画自体が面白かったかというと微妙なところかな、という印象。
はちゃめちゃ鬼ごっこという物理的な面白さよりも、大人になり仕事や家庭がある中で、かつ社会的常識を無視できない良識ある大人に育ったうえで、どれだけ子供の心を維持して遊び続けられるかという精神的な障壁をテーマにしており、コメディというよりもしみじみと感じ入る感動物といったほうが近いかといったところ。コメディと感動の配分がもう少しバランスよければコメディとしても楽しめたのだろうが、本作の場合はコメディの割合が(事前の触れ込みで感じる想定よりも)低く、コメディとして楽しみにくい印象。
かといってつまらない映画というわけではなく、人情物としては良質な締めくくりだったと思う。最後の病院での鬼ごっこはスローモーションも活用し、仲間も増やしでエモーショナルで良かった。(仲間外れのルーもうやむやなまま仲間に入れてやってもよかったのではとは思うが。)
でも個人的にはもうちょっと笑いが欲しかったな。下手な下ネタばっかりやん。


TAU/タウ

2018年Netflix配信開始。原題「Tau」
鑑賞年月: 2020年6月(字幕)
AI周りの演出が微妙。
権限が軽すぎる。


TENET テネット

2020年日本公開。原題「Tenet」
鑑賞年月: 2020年11月(原語音声・外国語字幕)、2021年6月(字幕)
大好きなSF映画。こんなに夢の溢れる映像体験を、質の高い脚本で、なおかつ超火力のブロマンスとともに見せてくれる。ありがとうノーラン監督。ありがとうありがとう……。
個人的にクリストファー・ノーラン監督のSF映画というと、古典SF的にありふれていたアイディアを、質の高い脚本と映像表現による地力の高さで殴りつけてくる作風という印象でいたが、本作の場合はアイディア自体も新鮮だった。(時間の逆行を取り扱った先行作品があることは認めつつ、タイムトラベルやタイムリープと比べてこのアイディアは主流ではないという点で、古典SF的という評価はできないと思う。)
車のタイヤが進みながら風を巻き込んだり、鳥が逆向きに飛んだり、爆発の衝撃が戻ったり。時間の逆行を順行の立場で見ることによる、逆再生のような映像の数々が見ていて飽きない。個人的には"足りない、そういう気持ちいい映像をもっとくれ! 全然足りない!"ってなっていた。
というよりも、全体的に説明シーンの占める割合が多いように思う。この映画、「難しい」と感じる人と「難しくない(むしろわかりやすい)」と感じる人とで溝が深い印象があるが、それは説明の多さに起因しているのではないかと思う。「難しい」と感じる人は説明を理解しない/しようとしないし、「難しくない」と感じる人は厚塗りのような説明に過剰なわかりやすさを感じるだろうし。もっと説明を減らして上記のような映像的に楽しい時間逆行を見せていたほうが広く理解されやすいのでは、と、再鑑賞の際ちょっと思った。
ただ劇場で初鑑賞の際は、伏線の回収や新事実の開示などに驚きながら見るので、説明の多さはそこまで気にならなかったかな、という印象。「難しくない」と感じる人にとっては最初の1回が非常に面白くて、2回目以降は少々退屈、「難しい」と感じる人にとってはその逆という感じなのかもしれない。
とにかく初鑑賞の際はニール(ロバート・パティンソン)の秘めた愛情(友情)にめちゃくちゃ感動してラストを迎えていた。強火すぎる。個人的に、この映画の面白さの中で一番大きな割合を占めていたのがこのニールだった。時間の逆行というアイディアを活用することで、主人公にとっては過去の死が、ニールにとっては未来の死であり、そして主人公にとっては未来の出会いが、ニールにとっては過去の出会いになる。その中間地点でああやって「別れ」を告げるのはもうすっごくロマンを感じたし、感情を全部もってかれた。


The Artists -アーティスト-

2018年Amazonビデオ配信開始(劇場未公開、DVD未リリース)。
熱い超能力映画。絵面的にヒーロー映画していて、最後パーティ会場に乗り込む4人の構図がとても素晴らしい。
リフト(ロベルト3世)の無言なのに過剰に伝わる演技が良かったなと思う。
アクションシーンもスローモーションを駆使していて、ちょっと面白かった。
「アップデート、完了」好き。


THE GUILTY/ギルティ

2019年日本公開。2018年製作。原題「Den skyldige」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
すげえ。めちゃくちゃ面白かった。
「誰も助けてくれない」という悲痛なあの声を出したタイミングが素晴らしく、実際、警官である主人公は何度も「助け」を無視してしまった。 自転車で転んでしまったという通報も、追いかけていた犯人と近い位置からの電話であるとモニターに出ていたにも関わらずろくに話を聞かずに飲酒運転と決めてしまう傲慢さ。逼迫した状況の余裕のなさがもたらしさ横柄さである点はしょうがないが、普段からそう振る舞っていたこと、そして警察という「権力」を盾に、自身が犯したことを告白する場面の、あの緊迫感。
ラスト、自殺を食い止められたのかどうかも電話越しでは判断できない、限られた情報では限界があるのにその限界に目を向けず、全能であるかのように振る舞ってしまった罰。ほとんど主人公の顔しか映っていない作品であるにも関わらず、非常に物語に富んだ、素晴らしい作品だった。


THE WAVE/ザ・ウェイブ

2016年日本公開。字幕。原題「Bølgen」
天災の予測不能っぷりを丁寧に描いている。主人公の「嫌な予感」を否定した他の観測チームの判断もけっして怠慢によるものではなく、無闇に警報を出すと本当に大事なときに逃げてもらえなくなるという側面を考慮したうえだ。命綱を外したのはアホかと思うし、そのおかげで助かったヤコブが作品上なんの役割も得なかったのは残念だったが、しかしこの人間の無力さよ。
最初、ホテルに迎えに行かずに登ったにもかかわらずあのギリギリさだったことを鑑みるに、迎えに行っていたら全員助からなかっただろうこと。また、息子が呑気に遊んでおらず、バスに乗れていたとしても間に合わなかったことを考えると、人間の運の不条理さをひしひしと感じる。それこそ車でやり過ごして生き延びたのも、スーパーレアな幸運だったのだろうし、突き刺さった彼女の絵面がまさにそれを表している。
よくできた映画だったと思う。


The Witch/魔女

2018年日本公開。字幕。原題「마녀」
キレッキレのアクション。サイキックあり、銃あり格闘ありの充足さ。
後半の豹変も素晴らしいが、前半の普通の田舎少女っぽいエピソードもとても良かった。ゆで卵を一気に口に頬張るシーンとても好き。それらを見事に演じきったキム・ダミ、すごい。注目株。


UDON

2006年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
面白かった! とても胸に来るサクセスうどんストーリーだった。
うどんが食べたくなるし、それと同時に、ブームによる経済環境の破壊もとても真摯に描かれていた。
ところでなんで恭子さん途中から眼鏡テイクオフしたん? なんでなん? あたい納得できへん!
父親が亡くなった後の、風景を暗闇で区切りながら何ショットも入れたところがすごく工夫が凝らされていて良かった。
それと父親の幽霊が出るところ、あそこの違和感をまぎらわすために、恭子の執筆シーンに先にうどんマンの幻覚を出しているのも技巧的。


undo

1994年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
カメ好きの人は見ないほうがいいかも。カメの虐待シーンが話の肝として出てきます。
生殺与奪権を握り、握られ、がんじがらめに束縛された状態のみを「愛」と感じるのならば、なんとも悲しいこと。そのやるせなさをとても視覚的な方法で映画にまとめていて、絵面の面白い作品でした。
病院帰り、道路を歩いてるシーンの、空を走る電線のセットなんてすごかったし、ラストの緊縛の必死なむなしさ、そこまでやるかという徒労感が面白かった。山口智子の人形のような無気力な状態と、たまに訪れるぎろりと試すような目で由紀夫を見つめる目力。
あと矯正を終えた歯をキスして舐めるシーンが良かった。


VIDEOPHOBIA

2020年公開。
鑑賞年月: 2020年6月
面白かった。うひーってなった。
警察署のセカンドレイプとなるような無自覚な言動と、グループセラピーのシーンが「なんだこれ」ってなる。
「うちのも(同僚の警官も)そう言うてましたし」とかなんだその台詞、ってびっくりした。これをいかにも、なんでもないことのようにさらっと言ってのけているのがすごい演出。盗撮動画をネット上に公開された被害を受けた主人公に対して、あまりに無頓着に言い放つ様子に、すごくぞわぞわした。
グループセラピーも、(少なくとも主人公にとっては)到底救いにならず、むしろ圧迫を強めるのみ。理不尽な被害と理不尽な二次被害。救いがどこにもない。
そしてその恐怖、ビデオフォビアのあまり、あの決断をするという恐ろしさ。制作側がこの映画を「サイバーパンク」と称しているのも頷けるもので、現代社会においてインターネットはもはやサイバーパンクのように人生をまるごと侵食しているし、そして無理やりな方法ではあっても、顔も名前も変更可能な世界にいる。しかしその代償に失ったものはあまりにも大きい。その上いままで朴/青山がいた記録は消えない。


Wake Up, Girls! 七人のアイドル

2014年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
失礼ながら小一時間暇を潰せる映画はないかなとプライムビデオで探し、これを見つけ、スマホを片手にながら作業で観始めた。ところがどっこい、非常に引き込まれるストーリー展開で、途中からは画面に集中していた。
再生の物語。何らかの不条理な理由でアイドルを辞めた島田真夢、バンドを諦め小さな芸能事務所でうだつの上がらない仕事を続けている松田耕平、そして彼のもとに集まった6人のアイドル。6人の始動をメインに見せながら、7人目島田の再始動が話の根幹になっていて、とてもこなれた構成になっている。また、本作が「東北三部作」の一作であるように、被災地の復興というメタファーも無理なくしかし確実に伝わるように作られていて、その点でも胸を突いた。「都落ちアイドル」と噂された島田が、クラスメイトから「やっぱり男問題?」と根拠のない疑惑を冗談のような口調で向けられるシーンも、現実のあれやこれやを想起させる。
「処女?」「俺とWake Up, Girls!の明日はどっちだ!」のような、台詞自体に存在感はあるのに物語上とくに意味のない、大きな違和感になっている部分が多少見られた。見せパンを買う余裕もない中、それでも気にせずダンスを披露する演出は良かったが、何度も繰り返されるとせっかくの演出が下品になってしまうとも思った。個人によって求めるものは違うだろうが、アイドルアニメに男性向けのサービスシーンは求めていないし、そもそも食べ合わせが悪いだろうと思う。
また、エンドロールの入り方が素晴らしかった。社長が金を持って逃げ、制作費未払いのCDは山積みという、アイドル活動を続けるには致命的な問題はなにひとつ解決できていない状態だが、初ライブを実行することができた。まばらな観客、下着が見えることを下品に喜ぶ人もいる中で、それでも彼らは7人のアイドルとして一歩踏み出すことができた、というタイミングで映画が終わっており、本当に素晴らしい出来。正直なところエンドロール後の映像がなければもっと良かった(もちろんTVシリーズにつなげるため必要な場面ではあるが)。ライブで歌っている音楽がそのまま途切れることなくエンドロールの主題歌になる演出、ほんとうに気持ちが良いし、その楽曲「タチアガレ!」自体も非常に良い出来。なにせ神前暁さん作曲だし。辛矢凡さんの作詞も再生/復興を歌ったとても良い歌詞だった。大好きな曲。この感想を書きながらもう何度も何度も聴いている。
しかし松田のプロデューサー業としての技術不足が著しく、ほとんど「気持ち」でだけで動いている状態でもあるので、本当に気持ちのいいラストでありつつもその後の展開を想像すると暗い気持ちになる余韻がある。TVシリーズでどう続きを描いているかはまだ知らないが、そういう面でも非常に続きが気になる作品だった。小一時間ではとても味わいつくせない深み。


WE ARE LITTLE ZOMBIES

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
楽しかった!
これは楽しいぞ。「面白い」というより「楽しい」に近い映画。
同監督の前作「そうして私たちはプールに金魚を、」では演出が空回りしていて、作品のためになっておらず演出が演出単体の小品になっていた印象だったが、本作では個々の要素がうまく絡み合い、とてもまとまりが良かった。変化に富んだカメラワークも相変わらず楽しい。
あと音楽が素晴らしかった。BGMも劇中歌も。8bit音を基調にした曲が、ストーリーとも相まってとても楽しかった。
ただ、オチが。冒頭では鯨幕の黒い部分が背景だったのに対して、ラストでは白が背景に変わっていて、その見え方の違い、主人公の変化を示す演出としてはすごいと思ったし、とても面白かったが、その演出を見せるために映画全体を「なかったこと」にしてしまった感が強くて、悲しくなった。劇中でもメタ表現は使われていたが、メタであることと、作中作であることとは意外と乖離が激しい。同じ日に両親を失った3人との貴重な出会いを「虚構」に押し込め、主人公ひとりの脳内で完結させてしまうのは、救いがないと思う。
たとえ3人の友人という素敵な出会いがなかったとしても、ゲーム(虚構)が傍にいるよ、あなたの心を癒してあげるよという意図なのかもしれないが、むしろ虚構の限界を示しているようで、水をさされた気分だった。これほどシビアに虚構と現実を切り離すには、本編の内容はあまりに人に優しすぎた、と思う。こんなに優しくて楽しい素敵な映画で、「これは主人公の妄想です」と水を差すことによる余韻の変化に、想像が及ばなかったはずがないだろうが、それでもあえてこの演出を入れる必要があったのか。


X-メン

2000年日本公開。原題「X-Men」
鑑賞年月: 2021年4月(字幕)
久々に見たけど、古さゆえのつまらなさを感じてしまい、どちらかというと資料としての鑑賞となった。
体が吹き飛ばされる描写が何度も出てくるのだけど、そのどれもがのろっとしている。当時の技術的な限界があったのだろうが、ついつい気になってしまう。
かといって脚本的な面白さによって補完できているかというと、それも違う。キャラクターの掘り下げが不十分なまま、2時間弱にまとめるために展開をなぞっており、話はわかるし動機もわかるがどうしても没入感がそがれてしまう。映画的に楽しい構図もあまりなく。
でも昔は楽しく見た覚えがあるし、実際楽しかったはずだから、20年後の今に見てどうかと言うのはフェアじゃないなと思う。


アイアンマン

2008年日本公開。字幕/吹替。原題「Iron Man」
面白い。ガジェットとアクションに富んでいる。
ポッツいいよね。いい。(脳内会話)


アイアンマン2

2010年日本公開。字幕。原題「Iron Man 2」
イワン好き。やられ方はあっけなかったが。
有能で信念がある敵っていいよね。飼ってる鳥を見分けられるし。


アイアンマン3

2013年日本公開。字幕。原題「Iron Man 3」
「アベンジャーズ」での活躍を通して、トニー・スタークがパニック障害に悩まされるという素晴らしい内容。そりゃあんだけ無理してたら普通そうなるよね。トニー・スタークなんだかんだいって生身の人間なんだもの。
だから、スーツに頼らずに戦う彼の姿を中心的に描いた内容に、新鮮さを感じるとともに感情移入の幅の深さも感じて、とても良かった。
終わり方がどうも、しっかり話を締めようとして逆に締まらなくなっちゃっているきらいがあって、後味はあまり好きではないが、それはそれ。
大作「アベンジャーズ」の後に、こういうテイストの作品を持ってくるというシリーズ構成も素晴らしい。


アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

2018年日本公開。字幕。原題「I, Tonya」
面白かった!
複数人の証言を出し、「真実」を観客に委ねることで、多角的なドラマになっている。毒親の描き方がすごく良かったし(最後まで子からの許しの機会を与えなかったうえ、親自身も悪意と善意の区別がついていなさそうな演出になっている点)、夫ジェフを含めシェーンらバカな犯罪者のバカさ加減もとても丁寧に作り上げられていた。想像力の足りなさがすごく堅実に描かれている。
スケートのシーンもとても楽しかった。
マーゴット・ロビーとかいう天才。いいぞいいぞ。この調子でどんどん多様な役になり切ってほしい。


アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング

2018年日本公開。吹替。原題「I Feel Pretty」
とても良かった。展開のさせ方が非常に丁寧。


相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断

2017年公開。
疑問に思ったところすべて伏線として回収されていて、流石の出来。
暴発(意訳)が見たかった感はある。まあ未然に防ぐストーリーですから見せたらダメなんですけど(防いだとは言っていない)。


アイランド

2005年日本公開。字幕/吹替。原題「The Island」
眠くなるアクション。
終わり方は良かったが、最後の最後に船のシーンを入れたのが後味を悪くしている。


アイリッシュマン

2019年Netflix独占配信開始。字幕。原題「The Irishman」
面白かったが、ずっと見続けるのは苦痛を感じる映画だったから、休み休み見た。面白いが退屈で、退屈だが飽きることはまったくなかった。面白さと牽引力は混同されがちだが、たとえば一気読みしてしまう小説よりも時間をかけて読み進めた小説のほうが印象に残るような、そういうイメージを引き起こす映画作品。小説とは違い映画は従来観客のペースではなく映像の進行によって進まれるものであろうが、その点、本作のペースには独特なものを感じるし、Netflixの配信という形態と相性が良い。
というか長い。疲れた。3時間半程度の映画だが、体感もっと長かった。
しかしフランク・シーランの生涯を非常に丁寧に、かつ魅力的に描いており、その長さがもたらす内容量も充分に感じられる映画だった。
これが実話ベースってすごいな、と素直に思う。歴史書のようなマフィア映画。
指示の出し方、話法の婉曲さが極まってて、それだけで恐ろしさを感じる。
一部の登場人物に至っては、初登場シーンでいつどのように死ぬのかが表示されていたが、その演出がただのコメディ要素でなく、後々布石としても効いている。主要人物についてはほとんどその表示はなく、どのように死ぬのか、あるいは死なないのかは本編を見ないとわからないようになっているが、一部の人物で前述のその表記があるからこそ、よりわくわくさせられるような実感があった。


アウトブレイク

1995年日本公開。字幕。原題「Outbreak」
お国柄が出ますねやっぱり。カタルシスはだいぶ薄い。ヘリアクションは面白かった。
戸田臭強め。注意されたし。


緋イ沐浴

2018年公開。
よーわからん。


アクアマン

2019年日本公開。字幕。原題「Aquaman」
詰め込んだなぁ。
舞台が色とりどりで、深海に限らずサハラ砂漠や地球のコア(!)にまで移動する。
はじめ、悪党を見殺しにしたアーサーが、真の王として「皆」を救うヒーローとして目覚め、弟を生かすという良いまとまり。普通こういう復讐物といったらやられた人間だけで作劇を進めがちだが、この作品ではアーサー自身の反省を加え、アーサーとブラックマンタ両者の変化をストーリーに組み込めている。
海溝の怪物たちに追われ、海をもぐっていく遠景のカットが一番好きで、一番面白かった。逆さ向きの「スクワーム」みたいでハッとした。
ハーフであることへの周囲の異物感や、それでも世界はひとつなのだというテーマはわかりやすくはあるが、結論の出し方が飛躍していてあまりパッとはしないなという印象。掘り下げようと思えばいくらでも掘り下げられる題材であろうに、話を詰め込んでいるわりにあまりその辺には関心がないような作りだった。トライデンを手に入れるシーンも試練のようで試練でなく、ただ授けられていた能力を使っただけ(対話を獲得したという意味ではアリだが)。これだと下手な俺TUEEE系なのでは?(俺TUEEE系を否定しているのではなく、俺TUEEE系に頼っているという意味)と思った。
まあ好みの話ではあるが。
設定が凝っているのは良かったと思う。ブラックマンタが父親から譲られたナイフがアーサーに刺さったのを見るに、ブラックマンタの祖父はアトランティスと所縁がある人物だったのだろうとか、想像させられる。
あとネレウス王にちょっと笑った。


悪魔はいつもそこに

2020年Netflix配信開始。2020年製作。原題「The Devil All the Time」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
とても面白かった。
王道テイストのシンプルな映画という印象を持ったが、実際のところ話の筋は混みあっている。近代アメリカ文学の地の文のようなナレーションを付与し、込み入った時系列をナレーターという案内人が適切に誘導したことと、わかりやすいカットと編集がそのような印象をもたらしたのだろうと思う。演技も軒並み良かったし、とても良質な映画を見たなという満足感があった。
「神にはすべてお見通し」「神はすべて見ておられる」という作中のフレーズを捩ったようなこのタイトルも、映画を見ながら常にそのタイトルが脳裏にちらつくような感じで良いと思った。狂信による悲劇を複数描いており、特に2週間クローゼットに籠ったロイが「主の御言葉」によって起こした行動が非常に面白かった。まじか、ってなった。
主人公の父ウィラードが起こした行動も。やばいでしょ、となった。妻の死後犬を磔にしたことから察するに、ウィラードのトラウマとなっていた、ソロモン諸島で見た磔の兵士との遭遇がその狂信の遠因になっているのかもしれない、とも思えた。とするとラスト、アーヴィンが兵士の素質を自覚し、ベトナム戦争への参加を考慮に入れようと考えるのは、トラウマの再生産でしかない。
そうでなくともウィラードの言動はアーヴィンに強く引き継がれており、また個人だけでなくアメリカ社会全体としても太平洋戦争のトラウマはそのままベトナム戦争へと引き継がれている。
そういう、個を描くことでその全体を見せてくれるような作品。良質で王道、とても面白い映画だった。


アサシン 暗・殺・者

1993年日本公開。字幕/吹替。原題「The Assassin」
名作「ニキータ」のアメリカ版リメイク。「ニキータ」と比べてしまうと酷な評価をしてしまいがちだが、しかしこの作品単体も、(特にオリジナル要素を増やした後半については)面白い内容になっている。
ボブ(「ニキータ」でもボブ)のキャラ造形が原作と大いに異なり、その相違がこの映画のオリジナリティの柱になっている。今度トラブルを起こしたら銃殺されると脅しながらキスをしてくるのはしんどみの極み。その後も原作のボブとは同じはずの行動を、まったく真逆の行動原理で行うのがたいへん面白い。
掃除屋のキャラ造形については、原作よりもこちらのほうが、「情のなさ」に富んでいて面白かった。


アド・アストラ

2019年日本公開。原題「Ad Astra」
泣きそうになった。素晴らしかった。
親と子の、こういう話、小伏に効く。
月にあれだけの人口を置き、海賊を出し、バイオ実験で暴走するサルを出すという、古臭い設定をありのまま見せた作りも効果的。そのうえそのパイオニアである父の若い頃の写真は白黒写真だというのだから、この世界は、完全なるフィクションのようでいて、現実との比較をもたらすような導引を感じる。
古いものを使って新しいことをやる作品、本当に大好き。大好きな映画です。


アナイアレイション -全滅領域-

2018年Netflix独占配信開始。原題「Annihilation」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった! 良質なSFホラー。
シマー内部、幻想的な空間の描き方が非常に綺麗で、異質的なのに説得力があって、そそられた。
豊かな映像表現と、上質なBGM、いつ何が起こるかわからない緊張感と、静かなる破滅の心地よさ。


アナコンダ2

2005年日本公開。原題「Anacondas: The Hunt for the Blood Orchid」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
お腹いっぱいになる素晴らしいモンスターパニック映画。しっかりした構成により丁寧にシナリオが展開され、どのエピソードも絵面が濃いので、とにかくお腹いっぱいになる。とても面白かった。
オマキザルのコングが最高に癒し。観客との同調を引き寄せるようなリアクションショットを都度都度入れてくれる。好き。
アナコンダの恐ろしさをさほど損ねることなく大量に登場させ、そのうえ人間の欲を基点にハラハラした人間ドラマも仕上げている。主演のジョニー・メスナーもすごくいいよね。金には弱いけどめっちゃ真面目な顔をする。ジャングル侮らない。


アナと世界の終わり

2019年日本公開。原題「Anna and the Apocalypse」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
いやー面白かった。それに中毒性もある。
ゾンビとミュージカルの融合というワンアイディアによるだけなのに、その新鮮さが終始面白くて、飽きさせなかった。
ゾンビ映画としても、ミュージカル映画としても、プロットが王道的なのがまず良いのだろう。どちらも見たことのある進行、であるのにそれらが組み合わさるだけでこんなにも新しくなる、ということを、証明してみせている。そのためそのワンアイディアのほかに無駄な脚色は加えず、単に王道としての質を上げることに集中した作りになっており、見せたいものがはっきりしていて良かった。
ゾンビの事件が起こる前の平和な段階から、既にミュージカル描写を複数挟んでいるのも素晴らしい。まず普通の学園ミュージカルを見せて、その後に、ゾンビと融合させたミュージカルを見せることによって、本編1つだけでその新鮮さを味わえるようになっている。


アベンジャーズ

2012年日本公開。字幕。原題「Marvel's The Avengers」
ええやん!
ハルクの配役が変わった点や、そうでなくとも脚本上のキャラ造形が変わっているように思われる点などが原因で、最初の1時間ほどはずっと退屈だったが(こういうクロスオーバー作品で、キャラ造形に変更を入れるのは相当な悪手だと思う)、終盤にかけてそのキャラ造形が板についてきて、そして「いつも怒っている」というあの台詞で完全にええやん! となった。「インクレディブル・ハルク」の主人公にも適合する台詞でしたしね。
またロキが可愛くて素晴らしい。矢を掴んで誇らしげな顔をするところ、カワイイ!! 何にしても王家の弟として、養子としての葛藤を引きずり、兄に楯突こうとするキャラ造形が今作も素晴らしい。愛すべきロキ。
そしてバートン最高かよ~~! ジェレミー・レナーは元々好きな俳優ではあったが、こうも有能さあるふれるスマートな振る舞いを繰り返されると、そりゃ惚れ込むもんである。
フィル・コールソンの死には驚いた。彼がキャプテン・アメリカに話した「オールド・スタイルが必要」という言葉が、自身に死を活力として利用されることによって官長に引用されたのが、なんとも感慨深い。コールソンに限らず、エージェントたちの、素の人間なのにすごい境地まで経ってしている人間たちの凄さもよく出ていた。
概してキャラの良さに舵を切ってきた作品で、今後シリーズ物として展開していくうえでは非常に重要な基点となったことだろう一作。面白かった。
そういえば核弾頭をよそに打ち込むのも古き良き「オールドスタイル」ですね。


アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

2015年日本公開。字幕/吹替。原題「Avengers: Age of Ultron」
大味すぎてあまり楽しめなかったが、脅威の規模の大きさはなかなかのもの。大群相手のアクションもよく描けている。
また、双子のキャラ造形がとてもよい。


アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー

2018年日本公開。字幕。原題「Avengers: Infinity War」
サノス好き! 素晴らしいヴィランだ。今までろくな登場がなかったにも関わらず、その存在感の正当性、葛藤、すべてが滲み出ている。アベンジャーズやギャラクシーの物語であるよりもまず、サノスの成長譚であること。とても良かった。


アベンジャーズ/エンドゲーム

2019年日本公開。その他/字幕。原題「Avengers: Endgame」
めちゃんこ面白かった! そうきたか、となった。これまで観てきたMCU映画の本当の集大成になっているし、集約点になっている。当時の映像をふんだんに取り入れつつ話をひっ繰り回し、新しい未来を作り出していくこと。とても良かった。
キャプテンがソーの斧を使いだしたのには最初理解が追い付かなかったが、まあそこは成長の留まることを知らないヒーローの勢いで押し切れる部分なのだろう。
それとキャロル・ダンヴァース(キャプテン・マーベル)がさほど話の根幹に関わってこなかったのもとても良かった。サノスとの戦闘シーンはとても燃えたし、インフィニティストーンひとつの力で押されるというのもすごくいい。
そしてサノスの造形が現在も過去も素晴らしい。現在のサノスは勝ったのである、という事実自体は、今作のタイムトラベルの設定においては覆ることがない。サノスが勝ったという事実を事実としたままで、それを過去のものとするために、新しく「復活」した未来を得るために戦うことになる。なので現在にやってきた過去のサノスは、戦闘面においてはいくら強かろうと、現在のサノスほどの信念や慈悲深さといったものを感じさせず、ただ個という力を打ち付けてくる。自分の部下を犠牲にしてレーザー打たせようとしてくる。この造形の違いには熱くなった。
「事実を事実としたまま」にするための、5年後という舞台装置も素晴らしく機能している。ソーのお腹もそうであるし、特にトニー・スタークの娘の存在は本当に大きい。負けたという事実を認め、5年という時間を過ごした結果があの娘であるわけで、いまさらその事実を覆すことはできない。ただ過去に戻るだけであっても、5年経ってから戻るかそうでないかの違いは本当に大きい。
上記の設定を確信させたのが復活したスパイダーマンの台詞というのも、そこからの流れの良さを思うと素晴らしい。いいよねぇほんと。舞台設定を直接台詞で説明しても違和感のないキャラ造形が、既にピーター・パーカーには備わっていて、あの早口はそれを裏打ちする。
そして、アイアンマンに始まり、アイアンマンに終わるという、ここまでの一連の作品のまとまりの良さ!
アイアンマン、キャプテンアメリカ、そしておそらくソーも。彼らの「ヒーロー」としての人生は終わりを告げたわけで、そう考えるとほんとに、話が完結したんだなぁという感慨がある。正直なところつい最近まで自分は、MCU映画はなぜこうも話を続けようとしてくるのか、せっかくまとめた一本の映画になぜどれもエンドロール後にクリフハンガーをつけたがるのかと疑問に思っていたのだが、その疑問を完璧に解消してくれる、ひとつの大きな物語を作り上げてくれた。
あと個人的に、あの姿のキャプテン、ものすごくクリント・イーストウッドに見えてびっくりしたんですが、クリス・エヴァンス本人だったんですね。びっくり。
総じてとても面白かった。素晴らしい3n時間だった(nには観た回数を入れよう)。


アラモ

1960年日本公開。字幕。原題「The Alamo」
終盤の戦闘シーンは素晴らしい。砦であることの優位性がよく出ていたし、それでもなお戦力差で詰んでいく状況は面白かった。主要人物たちがあっさりと斃れていく描き方も上手い。
トラビス大佐のキャラクター造形がとても好き。
"You can't help being you like I can't help being me."いつか引用したい台詞。


アリー/ スター誕生

2018年日本公開。字幕。原題「A Star Is Born」
悪役が出ない。悪役が出ないのに、話はつらみに落ちていく、という話づくりの上手さ。
ジャクソン・メインが本当に紳士で、出会ったときすべての行動に同意を求めに来る安心感。
そして歌唱力のパワー! 素晴らしかった。


アリータ: バトル・エンジェル

2019年日本公開。原題「Alita: Battle Angel」
鑑賞年月: 2019年3月(その他)
[初見の感想]
面白かった。いいぞもっとやれの連続だった。
シュレッダー(というのだろうか?)に引きずられて粉々になって死んでいくシーン大好き! これに限らず、ガジェットに富んだサイボーグが様々な方法で壊れていく様を見るのが爽快。
みんな大好きナノマシン。
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
[2度目の感想]
初見時は海外の劇場で見たが、今度(2020年1月)はレンタルして日本語字幕で視聴。その分設定の把握やアリータの感情面への没入も比較的スムーズで、初見時よりも数倍面白かった。めちゃくちゃ面白かった。最高だった。アリータ……アリータ!
映像表現としても革命のような映画で、アリータがひとりの人間として、ほかの演者と同じように画面に収まっているのが不思議でたまらないのに、全然違和感にならない。ポジティブな不思議さが勝って、ネガティブな違和感が発生しない、素晴らしい技術だと思う。
アクションも初見時同様に非常に楽しく、スピーディでかつ体術(パンツァークンスト/機甲術)のディテールに長けた戦闘が豊富に見ることができる。スローモーションも要所要所での使い方が上手く、飽きさせないアクションだった。特に、地下でのグリュシカとの戦闘で、グラインドカッターを避けつつも、拳が届く前に体が切断されてしまうシーン、非常に楽しいスローモーションの使い方だったと思う。
ただ、初見時にはここの感想ではなくツイッターでのみ言及したことだが、
犬をころされて、顔色が変わったカットを入れたのに、後の場面でわざわざ「犬をころすやつは許さん」みたいな台詞を入れるような、過剰な説明になっているシーンがあまり好きではないんだけど、必要に応じて無駄に説明を厚塗りすることもあるのかなというのを考えている。
やはり2度目の視聴でも、この台詞は過剰であると映った。マクティーグの表情が雄弁に物語っているというのに、その後わざわざ言葉で表明するというのは、作劇的にも無駄であるし、キャラ造形としても意味があったようには思えない。
また、初見時には感想での言及を怠っていたようだが、ここで終わるのか、とも思って、その点でもとても良かった。てっきりこのままザレムに向かって、ラスボスも倒してしまうんじゃないか、時間配分は大丈夫なのかと心配していたが、あくまでアリータの記憶の回復と精神的前進(怒り)に焦点を置いた脚本になっていて、果断にもストーリー自体は中途の状態で終わらせた。素晴らしい采配だったと思う。ストーリーは中途でも、物語はしっかりとまとめられる。それを理解したうえで、続編が楽しみだ。


アントマン

2015年日本公開。吹替。原題「Ant-Man」
面白かった! アタッシュケースの中での戦闘が好き。


アントマン&ワスプ

2018年日本公開。字幕/吹替。原題「Ant-Man and the Wasp」
とても楽しい映画だった。前作「アントマン」で感じた、日常風景に混じり込む拡大/縮小の楽しさは今作でも大いに健在。また、量子世界の設定を掘り下げ、それに関連する敵も出すことで話もより深みを出せている。
ルイス(マイケル・ペーニャ)も一層良いキャラしている。
それと全体を見渡せるレイアウトのエンドロールがとても好き。


アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語

2018年日本公開。字幕。原題「Анна Каренина. История Вронского」
退屈な映画だった。
アンナの最後の台詞で見られる、愛と義務との対比には思わせられるところがあるが、本編を通してその対比が描かれているわけでもなく、登場人物全員の造形がまどろっこしくて仕方ない。
カメラの背景のぼかし方と、背景音の流し方には独特なものを感じて、そこは良かった。舞踏会のギャラリーをぼかしたり、鶏の動きをぼかしたり。中国語の歌を不協和音のように会話中に流したりとか、セルゲイと話しているアンナの台詞に重なってさりげなくノックの音を混ぜたところとか。


アンノウン

2011年日本公開。字幕。原題「Unknown」
リーアム・ニーソンええわあ。
終盤まで続く不穏感と、ラストのなるほどスッキリ感。
リーアム・ニーソンのアクションは見ていて癖になる。格好良いなぁ。
元秘密警察のおじいちゃんとヒロインがとても良いキャラしていた。


イージー・ライダー

1970年日本公開。原題「Easy Rider」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
映像が面白くて、片時も目を離してはいけない映画だった。
LSDでトリップしてるところの映像大好きすぎる。
それだけでなくて、終始シーンの切り替わりや、長回しと短いショットの区切りの使い分けなど、面白いなぁと感じる表現が多々あった。69年の映画表現に面白いなぁと感じるなんて、自分の勉強不足を感じ入るところだし、それでもこの時代の表現の風を感じさせてくれる。
こういうの好きだなぁ、大好き。
ワイアットのことをビリーが「キャプテン・アメリカ」と紹介するところも、終盤の「アメリカはどうしてこんな国になったんだ?」という趣旨の台詞に帰着する。南部に行くにつれて醜悪な差別環境が浮き彫りになっていき、そしてあのラストに行き着いてしまうところも、驚きとともに納得を与えてくれる。「神が不在ならば、発明する必要があったIf God did not exist, it would be necessary to invent him.」というヴォルテールからの引用のシーンで挟まれた、死の未来を回想のように挟んだあのカットも、非常に恣意的で面白い。ここの時系列の歪みがあることで、神性を見出させることができるし、突然の終わり方を決して投げやりには感じさせない。
とても良い映画だった。見て良かった。


イエスタデイ

2019年日本公開。原題「Yesterday」
非常に面白かった。
ビートルズの存在だけがすぽんと世界からなくなったわけではなくて、オアシスのように、ビートルズに強く影響を受けただろうものも一緒に消えている、ほどよいSF考証を思わせる作り。コカ・コーラとかラストのアレとかも関連があるんだろうな。にしてもイギリス大打撃やな、となった。
そしてそういう世界だからこそ、現代が舞台でもビートルズの曲は革新的な存在として世間を熱狂させていく。
そのうえで音楽にまったく関心のない身内の描写とか、すごくリアルで。主人公の苦悩がビートルズの曲や歌詞と相乗効果を起こして話が進んでいくので、すごく楽しい(特に「Help!」の使い方好き)。面白かった。
それと停電のシーン、すごく面白かった。世界中の電気が消えていく、絵作りが壮大。


家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

2018年公開。
主題歌のチャットモンチー目当てで観ました。
我慢しないと最後まで観ていられない映画でしたが、しかし終わり方はとても良かった。
投げる夫と打つ妻のシーン、子供ちえさんの「探せば絶対に見つかるよ」という重ねた台詞、抱き寄せるときの同場面3カットなど、演出過剰な部分が多く胸やけがひどかった。夫婦愛を哲学しようという気概は感じられますが、つどつど名台詞らしきものを出せばどうにかなるだろうという甘い考えが展開を占めていて、しんどい。優しい言葉は人を傷つけるというちえさんの考え自体は良くても、それを脚色するためか、ちえさんの愛情表現を「月が綺麗ですね」にしたのもまたしんどい。「愛している」という優しい言葉に対する拒絶心があるのか、単なる照れ隠しなのかはわからないですが、作り物然としすぎてやいませんか。
まあ恋愛結婚した夫に対して常に敬語でしたし、必要なタイミングで父親も倒れてくれますし、もとから作り物めいた作り物を作ろうという意識があったのかもしれませんね。幽霊のふりをしたときの榮倉奈々の、素人臭い演技をプロが敢えてしているような演技を映画全体でやっているというか。
ただ終わりにかけては良かったです。演出過剰ではあれど、死んだふりをしていた理由を観客には説明しなかったこと(夫が推測を述べるシーンで、台詞を謎雑音で掻き消したこと)には、製作者の良心が窺えます。説明して済むんじゃあ、悲惨すぎますからね。そして最後、夫の死んだふりを見て、ある理由で怒るちえさんで、映画として報われた気分になった。値札が最後の最後で、伏線として利いてくれた。この終わり方は手放しに良かったです。
冒頭でほぼ日Pさんの同タイトルの曲が流れたのもおってなりました。
あとクリーニング屋の店主(品川徹)が好き。台詞回しが良かったかも。
まあDVDとかで観たとしたら我慢せず途中で視聴をやめていたかもしれませんし、自分では止められない映画館で観たのは、結構正解だったかもなと思いました。


#生きている

2020年Netflix配信開始。原題「#살아있다」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
正統派ゾンビ映画。
エンドロールの最後に出てきた、「現実との類似点は偶然にすぎません」みたいな但し書きにちょっとフフってなった。ゾンビ映画でかつ、家にこもらないといけないというこの状況は、まさに2020年現在の状況を示している結果になっており、しかし制作者サイドとしてはその偶然の一致による評価は不本意なものなのだろう。
ただ、この終わり方はやはりパンデミック下の現状を励ますような印象はやはり強まる。あんだけの動きで一か所も噛まれていないなんてどうよという感じだし、プロットの変更を邪推してしまう。のと、通信網の整備のために働いた人たちの存在を思うと、現実でも映画でも、言及さえされないのだなーという印象も残り。
ユ・アインは「バーニング 劇場版」の主演のイメージが強かったので、本作の元気というか無敵感のある配信者の風貌を演じてくれたのが演技の幅を感じられて良かった。
プロット自体は、後半からの失速がすさまじい感じ。家のなかでどうしようもできずただ時間を過ごすところのプロットは面白いのに、いざ話を動かすと陳腐で平凡なものになる、というと不思議な感じ。それにしても地上に降りてからのアクションがどう考えても強引で、かつ見ていて楽しいような爽快さもなかったので、うーんという感じ。
あと、主人公が冷蔵庫のにおいに「うわっ」とした反応を見せてたのが「あれっ?」ってなった。死体のにおいが充満してるだろうに、それよりも放置して腐った食品のほうが「うわっ」になるのだろうか。まあ実際のところどうなのかはわからないが、死体がごろごろ転がっているマンションという舞台設定のわりに、清潔感が保たれていたし、数日ものを食べられない主人公もあまりやつれないので、ゾンビのメイク造形ばかりでなく生きている人間の変化ももう少し丁寧に見せてくれたらな、という印象だった。


犬ヶ島

2018年日本公開。字幕。原題「Isle of Dogs」
ノリが好き。


犬神家の一族

1976年公開。
鑑賞年月: 2021年5月
市川崑監督・石坂浩二主演作品。
さらっと見やすい作品だった。自分は金田一耕助シリーズについてはあまり詳しくないが、一緒に見た知人によると他の「犬神家の一族」映像化作品に比べて恐怖を誘う演出が抑えられているとのこと。
演出としてところどころ挟まれるモノクロトーンが面白かったかなという印象。


イノセンス

2004年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
CGアニメーションすご。


イレイザーヘッド

1977年製作。1981年日本公開。原題「Eraserhead」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
ほえー。
面白くはなかったが、非常にめちゃくちゃ面白かった。つまり面白さのベクトルが違う。
ただし、ラスト、赤ん坊を殺すシーンは本編が見せてきていた面白さではなく「わかりやすい」面白さであり、「よくわからない」本編のラストに「わかりやすい」このショッキングな展開を持ってきたあたり、このベクトルは意図的な演出のひとつであるだろうと考えられる。
赤ん坊の(特に目の)造形、本当にリアルでおどろしくて良い。素晴らしい。


インクレディブル・ハルク

2008年日本公開。字幕。原題「The Incredible Hulk」
「ハルク・スマッシュ」ってなんやねん。
いや、面白かった。何か特殊能力があるわけではなく超人と超人との肉体のぶつかり合いなので、その良さを充分に発揮した内容になっていたと思う。
それはそうとハルク・スマッシュってなんやねん。原作ネタ無理に入れんくてええねん。一言「ベティ」とだけ喋らせてかっこよくしようや、という感が強い。今作のキャラともあんまり合わないし。


インセプション

2010年日本公開。原題「Inception」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
つまらなかった。
これから面白くなっていくんだろうなーと思って見続けていたら、いつの間にか終わってしまった感。盛り上がりがなかった印象。夢の中の夢のの~と階層を作り上げ、そこからの「キック」の連続で現実へと帰っていく畳みかけの凄さを期待していたのに、終始淡々と細部にこだわるあまり全体のスピード感を犠牲にしたような、そんなつまらなさを感じる映画だった。
映像的な面白さも、序盤のアリアドネ(エリオット・ペイジ)が作った夢世界の折り畳みが頂点だった印象。あの絵作りはとても面白かった。しかし序盤も序盤なので、あれ以上の映像的面白みを期待してしまうとどうしても期待し損という印象のまま終わってしまう。そもそも、何層も奥の夢に入っていっても、いつまでも現実の再現でしかないところに、どうしても不満を感じてしまった。
ただ、虚無に落ちる、という設定は非常に面白かったし、センスオブワンダーを感じた。虚無といっても何もない空間なのではなく、どうやら夢の主となって世界を再構築できるらしいところに、セカイ系的な良さを感じる。何もない、自分たちで作った世界に二人きりなんてすっごい残酷でかつロマンチックで、面白いなーと感じながら見ていた。


インターステラー

2014年日本公開。原題「Interstellar」
鑑賞年月: 不明(字幕)
面白かった。SFの良さ、すなわち未知へのワクワク感が、ぎっしりと詰まっている。昔からこういうのを食べて育ってきたが、現代に、現代のクオリティで「こういうの」が見られるのは、僥倖の限りである。ありがとうノーラン。
しかしなぜそこに人間の人間臭さを入れてしまったのか。ドラマ発生の起点にヒューマンエラーを使いすぎていて、作劇的に非常につまらない。発想はめちゃくちゃ面白いのに。こんなに面白いことができているのに、わざわざ変な味付けをして、結果的になんともいえない味わいになってしまった。なんでもかんでも調味料を入れればいいなんてはずはないだろう。
あと、「彼ら」の存在の正体が人類であるというクーパーの仮説が、タイムパラドックスの至りで、モヤモヤする。「彼ら」は時間を超越しているからタイムパラドックスとは関係のない次元にいるというのはわかるが、その次元に至るまでには時間に縛られていた三次元の人類が生き延びねばならず、時空を乗り越えたことで生き延びることができたのなら、人類以外の介入が必要となるはずだ。
愛情などの思いは、時間や距離の影響を受けないから、人類の思いもよらない現象を起こしているのかもしれないという話、とても好き。荒唐無稽なんだけど、無下にはできない、SFの定番の良さだと思う。
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
数年後に2度目の視聴。めちゃくちゃ面白かった。
前回の鑑賞時に微妙だなと思ったところも、今見るとすごく面白く見える。上の感想では、ヒューマンエラーをドラマの起点に使いすぎているという指摘をしているが、今見る限りでは、ミラーの星関連のものだけではないか(したがって使いすぎているとは言えないのではないか)と思った。また、マン教授の行動についても、なぜ人間の(いわゆる邪魔な)行動によって状況を悪くするのかと不満に思っていた覚えがあるが、マン教授の心理を描くことによって、本作のテーマとする「愛」「人間の思い」をより深めることができている。それらがテーマなのだからそのマイナス面をマン教授を通して描くのは自然なことだろう。


インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説

1984年日本公開。原題「Indiana Jones and the Temple of Doom」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
80年代に見れば面白かったかもしれない映画。
価値観の面からもプロットの面からも、現代の鑑賞に堪えうるものではないという感想。


イントゥ・ザ・ストーム

2014年日本公開。字幕。原題「Into the Storm」
とても面白かった。
竜巻が過ぎ去った後に閉じ込められる二次災害と、竜巻自体のスケールを両立して見せている欲張りな映画。そしてその両面において非常に面白い出来になっている。
水位が上がっていく中で、ドニーとケイトリンが家族にメッセージを残すシーンがメタに感じた。カメラは外に落ちており、スマホは故障が1台充電切れが1台。他にハンディカメラでもあったのだろうか? そうでなければ、ただ何もない空間で、カメラに記録を残すかのように独り言を呟いていたことになる。その光景を、スクリーンを通して観客が見ているとしても。
それにしても画面の迫力が素晴らしい。美術に映像効果、頑張りすぎ。すごい。噴き上げられた後に見た、あの天国のような雲の上のシーン、すごい迫力だった。


ヴァイラス

1999年日本公開。原題「Virus」
鑑賞年月: 2020年1月(吹替)
「でかい照明弾だなぁ」は笑った。
この年代に発展した映像効果を思わせる作品で、そういう資料性がある。
プロットなどの面白さは微妙。しかし船長を除いて、なんだかんだ仲間思いに行動する登場人物たちに愛着が湧いた。


ウインド・リバー

2018年日本公開。字幕。原題「Wind River」
アメリカン・田舎の陰湿さ映画。村社会的な女性軽視は当然ながら、海を越えても実在する。ワイオミング州ウィンド・リバー保留地、そこには雪と静寂のほかにはなにもないと言ってしまえるような寂しいところで、だから女に飢えていた、という自分勝手以外の何物でもない主張をするレイプ犯。女性を「シェア」しようという発想がナチュラルに出てくる人格のおかしさ。
だからこそ、主人公の「ここに運はない。都会と違って」から始まる台詞が印象的だった。都会の文脈が通用しないここでは、強さと意志のある者が勝つ、という弱肉強食のような理屈は、犯人側だけでなく、それを裁く側にも与えられる。その点、復讐の理屈が明快でとても良かった。
マーティン(ギル・バーミンガム)の死に化粧がめちゃくちゃ似合っていたのが個人的に好みだった。
ネイティブ・アメリカンの女性失踪事件を主題とした作品であるので、ある程度しょうがない面はあるが、息子の扱いがぞんざいだったのがもったいない。女性軽視と似通った文脈で、息子との対話を入れることもできたはずである。


飢えた侵略者

2018年Netflix配信開始。2017年製作。原題「Les Affamés」
鑑賞年月: 2020年5月(字幕)
カナダのゾンビ映画。
いかにもD級映画テイストの撮られ方で作られているが、おそらくそれは意図してのもので、要所要所で「おっ」と思わせるカメラワークを見せてくる。予算はあるけど予算を抑えてみましたみたいな作り。
絵画の中に描かれていた黄色いブタから、一部雲に隠れた月の景色につなげるマッチカットや、2度ほど挟まれた鳥瞰視点のカメラ、あと尺取虫のカットが印象的。あと夜のシーンが本当に暗く、かろうじて見える動作を見ながら一緒に怖さを体験するうまみはあったのだろうが、それよりも絵が見にくいストレスのほうが大きかったなという印象。
映像美を意識したホラー映画は個人的に好みの部類ではあるが、この作品はつまらなかった。積み上げたオブジェも見た目はとても迫力があって、静かな怖さを感じさせるが、雰囲気映画の範疇。何らかの絵画的モチーフがあったのかもしれないが、もしあったのならそれを汲み取れなかった(もしあったとしたら、汲み取れなかった原因は映画ではなく全面的に自分の知識不足にある)。
エンドロール後のラストシーンはけっこう萌えシーンって感じでよかった。こどもに自殺は見せられないという主人公の大人価値観の結果、彼もまたゾンビになって、ああいう形で彼女と添い遂げることになったの。関係性萌え。
おもちゃのピアノもよかったと思う。彼女のパーソナリティを暗に表現しつつ、ラストでは音を出す機能としても使われていて。


ヴェノム

2018年日本公開。原題「Venom」
鑑賞年月: 2020年6月(字幕)
面白かった。
事前に評判を目にしていたので、仲良しライフなやさしい世界を想像して気が乗らなかったが、見てみると案外にしっかりヴァイオレンスでもあって良かった。そのうえで「俺たちヴェノム、俺たち仲良し!」な空間が作られている。
それにしても大幅にエピソードを削ったのだろうなという痕が見られて、少し物足りない。物足りないけど面白かった、という塩梅はしかし心地良い。


ウォーキング・ゾンビランド

2015年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「The Walking Deceased」
生きている人もゾンビ判定して撃ち殺したり、ツイッターの終了にガチ悲しみしたり、大麻やったり、ラストがアレだったりと、色々ぶっとんでいる。
でもきちんとゾンビ被害を収束させているのがゾンビ映画としては珍しい。良きゾンビ映画かつ、良きパロディです。


嘘はフィクサーのはじまり

2018年日本公開。字幕。原題「Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer」
面白かった!
息をするように嘘をつき、嘘に嘘を塗り重ね、嘘のコネと嘘のコネを繋げて人脈を結んでいき、ついには国家をも揺るがしてしまうユダヤ人主人公、ノーマン。彼は話自体は上手いが決して嘘が上手いわけではなく、口調はたどたどしいうえ、何度も視線を逸らして話し、嘘の整合性も薄い。事実作中で何度も嘘を感付かれてしまう。ところがイスラエルの首相から信頼を得るとあっという間に周囲の人間はノーマンの嘘を信じ込み、ノーマンを頼るようになり、完璧な背光効果が出来上がる……。
といった流れで序盤の話を転がし、コメディタッチで描きつつも、やはり嘘は見抜かれるもので、ノーマンは徐々に危うい状況に追い詰められてしまう。むしろノーマンの嘘をこそ利用されてしまったりもする。首相とその秘書たちの動き方はとても面白い。
政治的な嘘をさも勇敢な必要悪であるかのように見せる狡猾さや、人間同士の信頼への願望を浮かび上がらせた、厚みのある作品だった。
主演のリチャード・ギアの演技も、感情移入させられて、素晴らしい。


打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

1995年劇場公開。
岩井俊二監督作品。奥菜恵すごいな。すごい。
後半のプールのシーンが美しすぎる。ジュブナイルの持つ至高の美。
挿入歌「Forever Friends」も素晴らしい。
内容はもの悲しい。もの悲しくて、ジュブナイル。


打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?

2017年公開。
岩井俊二版からの取捨選択ができていない。中学生という設定にしたのに、それが活かされていないどころか、足かせになっている。16歳発言や電柱を蹴るシーンなど、岩井版では小学生だからこそ映えた言動を、今回中学生が一字一句そのまま放っているのは、非常にバランスが悪い。
そのうえで中学生らしさを入れたかったのだろう、岩井版では薄かったリビドーも強く描かれているので、一層にちぐはぐになっている。
というかなぜ泳ぐとき服を脱いだのか? 岩井版のあの服を着たままプールに飛び込む省みなさが素晴らしかったのに。
主人公の「え」「あ」という声の連続もちょっと不快でした。
SF的にも面白みがない。「ifもしも」へのリスペクトは感じますが、雰囲気系と評するより他ない展開。父親に玉を持たせたのも花火師に拾わせるために砂浜に落ちていた経緯も説得力がなく、違和感が大きい。
楽曲「Forever Friends」も「打上花火」も、個々の音楽は良いものでしたが、使うタイミングが駄目。いくら音楽が良くても映像とのタイミングが合っていないと、意味がないのだなと思う限りでした。
細かな良い点を挙げるなら
・オープニングで黒い背景に黒い文字を載せ、花火の光によって文字を読ませる演出。美しい。
・スラムダンク→ワンピースなどのような、岩井版との差異(時流)を感じさせる小ネタは追っていて面白かった。
・封筒ではなく便箋にしたところに、機能不全家族のゆがみを感じる。
・泳ぐシーンをプールから海に変更したのは、海で目を開けることの困難さや波のあまりの穏やかさに強い違和感をおぼえたが、後のシーンで水中で会話を始めたので、一周回って良い演出になった。
辺りです。


宇宙快速船

1961年公開。
都市破壊のシーンが凝っていて良い感じだった。
なんというか、創作者的な目で見ると、今も昔もやってることが変わらないな、と思ってしまう。


宇宙からのメッセージ

1978年公開。
やっぱりこれくらい自由でいいんだよな、と思わせてくれる。「せめて夢だけは無限でありたい」
放射線ほたるが綺麗。突然の「好きなんだろ?」に笑う。
ガバナス星人のビジュアルが好きです。


宇宙人ポール

2011年日本公開。原題「Paul」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
いい映画だった。この時代にこんなに心温まる「E.T」的交流譚が見られるとは思わなかった。
反キリスト教映画としても良質な出来。イエスと同じように奇跡を見せ、人の死を肩代わりし復活するという、基本的な道筋を踏まえたうえで、熱狂的なキリスト教信者の反応を付け加えることでいい感じにメタ化できている。
オタクネタのちりばめ方もさりげなすぎず、わざとらしすぎず、良い感じ。


宇宙戦争

1953年日本公開。原題「The War of the Worlds」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
なるほどなぁ。
原作では人類の適応によるもの、地球で生まれ育ったものがもつ免疫という特権が人類を救ったという文脈になっていたと思うが(遠い昔に読んだきりなのでうろ覚え)、この映画ではそれを神に与えられた特権として位置づけている。同じことを語ってはいるが、語り方が異なる。H・G・ウェルズの原作が直接描かずとも神を描いていたのに対し、この映画はストレートにキリスト教的構成にしようとして、作品の体裁を取ろうとしているように見えた。
ジーン・バリー、良いっすね。


宇宙戦争

2005年日本公開。字幕/吹替。原題「War of the Worlds」
公開当時に見たときは微妙だなーと思っていたけど、2019年現在に改めて見てみるとめちゃくちゃ面白い。
絶望的な状況の人間心理が非常によく描けているし、宇宙人のディテールや謎の提示の仕方も非常にワクワクする。
良いSFを見たなぁと思った。
それはそうとして、もっと人間の反撃が見たかったところ。まあ、それはこの映画のメインではないから、描けば描くほど蛇足になってしまうのだろうが。


宇宙パトロールルル子 初恋BIG版

2016年公開。
鑑賞年月: 2020年5月
アニメ「宇宙パトロールルル子」の編集版。アニメ版未見のため、どう一本の映画に編集されたのかは未確認。
自分、パロディに目がないのですよ。質の良いパロディは、パロディをしていること自体で笑わせるだけでなくて、作品のプロットと密接に関わって新たな喜びを見出してくれる。作品は作者の意図とは離れ、他作品の引用や影響が糸のように絡まっているのを鑑賞者がほどくところに喜びがある、という、テクスト論の臨界点ですよねパロディって。いやめっちゃ適当に言ったけど。
その点で、この映画は最高に楽しかった。こういう作品があること自体が嬉しいし、創作者として、こういう作品を書いているときが一番楽しいなとも思って、親近感がわく。
また女子中学生の全能感パワフル感が超高濃度で描かれていて、その力強さも楽しかった。
(余談ですが、2016年にこれほどのパロディと熱さを描けていることを考えると、つい相対的に同監督の「プロメア」の評価を落としてしまうような印象も持った。観ながら「あー2016年にこれができてたんなら2019年のプロメアはむしろ新規性が薄いのか」などと思ったり。でもこれはプロメアの感想で書くべきことでここで書くことではないですね。これを上げるためにプロメアを下げているわけではなく、これがこんなに上がるならプロメアはもっと上がってもよかったのでは?という意味なので。)


美しい星

2017年公開。
自分は三島由紀夫の「美しい星」から多大な影響を受けていまして、それがまさか今になって映画化されるということで、答え合わせのつもりで観に行きました。拙作「2019年からのノットレコーディッドSHOW」はこの映画を観るために書いたものです。
それで観てみたら、SF寄り→現実寄り→SF寄り→……と現実と非現実の境を繰り返し行き来して描かれていて、自分の求めていた「美しい星」像そのものでとても嬉しかった。「作詞も作曲もあたしですけど!」の破壊力といったら凄いですよね。
この認識のズレが生み出す空間こそが、自分自身もSFで書き続けてきたことなので、この映画を見て強く背中を押された気分でした。
BGMも素晴らしく、電子音の使い方が完璧。出演者による「金星」のカバーもとても良かった。
「妻」(母)が小説と大きく異なり、最後まで地球人でした。観客との距離感を測るうえで、それが映画として最良の見せ方なのだろう、と思います。最後まで観客(地球人)の視点を残した英断。


海がきこえる

1993年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
めちゃんこ面白かった。


英国王のスピーチ

2011年日本公開。字幕。原題「The King's Speech」
面白かった! 主演コリン・ファースの名演が光る。


エイリアン

1979年日本公開。吹替。原題「Alien」
めちゃくちゃ怖い。コズミックSFホラーの大傑作。
2018年現在にこうして観返してみると、古典SFの趣が感じられるのも良かった。異星人の死体を見てもそれ以上のことは驚かない(異星人の存在が周知となっている)し、船員がロボットだと分かってもすぐにその事実を受け入れる(それがありえる世界観)。こういう雰囲気は現在ではほとんど見られないというか、古典SFにとり残された大雑把さだったなと思う。こういうのを2018年に書きたいものですね。
BGMに心臓音を混ぜるの良いなぁと思いますし、あと人の顔をアップで撮るのもめっちゃ怖くなる。猫の存在も良かったなぁ。
それにしてもエイリアンの成長スピードが怖すぎる。こんなんどうすればええねん。


エイリアン2

1986年日本公開。字幕。原題「Aliens」
前作「エイリアン」が良質なSFホラーであったのに対して、こちらは良質なSFアクション。めちゃくちゃ楽しい。


エイリアン3

1992年日本公開。字幕。原題「Alien3
「エイリアン2」で大量のエイリアンが登場し、「エイリアン」のような1匹だけでの脅威はもう感じられなくなるはずだった。
というのに、本作「エイリアン3」は見事なまでに脅威を1匹に絞り、前作までのドキドキ感を損なわずに描けている。数をインフレさせた後にまた最初の方針に戻すのは、並の手腕ではできないことだろう。
刑務所内に日本語を散りばめらせ、最初に話をさせる会社の男を東洋人(ハイ・チング)に演じさせるなどして、会社の異質感を演出しているように思うが、演出意図的に利いているかは分からない。
また、キリスト教徒の存在を描いた上で、同じ型のアンドロイドを出すことで再臨感を出し、「信じろ」と言わせるのは、演出に確信感があって面白かった。


エイリアン4

1998年日本公開。字幕/吹替。原題「Alien: Resurrection」
ここまでのエイリアンシリーズ4作の中では一番つまらないが、個人的には、4作の中で一番愛着を感じている作品。自分が初めて観たエイリアンシリーズ作品でもある。
改めて観てみると、エイリアンの血液が強酸性であるのは周知のことであるはずなのに、その対策をしていなかったことはよくわからんなぁと思う。そのミスが発端として起きた事件だが、あまりにもあほらしすぎる。
新生リプリーに記憶が残っていた理由付けも、エイリアンの特殊性に頼りっきりになっていて、設定に無理を感じる。
それはそうとしてボタンを押すエイリアンの学習能力は好き。
また、ニューボーンのおどろおどろしさが素晴らしい。卵生から胎生になって生まれ出た、文字通りのモンスター。あれが窓の外に吸い出されていくシーンは白眉である。


エイリアンVSプレデター

2004年日本公開。字幕/吹替。原題「Alien vs. Predator」
エイリアンと戦うプレデター好き。そして人間とコミュニケーションを取るプレデターめっちゃ好き。


エイリアン: コヴェナント

2017年日本公開。字幕。原題「Alien: Covenant」
前作「プロメテウス」よりはずっと面白かった。「プロメテウス」はこれの前振りだったのだと考えよう。
わかりやすさを前面に押し出している映画で、ディテールは省かれている部分は多い。
ナイフの演出、あれを入れたらもうあの終わり方にするしかなくなるというか(むしろそこからさらに逆転してウォルターというオチを期待さえした)、驚きがなくなると思うのだが、それはそうとして、全滅エンドを思わせるラストの心地良さは素晴らしい。
あと、耳の穴を奥から撮ったような映像にはフェチズムを感じた。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

2007年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
[1.11ver.]
最初の小一時間は下手な総集編みたいで楽しめなかったが、新たなストーリーや設定が浮き彫りになる後半からは非常に楽しかった。
といってももちろん前半部にも変更箇所は見られる。
まず、赤い海。南極の海や「まごころを、君に」のラストを思わせるシーンで、リメイク元のラストを想起させるカットからリメイク作を始めるというのがまず素晴らしいし、また内容としてもこれほど海が赤いのはセカンドインパクトの設定の変更のためだと知らされる。後半でミサトが語ったように、新劇でのセカンドインパクトは南極だけにとどまらず、人類の半分を消滅させてしまったらしい。それならばあれだけ広範囲で海が赤くなるのも、頷けるものだ。
また、登場する使徒の順番がTV版よりひとつ繰り上がっている点も、序盤から「おや?」と思わせる点だろう。
第5の使徒(シャムシエル)の触手を握り、初号機の手の装甲が剥がれていたが、その手がもはや人の手に見えるように描かれているのも素晴らしかった。
また後半に入って、ミサトがセントラルドグマに立ち入りできる権限を持っていること、リリスの存在を秘匿にはしていないことなども、大きな変更点。
これらの変更点は、TV版では「謎」として提示することで面白さを引き出せていた部分だ。しかし当然、観客はTV版の内容を知っており、それらの設定は既に「謎」ではないため、設定の開示だけでは面白さを提供できない。総集編ではなく新劇場版として作品を送り出すためには必要な演出だったと思うし、実際、今後どのような展開になるのか(つまり新しい展開になることを容易に想像できる)楽しみになる仕掛けだった。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

2009年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
[2.22ver.]
面白ーい!
このラストのシンジくん、まさかこんなシンジくんが見れるなんて、まさかそんなことがあるなんて、え、すごい……! となった。どう考えても今までのエヴァではない。明らかにおかしい。こんなのシンジくんじゃないよ、とさえ思ってしまうほどに、シンジくんがしっかりと自分の意思で人を救おうとした。綾波レイはもちろんその設定上、「替わりはいるもの」で、TV版でも「2人目のレイ」はあの形での死を迎えてしまった。だからこそ旧劇場版のような展開ができたのも確かだが、今回この「破」のシンジくんの行動はそれらのカウンターとして充分すぎるほどに機能していて、すごかった。すごいわ。「翼をください」のアンバランスさもめちゃくちゃ合ってる。
「今日の日はさようなら」もそうだけど、耳馴染んだ曲を要所要所で使って盛り上げており、実際非常に盛り上がる。
そもそもレイやアスカが料理を始めたり、アスカが「負けた」ことに拘泥しなかったりと、TV版とは違った優しい雰囲気が広がっているのもすごかった。すごい違和感だった。そこから急直下するアスカのグロテスクな展開には本当にぞくぞくしたし、あああの違和感はこの前振りだったのかと納得さえしたのだが、そこからさらに反転してシンジがあんなにまっすぐに行動を起こすという。素晴らしい展開運びだった。ウェーブに乗ってた。楽しかった。


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

2012年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
[3.33ver.]
前評判よりはずっと面白く、しっかりした作りだったので、その意味で肩透かしだった。
全体的に静かな作りで、要所要所の盛り上がりもあくまで演出的には抑えた形になっており、なかなかの好印象。
エヴァに乗った代償として、体が成長できないという新たな設定は、「Air/まごころを、君に」でも描かれたオタク批判であると同時に、思春期の自家撞着のようでもある。14年後という舞台設定と、その間意識を失っていたシンジの視点から描かれる演出上、観客にも14年の間に何があったのかは具体的には明かされることはない。それによる不透明感、すっきりしないモヤモヤ感を楽しめる人にはこの映画は楽しいだろうなと思う。そしてこのモヤモヤ感をきちんと「面白さ」として提供するためには、派手な演出でごまかさないことが重要で、その点この映画はしっかり抑えていたなという印象。いくらでも派手で華麗な映画を作れるポテンシャルはあると思うのだが、あえて抑え、静の物語を作っている点で良いなと思う。
それはそれとして、なぜニアサードインパクトであれほどの被害になったのか、もう少し説明が欲しかったところ。起こりそうなところを、カヲルが槍で止めたのではなかったか。
アスカが「式波」である理由もなんとなく伝わってくる作品。母親がTV版のアスカと異なる世界線なのかもしれないし。あるいは母親は同一人物だとしても、父親が別人で、それによってアスカの母親が精神的に壊れなかった世界線なのかもしれない。「破」の展開もそうだが、新劇場版のアスカは自己肯定感が比較的程度しっかりしていて、まさしく別人のような雰囲気がある。今作「Q」のラストの行動も、TV版のアスカではできえなかったことだろう。まあ、もしかしたらTV版のアスカも、14年も生き延びればああいう器を持てる人だったのかもしれないが。


駅馬車

1940年日本公開。1939年製作。吹替。原題「Stagecoach」
キャラが立っている。それぞれバックボーンを抱え、悩みを抱きながらも、同じ馬車の中を過ごし人間関係を築いていく。最後までろくでもない人間もいれば、要所では人のために動く人間もいる。それらが複雑に絡み合って、しかしひとりも余すことなく話を終着できているのが、素晴らしい。
どのキャラも良かったが、ブーン医師のキャラが良い。彼は一貫して人を救うために動き、その反面、最後まで酒を拒まなかった。
ハットフィールドが最後、銃口を向けた点だけ行動原理が謎だったが、夫のいるルーシーを我が物にしたかったのだろうか。結局グリーンフィールド家の人間であったと明かすあたりは重要だろうとは思うが、しかし最後まで取る行動は賭博師のそれだった、というのは面白い。
アクションも素晴らしく、馬から馬へと立て続けに飛び移るシーンは白眉である。


エクスティンクション 地球奪還

2018年Netflix配信開始。原題「Extinction」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
良い感じに緊迫感も納得感も得られる映画だった。
孫世代が戦争しているというのもとてもリアルな話だし、なおかつ50年という数字は人工物のもつ悠久さを感じさせて、話の消化効率が良い。話とは関係しないが、たとえば火星に作られた巨大な記録装置の塔を思わせるような、そんな作品。


エクストリーム・ジョブ

2020年日本公開。字幕。原題「극한직업」
面白かった!!
めちゃくちゃ質の高いコメディアクション映画。細かい所作ややり取りひとつひとつが笑えたし、そのギャグ自体が次のギャグへの伏線にもなっていて、非常に面白い。たとえば最後らへんのジェフン(コンミョン)とか。ほんと好きだわ。麻薬ダメ、絶対。
チキン作っているシーンも、わざわざ黒背景にしてものすごく美味しそうな画面になっていて、素晴らしい。チキンが食べたくなること必至。
バスのやり取りなんかも大好きで、こういう作品構成のしっかりしたギャグを見せられると、ああー良いなぁとやはり思う。


エリア・オブ・ザ・デッド

2013年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「Humans vs. Zombies」
鑑賞年月: 2019年5月
はよ終わらんかなって思いながら見ていた。ストーリーと関係のない会話を入れ過ぎである(そのうえキャラ造形的にも単純な会話の面白さ的にも全然寄与されていない)。
ただ最初のシャワーシーンはフェチズムが感じられてよかったかな。ああいうオタク文法的な物を実写でやってみようという気概はいい。
噛まれた主人公が後にゾンビとしても再登場しているけど、登場人物たちがいちいちそういう反応をせず、単にゾンビの群れのうちの一体として見ていたのが良かった。まあ君だけゾンビになるの早すぎちゃう?そのシーン入れたかっただけちゃう?とは思ってしまうが、でもその辺のセンスは良い。
ただ、めちゃくちゃ退屈だった。最後まで見れたのは自分が我慢強い性格だから。


エンド・オブ・キングダム

2016年日本公開。字幕。原題「London Has Fallen」
続編になって安定感。こういうのみんな好きだよなぁ自分は好き。
後半のFPSみある場面も面白かったです。
各国の首相や大統領が一気に5人も死んだのがびっくりした。勇気ある殺害に創作的敬意を。


エンド・オブ・ホワイトハウス

2013年日本公開。字幕。原題「Olympus Has Fallen」
面白い。「ダイ・ハード」に通じる孤軍奮闘アクション映画。
本当に孤軍奮闘という感じで、大統領代理が働いているようで働いていない(必要ではあった)。あとコニーももっと活躍欲しかったなぁ。
でもアクションが楽しかったのでOKです。(例の画像)


オープン・ウォーター

2005年日本公開。2003年製作。原題「Open Water」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
大傑作。とにかく怖かった。
今まで見た映画史上おそらくもっとも怖い。没入感やばい。やばい、めっちゃ怖い。
低予算映画を思わせるハンディカメラ映像と、ドキュメンタリー的演出を重点的に見せてきた前半部と、海上での永続的に感じるほどのリアクションショット、そしてリアルなサメ。すべてが没入感を強める最大の要素になっていた。
まじで怖い。つらい。しかも話の展開もサメの造形もすべてリアル路線に振り切っていて、こんな事故普通にありえてしまうから、もうほんとどうしようという感じ。サメも、フィクション要素の高いサメ映画と比べて、積極的に襲いに来ないのがまたリアリティ感じられて怖い。狙ってはいるのだけど獲物が完全に弱まるまできちんと待っている感じ。そして機が熟したら、あれだけの集団で狩りにくる。本場のサメの習性を見せつけられている。それが没入感ある、海上での出来事として描かれるのだから、もう。
エンドロールの映像もいい塩梅で、これでサメの胃袋から人体が出てくるとかだと安っぽくなってしまうだろうが、最後の最後までリアル路線に徹していた。あのカメラが出てくるくらいでは当然解体している人たちにとっては笑い話で、それが、中身を見てみれば行方不明になっていた人たちのものだと気づいたときになってようやく騒ぎになる。だからあの時点では笑って「なんでも食うな」というのが当然で、そのリアリティの高さが、最後の最後まで、余韻を崩させない。
いやほんと、怖かった。怖かった。どうしよう海いけない。


オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~

2014年日本公開。字幕。原題「All Is Lost」
題材も良く、主人公のヒューマンエラーもリアリティがあり、小道具も充実している。
けれと非常につまらない。とてもつまらなかった。
登場人物がひとりで会話がないからか? 前提が希薄だからか? といろいろ理由は述べられるだろうが、状況自体を見たいのではなく、その描き方を見たいんだなというのを実感する映画だった。


オール・ユー・ニード・イズ・キル

2014年日本公開。字幕/吹替。原題「Edge of Tomorrow」
面白ーい!
前線に行きたくないために上官をつい脅してしまうヘタレ主人公を、あのトム・クルーズが演じているのがまず面白い。そしてその状態から何度も繰り返し訓練されることによって、従来のトム・クルーズ的主人公へと成長していく。トム・クルーズがテンポよく死んでいくのは本当に面白いし、編集の技巧も感じる。「ウジ虫野郎」と銃弾の連続はとても面白かった。
能力を失わせたタイミングも素晴らしかった。そこでようやく仲間に打ち明けて、ついてきてもらった仲間があっさりと死んでいく寂しさもとても良かった。タイムリープ物であることを何度も何度も逆手にとって見せた、非常に優れた脚本と編集でした。


オキシジェン

2021年Netflix独占配信。2021年製作。原題「Oxygen」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
めちゃくちゃ面白かった。素晴らしかった。傑作だった。天才的。すごいぞ。えらいぞ。非常に面白い。大好きな作品。
アレクサンドル・アジャ監督作品。「ピラニア3D」の監督として個人的に印象づいていて、あの傑作パニック映画を作った監督のワニ映画ならさぞ面白いことだろうと期待して2019年には「クロール-凶暴領域-」を見て期待以上に面白くて、そして今回2021年もまた、この監督が作ったソリッドシチュエーションスリラーならさぞ面白いだろうと期待して、ほんとに期待以上のものを見せてもらった。見れば見るほどハードルを飛び越えてくる、本当にすごい監督だ。そうでなくとも、鑑賞者としての自分と非常に相性が良い作り手なのだなと思う。とても面白かった。
この映画はネタバレを受けずに見たほうがはるかに面白い作品だろうと思うので、事前情報なしで見てほしいなと思う。なので映画を見ずにこの雑感をご覧になっている方は、できればこれ以降の文章は映画を見てから読んでくださいね。
なんといっても、この手の映画で謎を謎のまま終わらせない映画というのが珍しい。主人公がどこに閉じ込められていたのか、記憶喪失の自身の正体は、電話の相手はどんな意図を持っていたのか、すべてにきちんと解答が用意されている。それと同時に、その解答がこのジャンルの映画から想像していたものからは上手いほどに飛躍していて、見ながらニヤッとしてしまう面白さだった。
まず主人公が思い出した記憶が病院だったことから、主人公の思考の通り治療中で今は病院に閉じ込められているのだろうと想像する。そこから警官との電話で、救助が難しいところにいるらしいと想像が進んでいき、自分は「[リミット]」(2010)のような地中や、あるいは水中にいるのではないかと想像した。ところが博士からの電話で明らかになった、無重力の演出と、紫外線フィルターを外した先の世界。本当にニヤッとした。無自覚に地球に限定して考えていた隙を突かれたような、ジャンルとジャンルの間をひょいと飛び越えてしまえる創作の自由を感じ、とてもニヤッとした。序盤のほうで何かが外に当たる音がするシーンがあったが、それによって宇宙空間という想像を遠ざけていたのだろうことも上手いポイントだと思う。実際にはああして、他のポッドから出ていた人間の死体がひっついていたわけで、あああのときぶつかったのはこれだったのか、と納得させられる。
ラスト、ウォルフ1061cに到着し、無事生還できたカットを入れたのも意欲的だったと思う。上記の通り、本作は他のソリッドシチュエーションとは異なって謎を謎のまま終わらせないように努めている。そのためだろう、助かったのか助からなかったのか、宙ぶらりんな状態が美点となる作品は多々あれど、本作にそれは似合わないと判断し、しっかりとハッピーエンドであるという結果を提示した。最後の最後まで作品の作りに忠実に、かつ派手に飛躍してみせた快作だ。


オクトパス IN N.Y.

2002年ビデオリリース(日本劇場未公開)。2001年製作。原題「Octopus 2: River of Fear」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
前作「オクトパス」は未鑑賞の状態で視聴。
基本的につまらなかった。ただし、面白い映画を求めて見たわけではないので、それなりに満足感。
相棒の死亡フラグの塩梅が良い。水中での、主人公らの抵抗の難しさもよく出ているなと思った。
カットの切り替わりが冗長で、何度も何度も水中と地上のカットを入れ替えたり、水中とバスのカットを入れ替えたりしていたが、そうやってじっくり焦らしたわりにはどちらも最後に出てくる衝撃がなく、淡々としているのがこの手の映画の良いところ(つまり良くないところ)。
また、ラストのもうなんでもござれ感は面白かった。唐突に脚本がはっちゃける。


オデッセイ

2016年日本公開。原語字幕/吹替。原題「The Martian」
面白い! 素晴らしいSF映画。
火星にひとり取り残されるという絶望的な状況のなかで、知力の限りを尽くして帰還を目指す作品。そのうえでぶっ飛んだ発想をしたりもする。素晴らしい。


踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!

1998年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
あ~懐かしい。懐かしいし、作品単体としても非常によくできていて、その両点で楽しめて最高だった。
「天国と地獄」のシーン最高。


踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!

2003年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
「事件は現場で~」「兵隊」などのワードを意図的に使用させることで、アンチ劇場版1作目という美味しい役回りを生み出せている。
キャラづくりが極端なきらいはあるが、しかし極端であるからこそ際立つものがあると理解できる作品だった。
それにしても、現実に公開訓練で刑事がSATを制圧するような事態が起こったら、インターネット沸き立つだろうなぁ。


踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!

2010年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
日向真奈美サイコウかよ(最高と再興を掛けている)。再登場直後の口調の変化には戸惑ったが、そこからの「手術してやろうか?」にもうときめき殺法。
署長もようやく「行きなさい」を劇場版で本人が言えたところに感動。まあそれよりもよくもまあこれまで署長で居続けられたなぁといった感慨のほうが大きいですが。


踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望

2012年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
劇場版4部作の中で最もつまらない作品だったが、警察のトップをついに辞職へと導いた点でもうこの上ないほど完璧な最終作となった。
警察内部の是正というこのシリーズの、あるいは青島室井ペアのきっての願いが、ようやく叶う足掛かりをつかむことができた。結果論であったとしても、この結果を出せたというのは素直に素晴らしいと思う。
また、小池くん、すごく愛着を持っていたキャラだったので、ここで犯人側として出すのはなんか良かった。他のぽっと出のふたりはどうでもいいが、小池くんが入っているからショッキングな展開として受け入れられる。
ただすみれさんを最後に出してほしかったなというのがある。幽霊みたいなバスからの出方は、面白かったがいまいち。
それを抜きにしてももっと話のメリハリが欲しかったな。3作目で終わらせたほうがよっぽど締まっていて良かったんじゃないかと思ってしまう。
といいつつも、やはりきちんと警察内部の改革に踏み込めたのでよい。という結論に戻る。あと横山邦一いいよね。1作目から出てるし。


オペレーション・クロマイト

2017年日本公開。原題「인천상륙작전」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
内容自体は面白かったと思うが、演出のせいなのか茶番感のぬぐえない映画。
たとえば"坊っちゃん"ともう一人が処刑される場面。ここ泣けるシーンだよ!どう?泣けるでしょ?と言わんばかりにBGMで盛り立て、キャラ造形もあやふやな状態なのにキャラの死を大仰に哀しむところに、史実へのリスペクトの欠如を感じる。なぜ坊っちゃんと呼んでいたのか、どういった関係だったのかがまったくわからなかったし、かといって二人だけに伝わるコードとして描かれたわけでもなかった。単に呼び方でキャラ付けを済ませて、死ぬ場面でだけ盛り上げを図ったようなバランスの悪さがある。
またたとえば、ラスト、主人公とリム・ゲジンが対峙する場面。主人公が目の前で銃を握っているにも関わらず、すぐにとどめをさすのではなく、ゆっくりと恨み節をぶつけるおかしさ。そのうえ、いざ引き金を引いてみると弾切れときた。こんな拍子抜けな終わり方になるのかと思いきや、主人公のほうもわざわざリムが装填し終えるまで待ってから、引き金を引く。そうしてめでたく相打ちになり、双方無念の死を遂げるのだが、いやいや、おかしいだろ。
こんな滑稽な終え方を見せておいて、この映画は実話を基にしています、実際の戦争で亡くなった方々とその遺族にこの映画を捧げます、と言われても、すんと受け入れられるものなんだろうか。
ただストーリー面は基本的に、作戦通りにはまったくいかない、うまくいかない中で奮闘する舞台の銃撃戦を描けていたと思う。リーアム・ニーソン演じるダグラス・マッカーサーも、作戦というよりは心情を軸に物事を考えているかのような言動で、それ自体はどうかとは思えど、この映画と合っている。モノクロ画面のシーンでの温かい笑顔など、とても好きだった。


おもひでぽろぽろ

1991年公開。
鑑賞年月: 2020年5月
すごいなぁ。終盤泣きそうになりながら見ていた。
連綿と続く家父長制の世界、どこもかしこも男性社会。それは都会も田舎も変わりなく、嫁に来ないかというあのおばあさんの台詞は本当に暴力的。それでも衝動的にも、反対側の電車に乗り換えるあそこのクラスメイトの演出はすごくすごくて、泣きそうになった。
田舎の「いいところ」しか見えていなかったと自覚したのに、詳しく知る前に行動を起こしたのはなんか、将来的に後悔しそうだなという気しかしないのだけど、でも当時の当事者には関係ないのだよなぁ、となった。
「かぐや姫の物語」を見てからこれを見ると、高畑勲の作家性がにじみ出て見えていいなぁともなる。こういうものを作り続けてきた監督だったのだなぁ。


オリエント急行殺人事件

2017年日本公開。字幕。原題「Murder on the Orient Express」
映像の「オリエント急行殺人事件」については、個人的にデヴィッド・スーシェ版(2010年)を親と思っているところがあり、別のオリエント急行を観るとどうしてもそれと比べてしまう。デヴィッド・スーシェ版といえば何といってもポワロの葛藤が見事で、悪を断ずる信念を持ちながらも、殺人犯の事情を思いやってあの決断をしたことのギャップによる、苦渋に満ちた顔が印象的だ。
ケネス・ブラナーが演じるこの作品も、冒頭に警官の不正を置き、卵を小道具にポワロの善と悪の絶対的分離思想を描いたことで、ラストとの対比は見せている。しかし、ポワロの言動に葛藤が描かれない。演劇調の独白が何度か流れるだけである。
自分にはこれは表面をなぞっているようにしか見えなかった。素材ではなく味付けが観たい。


オンネリとアンネリのおうち

2018年日本公開。2014年製作。原題「Onneli ja Anneli」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
不思議とずっと見ていられる。なんだかよくわからないけどこれはすごいわ、と感じ入りながらの鑑賞になった。


カーズ2

2011年日本公開。吹替。原題「Cars 2」
面白い! 車が生命体として文化を築いているという設定の時点で充分に差別化できているので、王道を丁寧に描くとそれだけで唯一の物になる。そしてこの映画は実にしっかりと王道を突いていて、痛快です。


ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー

2014年日本公開。字幕/吹替。原題「Guardians of the Galaxy」
少したるみのある映画ではあったが、始め方と終わらせ方が天才的。
ダンスバトルは笑うやろ。
グルート好き。


ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス

2017年日本公開。字幕/吹替。原題「Guardians of the Galaxy Vol. 2」
面白かった! 1はあまり乗れなかったのだが、これは非常に面白かった。前作同様に音楽の使い方が上手いし、話もテンポよく進み、シリアスとギャグの配合は前作よりもキレがいい。
ソヴリン人のゲームのような遠隔操作にまず笑ったし、「メリーポピンズ」でめっちゃ笑った。めっちゃメリーポピンズやん。
また、終盤でガモーラがネビュラを後ろから触った(抱きしめようとした)ときに、反射的にネビュラが拳を握ったシーンが素晴らしい。ずっと身にしみて戦ってきたから、ああいう場面では考えるよりも先に拳を出そうとしてしまう。親に身体的虐待を受けて育った子は、目の前で手を上げると身構えようとするのと同じような仕組み。なのでここに人物造形が詰まっていて、細かいながらも非常にいい描写だなぁと思った。こういう細部にこそ命が宿る。


ガーフィールド2

2006年日本公開。吹替。原題「Garfield A Tail of Two Kitties」
実写版。コメディは良かった。


ガールズ&パンツァー 劇場版

2015年公開。
泣かせにくるところ多すぎ。最高。


ガールズ&パンツァー 最終章 第1話

2017年公開。2018年にDOLBY ATMOS版上映。
7.1ch版とDOLBY ATMOS版を1回ずつ観ました。
初見時の感想「楽しかった。泣ける。」。
映画というよりDOLBY ATMOSの感想になりますが、映画館でバイノーラルを目指そうとしている感じで、とても良かったです。本編前に流れたデモムービーの、首の裏をなぞっていく感じ、すごくバイノーラル録音に近いものを感じました。
ただ本編は別段この仕様を活かした感じではなく、デモムービーのような背後感覚をあまり得られなかったので、そういうのを期待して観ると肩透かしかもしれない。まあDOLBY ATMOSのために作ったわけではないでしょうし仕方ないんですけども。個人的に「ドゥーチェ!ドゥーチェ!ドゥーチェ!」のところが一番DOLBY ATMOSみを感じました。あれは良かったですね。
あともちろん、橋の上のシーン。ただ7.1ch版もすごい迫力だったので、変化はさほど、という印象。
でもやっぱり面白いわ。桃ちゃん先輩可愛い。泣ける。


ガールズ&パンツァー 最終章 第2話

2019年公開。
こんなん泣くやん。圧倒的成長。。。!
第2話前半で描かれた、1回戦の続きの内容については、大洗の作戦勝ちというよりBCの自滅ということでさほど楽しめなかったが、その自滅から彼らが信頼を学び始めたのは素晴らしい。
第2話は(というよりおそらく今後は?)大洗との戦闘を通して、敵チームが成長を得るという展開を重視している。信頼を学んだBCに続いて、今度は突撃ばかりだったあの知波単学園が素晴らしい成長を遂げ、強敵として大洗に立ちはだかる、というかこいつら試合中に成長してやがる。。。!
これ、大洗がむしろ悪役的ポジションにいるんだなぁと考えると、しっくりくるものがあるし、最終章の面白さが構成的にもわかってきた感じ。


カイジ 動物世界

2019年日本公開。原題「动物世界」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
面白かった!
「賭博黙示録カイジ」を原作とした中国映画。元の素材が非常に良い分楽しめる側面も、この映画独自の味付けで得られる楽しさも両方充分に備えていて、とても良かった。


怪獣大戦争

1965年公開。
鑑賞年月: 2020年3月
明らかに今作以前までのゴジラ映画とは毛色の異なる映画。まず自明として宇宙に行っているし、宇宙人も登場する。怪獣はあくまで宇宙人による交渉装置として利用され、話のメインではない。
今となってはおなじみの「怪獣大戦争マーチ」も本作で馴染みの形で登場する。
X星で何度も飛び上がり、シェーをやるゴジラが可愛すぎたし、「話のメイン」が解決した後、ではこちらもおまけにどうぞとばかりに戦闘を始める怪獣たちも愛らしい。


海底47m

2017年日本公開。字幕。原題「47 Meters Down」
面白かった。
こういうリアリティ路線のサメ映画、最近増えたなという気がしないでもない(そもそも「ジョーズ」がそうなんだけども)。よくできている映画だった。


海底47m 古代マヤの死の迷宮

2020年日本公開。原題「47 Meters Down: Uncaged」
面白かった! 前作に引き続き、サメ映画でダイビングで姉妹モノを作ろうという情熱がほとばしってていい映画だった。
舞台も登場人物も前作とは関係ないのに、けれど前作を見た人ならば、この作品がなぜ続編であるのかが充分に伝わってくる。前作を見たうえで見るラストの展開と、前作を見ずに見るラストの展開は、まったく異質なものになることだろう。その意味ですっごくドキドキした。怖かった。前作を見ないと意味の分からない感想。


快楽の漸進的横滑り

1974年製作。2018年日本公開。原題「Glissements progressifs du plaisir」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
モンタージュの鬼って感じ。ゴダール映画の系譜にある作品。
ただラストの二度目の殺人が明かしているように、冒頭から見せられてきた映像は、現在のストーリーラインの中に未来のカットを編集で組み込んでいるのだとわかる仕組みになっており、その点ではだいぶ大衆向きな実験作という印象。
主演アニセー・アルヴィナの、虚言癖って感じの言動がすごく上手かった。
あと裸に生卵を割って落としていくシークエンス、なんかずっと頭に残っている。そのうち意味もなくパロディしたい。


回路

2001年公開。
ほわーそうきたか。
「着信アリ」の系譜に見せかけた、セカイ系の先駆け。
狭い「あの世」と広い「この世」をつなぐシステムが偶然にも完成し、回路がつながった状態。「あの世」で孤独になっていた幽霊たちが「この世」にやってきて、「この世」の生きている人間も巻き込んで死後を謳歌しましょうという感じ。幽霊にとっては孤独からの解放で、生きようとし続ける人にとっては世界が崩壊し孤独になっていく。けれど最初から人間なんて分かり合えていなかったよね、みんな生きながらにして孤独だよねとつぶやいていた唐沢春江(小雪)が、おそらく死者に出会って孤独ではなかったのだと安堵するシーンが印象的。それと廃工場の開かずの間で主人公と対峙した幽霊の、徐々にドアップになっていくシーンも良かった。近づいて近づいて、画面いっぱいに顔を見せた段階になって、その目に光を見せる。実在を見せる。面白い表現だった。


帰ってきたヒトラー

2016年日本公開。原題「Er ist wieder da」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
コメディのつもりで見ていたらシャレにならんやつだった……という旨の感想をよく目にした映画で、へぇーそうなのかと気になって視聴。結果的にいえば、あまりコメディではなかった。
それは本作の終盤が他の方の反応の通りヒトラーの再来による悲劇を再現した、いわゆるコメディ詐欺だからというのはもちろんだが、個人的にはそれよりも大きな原因だと感じたのは、前半部のコメディの中途半端さだ。本作は従来のコメディ詐欺映画とは異なり、あまり騙す意図を有していない。前半部でのギャグと、終盤でのシリアスな反転へのギャップなどを感じさせるというよりも、最初から、笑える人は笑えるが、笑えない人には笑えないテンションを維持して悲劇的な結末へと進んでいく。現実の映像をつなぎ合わせた映像などの演出を、終盤だけでなく前半にも持ってきたあたりから、おそらくヒトラーを現実にいた存在として描くことに注力したのだろう。


隠し砦の三悪人

1958年公開。
又七と太平の人間臭いどうしようもなさがとても好き。そこに真壁六郎太と雪姫というアクの強い人物が加わり、一層人間味の富んだ作品になっている。
馬に乗ったまま刀を振り回すシーンなど、見所もある。


かぐや姫の物語

2013年公開。
何度も泣きそうになりました。
そりゃあ、罰だよなぁ。自分自身こういう父親の元で育ちましたし、誰しもこういう社会思想の中で育ってしまったと思うので、見ていて本当に胸が苦しくなりました。
それでも姫はこの地上の世を肯定して、「人の情け」に言及するの、つよすぎる。自分はそんなに強くはなれないし、なりたくない。
序盤の、姫が成長していく中で、周囲の環境を書き換えていくの、怪談SFの趣で良いですね。


風に濡れた女

2016年公開。
鑑賞年月: 2021年5月
ギャグ多量ロマンポルノ。
いきなり自転車で海に突っ込んだりと、前半のつかみが良かった。
怒りを表現するためのキスって案外初めて見たかも。


がっこうぐらし!

2019年公開。
最初の10分くらいは演技の内容から不安に感じていたが、そこからはずっと面白くてよかった。ゾンビ物であり、かつ日常物であるという両立が、綺麗に成立していた。アイドルグループの4人を主要人物にし、いわゆるアイドルのプロモーションムービーっぽく仕立てた日常パートと、スコップやバールを振り回すゾンビアクションが両極端にならず併存している。このギャップには癖になるし、実写版ならではのことをやったものだと思う。
なんといっても体育祭のシーンが素晴らしかった。素晴らしかった。何度でも見たい幻想への門の開き方。
原作の素材の良さを上手く実写として活かしているし、小道具などオリジナルの演出も利いている。特にリストバンドが終盤、ああいう使われ方をするのは、原作ファンも驚いたことだろうと思う。自分は驚いた。


神様メール

2016年DVDリリース(日本劇場未公開)。吹替。原題「Le tout nouveau testament」
設定がまず良い。神はろくでなしの悪人であり、PCで人間の運命を意地悪く設定している。神の子イエス・キリストは家出息子だ。
内容もパロディやシュルレアル(メルヘン寄り)ネタが富んでいて面白かったが、セックスが多すぎるのがバランスが悪い印象。下ネタに走りたくなるところをもう少しこらえて、もっとバリエーションを見せてくれたらより良い映画になったのではないか、とは思うのだが、最後男性が妊娠してくれたので全部許した。OK。それでいい。
「ここ(地上)が天国」という序盤の台詞が、最後の展開に活きてるのがとても良い。


神と共に 第一章: 罪と罰

2019年日本公開。原題「신과함께-죄와 벌」
鑑賞年月: 2019年6月(字幕)
面白いやーん。
キャラが非常に活き活きしてて非常に良かった。
ヘウォンメクとかいう萌えキャラ。こんなん好きに決まってるやん。
主人公のキャラ背景も壮絶で、その紐解き方も含めて非常に心揺さぶられるように作られている。とてもよかった。


神と共に 第二章: 因と縁

2019年日本公開。字幕。原題「신과함께-인과 연」
最高だった。
第一章の時点でキャラの魅力をこれでもかと伝えきれているのが大きい。そのため、第二章でこうしてキャラたちの過去を掘り下げるだけで、非常にくるものがある。そしてそれら過去のエピソードが巧妙に絡まりあい、さらには現代パートの事件とも対応を見せている。ものすごく詰め込まれているのに、無理がなく、まとまりがすごい。天才的。
カンニム……おまえ、カンニムッ!!!ってなったので、この掘り下げを把握したうえで第一章をもう一度みたいなーという感じ。みたらすごいことになると思う。みなくてもすごいのに。
そしてヘウォンメク大好きかよ~~~~!とやはりなった。ヘウォンメク大好き。挙動すべてが愛らしい。かっこいいからという理由で屋根に上るな。
それと、大河要素ががっつり入っていたのにも驚いた。女真族との戦いとか、その周辺の当時の?地名とか。


ガメラ 大怪獣空中決戦

1995年公開。
鑑賞年月: 2020年5月
かっこいいなぁ。今見てもかっこいい。すごい。最高。
人の死の描写がめちゃんこ性格悪くて大好き。落ちたカセットデッキにフォーカスするシーン、よく思いついたなあんなのって思う。
主人公の長峰真弓も良くて、官僚にぴしゃりと反論してしまえる豪胆さのあるヒロイン。こういうキャラ造形の科学者キャラってあんまり見ない。


カメラを止めるな!

2018年公開(2017年に先行公開)。
めっちゃ面白いやん!
この映画は事前情報なしで観たほうが断然面白いです。予告映像も何も見聞きせずに観ましょう。なので観ていない人は以下の感想を見てはいけません。(ただし流血要素があるので、誰しもに無条件でお勧めすることはできない、というご指摘もいただきました)
いやこれ、ほんと面白いんですよ。
すっかりがっつり、やられた!と思いました。前半のあれやこれやを考えてしまうパートと、後半の完璧なまでのネタ晴らし! 本当に気持ちいくらいに様々な映像表現が伏線として回収されていき、大きな笑いを呼び起こしてくれます。劇場が本当に劇場なのかというほど笑いの渦に包まれていました。これはぜひ劇場で観てほしい。映像効果的にも、観客の一体感的にも。
これの上手いところは、「映画の映画」と見せかけておいて、実際は「映画の映画の映画」だった、というトリックの巧妙さなのですよね。「この映画は二度はじまる」というコピーとも相まって、冒頭の「はいカット」で締めるシーンが、(ゾンビ映画を撮っていたら本当にゾンビが出てきたという)「映画の映画」であるのだろう、と信じ込ませる作りになっている。その「映画の映画」の内容だって、シリアスな笑いを感じてしまう場面は数あれど、真面目に受け止めるだけの作りは満たしている。こういうB級映画たくさん観てきたよね、と思ってしまうくらいの丁寧な作りにはなっている。人によっては、とても丁寧とはいえないように映るかもしれませんが、例えば雑談で出てきた「ポンッ」を、後の場面で繰り返したところなどは、この「映画の映画」だけで成立している伏線回収です。そして「映画の映画」のラスト、星形の血の呪文がカメラインしたところで、「はいカット」、今度こそ映画が二度始まり、「映画の映画の映画」が姿をたち現す。
そこに映し出されるのはレンズの手前の世界。テレビ局側の無理難題や癖の強い俳優たち、トラブル続きの現場で彼らをまとめる、監督の姿。さらにそこに親と子の構造も持ち出し、それらと前半の「映画の映画」の内容が、すべてコミカルにかつ堅実なまでに回収される面白さ。
必然的なことではありますが、前半の作り物の内容と、後半の作り手の内容がリンクしているのも素晴らしい点です。映画の演技の中で、ゾンビ騒ぎの発端である監督はヒロインの表情を嬉々として撮り続け、「これが本当だ! 嘘がひとつもない」と語ります。それが後半の現実パートでは、妥協せず「本物の涙」を撮りたがる娘とは対照的に、プロとしてコンスタントに商品を提供するための、妥協の日々。その日常がゾンビ物のワンカット生放送という困難な試練によって、さらにその世界に役者として入り込むことによって、真なる「本当」の作品作りへの情熱を浮かび上がらせていく。そのうえ、その実現に大きく貢献した娘のアイディアは、監督の台本に挟んでいた昔の写真が元になっているという、構造の完璧さ。
たいへん面白かったです。


カメラを止めるな! スピンオフ「ハリウッド大作戦!」

2019年配信。
傑作「カメラを止めるな!」のスピンオフ。
めちゃくちゃしょうもないし、やっていることはほとんど本編の焼き回し。しかし主人公たちの現場と夢の舞台ハリウッドを対比させ、それでも熱い仕事ぶりに優劣はないことを見せた点については良かったと思う。ジョーの劇中の台詞「周りはゾンビばかり」がうまくダブルミーニングになっている。
HOLLYWOODを人文字で作っていたことに全然気づかなかったので、すごい叙述トリックだ! 騙されたすごい! と感心したのだが、いざ最初から見返してみるとそんなことはなかった。全然人の頭部も映っていないし(後編だとしっかり見えるのに)。その点で本編とはクオリティが大きく違う。


仮面学園

2000年公開。
鑑賞年月: 2021年1月
面白かった。派手な効果音でのカットの切り替えや、攻めたカメラワークが見られるのに、全体的にスマートな画作り。ほどよく手法で遊ばせてほどよくシナリオの手綱を握っている感。プロの遊びだなーと楽しんで見ていた。対面する水月とHIROKOの交互のクローズアップとか印象的。
藤原竜也の初主演作でもあるとのこと(黒須麻耶とのダブル主演)。藤原竜也、こんな時からこういう役回りなのね、と妙に納得。藤原竜也の現在のイメージと同様、悪役にも正義漢にも見えるそのミステリアスさが自然とシナリオを牽引しており、最後までどっちなのかわからない展開に引き込まれた。
黒須麻耶は全体的にはあんまり引き込まれる演技ではなかったのだけど、しかしラスト、藤原竜也の前で素顔で見せる「仮面」の表情がとても良すぎて、映画一本きちっと締めるだけの演技になっていた。すげーってなった。
事前情報なしで見たため、冒頭、登場人物が「わが良き狼」を読んでいるのを見て、筒井康隆原作の映画なのだろうなーと思い込んでいた。ユングの話とか出てくるし、一昔前のインターネットのイメージを社会に希釈した感じも筒井っぽさを強めていた。けれど最後まで見終わり、エンドロールを確認してみると原作は宗田理とのことで、少し驚いたりも。


仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL

2002年公開。
龍騎は放送当時に見ていたが、劇場版は今の今まで(2019年現在まで)見たことがなかった。
おそらくこの劇場版にはこの時点で明かされた情報や人間関係が詰め込まれており、それが面白さの多くの担保になっているのだろうと思われた。なので放送当時、公開当時に見ればこそ面白い作品であって、このタイミングで、しかも龍騎本編はとっくの昔にすべて見終わっている状態で見ても充分に楽しめるわけではなかったなと。
にしても仮面ライダー龍騎、やはり設定が神懸っている。
それと真司、せめて駅くらいまでは送ってやれよ感。


ガラスの花と壊す世界

2016年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
え、すごく良かった。
悪い例みたいな作り方してるのに、とても良かった。
ほとんど展開の広げ方で説明ばかりをしていて、視聴者を置いてけぼりにしてしまいがちな構成。かつダイジェストのように話を接ぎ合わせていく作り(でもこのフェードアウトの仕方は素晴らしかった)。しかしそれが妙にはまっていた。
キャラがとてもよいし、アンチウイルスソフトあるあるな感じのネタがふんだんに入っている。衣装が頻繁に変化するのも楽しかった。ただお色気要素はこの作品には致命的に合わないので、無理に入れる必要はない。
音楽もこだわりをとても感じた。花守ゆみりさんの歌唱もすごい。


カランコエの花

2018年公開。
LGBTに対する周囲の想像力の不足を描いた短編映画。
桜がカミングアウトしようとしたタイミングでの主人公の作り笑いや、「桜は違うよ」という無意識に傷つけてしまう庇い方。
また、養護教諭の対応。担任の鼻を掻く癖が本当だとするのなら、彼女は信頼を寄せられていた生徒からの個人的な恋愛話を担任と共有していたことになる(あるいは、なぜ特定のクラスでのみ授業をおこなったのか疑われた後に、同性愛者がクラスの中にいるという情報だけを提供したのなら理解できるが)。
両者とも桜のためを思ってやっただろう行動が、むしろ桜の領分を狭めてしまった結果につながってしまった。主人公の場合は自らの言動を深く後悔し、静かに涙を流してはいるが、養護教諭のほうはその葛藤の描写が省かれているのが少し歪に感じる。
それと、なぜ桜は黒板に書くなんて方法でカミングアウトしたのか? 悩みに悩んだ末におかしな方法を取ってしまうことは、高校生なら尚更ありうるだろうが、むしろ桜は別の誰かをかばったのか? など少し勘ぐってしまう。
それは別にしても、人を思いやるなんて単純な考えだけでは、どうしても埋められていない無理解偏見があることを、映像として綺麗に撮った作品だった。
それとこの映画の本筋ではないのかもしれないが、救いのある終わり方が欲しかったな、というのが正直な感想。このぶつ切りエンドの演出が演出として嵌っているかと思うと、首を傾げてしまう。


カリガリ博士

1921年日本公開。原題「Das Cabinet des Doktor Caligari」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
ごはん食べさせてるシーン好き。
あとサル可愛い。


ガンジスに還る

2018年日本公開。2016年製作。字幕。原題「Hotel Salvation」
鑑賞年月: 2021年4月(字幕)
良い映画だった。
戸(ドア、窓)を構図に組み込んだカットが何度も出てくるのが印象的。生と死を区別するモチーフとして、確かにこれ以上ないほどに伝わりやすい。


感染列島

2009年公開。
役者の演技力の違いを楽しむ映画。ただ叫べばいいってもんやないやろ。
作品としても面白く観たが、ラストの40分で冷めてしまった。もったいない。
養鶏場の自殺→マスコミで訂正コンボは、現実でも似たようなことの心当たりがありすぎて、非常につらい。まあ訂正があるだけフィクションのほうが優しいのかもしれませんがね……。
田中裕二(爆笑問題)が意外と演技力があって良かった。というよりも、檀れい以外の主要キャストが過剰な演技をしていたから、田中裕二の落ち着いた演技に深みを感じたのかもしれない。
「この顔が好きだった」という台詞は、おそらく「アウトブレイク」の「あなたの顔が好き」という台詞のオマージュなのでしょうね。
あとレミオロメンは嫌いではないけど、この主題歌は、ちょっと……。


記憶にございません!

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年11月
面白かったと思うけど、あんまりすっきりしない映画だった。結局まだなんにもしてない段階で終わるし。どうせなら消費税引き下げるとこまでやろうやってなる。
この映画はコンセプトが二重になっていて、時事ネタを扱ったパロディ的な面白さを強調した前半部と、主人公の奮起の様子を観客に追わせ、応援していく、回復の後半部とがある。で、この後半部がしょうもないなぁという印象が強かった。ギャグ色強くするのとリアリティを損なうのは比例の関係ではないので、ちょっともうちょっと襟元正しながら笑わせてほしかったところ。揶揄とごまかしでは笑いの質が異なるが、本作の笑いは揶揄よりもごまかしの比率が高い。
それと、途中から実は記憶が戻っていた、とするオチの見せ方が微妙。たとえば社会の先生が来たときに、政治について「最初から覚えてなかったと思います」という台詞が伏線のようにもなっているが、そのあとのシーンで主人公は不倫現場の写真を偶然発見し驚いている場面を入れてしまっているので、この時点でも記憶は戻っておらず、したがってその台詞も偶然の産物という判断となり、伏線たりえていない。


傷物語II〈熱血篇〉

2016年公開。
戦闘シーンの動きもよくBGMもよく、それでいて羽川とのやり取りを丁寧に描いていて面白かった。
エンディングの入り方が数秒の間を取ってて良い余韻。


傷物語III〈冷血篇〉

2017年公開。
忍野メメの解決策を聞いているときのハートアンダーブレードの表情がとても良かった。
エンディングが粋。


北のカナリアたち

2012年公開。
「告白」の連鎖。教師の“信頼できない語り手”の部分が驚き。
舞台が綺麗。


きっと、うまくいく

2013年日本公開(本国公開は2009年)。原題「3 Idiots」
鑑賞年月: 不明(字幕)
サクセスストーリー映画の大傑作。
Aal Izz Well(All is well)をキーワードに、都合の良い展開が詰まっているが、しかし都合の良い物語ではない。厳しい競争社会の中で、全国1位の工科大学で繰り広げられる圧迫と、それに抗い目先の成功よりも自身の成長のためにこそ大学に通う主人公。自殺する生徒は出てくるし、学長は平気で生徒の人権を踏みにじる。もちろん、この映画はサクセスストーリーであって、主人公の主張には生存バイアスを感じてしまうものだが、圧迫や自殺というものをきちんと描くことで、都合が良いのに、決して都合の良いわけではない空間を形成できている。すごいことだと思う。
そして主演のアーミル・カーンがやばい。当時44歳だなんてとても信じられない。どんな努力を積めばこの顔と体型を維持できて、これほどの演技をすることができるのだろうと思ってしまった。
音楽も素晴らしい。「Give Me Some Sunshine」と「All Izz Well」、良い。
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
上記の感想から数年後の2021年に2度目の視聴。やはりとても面白かった。笑える楽しいシーンも多いし、その中には状況自体はさほどコミカルではないのにアーミル・カーンの演技の力で笑いを引き出している部分もある。
自殺や自殺未遂を通して、苛烈な競争社会のゆがみを描いてもいる点は前回の感想でも言ったとおりだが、学長の言動によって見せられるものがほとんどなのは少し気になった。ファルハーンの父親やラージューの家庭環境など、学長がすべてを占めているわけではもちろんないが、基本的にほとんどすべての問題が学長と絡んでおり、まるで学長の悪意さえなければ解決したような印象になってしまっている。けれど実際のところは(主人公の台詞にもあったように)悪いのは個人というより社会的構造であり、その象徴として学長個人を置いているのは少しバランスが悪いように思う。そのために写真家になりたいと願うファルハーンの葛藤はほとんど本筋と関りがない状態になっており、浮いている。
にしてもほんと、アーミル・カーンいいよね。すごいね。え、44歳ってマジ?


ギフト

2001年日本公開。字幕/吹替。原題「The Gift」
傑作。
10年以上前にテレビで見て、印象深かった作品。2019年にこうして見返して、その凄さにがつんと殴られた。


きみの声をとどけたい

2017年公開。
物語の一番の当事者であるはずの紫音が、終始受動的なキャラ造形で、最後まで存在感を持てなかった点がうーんとなる。もちろん主人公はなぎさで、主人公の成長譚としてのみ見るのなら問題はないのかもしれないが、物語の始発点は紫音である。しかし彼女と他の仲間たちが打ち解けていくエピソードや、彼女本人の話をほとんどナレーションや省略で補ってしまっていて、序盤と終盤のメインエピソードが浮いてしまっている。サブキャラクターの話との対応も一本の映画と見て嵌っておらず、構成が悪いなという印象。


きみの鳥はうたえる

2018年公開。
映画を観たなぁという感じ。
あまり面白くはなかったが、こういう映画が好きだ。
クラブで踊り、ビリヤードで遊び、酔ってバカ騒ぎをして。すごく自然に笑いあっていて楽しそうだが、その裏には終始不安要素がつきまとっている。そういう彼らの日常を、日常のように描き切っている。
そのために映像表現に強く舵を切っている。脚本の引き算が巧い。


君の名は。

2016年公開。
込み入った展開をここまでわかりやすく見せたのがすごい。状況説明のための台詞をくどいまでにふんだんに用いているのが印象的でした。視点変換も多いようで最少にとどめているように感じます。口噛み酒や組紐など小道具に無駄がないのも良し。
音楽挿入のタイミングがまるでPV。音楽が主たる音楽であって、BGMではない感じが強かったですね。その分エピソードの省略に違和感をいだかせないことに成功していて、なるほどという感じ。


君の名前で僕を呼んで

2018年日本公開。字幕。原題「Call Me By Your Name」
とても良かった。胸の内を表出するバランスがすごく意識的。今以上に同性愛への圧迫が酷かった80年代、「秘密」を言葉に出すのは非常に難しいことで、そのバランスの中で話を進めていくのが、作品として本当に素晴らしかった。
また、父親の告白が悲しい。聡明な父でさえ、当事者だから息子の状況を理解できたという落としどころになっていて、オチと合わせて、当事者間でしか認め合えていない残酷さが真正面から出ていました。ユダヤ人的であるという理由でネックレスを外させた母親の存在も、良い対比になっていたと思います。
それでも自分の名前で相手を呼び、相手の名前で自分を呼んでもらうことで、常に「忘れない」存在として自分と共にありつづけるというのは、美しい。自分の名前は常に自分の傍にあるものですから、それを使って他者を呼ぶというのは、すなわち常に自分とともにあるということ。
BGMも良かったです。ドアの音と、雷の音が音楽と非常にマッチしていて。それとEDがすごく簡潔で、余韻を損ねないようにという工夫が感じられました。


君は月夜に光り輝く

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年6月
面白かった!
ラノベ臭い台詞が伏線として機能し、意外にも功を奏している。
平林リコの必要性はわからなかった。


キャスト・アウェイ

2001年日本公開。原題「Cast Away」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
トム・ハンクスが良いから、良い映画になっている。つまり良い映画。
バレーボールのウィルソンとの(一方的な)やり取りがシュールでかつ妙な感情移入を誘い良かった。
のと、無事帰れてからの話が長いのも特徴的だし、そのうえでのタイトルの回収が上手い。


キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

2011年日本公開。字幕。原題「Captain America: The First Avenger」
とても面白かった。面白かったし、MCUというシリーズ作品の面白さがようやく伝わってくる作品で、タイトルに付与された「アベンジャー」という文字の存在感が、充分に発揮されていた。ハワード・スタークの存在はでかい。
(70年動けなかったとはいえ)どうやってあの状態から助かったのか、理由付けが欲しかったところだが、次回作以降で明かされるんだろうか。簡単にでもこの作品の本編で明かしたほうがスッキリとはしたとは思うが、この何か居残っている感じを、次回作へと誘導するためにわざと出しているのなら、それはそれでありだろう。
さてこの主人公、葛藤はあれどずっと善人! 力をずっと驕らない。そこが最高だった。ヒーローだよヒーロー。ヒーロー。
ラスボスのやられ方も、超越した力に手を出し、その力によって滅んだ形となっていて、案外すっとくるものがある。主人公がとどめをささなくてもいいんだなという好例。
そして歌がとてもよかった。
[追記]
上記の感想を書いてからだいぶ経って再視聴。すると冒頭部分できちんと70年後の発見のシーンがあったことに気づいた。


キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー

2014年日本公開。原題「Captain America: The Winter Soldier」
鑑賞年月: 不明(字幕)
官長もすごくがんばる映画。いいぞいいぞ。すごく驚いた。
設定の古典SF感の強さに少し白けた部分はあったが(内容のせいではなくディテール不足のせい)、やはり安定して面白かった。
「アントマン」を先に観ているので、ファルコンの登場ににやりとしたり。にしても唐突に出てきたなファルコン。
鑑賞年月: 2021年3月(吹替)
数年ぶりに久々に見返したが、やはりとても面白かった。また、上記の感想で述べているようなゾラの人工脳に関する古典SF感には、むしろワクワク感を感じてしまう。まあおそらく、2度目の視聴だからこそリアリティ面については受け入れ態勢ができており、古典SF感のチープさには気にならず面白い部分だけを感じ取れたからなのだろうが、こういうのがあるから複数回の視聴は良いよなと思ってしまう。
のと、久々に見て少し記憶が抜けていたのもあって、今回この映画でしっかりシールズが崩壊しているところに驚きを覚えてしまった。そうかそういえばしっかり解体されてたんだなと。
その点で、まるでシリーズ集大成のような味わいも感じさせつつ、それでいて続編への期待も同時に感じさせてくれるような、そういう出来の良さを思った。
バッキーもいいよね。とてもいい。


キャプテン・マーベル

2019年日本公開。字幕/その他。原題「Captain Marvel」
面白かった! 序盤の宇宙船での戦闘シーンからして楽しくて、キャラに引き込まれた。
こう、主人公が楽しみながら戦闘しているアクションシーンがとても好きなんだなと、自分の好みに気づくなどをする。
電車を追いかけるシーンが顕著だが、映画本編だけでなくこの映画がやっている演出自体もどこかノスタルジックなものを思わせて、その点でもすごく楽しかった。こういうのを2019年に観れる! 幸せ!


今日も嫌がらせ弁当

2019年公開。
病院を抜け出して、体の状態を顧みず卒業式の弁当を作ったことと、最後船の見送りに駆り出たこと。この2点は100%親のエゴであって、愛情とはとても思えない。「愛してるよ」と叫ぶ母親に対して、「元気でね」と返す娘の言葉選びはその表れのようにも思われる。まああの年頃だと「愛してる」なんて恥ずかしくて言えないでしょうが。
もちろん親もひとりの人間であるわけだから、自分の感情を押し付けたり、感情的に動いたりはするものだけども、作劇的にそういうものを「美しい親子愛」として描けてしまうところに、どうしても歪みを感じてしまう。だから上記の2点の行動を起こさせずに、話をまとめるにはどうすればよいのかなぁと、個人的に考えてしまうものだった。
弁当自体は良かったなぁと思うし、舞台装置として八丈島を使ったのも上手い。何度も繰り返される「ここも東京だけど」というネタが決して色褪せないほどに、定番ネタとして活きている。ただ他の親とのやり取りで、弁当のことを女子の気を引くために嫌がらせする男子で例えたのもよくわからなかった。線引きが自分の価値観と違うのだろうなぁ、と思う。
それはそうと主演のふたりがとてもいい演技をしていてよかった。すっごく親子していた。すごい。
それと主題歌、フレンズ「楽しもう」も素晴らしい。懐かしみを感じる、ずっと昔から聴いていたかのようなポップスだった。


去年の冬、きみと別れ

2018年公開。
演技が良かった。
説明が冗長。
推理物として見ると物足りない作品ですが、会話劇がそのまま復讐の役割を果たす構成は上手い。


キラー・メイズ

2018年日本公開。原題「Dave Made a Maze」
鑑賞年月: 2020年6月(字幕)
独特な感じで良かった。
独特さ自体が面白さと結びついていたわけではないが、それでも独特なのが好きなので、良いなってなる類の映画。
でも個人的にはもっとワクワクさせてほしかったなぁと思う。みんな迷路の広さにたいして驚かないし。
でもでも手がそのまま残ったり、最後に起き上がる人たちがあれだけだったのは良かったなと思う。
あと押韻が好きなので最後のタイトル回収も含めてメタライムなネタは良かった。
のと、さなぎを完成させたときみんなが見入って、壊すときみんながもったいがる表情を見せたのが、主人公の苦悩に対してひとつの救いを与えていて、優しい感じ。
セットも撮影も素晴らしく、作ってて楽しかったろうなって感じで見せてくれるので、そういう意味でもよかった。もっと作品の面白さに貢献できていればとは思うが。


キング・オブ・コメディ

1984年日本公開。1982年製作。原題「The King of Comedy」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
面白かった!!
創作者や演者は、もちろん営業も必要だが、営業やコネに囚われすぎて自分の技術の研鑽や実績をおろそかにしてはならんよな。というか厄介ファンすぎる。こういう人よくいる。つらい。と共感性羞恥にやられた前半部と、そこからの劇的な行動に至った後半部がシームレスにつながっている。堂々たる虚言癖と話の通じない厄介さを見事に演じきったロバート・デ・ニーロ、すごい。


キングコング

1933年日本公開。原題「King Kong」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
良いなぁ。
海峡という門、壁という門を超えて現れる、血なまぐさい幻想の世界。そしてそこから飛び出し、さらに連れ出されたことで繰り広げられるニューヨークでの惨劇。ふたつの舞台で暴れまわる怪獣の様子は実にふんだんで、楽しかった。いいぞもっとやれの暴れっぷり壊しっぷりだった。 素晴らしい想像の世界であるし、よく実際に形にできたなぁと思う。


禁じられた遊び

1953年日本公開。1952年製作。字幕。原題「Jeux interdits」
FINを出すタイミングが残酷すぎる。
ポーレット(ブリジット・フォッセー)の死の概念を知らぬ(実際に目の当たりにしても)様子や、無邪気に恵まれていたときに飲んでいたカフェオレを望む様子など、子役のすごさが凝縮されている演技。


銀魂

2017年公開。
原作未読だったため、非常に驚いた。まさかSFだったとは。
宇宙人に侵略された江戸という設定のおかげで、テクノロジーとしてもパロディとしても、自由にふるまえる空間が形成できているのが素晴らしい。それにしてはもう少し笑いにこだわれよとは思うのですが、好みの問題かも。
パロディ=危ないことをやっている=面白い、という図式、いつまで通用すると思ってるんだろう。パロディはもっと面白いことができるんですよ!!(怒り)という感情が湧き上がる作品ではありました。
それはそうとして、橋本環奈がすごいし、菅田将暉がすごい。俳優を楽しむ映画としては、非常に満足でした。


グーニーズ

1985年日本公開。1985年製作。原題「The Goonies」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
子役4人の元気溢れる元気さがすごかった。
終始子供の賑やかさに当てられる映画。事件が始まる前も後も、とにかく騒がしく賑やかに画面を湧きたてていく。


グエムル-漢江の怪物-

2006年日本公開。原題「괴물」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
2020年に久々に見たが、やはり面白かった。
怪物の独特な造形が目を引くし、しっぽを使って猿の木渡りのように動くあのモーションは、2020年現在に見てもリアリティを感じる描写で、CGの古さを感じさせないほど現実味を補っている。生き物の動き方という演出面での工夫はもちろん、CG単体としても当時としては非常に上手く作られていて、それだけでも見ごたえがあった。
そして何より、本作は怪物を「保菌者」という偶像として描き、それに翻弄される韓国国民と米軍を描いたこと、さらにはその対応としての兵器利用とそれに反発するデモなど、社会的な動きをメインに捉えており、その動きに抗おうとする主人公たちの物語が真に迫っていた。
コメディとしても優秀で、しかも、そのコメディ描写がシリアスと隣り合わせになっている緊張感が素晴らしい。賄賂に渡した金銭がほとんど100ウォン玉しかないあのカップだったりとか、弾を数え忘れたというギャグ演出がトリガーとなって父を亡くしたりだとか、火炎瓶を落っことすギャグが、ナムジュのアーチェリー選手としての最高にかっこいい演出につなげているところだとか。
それにしても、「ビール。冷たいビール」のところの名言名シーン感の著しさよ。


クソ野郎と美しき世界

2018年公開。
4編の短編作品からなるオムニバス映画。1本目はつまらなかったが、2本目から最後にかけて、とても面白かった。
――「ピアニストを撃つな!」
最後、目を瞑ったのだけは良かった。つまらないが、2本目以降を楽しむために見る必要がある。
別にそれ自体はいいんですけど、結局、性欲の話じゃんね。
――「慎吾ちゃんと歌喰いの巻」
素晴らしい! 「住みにくくなった世の中」で、元SMAPの三人が本人役で出演するという意味合いが、じっくり詰まった作品だった。
作品自体がメタファーとして上手く機能している。社会的しがらみは強くなっていき、SMAPでさえ解散した現代に現れた、歌喰い。喰われた歌は、もう歌えなくなってしまう。自分の歌をもう歌えないのならばと、歌手が自殺を図るシーンは過剰なほどに演出がなされている。
そんな折に歌喰いと出会った、衝動的に絵を描いてしまう元SMAPの、香取慎吾。彼の絵には音楽があると語る歌喰いが印象的だった。
――「光へ、航る」
タイトルの回収が美しい。
尾野真千子のやさぐれ感のある演技が良いなぁと思った。草彅剛もよくマッチしている。
――「新しい詩」
やったー! たーのしー!
香取慎吾が好きになりました。元々好きっちゃ好きだったけど。
1本目から3本目の作品の後日譚としても機能しているが、その点は少し、エンタメのための必要悪という感じではあった。もっと映像と音楽の楽しさに振り切っても良かったんだぜ!!とは思うが、いやでも面白いわ。
欲を言えば、2本目に出てきた、SMAPの追っかけだったという刑事さんを出してほしかったなという印象。かつての追っかけにだって今の彼らに感動する根拠がある。


グッバイ・ゴダール!

2018年日本公開。字幕。原題「Le Redoutable」
表現が楽しい映画。ストーリーも簡潔である分しっかりしているので、満足感がある。
発言と同時に括弧書きの字幕が出てきたり、レコードの音が途切れるたびに画面の色調が反転したりなど、面白い表現がところどころに見られて良かった。どうやらゴダール作品の演出に対するオマージュらしいのだが、あまりその辺りには詳しくないため、今後の自分への宿題。
映画を革命したとまで言われた映画監督、ジャン=リュック・ゴダール。彼の革命(あるいは若さ)への固執と、それに反して独りよがりな思考に凝り固まっていく悲壮さが、繰り返し表現されている。家父長制を前時代的なものと批判しながらも、自分の妻へは、彼の一方的な疑念の発端を妻のせいにしようとする、どうしようもなさ。ヌードシーンが顕著だが、ゴダールの抱える自己矛盾の連続は滑稽でさえある。
講演の帰り、口論になったときに、ゴダールの口論相手がゴダールの映画のタイトルをもじりながら会話しているのも面白かった。ゴダールが否定した自作品を用いて、ゴダールを非難するという皮肉。この構図は、この映画そのものの構図でもあるように思う。
それにしても、存命の巨匠をこれほど皮肉たっぷりに弄った映画というのも、珍しい。


雲のむこう、約束の場所

2004年公開。
セカイ系。意識して寄せたのだろうくどさが随所に見られた。
セカイ系を掘り下げたらこうなるのだろうな、という良さはあったが、掘り下げが足りない。雰囲気を楽しめるなら面白いだろう。自分は面白かった。
プロット的に破綻がなかったのが良かったと思います。(ハードルが低い)


グリーン・インフェルノ

2015年日本公開。2013年製作。原題「The Green Inferno」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった。
「考えるな。行動しろ」という彼らのキャッチコピーが、そっくりそのまま仇となって返ってきている。
文化人的な上位目線やそれによる侵略を、意識的に捉えていて、飛行機事故が起こるまでの40分間も楽しかった。事件が起こってからだけでなく、起こるまでも意欲的に撮れている作品はやはりよい。
刺青の小道具的な活用もとても良かった。「次の刺青はこれにしよう」というなんでもない台詞が、後に活きてくる。なるほどとなった。
グロテスク描写も程よくグロく、かつ適切量を適切なタイミングで取り込んでいたように思われて、うまいと思った。
食人描写もまるでNHKで見るドキュメンタリー映像のようで、制作者のこだわりを強く感じる。
あとエンドロール、演者やスタッフの隣にツイッターアカウントを書いてあるのがすごく新鮮だった。あれって実在するアカウントなんだろうか? その手があったか、となったし、映画の内容とも合っている(実在するしないに関わらず、雰囲気が出ている)。


グリーンブック

2019年日本公開。2018年製作。原題「Green Book」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
友情バディもの萌え漫画として秀逸。お互いにいがみ合っていた二人が、旅を通して助け合い友情を獲得していく。
ドン・シャーリーのパーソナリティが良くて、黒人差別を改善しようと動きつつも、彼自身は黒人のコミュニティにさえ属していない。もちろん、その権力の強さによって困難をかいくぐる都合のよさも描かれているが、それとは別に本人の孤独と抑圧も吐露している。
普通に面白かったが、上記の人物造形のほかには特に目新しいものは感じられず、広く浅くまとまったな、という感が強い。


クリミナル・タウン

2018年日本公開。字幕。原題「November Criminals」
主人公アディソン(アンセル・エルゴート)の男子高校生らしい行動力と無頓着さに萌える映画。内容もさることながら顔が良すぎる。
麻薬密売人たちのグループと手を切りたかった(あるいは付き合いに飽きた)真犯人フィービーの話、と理解したのですが、そういう感想をまったく見ない。自分の勘違いだろうか。序盤のケビンとの会話といい、おれの彼女だと言ったときのDの怒りよう、麻薬を運んだ先にいた彼女(これもしかして別人?)のことを考えると、そう考えてしまう。
それはそうと、主人公が本当に行動力があって、それなのに思い込みが激しいところがあり、しかもその真相究明に向かう行動原理を自分の気持ちに置き換えて考えてしまう子なので、その人物造形に深く頷くものでした。現実だと胸糞だけど、フィクションならこういうのも良いよね。


くるみ割り人形と秘密の王国

2018年日本公開。字幕。原題「The Nutcracker and the Four Realms」
つまらない。


グレイテスト・ショーマン

2018年日本公開。吹替。原題「The Greatest Showman」
この映画がこの時代に世に出されたことってすごく重要な意味があると思うんですよ。意味というか、残念なことに一歩進んでるな、って思った。こんなに肯定的にフリーク・ショー的要素を持つ劇が描かれたのが、この2010年代に発表されたという事実に驚きを覚えてしまうし、作中でも差別心の強い人々からの扱いを変えたわけでもなく、一部の理解できる人に愛されれば良いという至極まっとうな答えを提示できている(感動ポルノの文脈を持たせない作りになっている)。バーナムだって別段妙な大義くさいものを持って団員を集めたわけではなく、その発想も言動も時代を考えれば至極当然であるわけで(トムを誘うときの台詞が顕著)、団員はバーナムの思惑とはまったく別に、本人たちの希望としてサーカスに居場所を見出しているわけです。ものすごく丁寧に、階層を組み立てて描かれているにもかかわらず、現代的な臭さがない。1840-50年代の出来事を先進的に描きながらも、決して、2010年代の世界を映画から見出させようという作りにはなっていない。あるとすればそれは普遍性のみ。しかしその普遍性をもってして、観客はどうしても現代の世界を、バーナムやサーカス反対派の人間たちから見出してしまうわけです。
これは本当にすごいことです。わざとらしさを出さずに、わざとやっている。差別心をナチュラルに描き出せている。そのうえで、こんなにも肯定的に、非常に楽しいミュージカル映画になっている。
ダンスとても良かったですね。フィリップを誘ったときのと、バーで団員が集まって踊ったばらばら集団ダンスがとても好きです。背の高い男性がカウンターに乗って天井を叩いているのとかとても良かった。
ジェニー・リンドの歌、すごかった。あとツンデレが好きなので批評家が良かったです。


クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲

2001年公開。
鑑賞年月: 2020年8月
2020年に久々に見返してみて思ったのが、この映画は、思っていたよりもずっと同時代性の強い映画だったのだなぁということ。2001年やその付近に見ると、この映画は高度成長期後半の懐かしきパロディを主題にしつつ近未来を描いている、素晴らしいSFだったのだが、2020年に見ると資料性ばかりが残って、作品自体の持つエネルギーや観客へのはたらきかけはだいぶ弱くなっている。
どちらかというと元々は、この作品は時代が進んでも色褪せない名作という扱いをしているつもりだった。しかしそれは、物質的豊かさが担保されていなければその限りではなかったらしい。


クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん

2014年公開。
おーすごいやん。面白かった。
ロボアクションがすごくしっかりしている。市役所屋上でのアクション、腰部の機動を駆使した動きがめちゃくちゃかっこよくて燃えた。
家父長制に固執する鉄拳寺のキャラ造形もよい。黒岩仁太郎については署長にしては若い見た目だなと思っていたが、その印象操作がうまく伏線として効いていたと思う。あんた何歳だよ実際。
あと段々原が可愛い。このキャラちょっとめっちゃ好き。
ロボットの実存を問い、妻みさえに夫として認めてもらい抱きしめられるシーン、エモーションの極みだった。これだよ。こういうロボSFが見たかったんだよ!


クロエ

2011年日本公開。2009年製作。原題「Chloe」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
軒並み演技も撮影も良かった。リーアム・ニーソンやジュリアン・ムーアという大物俳優はもちろんのこと、クロエ役のアマンダ・サイフリッドやマイケル役のマックス・シエリオットも、感情の出し引きが絶妙で、すごく信頼して見れるクオリティだった。
内容はどうにも、キャサリン・スチュアート(ジュリアン・ムーア)の心情に寄り添えるかどうかで見方も変わってくるのだろうと思うが、個人的には感情移入しにくいキャラクターだったなという印象。息子のプライバシーを尊重できない親。疑心暗鬼にかられ暴走する妻、という人物像で描かれていて、主役でありながら観客には突き放した目線を求めているような作り。あと個人的にはサプライズで喜ばせようとしてくる人がとても苦手。
デヴィッド・スチュアート(リーアム・ニーソン)についても、ミスリードがフェアでない印象が強い。まず飛行機に乗り遅れた連絡を、飛行機が離陸した後ではなく着陸した後に電話した点で、彼の嘘の下手さを見せていると同時に、彼が後ろめたい感情を持っていることを見せている。さらにその翌日に生徒からのツーショット付きのメールを目にしたことで、キャサリンは夫の浮気を疑う(ほぼ確信する)ことになるのだが、もうその時点でいやデヴィッドこれは軽率だろ、浮気でないとしてもなんだかなぁ、となって、クロエの話を充分信じ込む下地になっている。そのうえ植物園でのイメージ映像までしっかり差し入れて。
クロエは全くの悪役キャラとして描かれたらいやだなぁと思って見ていたのだが、最終的に上記のキャサリンへの批判(私や息子はあなたの「物」ではない)を吐露していて良かった。あとアマンダ・サイフリッドの瞳がめちゃくちゃ綺麗に撮られてて、すごい綺麗だなーと何度も思っていた。
窓枠を掴もうとすることなく力なく落ちていくあの最期は、脚本の限界を感じるほど強引。まあ本人の思惑通りか否かは別としても、最終的にキャサリンは彼女のことを忘れられず、髪飾りを付けるようになったようですが。それを見ている息子は何を思っているのだろう、とも想像させられて、髪飾りを映すあのカットについてはすごいラストシーンだった。
基本的に男性は歳を取れば取るほど歳相応の魅力として受け入れられていくものだけど、女性の加齢はただの老いとしか見られない、という社会的な強迫観念のようなものがキャサリンを覆っていて、そのうえデヴィッドの不誠実な言動とクロエの虚言が重なって、どんどん悲劇的な状況に追い込まれていく。キャサリンの人物造形が理解しがたいとしても、同時につい同情してしまう。そういう悲劇だなという感じ。


クロース

2019年Netflix独占配信開始。原題「Klaus」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕/吹替1回ずつ鑑賞)
素晴らしかった!!
単純明快な展開の作品ほど、要求される技術量は高まるよな、と思い知る。本作はその点のハードルを簡単に飛び越えていた。すごい。すごいぞ。素晴らしい。
こどもたちが教育を求めに学校(魚屋)やってくるところとか、泣きそうになった。こういうのに弱い。


クローバーフィールド/HAKAISHA

2008年日本公開。字幕。原題「Cloverfield」
面白かった!
異変が起きた序盤から、怪獣の姿がちらちら見える(執拗に隠さない)のがよい。顔(正体)をしっかり映しても、それが何の解決にもならない、怪獣のおそろしさをはっきりと描いている。
最後、ハッドを食った怪獣はそれまでに出ていたのとは別の個体? と思うほどに小さかった印象。
それとエンディングテーマがすごい。正統派の怪獣映画のテーマだ。


クローバーフィールド・パラドックス

2018年Netflix配信開始。原題「The Cloverfield Paradox」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
うーん。つまらなくはなかったけど、つまらない映画を見た時よりも満足感は低かった。
続編ですよ、前日譚ですよという顔をしておきながら、その実全然つながっていないというか。
おそらくシェパートの影響により別次元から怪獣が過去の地球に飛来し、地球上では1作目「クローバーフィールド/HAKAISHA」の内容が展開しているということなのだろうが、つながりが薄い。薄すぎる。2作目が意外と続編になっていたのに対して(当該雑感参照)、本作は前日譚という役割を持ち、それを作中でもアピールしているにも関わらず、つながりがほとんどない。1作目と同時進行であるだけのまったく別の話でしかなく、これを続編や前日譚として楽しむには無理がある。それなのに終わり方などは特に"これは前日譚ですよ!"とわざとらしくアピールを欠かさないので、余韻がまったくない。どころか3作目独自のストーリーを殺してしまってさえいる。
かといって本作独自のストーリーが面白いかというと、そうでもない。別次元に移動したことによる体と他の物体の融合などはSF定番の現象をうまくプロットに組み込んだ感じで面白かったが、他の現象、たとえばタムの死に方や磁石での巻き付き方など、まるで次元が意思を持ってクルーを殺そうと動いている描写は作品のなんでもあり感が強まってしまって、楽しめなかった。なんでもありなのは別にいいけど、最初は理論立てて登場人物を殺していたのに、だんだん殺し方が雑になってきているのが不満。


クロール -凶暴領域-

2019年日本公開。原題「Crawl」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
傑作「ピラニア3D」のアレクサンドル・アジャ監督が再びモンスターパニック映画を撮るということで、とても楽しみにしていた映画。そうしてこちらが勝手に期待して、ハードルを上げていたにも関わらず、今作もとても面白かった。
しかも「ピラニア3D」とは違い、終始真面目である。そして登場するワニも、トンデモ設定に甘んじることなく、あくまで現実のワニの造形として登場している。そういう点で、「ジョーズ」や「ロスト・バケーション」のイメージに近い映画だ。
ただ、ワニなら陸まで追いかけてきてもいいのでは、と思う場面が複数あったのが気になった。陸まで逃げ切れば深追いはせず、魚のように水中でUターンするのが、ワニ特有の怖さを失くしてしまっているように思う。


クロコダイル2

2002年ビデオリリース(劇場未公開)。2002年製作。原題「Crocodile 2: Death Roll」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
王道テイストのワニ映画。安心して見れる品質。
主人公にとっては強盗犯とワニという2つの脅威、強盗犯たちにとっては逃亡の成否とワニという2つの課題が課せられている。2つの立場(ワニ含めれば3つ)で交差するストーリーが良く仕上がっていた。
最後の探し屋、主人公たちを助けに行かなければ助かっていただろうことが少し面白い。


クワイエット・プレイス

2018年日本公開。字幕。原題「A Quiet Place」
ええやん! 面白かった。
聴覚障害者がいる家族が、手話を駆使して日々を生き延び、補聴器によって希望を見出すSF。
非常に静かな空間にはわくわくする。
そしてなんといっても、怪物の造形がとても良かった。


ゲット・アウト

2017年日本公開。字幕。原題「Get Out」
めちゃくちゃ面白かった。
黒人に対する偏見の描写がすんごく細かくて、わずかな所作、あからさまな言動や異物感などをうまく組み合わせている。
暗闇のなか真っ白な車が追いかけたり、ブラウン色のソファから白い綿が出ていたりと、小物の色彩表現も見事。


ケロロ軍曹 撃侵ドラゴンウォリアーズであります!

2009年公開。
泣ける。


幻夢戦記レダ

1985年ビデオリリース。同年劇場公開。
鑑賞年月: 2021年5月
現代の目ではシンプルな異世界転生物のプロットをなぞっているように見えるが、むしろ現代の諸作品の源流といえるほどの、ヒロイック・ファンタジーの先駆け的作品であるとのこと。このとき既に山本貴嗣などのヒロイック活劇を描く作者が活躍していたことを考えると、その点は少し懐疑的に見てしまう面はあるが、先駆け的作品のうちの1作品であり、当時の受け手に特に強い印象を残した作品であろうことは充分に頷けた。 当時の流行りもあってかメカニック面の描写が充実しており、用途に応じて変形する「レダの翼/レダの鎧」や、浮遊要塞の機械的でありつつ肉々しい造形などとても良かった。
枯れ木の葉っぱから緑色の葉っぱへなど、演出が光る部分も多数。夢世界での、空中での上下反転を繰り返す戦闘シーンもとても楽しかった。BGMも段階的に速めて興奮を誘っている。のは良かったものの、夢から覚めた後にその勢いで飛び出させずに、ヨニとリンガムを取り巻いていた小型のユニットをこまこまと破壊させるシーンを入れるなど、テンポの悪い部分も見受けられ、シナリオ全体の流れもいまいち乗れない作りだった。


恋は雨上がりのように

2018年公開。
とても面白かった!
メイク係の功績もあるのだろうが、小松菜奈の目がすごい。漫画の再現度がすごいというか、二次元キャラかよとなった。
17歳と45歳という世代差の片思いを用いて、何層にも重ねて挫折と友愛を作り上げている。「帝一の國」も素晴らしかったし、永井聡監督、良いですね。


工作 黒金星ブラック・ヴィーナスと呼ばれた男

2019年日本公開。字幕。原題「공작」
終始緊張感が張り詰めている、素晴らしい映画だった。
北朝鮮に潜入するスパイを描いた作品。というのに、メインに描かれているのは韓国側の政治の腐敗。特に、韓国の政治家の依頼で、金正日がミサイルや威嚇攻撃をする展開があり、それを「同じ民族のため」という金正日のセリフは印象的だった。
金正日との対面にありついた場面でも、細かな動きがあるたびに周囲の高官や軍人が背筋を伸ばすのも面白い。間違いがあれば命はない緊迫の状況、静かな、ただ会話をしているだけのシーンなのにこんなにも緊張感が続いている。
本当に素晴らしかった。こういうスパイ映画をもっと見たい。
それとこれは余談だけども、「神と共に」を履修してしまったばかりに、この映画でもチュ・ジフンがヘウォンメクにしか見えなくて申し訳なくなった。ヘウォンメクかわいいかよ。いやヘウォンメクちゃうけど。


交渉人 真下正義

2005年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
やっぱいいなぁ。
交渉術自体の良さは劇場版2作目のほうが出ていたような気がしないでもないが、スピンオフ映画としてとてもいい出来。
セルフパロディも健在であるし、映画もたくさん出る。


哭声/コクソン

2017年日本公開。字幕。原題「곡성」
ゾンビ物をこんなにも風土と聖書の内容に照らし合わせてアレンジできるものなんだと驚きました。といってもこの映画におけるゾンビは単なる一要素であって、ゾンビ物と断ずるのは不適切だろうとは思いますが、しかし、すごいなぁ。
國村隼とファン・ジョンミン、好き。ファン・ジョンミン、こういう祈祷師もええなぁとなりましたし、湧き出る有能感も良かった。國村隼の「帰すわけないだろう」のところ好きです。


コクリコ坂から

2011年公開。
鑑賞年月: 2020年9月
面白かった。宮崎吾郎監督作品は「ゲド戦記」のイメージが強かったが、本作「コクリコ坂」を見てこんなしっかり面白い作品も作れたんだ、と思った。
60年代を思わせる生活描写が良いし、学生のどのキャラも元気で好き。


ゴジラ

1954年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
東京に上陸し、火を吹き出したあたりからの街の破壊する様が、胸を刺し、かつ胸をすっとさせ、胸にうみを作ってくる。この破壊が何よりも大好きで、とにかく切なくて、同様にわくわくした。送電塔が高熱でぐにゃりと歪むシーン、本当に素晴らしい。
反戦映画としても非常に秀逸で、本来罰を受ける位置にいないはずの科学者が、(責任というより防止という形で)あの最期を取るというのは重要な意味を持つ悲劇である。


ゴジラの逆襲

1955年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
ゴジラ映画2作目にして、なかなか欲張りな一作。初めてゴジラと別の怪獣との戦闘を出しただけでなく、2か所もの舞台でゴジラを暴れさせている。怪獣対怪獣と、怪獣対人間を重ね合わせてみせた。
大阪・北海道のどちらにしても、登場人物全員が標準語を話す点に時代を感じる。


ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘

1966年公開。
鑑賞年月: 2021年6月
ゴジラ対エビラがメインで、モスラは舞台装置的なおまけという感じ(といいつつゴジラ対モスラ的な描写もしっかり入れてある)。
エビラとゴジラの岩のキャッチボールや、戦闘機の攻撃を受けているときの陽気なBGMと共に踊りだすゴジラなど、シュールな場面がたびたび挟まれるのがネタ単品として好きだった。
映画の作りとしては、冒頭の3日踊り続ける若者挑戦者たちのシーンが、終盤、モスラ復活を願うインファント島の住民たちの踊りと呼応しているように感じられてきて、踊りの必死さと疲労をものともしない願いを思わせる良い構成になっている。


ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃

1969年公開。
鑑賞年月: 2019年6月
ゴジラ映画というよりも、ゴジラを題材に使用した現代ドラマといったほうが近い。それでも怪獣映画としての性質を満たしているように見られて、うまい塩梅を見つけたものだなと思った。
まずオープニングの歌からして素晴らしいですね。
説教臭い面はあれど、怪獣という「信仰」(「ミニラ大明神」)を主人公の成長の糧としたところはよい。こどもにとってのフィクションの在り方を大人が大らかに受け入れている、という時点で、この映画は救いのようにも感じられます。


ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃

2001年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
小伏が初めて劇場で観たゴジラ映画。なので思い入れが深い。
2019年にこうして観返してみて、とても面白いことに気づく。
戦争による残留思念という設定でゴジラを出したわけだが、その設定が終盤、モスラから始まる残留物の融合という形で回収されたのが見事だった。モスラを見上げる姉妹も、あれだけの出演なのに話に奥行きを持たせていてよい。


ゴジラ×メカゴジラ

2002年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
皮肉の効いている映画だった。
多くの犠牲者を出し、ゴジラを下すことは叶わずいつまたゴジラが襲来するかもわからない結果となってしまったが、全滅にはならなかったことを「勝利」と呼ぶ。あの引き延ばしのような結果で笑顔をこぼし、拍手喝采の雰囲気さえ作ってしまうお気楽さ。
エンドロール後の主人公の台詞は、そのお気楽さにきちんと水を差している。
ゴジラ→モスラ→ガイラ→本作という時系列設定も面白かった。
また、一斉停電のシーンが迫力があった。
ゴジラがあまり街を破壊しなかったのでその点で不満に思いながら見ていたが、ゴジラの遺伝子の干渉を受けたメカゴジラが、ビルを次々に破壊してくシーンは面白かった。怪獣が通行の邪魔になる建物を壊しているようなのではなく、メカゴジラは意図的にビルを破壊していて、その点でとてもよい。
と、褒めたい点を褒めたものの、基本的にとてもつまらなかったので、うーんという感じ。


ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS

2003年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
面白かった。
作品を通して、前作の出来を批判している。「これを勝利と言っていいのでしょうか?」という台詞は前作の「勝利」ムードを受けてのことであろうし、機龍を破棄すべきか否かというプロット自体も、前作への反省点として機能している。また、日本の体制に対する批判も兼ねており、最後まで判断を保留・先延ばしにしようとする首相の滑稽さを描きつつ、「国会議事堂、崩壊!」のようなテンポの良いギャグ要素(しかも3カットに分けて映している)を入れている。
なぜその滑稽な保留状態をモスラが受け入れたのかは謎。子供の純粋な思いに応えたんだろうか。
小美人も「ありがとう」とさえ言ってるし。何に対しての「ありがとう」なのだろう、さっぱりわからない。
「モスラ」(1961)の中條信一(小泉博)が再登場しているのはそれだけでとても良かった。
あと如月梓(吉岡美穂)の絶妙な棒読み加減が癖になる。好き。
最後の最後、遺伝子貯蔵庫の映像が、人類は結局何も学んでいないことを示していて、好きな終わり方。


ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

2019年日本公開。原題「Godzilla: King of the Monsters」
鑑賞年月: 2019年6月(その他)、2019年6月(字幕)
めちゃくちゃ面白かった! 素晴らしかった! 面白すぎる上に全然中だるみがないから、開始10分くらいから最後までずっと泣きそうになりながら観てました(チップス:小伏は面白いものに触れると泣きそうになるのだ)。
歴代のゴジラ映画の要素がたくさん詰め込まれている。オキシジェンデストロイヤー、復活の素になるモスラ、そして特に熱で歪む送電塔(初代のあれ)を見てもううわわ!となった。ゴジラ映画大好きかよーーー。
人間ドラマが少ないという事前評判を目にしていましたが、それを聞いて期待していたよりは普通に多かった。普通に人間の話を主軸にしているし、怪獣の描き方もキャラ寄り。しかしそのどれもに無駄がなかったのも素晴らしい。
個人的にキングギドラが火山で翼を広げた場面で、画面手前に十字架を置いたショットがすんごく好きだった。三本の首と十字架、そして火山という象形が、否が応にもゴルゴタの丘を思わせる。
そして2回目の鑑賞で、やはりキリスト教映画で、反キリスト教映画であるなあと確信した。ゴジラの復活はイエス・キリストのようであり、その姿に偶像的なゴジラを見立てたのは反キリストのようであり。こういう風土のゴジラ映画は欧米制作のゴジラ映画でしか実現しえなかったことだろう。画面の迫力もさることながら、そういう点にハリウッドでやる意義みたいなものを感じられて、とても感動するものだった。
というか!!! 怪獣がみんなかっこいい!!! 最高! ひゅうう! ラドンかっこわるかったけど、めちゃくちゃかっこよかった。飛んでいくだけで地上の人やトラックが吹っ飛んでいくの、初代モスラを観たときのことを思い出したりして本当にかっこよかった。ギドラももう、とんでもなくかっこいいし、強すぎるし、もう。もう。そのうえで立ち上がるゴジラのあの姿よ! 体中を超高熱が帯び、まるで生きる活火山のように動くラストのゴジラ……ゴジラ……!!


孤独なふりした世界で

2019年日本公開。原題「I Think We're Alone Now」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
良い終末映画。静かな時間の流れが綺麗だし、ひとつひとつのエピソードも肩ひじ張らずに収まっていた。
ゴーストタウンと化したことを示す描写が上手い。たとえば冒頭、民家に忍び込んだ主人公が、電池は回収しても紙幣にはまったく手をつけないところに、終末の空気感が出ている。金銭のやり取りをする相手なんておらず、この町で生き残ったのは主人公デル(ピーター・ディンクレイジ)だけ、というのを端的に示した良い描写。
また、(そりゃそうなのだが)死体が残っているのも好印象。終末物でよく見る、人が跡形もなく消えたというような設定に甘んじることなく、町は死体で溢れ、「臭い」もする。それをひとつひとつ埋葬していくデルの行動を見せることで、それ自体がエピソードにもなるうえ、デルの性格を示す描写にもなっていて、効果的。
あと、カメラワークとしてピントの合わせ方が面白い。デルの最初の埋葬シーン、遠景から緑のクレーン車を映しているが、鮮明なのは背景の景色で、肝心のクレーンはぼやけている。おいおいぼやけてるやんと最初は思ったが、それからもたびたび、動作主ではなくその周囲にピントを合わせている場面が登場して、なるほど、となった。「孤独」であるという認識と、実際の現実との相違を描いた本作に、この手法はよく合っている。


言の葉の庭

2013年公開。
雨粒の跳ねる描写や波打つコンクリートの壁が非常に綺麗。
ストレスによるあれやこれやが、胸に刺さる。


この世界の片隅に

2016年公開。
[一度目に観たときの感想]
描き込みがすごかったです。ディテールの凄さと言う意味では、「シン・ゴジラ」に通ずる響き。
この題材を、まさに「片隅」というスタンスで見せた点が居心地よかったです。
人攫いのシーンで、ああマジックリアリズムだマジックリアリズムだと興奮した覚えも。
[二度目に観たときの感想]
背景の作り込みの細かさと、涙を誘う下地は二度目の鑑賞でも強く感じる。
マジックリアリズムの必然性は初めて観たときよりも強く納得するものがありました。ラストの子を出すスムーズな橋渡しになっている。終戦しても人生は続いていく。あたりまえなのに、見落としていただろうこと。
傑作です。


コンセント

2002年公開。
シャーマニズム・ホラー。面白かった。
この現代社会、しかも都市部で、主人公ユキが徐々に“覚醒”していく話。「コンセント」が比喩的な面が強くて、持ち歩いていたコンセントそのものを、最後活かせただろう場面で出してこなかったのは少し不満でしたが、でもそれも理解できるもので、ユキ自体がコンセントなんですよね。覚醒する前も、律子にとってコンセントでしたが、覚醒することによって(すなわち都市シャーマンになることによって)すべての人間のコンセントになった。だから実物のコンセントはもう「必要ない」のですね。セックスの描写が多かったのも、性器がコンセントの換喩として提示できるから。
都市とシャーマンを結びつける小道具として、金融を一種のオカルトと表現したのも上手い点だったと思います。
あとつみきみほさん演じる律子の人物造形が好きです。


コンフィデンスマンJP -ロマンス編-

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
つまらない。
配役が豪華だが、良い俳優を起用するのなら良い画を撮ってくれ……と思う。特に東出昌大と前田敦子。


サイコ

1960年日本公開。原題「Psycho」
鑑賞年月: 2020年11月(字幕)
言わずもがなヒッチコックの代表作のひとつ。
残り1時間近くを残してあの展開になるのは驚いた。あんなに感情移入させる手法を取り入れているのに、あっさり死なせてしまい、次の視点に移る。意外と現代でも見ない構成。


サイレン

2017年Amazonビデオ配信開始(日本劇場未公開、DVD未リリース)。字幕。原題「SiREN」
けっこう面白かったです。演技が良い感じだった。
敵役が好きですね。どんなキャラクターでどんな世界観なのか、いちいち説明しないので、鑑賞に心地よい情報量で作品の内容に浸かることができました。
最後、妻だと思い込んでセックスしていましたが、つまりリリスは人間である主人公を思いやって、今度は尻尾を刺さずに性交したというわけで。その辺含めて、全体的にリリスの健気なキャラクター性が出ていて良かったと思います。


サウンド・オブ・サンダー

2006年日本公開。字幕。原題「A Sound of Thunder」
なぜ人はB級映画を求めてしまうのだろう。B級映画が観たいなぁというときにおすすめの映画です。
背景がチープで好きですし、ストーリー自体はまとまりがあって良い。ヒヒと恐竜を組み合わせよう(ヒヒトカゲ)という発想も良かったです。


ザ・コア

2003年日本公開。字幕/吹替。原題「The Core」
科学考証は面白さに寄与するためにあるんであって、こういった、古典SF然とした作りのものには、必要ない。どうしても気にしてしまう感情はあっても、それよりも絵的な壮大さと人間ドラマの面白さと冷徹さが前後する、名作SF映画だ。こういうの大好き! こういうのを見て私は育った!
マントル内の映像表現が非常に楽しい。神秘は頭上だけでなく足元のほうにも隠されてあったのだという発想は、実にセンスオブワンダーがある。特に宇宙よりも未踏である分。
そして最後、英雄的な終わり方にするべく動かれたスーパーインターネット。全世界へと情報が伝達していく様子と、回復していく電磁場を重ね合わせたラストの映像表現が実に美しい。
コンラッド・ジムスキー博士(スタンリー・トゥッチ)、大好き。


ザ・シークレットマン

2018年日本公開。字幕。原題「Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House」
リーアム・ニーソンが従来の作品よりもすごくシュっとしてて驚いた。体づくりとかしたんやろか。
ウォーターゲート事件に関する背景知識なく見たが、毒を持って毒を制したような、絵面以上に力強い反抗心を感じさせる。


サスペリア

1977年日本公開。字幕。原題「Suspiria」
[4Kレストア版]
特殊な色彩効果と、ゴブリンによる主題歌。そしてストーリーから解放された、映像構成の数々。
陳腐なはずの展開を、技巧をもってまったく別のものにした怪作。


サスペリア

2019年日本公開。字幕。原題「Suspiria」
天才。
え、すごい。なにこれ。まじか。
原作とは異なり色調を抑えたうえで、ラストでのあの真っ赤な光。
ダンスも、すごい。
すごい。


貞子vs伽椰子

2016年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
単純にホラー映画として見ても、ネタとして見ても良質な映画。


殺人の追憶

2004年日本公開。字幕。原題「살인의 추억」
やべえ。
証拠を捏造したり、容疑者を拷問し捜査に都合の良い供述をさせたりする主人公の罪悪感の無さがすごい。マジでなんとも思っていない。主人公のその姿勢に反抗するソ刑事でさえ、捜査が難航し追い詰めていくにつれ彼らと同じか、それ以上のことをしようとしてしまう。推測ではなく思い込みの連続。ラストのあれにしたって、主人公は容疑者に対して高圧的に「行け」と"許し"を出してやるのみで、主人公たちになんのおとがめもなかったかと考えると相当きつい。まあ、ペナルティはあったとは思いますが、「俺にはもう分からない」と自省したことさえ、時が過ぎた今では「目を見ろ」と息子に言ってしまう、あの自覚の無さ。
そして劇中最後の被害者が襲われたときが、雨も降っておらず、赤い服も着ておらず(これは最後に限らない)、警報訓練によって村中の人間が家にこもらされているときだったという、どうしようもなさ。国家権力のどうしようもなさで女性たちが被害を受けていくどうしようもなさ。警察という国家権力の醜態をこれほどまでに描いたラストの被害者に、この状況を合わせたのは本当にすごい描き方でした。


サニー 永遠の仲間たち

2012年日本公開。字幕。原題「써니」
面白いなぁ。
現代パートと高校時代パートの切り替えが非常に上手かった。扉をくぐったタイミングであったり、壁際から覗き込む構図であったり。それらのシームレスな切り替えが、失恋時のベンチのシーンで活かされていて、素晴らしい。
コミカルなシーンが多く、ついつい笑わせられる場面が多い映画でしたが、同時におそらく80年代後半の世相を反映した絵にもなっているのが面白い。デモ隊と軍隊との衝突に紛れて、サニーら不良グループが激闘してるの、非常に面白かったです。あと喫茶店から帰るシーンの、道で待機している軍人たち。
チュナが社長であったと明かされるのが唐突で、サニーの仲間たちへの支援が現実味から乖離しているように感じたので、そこだけもったいなかったなという印象。それまでずっと、男性社会での妻・母の扱いや、世情の変化について現実に寄り添って丁寧に描かれていた作品だと思ったので、ラストで急に作り物臭くなるのはもったいない。もう少し効果的なタイミングがあったはず。後味は良いですけどね。


サバハ

2019年Netflix配信開始。原題「사바하」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
意外と主人公がひょうきんなキャラ造形で、終始シリアスな演出ではあれどTRICKみたいな雰囲気。


ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years

2016年日本公開。原題「The Beatles: Eight Days a Week」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
ビートルズやっべえな、ってなった。
ビートルズがライブ活動に比重を置いていた数年間の活動を追いかけたドキュメンタリー映画。
アメリカ南部のライブ会場での人種隔離を撤廃させたことなど、当時の社会状況の説明も適度に挟みながら撮られており、当時を知らない者に実感をもたらしてくれる。


さびしんぼう

1985年公開。
鑑賞年月: 2021年6月
素晴らしき青春映画。ショパンの「別れの曲」を劇伴としても題材としても非常にうまく使いこなしている。
人を想っている人は寂しくて、しかし寂しくない人よりは幸せだと話す「さびしんぼう」の台詞が印象的。また、ショパンの人物背景を授業のシーンでさっと触れることにより、ラスト、音楽を作り出したショパン自身の寂しさ(≒幸せ/思い出)をも描き出すことに成功している。そうすることで、劇中では3代に渡って描かれた寂しさが連綿と続く普遍的な人の感情へと昇華できており、とてつもなく器用だし、胸に来た。オルゴールを映したことで、「似ている人」じゃなくて「本人」じゃんと気付かせるのもロマンス溢れるポイント。(監督の意図とは異なったらしいという言説もあるらしいが)
「こっちの顔だけ見てください」というように、青春時代のきらびやかな思い出だけを抱いて生きてくださいといいつつも、その裏の顔、つまり青春時代を終えた後の大人の時代や、あるいは青春期だとしても本人だけが抱える問題や人生の暗部があるわけだが、このラストはその両面を主人公が迎え入れる結果となっており、とてもロマンチック。それでかつ、「思い出もひっくるめてお前の母さんが好きなんだ」と語る父親のように、その二つの側面は必ずしも同一人物が対象でなくともよいことも描けている。青春の懐かしさと、現在の大人の自分との両面に訴求した素晴らしい作り。
だからこそ「別れの曲」とお経、さらには別のBGMを重ね合わせるなどして、音楽によるモンタージュを成立させているところが印象的だった。お経重ねるのすごくない? 混ざりすぎず独立しすぎず、すごく上手くひとつの映画に融合されているような感覚。
さびしんぼうとの別れの場面、さびしんぼうの目元から涙(か雨粒)が零れ落ち、黒い塗化粧が垂れていくタイミングもすごすぎた。
尾道三部作の三本目だから、というわけでもないかもしれないが、主人公が覗くファインダー越しのカラー映像の中で橘百合子の顔だけモノクロにしていたりと、「時をかける少女」と真逆の演出を見せている部分があったのも面白かった。
うーむ、こうして雑感として言語化してみればみるほど、傑作だったなとしみじみ感じてくる。大林監督すごいなぁ。
といいつつ、ストーカー気質な覗きだったり、覗いていた事実を直接本人に伝えたり、スカートが脱げた相手に「ありがとう」だったりと、(悪い意味で)昭和だなぁと思ってしまう部分もあり、少しひねた目線で見てしまう面もあるにはあった点も、一応書き記しておきたいところ。でもそれひっくるめて80'sノスタルジーに入るのかもなぁ。いやどうかなぁ、という感じ。


ザ・ファブル

2019年公開。
うーん。
岡田准一が良かった。歩く姿だけで存在感が出てて好き。
演出などはテレビの2時間ドラマかよという陳腐な感じが鼻をついて厳しかった。ツッコミのタイミングとか、妹役の強さを明かすタイミングとか、手垢つきすぎではと思ってしまう。
それはそうと、人をひとりも殺してはいけないという制約があるので、倒した敵もすぐに起き上がってわらわらと群がってくるのがすごく絵になっていて良かった。アクション自体は微妙だったけども、絵面的によかったのでよい。


ザ・プレデター

2018年日本公開。字幕。原題「The Predator」
強いプレデター!優秀な軍人たち!全然面白くないジョークの掛け合い!熱い男たちの友情!という感じで、まさしく見たかったプレデターが見れた感じで良い映画でした。イメージでいえば、「プレデター2」と「プレデター」の2本仕立て(あえて2→1の順に並べる)を2時間弱の間に詰め込んで観たような満足感。
特に素晴らしかったのが、男二人が、お互い楽になるために拳銃を向け、発砲するシーン。内容的にも、映像的にも非常に美しくて、そのシーンだけでも映画一本分の満足感がありました。本当に美しかった。
終わり方はあまり好きではないんですが、まあ、続編に担保される部分ではあるので、良しとする。


ザ・ベビーシッター

2017年Netflix配信開始。原題「The Babysitter」
鑑賞年月: 2020年5月(字幕)
怖いやつやん!!!!
怖いやつやん!!!! 誰やコメディ映画とか言ったやつ!!
現代版「ホームアローン」という前情報を仕入れていたので、そういうハチャメチャホームコメディ映画なんだろうなぁと何も疑わずに見てしまった。まあ現代版「ホームアローン」なのは嘘ではなかった。ただ人がめちゃくちゃ死ぬという点が違うだけで。
人が死ぬし、主人公も人を殺す。どれも不可抗力的にではあるが、ときに「ホームアローン」的なピタゴラ装置を使って。12歳のこどもが訳も分からないままに人を殺してしまうパニックもすごく怖かったし、あと上半身はだかのあいつ! あれに追いかけられているシーン怖すぎてびっくりした。緊迫感すごい。
怖い怖いとここまで言っている通り、没入感ある良い映画だった。いじめられっ子だった主人公が悪魔崇拝ベビーシッターとの攻防を経て強く成長していく王道の構成も、とても堅実に作られていた。
あと実際のところ笑えるシーンも多い。怖いコメディ映画です。


ザ・ベビーシッター キラークイーン

2020年Netflix配信開始。原題「The Babysitter: Killer Queen」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
おおー、面白かった。
こういう、パロディの使い方が巧みな作品はやはり好きだなぁ。
「ターミネーター」が伏線になっている。
前作も痛快で面白かったが、むしろその出来事がきっかけで周囲の冷笑にあい、本作の人格形成になっているのも意外と説得力があった。
冒頭の夢落ちまでのシークエンスも、上手いショットがつながっていた印象。やっぱマックス(ロビー・アメル)怖いわ。大好き。


サマータイムマシン・ブルース

2005年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
めちゃくちゃ面白かったー!


さらば、愛の言葉よ

2015年日本公開。原題「Adieu au Langage」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
これ劇場で観たかったなぁ。できれば3Dで観ましょう。3Dで。
犬が川を流れるシーンで驚愕した。よく撮れたなあんなシーン。他にも森の中を進んでいく犬の尻尾が、木で見え隠れしているシーンにウウッとなる。
「アブラカダブラ 毛沢東 ゲバラ」(赤信号につかまらない呪文)


三十九夜

1936年日本公開。1935年製作。原題「The 39 Steps」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
面白かった。巻き込まれ系主人公の原点。
なぜアナベラ・スミスが襲われたときにハネイは刺されなかったのかとか、違和感はあるが、やはり古い作品だとその辺甘く見てしまう。
電車で乗り合わせただけの女性のファーストインプレッションと、その後の誤解が解けた後の親近感がよい。あと、そうして優しくかけてあげた毛布を結局奪い取るところも好き。
マーガレットが不憫で、「きみのことは忘れないよ」だけでなくて単に夫にコート返してやれよ、とは思うのだが、もちろんそんなシーンを入れる余地は本作のラストにはないので、仕方ないところ。


三大怪獣 地球最大の決戦

1964年公開。
鑑賞年月: 2020年3月
キングギドラが初登場した作品。
サルノ王女の演出がすごく好きで、飛行機から超常現象的に脱出するところや、「私は金星人です」と名乗って演説をするところなど、非常に楽しく見た。「美しい星かよ」って突っ込みたくなる(「美しい星」が1962年刊行なのもあり)。
テレビ番組に出演する小美人にはさすがに笑ったが、しかしその、本来超常的であった存在が日常の自明のものと化しているところに、社会的変化の趣があってよい。島での歌も日本語だったし。


散歩する侵略者

2017年公開。
そうそう。こういうの。宇宙人の侵略を題材にしながらも、映画が見せているのは現代の日本。人々の知らぬ間に釜茹でになっていく、(特に政治への)危機感。こういう、ふたつのコンテクストが融合している作品をこそ面白いなと思うものだし、個人的に評価を甘く見てしまう。
米軍基地反対の看板や、立花あきらが死んだ直後の桜井の演説。こうやって分かりやすいピースを差し出し、「言うことは言った。あとはご自由に」と観客にバトンを渡す。メタファーの姿勢としてよくできているし、面白い。ただ、「二カ月後」直後の、小泉今日子が出てくるシーンがものすごく無駄で驚いた。この映画は宇宙人の侵略を見せていますが、実際は今の日本のメタファーなんですよ、ということを、まさかのそのままセリフで説明させてしまっている。既に様々な描写で見せてきたことを、最後にわざわざ懇切丁寧に説明してくる。そういうのじゃ見ているこちらは興醒めであるし、単純につまらない。なんだかな、と思ってしまうところはあった。
それはそうとして、松田龍平がはまり役でとても良かった。こういうぼんやりした役すごく合ってますよね。「泣き虫しょったんの奇跡」もすごくよかったけど、そういう路線をここでも見せてくれている。牧師役の東出昌大とのツーショットは見ていて不思議と幸せな気分になった。好きな俳優は好きなんやな。
空の色や、光の当て方なども好きだった。
ただCGがとてもしょぼいので、その点でしょぼいなとつい思ってしまう。仕方ない面ではあるけども。


ジーパーズ・クリーパーズ

2002年日本公開。2001年製作。原題「Jeepers Creepers」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
だいぶ変化球のホラー映画。なかなか想像していたのと違って面白かった。
ホラー映画的な演出・編集をほとんどないものにし、殺人鬼(今作の場合は悪魔)の姿をはっきり見せる、主人公たちがあっさり教会から逃げおおせる、あまつさえ悪魔を車で何度も弾いてしまえるというように、脅威であるはずの相手を可能な限り物理的な現象に落とし込んだ制約の下で作り出している。
特定の制約を課したうえで作られた作品は、王道のストーリーラインを通ったとしても完全なる別物になる。本作もそういう新鮮さを味わえる作品だった。その代わり怖さは完全に消えてしまってはいるが、こういう意欲的な作品はついつい好意的に見てしまうし、ホラー映画の面白さは怖さだけではないですしね。
面白かった。


シェイプ・オブ・ウォーター

2018年日本公開。字幕。原題「The Shape of Water」
悪役の、軍人ストリックランドの人物造形が完璧でした。


ジェーン・ドウの解剖

2017年日本公開。2016年製作。原題「The Autopsy of Jane Doe」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
めちゃんこ面白かった!
リアルな(少なくとも、医療知識のない自分にとってはリアルに感じ取れる)解剖描写がまずすごいし、それでいて超良質なホラーである。とても怖かった。
前半では謎の遺体を解剖しながら、遺体の不可解な状態をひとつひとつ取り上げて、謎を深めていくサスペンスの体で進んでいく。ここからしてまずわくわくした。そしてその謎が、この遺体が明らかに普通の遺体ではない、どころか冒頭の事件の犯人の可能性さえ感じ取った観客としての自分は、いつ遺体が動き出すのだろうとさえ思った。しかしそれと同時に、これは最後まで遺体は遺体のままで動くことなく、別の犯人や真相があるのではないか?とも思わせる。そうやって「わからない」状態のまま、どんどん謎が進行していくテンポの良さが、遺体解剖の視覚的な面白みと一緒に恐怖を掻き立てる。
(ここからはネタバレになるので未見の人は読まないでほしい)
中盤の、別の遺体が動き出したあたりからはよくある形のジャンル形式に沿ったホラーという感じで、安心して見れたが、それだけに留まらず、遺体の謎を解明するところまで主人公らの行動を進めたことで、安心安全のホラーから再度軌道変更し、新たな曲面を見せているのが素晴らしい。つまりサスペンスなのか怪奇物なのか「わからない」状態での宙ぶらりんな怖さ→ありがちなホラーのよく見る怖さ→「わかる」面白さとそれを逆手にとって提示された怖さという形式の3つの変遷をたどっており、飽きさせない。
なぜ布が消化されていなかったのか、なぜそんな布があったのかなぜ皮膚の裏があんなことになっていたのか、なぜ臓器があんなにも損傷していたのか、そのすべての理由が、主人公たちが今までやってきたことに集約される楽しさ! 後世の主人公たちに真実を伝えるべくああしてメッセージさえ残そうとしたことや、悪魔祓いのような儀式まで行おうとしていた痕跡が後々思い返せばわかっていく。そんなよくできた映画だった。
あと親子なのもよかったよね。怖さの中に人間劇もあってその中に仲のいい親子愛の安心感もあって……。
とても面白かった。ホラー映画としておすすめの一品。


シェフ 三ツ星フードトラック始めました

2015年日本公開。原題「Chef」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
面白かった。良きヒューマンドラマコメディ。
下ネタが多いのに謎の陽キャ空間の醸成によって全然下品でない空間になっているのもちょっと不思議だった。
元カノと元妻と元妻の元夫が出るような人間関係の複雑さなのに、そういうのもあるよねってなる自然さある演出。
そして何より料理がすべてとても美味しそうだった。


ジェラルドのゲーム

2017年Netflix配信開始。原題「Gerald's Game」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
性的被害に傷ついたことのあるすべての男女のための映画。
無知な幼い頃に父親から性的なアクションを受けたり、父親本人にとっては(きっと)無自覚な性的抑圧を受けた経験は、おそらく誰しも大なり小なりあると思うが、そういう記憶が刺激されて見ていてとてもつらくなる映画だった。
そういう秘めた記憶を、秘めたまま自罰的につらくなるよりも、公にして生き延びるために共助していこうというような結論は、力強くもあり、しかし秘めたままにしておきたい人にとっては強要されているようにも感じる圧迫感があり。といった感じで、まさしく#MeTooを体現している映画でもあった。
手錠から抜け出す絵面が非常にグロテスクで、その分、生き延びる壮絶さも感じさせる。
日食の環が浮かぶエンドロールも美しい。


四月物語

1998年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
こういうのを作りたいんだよなー。
地力の高さがすごい。この構成でこんなにも面白くできて、すっきりとした流れにできるの、そう簡単にできることではない(形にすること自体は簡単でも、たいてい形になるだけだ)。単純なストーリーを単純なまままとめ上げた膂力もそうだし、終わらせ方のちょうどよさも素晴らしい。
松たか子も素晴らしくて、引っ越し作業を手伝おうと右往左往するところとか見ているこちらもそわそわさせられたし、自己紹介、人との会話の心細い話し方、すべてがすごく演じきっていて良かった。
佐野さえ子(留美)も好き。ストレートな物言いをする性格が顔に出せていて良かった。
気持ち悪い大人もいれば親切に傘を貸す紳士もいる。一人暮らしを始めた新大学生の、一期一会の邂逅という感じの話運びもとても良かった。
作中作の「生きていた信長」も、DVDに併録の完全版ショートフィルムを視聴。
基本的にこのカメラワークで見る時代劇が物珍しくて良かったが、ラストのタバコのシーンはもう少しわかりやすく時代錯誤に作れたのではないか、とも思った。


シグナル100

2020年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
役者の演技の引き出しが少ないのか、それとも演技指導が徹底していないのかは定かではないが、とにかくどのキャラも最後まで掴めなかった。たぶん制作陣もどのキャラがどんなキャラだったのかあまり把握していないんじゃないかと思う。キャラがぶれている以前に、キャラがない。辛うじて和田君(瀬戸利樹)だけ印象的だったが、後述するようにやはりキャラが掴めない。
和田君、終盤あたりで榊に対するドでかい矢印が見え隠れするんだけど、結局それは観客の勘違いに終わる。榊を生かすために暴挙に出たわけでもなければ、自分ひとりが生き残るための利己的な選択を全うすることもできない、あるいは計算ずくの演技で自殺を誘ったとする演出にするわけでもない、そしてそういう自己矛盾を、自己矛盾として描けていない。キャラの内部で人格のぶれが生じていて、キャラ本人でもどうすればいいのかわからないままに暴挙に出ること自体はまま見られる光景だが、ならば開き直ってぶれているように演出すればいいだけのこと。しかしこのキャラは、ぶれているにも関わらず、ぶれていること自体も自覚できず、結局なにもできていない。
あと、主人公の樫村怜奈(橋本環奈)。最後、催眠が解除されてから泣くシーンを入れるのならば、それまでは泣こうとしないでほしい……。「泣く」行為がシグナルのうちの1つであり、泣いてはいけないとみな口では言うが、特に橋本環奈は劇中よく泣いていた。ここでの「泣く」とは「涙を流す」ことを指すのだとは理解できるが、劇中涙を流してはいけないタイミングでの演技と、終盤涙を流しても死なないタイミングでの演技が、まったく同じなのだ。また、唯一「泣く」ことが原因で自殺した人物の演技も、他のキャラの悲鳴や嗚咽と何ら違いが見られない。もちろん、一方では涙を流しておらず、一方では涙を流している。そこに大きな違いがある。しかしそこ以外はまったく同じように、橋本環奈は嗚咽し声を震わせている。もう少しこう、必死に涙をこらえ、それでも友達の死を哀しむような演技もできたのではないかと思うのだが、そんな演技をしてくれる人は一人も登場しなかった。みな、死が隣り合わせであるにも関わらず泣きそうなのをこらえようとしなかった。ただ、結果的に涙が流れなかっただけで。演技をしないどころか、しようとさえしていないんじゃないか? と思ってしまって、そこが悪い意味で(納期を守るだけでなく、可能な限り俳優を拘束しない)プロの仕事だなと思う。
というよりこの「泣く」、「涙を流す」に表現を変えるだけでもだいぶ違和感は払拭されたんじゃないかと思う。目が潤んでいるのは(涙は零れ出ていないので)セーフとわかれば、その分よりハラハラできるかもしれないし。
ただ冒頭、壁に頭を打ち付けて自殺するシーンは、なかなか執拗に頭を打ち付けていて良かった。スピーディに死なすだけでなく、それなりに人体を丈夫にして、それが砕けるまでがつんがつんと頭を打ち付ける、音響の長さが良い感じ。


シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

2016年日本公開。字幕。原題「Captain America: Civil War」
とても良かった。こういうクロスオーバー作品のお祭り的な要素を遺憾なく発揮しながらも、同時に叙情的な「キャプテン・アメリカ」に仕立て上げた、アンチヒーロー映画の傑作。フェイズ3の幕開けとして非常に重要な意味を見いだせている作品であるし、この方向性へと舵を切ると宣言してみせた作品となった。
ブラックパンサーとスパイダーマンという、まだ本人の本編が出ていない登場人物も出したのも良かった。特にブラックパンサーについては、どんなキャラなのか観客は掴めていない状態で観るので、ラストの行動に驚きが出るし、その誠実さに心救われるところがある。
面白さというより単純な好みでいえば、これまでのMCU映画でもっとも好きな映画だと思う。


市民ケーン

1941年アメリカ公開。1966年日本公開。原題「Citizen Kane」
鑑賞年月: 2021年1月(字幕)
「Merry Christmas」「And a happy new year!」でシーンが変わるところが流麗すぎて驚いた。この切り替えについては前もって知っていたにも関わらず驚いた。
話自体は物寂しい。最期に思い出すのは親といた幼少期という物寂しさと、しかしその心のうちは他の人には決して知られることないという物寂しさと。ラストシーンも無用に説明を入れるわけでもなく、ただソリにズームインしているだけなのも素晴らしいし、それでも幼少期の雪のシーン自体が工夫して撮られているから、記憶に残り、想起しやすい作りになっているようにも思われた。つまり手法と話の構成が合致していて、その点で素晴らしい。


シャーク・ナイト

2012年日本公開。原題「Shark Night」
鑑賞年月: 2019年6月(字幕)
ええやーん。
ダルマザメ好き。というか、主犯がサメオタクなのがいい。楽しそうにサメの解説してて好き。
それと最初の30分間くらい、楽しそうな大学生のノリがうまく再現されていて良かった。BGMに合わせて映像をリピートするところとかとてもよい。


シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム

2012年日本公開。吹替。原題「Sherlock Holmes: A Game of Shadows」
脳内戦闘に笑った。


シャイニング

1980年日本公開。字幕。原題「The Shining」
人間の狂っていく様が非常に真に迫っていて、見ごたえがありました。
音楽が良い感じで、なんでもない場面でも怖さを出してくる。
超能力「シャイニング」が救いのための良い機能になっていました。


シャザム!

2019年日本公開。原題「Shazam!」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
面白かった。
能力の検証テストをYoutubeにアップロードするの現代っ子って感じあるし、スーパーパワーと主人公のエピソードをうまく絡めているのもいい。終盤、玉座の数が示す展開にもおおーっとなった。


シャッター

2008年日本公開。字幕。原題「Shutter」
面白かった!
奥菜恵目当てで見たが、内容も良かった。「昔のチームだ」と話すあたりの微妙な雰囲気など、序盤の細かい描写がうまく伏線として利いているし、こういう映画にありがちな不条理な作りに甘んじるのではなく、幽霊の動きに正当性を持たせている。
それと所々撮り方が綺麗だなーというシーンがあったのも良かった。写真を題材にした映画であるだけに、画作りが意識的。たとえばブルーノが飛び降りたときの顔への反射とか良かった。


ジャンパー

2008年日本公開。原題「Jumper」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
公開当時に観たときにめちゃくちゃ印象的だったシーンがあったはずなのに、2019年に観返してみたら、そんなシーンはなかったことに気づく(なかったというよりも、あったけどしょぼかった)。ええぇ……たった10年ちょっとなのに記憶捏造しとる……、とショックを受けてた。作品と関係ない雑感。
グリフィン・オコナー(ジェイミー・ベル)いいよね。とてもいい。
それとチェチェンに飛ばされた車の運転手が、車ごと戦車に潰されるシーンが大好き。


獣人

1938年フランス公開(1950年日本公開)。字幕。原題「La Bête humaine」
ゾラ原作。
「男はみんな狼よ あなたも」
男であるということはもはや病気のようなものであって、「信頼と思いやり」と「恋」を天秤にかけた場合、無邪気にも「恋」を選んでしまう、どうしようもない性質を持っている。その性質の犠牲者セブリーヌは、男のその性質を逆手にとってこの社会を生き延びようとするも、衝動的な殺人欲求を抱えているジャック・ランチェに殺されてしまう。「ニネートの物語」でも、ラストで機関士がランチェに語りかける台詞でも見られるように、暴力を行使した男性は「可哀そうに」「どんなにつらかったことだろう」と思い測られる一方で、暴力を行使された女性のほうには関心は寄せられない。そのねじれを客観的に描けているかというと首を傾げてしまうところはあるが、実際に形になっていて、面白い。
また、汽車が動くカメラワークが大変素晴らしい。


ジュマンジ

1996年日本公開。字幕。原題「Jumanji」
ええなあ。


ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル

2018年日本公開。吹替。原題「Jumanji: Welcome to the Jungle」
ジュマンジ、マジ卍。
(制作的な意味で)バカ映画を期待して観に行ったら、普通にしっかりした作りの映画でした。
2時間でRPG一本仕立て上げたと考えるとやはり結構すごいのでは。
小道具も一部利いていて、特に最後のボーリングの球はとても良かった。しっかりした作りでした。


ジュマンジ/ネクスト・レベル

2019年日本公開。原題「Jumanji: The Next Level」
鑑賞年月: 2020年1月(吹替)
全体的にはさほど面白くはなかったが、終盤からオチにかけて非常に素晴らしいまとめ方になっていて、余韻の気持ちいい作品だった。
「レディ・プレイヤー1」がしなかった(できなかった)ことを成し遂げている。
そりゃ、余命いくばくもない老人なのだから、ゲームの世界に生きる選択をした心理に疑問の余地はない。けれど「レディ・プレイヤー1」の論理展開であれば決してゲーム世界に残すようなことはしなかっただろう。ゲームの中もまた、人とのつながりや自己実現の在り方としては「現実」と同じであることを、あの映画は見落としていたのかな、と今更になって思い至るような、そんな終わらせ方だった。
そしてあのクリフハンガー。これはめちゃくちゃワクワクする。「ジュマンジ」じゃん。
同じ監督、(ほぼ)同じ脚本陣であるにも関わらず、前作に比べギャグのキレが非常に悪かった。
あと老人ふたりの、世界観についてこれていない感じがとてもリアルで良かった。


ジュラシック・シャーク

2013年DVDリリース(日本劇場未公開)。吹替。原題「Jurassic Shark」
稀に見るクソ映画。クソ映画の次元が違うクソ映画。
湖でサメから逃げ、湖の端まで泳ぎ着いたが岸に上がることなくその場で一息つくのがとても面白い。そりゃサメも食べますわ。
吹替で観たのでどこまで元のせいかは分からないが、台詞もクソ。人の死を悼むのもクソ。
あとエンドロールが13分ある。すごい。


ジュラシック・パーク

1993年日本公開。字幕/吹替。原題「Jurassic Park」
2017年現在に久々に観たが、こうしてみると、1作目って空気薄いなぁと少し思った。こうしてみると、というのが本当すごいところですが。


ジュラシック・パークIII

2001年日本公開。字幕/吹替。原題「Jurassic Park III」
何度見てるんだこの映画。さすがに見すぎである。実際にそのシーンになる前から「このシーン好き!」って反応してしまう。好きなシーンで条件付けされている。恐ろしい。


ジュラシック・ワールド

2015年日本公開。原語/吹替/新吹替。原題「Jurassic World」
面白い! パークシリーズへのリスペクトも強い。


ジュラシック・ワールド/炎の王国

2018年日本公開。字幕/吹替。原題「Jurassic World: Fallen Kingdom」
「ジュラシック」シリーズの新時代を拓いてみせた大傑作。
従来のジュラシックパーク・ジュラシックワールドのエンタメ性を踏襲しつつも、後半から一転させ、ホラー要素満載な演出に舵を切っている。 そのうえで繰り出される、文明批判的なメッセージの力強さ。イアン・マルコム博士の語りがよく効いているし、「ようこそジュラシックワールドへ」という決まりに決まったあの台詞は、この映画シリーズの新時代を宣言するものに他ならない。いいぞいいぞ、人類よ滅びろ! いえーい滅びろーヤッター!
吹替(平田勝茂翻訳)で観るのをおすすめする。字幕と情報量が大きく異なる。


少林サッカー

2002年日本公開。字幕/吹替。原題「少林足球」
サッカーとは。
たまに観たくなる良さがある。観れば観るほど面白くなる作りではなく、最初の1回がずっと面白い映画なので、何度も観たってしょうがないのだが。でもたまに観たくなるよね。
修行した内容でキャラ付けを分けているのがいいなと思う。
決勝戦の相手GK好き。


ジョーカー

2019年日本公開。原題「Joker」
どうしてこんなに幻覚と現実をごっちゃにしたような演出にしたんだろう? と不思議だったが、2度目の鑑賞で合点がいった。そもそもこの映画はこれがしたかったのだ。
ごっちゃにするのがこの映画のメインであって、その他の要素はそれを引き立てるためのディテールでしかない。
拳銃について。3人を殺す場面で8発撃ったのももちろんだが、それよりも、生放送中に発砲した場面が幻覚に近く感じる。自分の家で、舞台袖から登場する練習をするシーンで、空の拳銃を撃ったシーンを見せることで、もう弾はないのだなと思わせている。ところがそのシーンの後に弾を込めていたらしく、生放送ではあの行動に出るというのは、計画的。
恋人の存在が幻覚だった、と気づいたシーンで驚いたが、それによってスクリーン内のいろんなものが幻覚に思えてくる。生放送のシーンは初見時いつになったら夢が覚めるのかなと思っていた。テレビにアーサーの初舞台の映像が流されたときも、テレビを見ているのはアーサーひとりであったし、電話も同様。冷蔵庫に入ったシーンの後に唐突に電話を受けるシーンに変わる、あのわざとらしい違和感。これらのシーンは、アーサー本人のほかにその出来事を証言してくれる「視点」が存在しない。そしてラスト、冒頭で語られた精神病棟に収容されているアーサー。この映画自体がアーサーの思いついた「ジョーク」である可能性もあるし、もちろん、すべて本当だった可能性もある。煙に巻くオチは本編の演出と密接に関わった、何度も何度も塗り重ねられたオチで、世界が狂っていっているのか、それとも狂っているのはアーサーだけなのか、読み解けない仕組みになっている。
その演出ができているかできていないかといえば、非常にうまくできている。
そしてその演出が面白いか面白くないかでいえば、個人的に面白くなかった。もっとガツンと実感を持たせてほしかった。誰もがジョーカーになれる、「これは私の物語だ」と観客に思わせるのが狙いならば、この演出では単に観客との距離感を無用に生み出しているだけなのではないかと思う。
ただそれにも増して、主演ホアキン・フェニックスの笑い方は天才的である。


ジョーズ

1975年日本公開。字幕/吹替。原題「Jaws」
面白かった! 怪我自慢好き。クイント(ロバート・ショウ)の語り大好き。
最後、泳いでいくシーンはとても印象に残っている。


ショーン・オブ・ザ・デッド

2004年製作。2004年DVDリリース。2019年日本公開。原題「Shaun of the Dead」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
オーソドックスなゾンビ映画。コメディ色が強く見やすいが、良くも悪くも普通。
主人公が事態を把握するまでの間が非常に長く、前半部は「もしや最後まで気づかないのでは?」と思うほどだった。そういうコント感のある劇作は面白かったが、把握してからは前述の通り普通で、その落差に肩透かしを食らってしまう。
「Don't Stop Me Now」のリズムに合わせてゾンビを叩いたりブレーカーのスイッチを上げ下げするシーンは非常に楽しかった。でもこれたぶん「Don't Stop Me Now」による功績が大きいのだろうな、と、この曲を使った他のいくつかの映画に思いを馳せながら思う。


ジョン・ウィック

2015年日本公開。原題「John Wick」
鑑賞年月: 2020年6月(字幕)
面白かったー!
超一級品のアクション。バリエーションの飛んでいるうえ緩急ついた様々なアクションがとても気持ちいい。
息子が何をしたか聞いたときのボスの「oh」とか、ジョンウィックの説明を聞いた息子の「oh」とかツボだった。


白雪姫の赤い靴と7人のこびと

2021年日本公開。2019年製作。原題「레드슈즈」
鑑賞年月: 2021年5月(英語吹替・日本語字幕)
現代の価値観にアップデートしつつアレンジを加えた白雪姫。
スノーホワイトの台詞にあったように、「呪い」というワードが魔法による外見的な変化そのものに限らず、美しい姿こそが至高だとする登場人物たちのルッキズム思想をも指している、ダブルミーニングになっている。
ラストの展開とかも好きというか、見たかった展開になっていて良かった。結局魔法による「呪い」は解けてイケメンの姿があらわになるわけだけど、スノーホワイトにとっては馴染みのない姿であるわけで、「元の姿の方が好きだった」というあくまで容姿の好みの概念は残しつつ、それでも「中身は同じ」であると両者に肯定させた展開が、「美女と野獣」からのアップデートだなと思えた。
7人の勇者たちに課せられた(魔法の)呪いは、元の姿が必要なくなったときに戻れる仕組みになっており、そういう意味では妖精の女王は理解者を増やすために呪いをかけているのであって、呪いをかけるために呪いをかけているわけではないのだよなとなる。そういうのもよかった。
あとこれはクソリプだけど、呪いの解除条件について、異性愛しか認められへんの? とは思った。まあ「世界一の美女」という表現によって、この世に1人しかいない特定の人間のことを指すかのようにミスリードさせる意図があるので、あとそもそもルッキズムと同性愛は本来別個の文脈にある思想であるはずなので、この違和感はその実この映画とは関係ない部分ではあるのだが(だからクソリプ)。


死霊館

2013年日本公開。2013年製作。原題「The Conjuring」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
面白かった! こういう悪魔祓い物、好物である。
実在の人物・事件を基にした映画であるというのを前面にアピールした作りになっており、その点で単純なホラー映画とは違った安心感を持って見れるところがあった。その良し悪しはあるのかもしれないが、個人的にはこの手の筋の通ったホラーが好きだ。


死霊館 エンフィールド事件

2016年日本公開。2016年製作。原題「The Conjuring 2」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
面白かった! ポルターガイストや悪霊などのホラー演出を強め、前作「死霊館」よりもエンタメに振り切っている印象。作中にいわゆるシナリオの反転を組み込んでもいることがその印象を強めるのだろう。そのうえで、前作を前提に見ている観客はこれを実話をもとにした映画として鑑賞するので、作り物めいた演出が出てきてもある程度興ざめせずに見れているような、そんな良いとこどりの映画だと思った。
ベッドで寝ていたら天井に張り付いているところとか、とても怖い。


新感染 ファイナル・エクスプレス

2017年日本公開。字幕。原題「부산행」
スアンの歌で終わらせる構成が完璧。人間ドラマとしてここまで完成されたゾンビ映画がかつてあっただろうか。
登場人物に無駄がない。必要なくなったキャラは容赦なく死なせる。モブに生きる価値はないとばかりのシナリオの決まりの良さ。ドアを開けるおばあさんは鳥肌ものでした。あとマ・ドンソク演じるおっさん格好良かった。
映像としてはゾンビの波がすごい。波としか表現できないほど走るし、ぶつかって上に膨れ上がる。すごい迫力でした。
なんというか、邦題がもったいなすぎる。いちいち言ってられないですけどこの邦題はもったいないです。ほんともったいない。


シン・ゴジラ

2016年公開。
劇場では3回観ました。すごかったです。
炎が街中を這い回ったあのシーンが、BGMも相まってとにかく最高。
異様な面白さでした。細部の作り込みを見つけるのも楽しかったです。


新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2

1998年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
総集編「シト新生」(1997)の再々編集版。「シト新生」は未見。
個人的に総集編を好んで見た覚えはあまりないのだが、本作は編集の塩梅が面白くて、それなりに楽しめた。
シンジの家出中のシーンや、首を絞められているレイの目の中にカヲルがいたりなど、TV版との違いも若干楽しめる。
講堂に集まって楽器を演奏する雰囲気演出もけっこう合っていた。


シンデレラ

2015年日本公開。吹替。原題「Cinderella」
舞踏会より先に主人公と王子を会わせることで、「王家への憧れ」(前時代的)を「自由恋愛」にシフトしている。
継母の立ち位置もこの前時代的観念を強調させている。堅実な話運びでありながら、従来のシンデレラとは一歩先に進めた作りにできていると思った。


シンドラーのリスト

1994年日本公開。字幕。原題「Schindler's List」
素晴らしい映画だった。
リーアム・ニーソン演じるオスカー・シンドラーの変化が、非常に綺麗な流れで描かれている。
モノクロとカラーの使い分けも見事なもので、ラスト、演者と本人が一緒に出てくるシーンもとても良かった。虚構と現実の隙間を、実感をもって与えられる。


新聞記者

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
前評判の悪さでイメージしていたよりはずっとしっかりした画作りの映画だった。
主演のシム・ウンギョンがとても良い。


人狼 JIN-ROH

2000年公開。
鑑賞年月: 2021年6月
おおー面白かった!
架空史物でありながら全共闘を彷彿とさせるようなリアルな描写と、虚実交えたいかにもそれらしいナレーションが導入として素晴らしく、映画に引き込まれる。
そこから描かれる、主人公の「人」の部分と「狼」の部分を、プロットの反転を何度か交えながら描き切っていて、とても面白かった。
作中作である絵本の朗読もポエティックでとても良かった。ウェットでハードボイルドでロマンスで若干のゴアもあって、しかも強化服というパンクな要素もある。それぞれを個別に取り上げて並べてみれば、なんとまあ贅沢な素材の使い方をしているんだとなるけれど、けれどどれも浮いていないし、絶妙に芯のある劇にまとまっている。
「そして狼は、赤ずきんを食べた」、この締めも絶妙。


スーサイド・スクワッド

2016年日本公開。字幕。原題「Suicide Squad」
B級映画を目指して作られたB級映画と考える。ならばこれはこれでよいのかもしれない。
最後のほう、眠くなって仕方なかった。せめてもう少しギャグのキレが良ければなと思う。
それにしてもマーゴット・ロビー、フーセンガムを膨らませる天才である。


スカイスクレイパー

2018年日本公開。字幕。原題「Skyscraper」
めっちゃ面白かったです!
ドウェイン・ジョンソン版「ダイ・ハード」という評をよく見ましたが、まさしくその通りで、この2018年に新しい「ダイ・ハード」が見られるなんてと感動しきりでした。
もちろん「ダイ・ハード」と差別化できている部分も多様にあって、まずテクノロジーが良い。ビルのテクノロジーは説得力に満ちているし、そのテクノロジーを活用して戦闘する場面もある。そのうえ家族間の信頼感は終始厚く、戦闘能力の高い妻もいる。優秀な人間が作ったビルと優秀な主人公と優秀な家族たち! それとカッコいい敵たち。いやぁ楽しい。そのうえドウェイン・ジョンソンの良さを詰め込んだアクションの数々。飛び移るシーンの楽しさといったらもう!
「リブート」(再起動する、再建する)の繰り返しも堅実ながら良かったなと思います。
とても楽しい映画でした!


スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団

2011年日本公開。原題「Scott Pilgrim vs. the World」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
"You know?" "Oh, no!"
SHOW BY ROCK!!並に音楽(物理)で戦っている(まあSHOW BY ROCK!!よりも本作のほうが先に作られているのだが)。対バンの絵面が非常にノれる様相で、見ていて楽しくなってくる映画だった。バンド音楽自体ももう少し上がれる曲調だったら良かったのにな、とは思うのだが、その点を充分に絵面が補えている。しかもアクション構成も上手い。
8bit音楽の使い方が素晴らしかったし、なおかつそればかりに頼っていない構成も良かった。縦横比までもを活用した表現も面白い。
はじめは、普通の恋愛ストーリーをゲームという演出で着飾った作品というように受け取っていたが、終盤になってくるともはや、ゲーム世界を舞台にした恋愛ストーリーというように見えてくる(舞台と演出が逆転する)。それほどギデオンとの戦闘はゲームチックで楽しかった。
終わり方は手堅くもまっとうな感じだったが、ナイブスの身の引き方がなんだかな、と思ったりも。
その点以外は基本的に、女性ばかりが過去の交際遍歴を気にされる、性的不均衡かくあるべしみたいな状況へのラモーナの苦痛をストレートに混ぜ込めていて、良い映画だった。


スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望

1977年製作。1978年日本公開。字幕。原題「Star Wars: Episode IV – A New Hope」
おもしれえ。
ジャワ大好きすぎる。あのかわいらしい声と開拓地の原住民らしい野蛮なたくましさとが合わさっていて、とても好きな種族だ。
ジャワもそうだし、オルデランもそうだし、意外にも派手に人が死んでいるのも特徴的。そういう点ですごくSFしてるし、そういう点でなくてもすごくSFしてるし、最高だなこれ。
ダース・ベイダーの人物造形についても、きれいに伏線になっている。


スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲

1980年日本公開。字幕。原題「Star Wars: Episode V – The Empire Strikes Back」
作品単体としてはそこまで意味があるわけではないが、有名なあのシーンがある、つなぎ目として重要な映画。


スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還

1983年日本公開。字幕。原題「Star Wars: Episode VI – Return of the Jedi」
オビ=ワンやヨーダとは違い、ダース・ベイダーは善の心を取り戻しても、死体が残った。だから死後の姿は若い頃のものだったのかな、あの老いたアナキン・スカイウォーカーは火葬され、フォースの姿?としては現れることはできないのかな、などと思った。まあエピソード1でも火葬されているので全然違う設定に落ち着いたんだろうけど。
マーク・ハミルの顔が若すぎて、「妹」と訳されたのを「姉」の誤訳なのでは?と思ってしまった。後で調べてみると実際俳優の年齢で考えてもマーク・ハミルのほうが年上だったのね。
[追記]
エピソード3を見て色々疑問解消。善悪の問題ではなく、死後のフォースをどう扱うかという技術の話でしかなった。
それと妹といっても数分の差だった。なるほどね。


スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス

1999年日本公開。字幕/吹替。原題「Star Wars: Episode I – The Phantom Menace」
2019年現在に久々に(10年以上ぶりに)見たが、当時楽しんでいた記憶ほどは面白くなくて、少し残念だった。展開のつなぎ目がスムーズでないのが主な要因かな、と見ている。映像効果に頼っていると、当時は面白くても時が経つと楽しめなくなる。
リーアム・ニーソンが今よりもずっと若いけど、なんか今よりもずっと年老いた演技してるね、というのが印象的。リーアム・ニーソン大好きマンとしてその点ですごく楽しめた。
のと、終盤ダース・モールが再び現れてから急にめっちゃ面白い。リーアム・ニーソンとの剣劇もよかったし、その後怒りのオビ=ワンのスピーディな闘志もすごく絵になっている。


スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃

2002年日本公開。原題「Star Wars: Episode II – Attack of the Clones」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった。
人物関係の把握には労力を要したが、主人公アナキン・スカイウォーカーが暗黒面の道へと辿るまでの細やかな布石を敷き詰めつつ、あくまで当人の成長の過程として描いている。エピソード4~6を把握している観客は、独裁もまたありと発言するところや、掟よりも自らの気持ちを優先したがる若き情熱、そしてドゥークー伯爵に敗れたあの場面に、既知のアナキンの未来を想像してしまう。とてもよくできた作りだし、時系列を逆さにした旨味をふんだんに活かしている。


スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐

2005年日本公開。原題「Star Wars: Episode III – Revenge of the Sith」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
非常に面白かった。
話が最初の三部作へと収束していく心地よさが一杯に詰まっている。
先の展開を知っているからこそ、悲しくてやりきれなくなるし、先の展開を知っているからこそ、ラストのアナキンとオビ=ワンの戦闘の内容には驚かされる。


スター・ウォーズ/フォースの覚醒

2015年日本公開。原題「Star Wars: The Force Awakens」
鑑賞年月: 2020年1月(吹替)
エピソード3までの6作で築き上げた物語内での功績や積み重ねなどを台無しにしてしまっているが、その点にさえ目を瞑れば、これはこれで面白い。
何を台無しにしているかといえば、まず、レイが修行せずにフォースを操れたこと。もちろん天性の才能があってのことだろうが、これまでルークもアナキンも、他のジェダイもすべて、その「才能」とこれまで受け継がれてきた技能を組み合わせることによって(つまり修行を通して)フォースを扱ってきた。ところがレイは、フォースが人の心を操れるという事前知識さえおそらくろくにないまま、それを試み、成功させる。肯定的に捉えるならば、スター・ウォーズシリーズきっての大天才である。
また、デス・スターを遥かに凌駕する兵器の登場にも、内心ざわついてしまった。もちろん時代が進んでいるのだからそれだけ兵器の威力も大きくなっていくものだろうが、エピソード6以降残党だけであったはずの帝国軍がこれほどの力を発揮し、あまつさえ過去作の舞台ともなった共和国をあっさり星ごと滅ぼしてしまうとなると、ルークたちは一体何をしていたんだと思ってしまう。あまりにも、前作までの戦いが虚しいものへと変わってしまう。
それはそれとして、フィン(ジョン・ボイエガ)が好き。ストームトルーパーがこの時点ではクローンだけでなく一般の人間も混じっているという事前知識がないと、少し戸惑うだろうが、何者でもなかったはずの彼が勇気を奮い立たせ、「正しいこと」をし、人を救っていくのはとても感動する。レイ(デイジー・リドリー)も本作での立ち位置としては実際そうで、後半で実は大天才であったことが明らかにはなるが、それまでは何もない星で糊口をしのいでいた、何物でもない一般人だった。ミレニアム・ファルコンを操縦しフィンと一緒にすごいすごい、自分だってできるかもと喜ぶシーンは本当に楽しくて、前作までと強く差別化できている部分だと思った。まあ結局レイは大天才だったんだけども。
あとこれは映画の制作とは直接関係しないんだけど、いい加減翻訳で意味なく「わ」「よ」口調を出すのはやめておくれ。しかも若い主人公に。いちいち鼻について没入感阻害されまくってるのよ。あやうく20世紀の映画なのかと勘違いしちゃうところだったわ。


スタートアップ!

2020年日本公開。原題「시동」
冒頭タイトルロゴが表示されるまでの10分程度の演出はなんともチープで、まさしくテレビ映画のそれで、失敗したなと思ったが、意外や意外それからはずっと楽しかった。
主演の高校生っぽい演技がとても良かった。些細なことにすぐ怒り、喧嘩をふっかけようとするあの向こう見ずさ、小物感。それと世間知らずだからこその、純粋さ。給料は削ってくださいと言ってしまえる純朴さ。その見せ方がすっごくうまくて、いいキャラだなーと思いながら見ていた。
終わり方は微妙。ストーリーの解決とキャラの葛藤の解決とが別途になってしまっていて、キャラの葛藤が解決したので、映画としてはまとまったはずなのだが、借金取りを結局どうしたのか(なぜあの後は安寧に暮らしているのか)、足を洗えばそれまでの罪はチャラなのかとか、そういうストーリーラインの回収が不充分で、モヤモヤが残る。


スターリンの葬送狂騒曲

2018年日本公開。字幕。原題「The Death of Stalin」
スターリンの死後、中央委員会の高官たちによる権力争いを描いたスラップスティック映画。わたわたしていて面白かった。
コミカルな演出と恐怖政治の残酷さがうまく融合している。スターリン邸宅の掃除(人含む)のシーンがとても印象的だった。
また、“権力による暴力”を描くのが非常に上手い。元帥を除いてすべての主要人物が、国のトップに就くことにしか興味がなく、彼らの闘争によって国民がいくら死んでしまっても気に留めない。その責任を擦り付けて相手を陥れようとするばかりである。ベリヤの強姦趣味の見せ方も非常に上手く、その少女の両親に「ありがとう」と伝えさせるあの堂々っぷり。そのうえベリヤの相手に選ばれていなければ前述の通り“掃除”させられていたというどうしようもなさ。
ブラックドタバタコメディが好きな方におすすめです。


スタンド・バイ・ミー

1987年日本公開。1986年製作。原題「Stand by Me」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
説教臭くあまり面白いとは思わなかったが、クリスの誠実さとその家庭の苦しさが感動的。
こどもの心配をする親の描写を安易に入れなかったところが、分かってるな、という印象。
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
「分かってるな」ってなんだよ、って感じだが、実際主人公やクリスたち子供の感じる苦悩を、「親の愛」や「大人の誠実さ」のようなもので覆い隠そうとしてこなかったところには安心感があるなーと思いながらの再鑑賞になった。
前回見たときは脚本に言わされているかのような、達観したようなセリフが気になったが、今回はそれを承知の上で見たからか、それよりも彼らの子供っぽさ、環境を自らどうこうすることのできない無力感への辛さが感じ取れて、この映画がなぜこうも名作とうたわれているのかわかってきた感じ。それでこそクリスの兄に拳銃を向けるシーンの力強さが映える。


ステータス・アップデート

2018年日本公開。字幕。原題「Status Update」
まあ、良かったね(他人事)。
話の筋は面白かったが、一番描くべきところを描いていない印象。魔法のアプリによって好き勝手に自分を更新して、それによってたくさんの人を不幸にしたが、その責任を負う覚悟はできた、という段階で話が終わってしまい、肝心のその後は見せないまま終わる。試合を仮病で抜け出してコンクールを選んだことへのお咎めはなく、歌手並みの歌唱力を失ったことの不利益も描かれないタイミングで終わる。唯一、きちんと描かれたのは父との決別くらいで、これはこれで話の肝ではあるので良いのだが、まさかこれが演出できる「責任」の限界とは思えない。もっといろんな負債を払って、すっきりとした状態であのラストを迎えてほしかったものだと思う。
あと同性愛者の演技演出が10年以上前のステレオタイプそのままだったのがイライラした。最初は字幕のせいなのかと思ったがそうではなく、この映画自体がそうらしい。同性愛者やコスプレイヤーを出し、いじめられっ子である親友ロニーに「僕は自分に満足している」と言わせることで、偏見を受けがちな人々を主人公との対比として物語に配置する狙いはわかるが、それにしても雑である。オタクカップルの描写は面白かっただけに尚更。


スノーピアサー

2014年日本公開。原題「Snowpiercer」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
公開当時に見たときは設定についていけなかったが、2020年現在2度目の視聴だと、世界観に対して受け入れ態勢がとれている分、充分に楽しめた。
世界がこうなる前、CW-7の散布で地球が壊滅状態になるおそれが高いことを、現実社会の「先頭車両」の人たちは知っていたのかもしれない、とさえ思える(実際そうなのだろう)。この列車はあくまで世界がこうなる前からの延長戦に過ぎず、持つ者は不自由なく生き延び続け、持たざる者は過酷な競争を死に物狂いで勝ち上がって、ようやく命だけは助かった。
富裕層の人たちの居住区となる車両はあえて省いているのだろうが、どちらにせよ、もう少し車両のディテールが欲しかった感じ。
彼がギリアムとつながっていたのは事実かもしれないが、どちらにとっても協力者ではなかったろうな、とも。


スノー・ロワイヤル

2019年日本公開。原題「Cold Pursuit」
鑑賞年月: 2019年3月(その他)
リーアム・ニーソンの無駄遣いでした(褒め言葉)。
リーアム・ニーソンが皆殺しにする系映画と事前に聞いていたが、それは正しくも少し間違いで、正確に言うなら、リーアム・ニーソンが皆殺しにする系映画をパロディにしたリーアム・ニーソン主演映画、という感じだった。つまりパロディ映画であって、実際に従来のリーアム映画のように犯人の糸を手繰り寄せて敵を殺していくのだが、その様子を実にコミカルに描き出している。
そのうえ息子は序盤から死んでしまうので、復讐劇というほうが近く、その殺しの描き方も一般市民等身大のものに焦点を当てている。カテゴライズに限らず観た印象としても従来のものとは異質のものを感じるだろう。
最初はその異質感に困惑したが、慣れてきたらこれはこれで面白かった。
エンドクレジットでのキャストの出し方がin order of disappearance(しかもリメイク元のタイトル)だったりと、小ネタも豊富。
鑑賞年月: 2019年6月(字幕)
後日、日本公開時に日本にいたので再度鑑賞。もう一度見ると、思ったよりもお洒落だった。思ったよりもお洒落だったし、思ったよりも面白くない……。
初見が楽しい要素と、観返したときに楽しい要素が綺麗に分離しているなという印象。初見時に笑ったはずの部分はまったく笑えず、代わりに最初に見たときの困惑がない分内容を受け入れやすくて、だんだん好きが湧いてくるような。人の死自体をユーモアの材料としているので、その点については、先がわかっていたらつまらない部分なのかもしれないですね。初見だからこそ楽しい。
リーアム・ニーソンはやはり良いなというのはとても感じる。リーアム・ニーソンがいないと意味がない映画、という意味で、やはりリーアム・ニーソンの無駄遣い。しかし初見時に自分が感想で書いた「リーアム・ニーソンによるリーアム・ニーソンのパロディ映画」というのは少し誤りかなーという気がしないでもない。これはこれで別の方向を目指した、上質なブラックユーモア映画だったなと思います。最初から方向性が異なる。ただストーリーラインが似通ったというだけで。
そういう印象。


スパイク・ガールズ

2019年Netflix配信開始。原題「Girls with Balls」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
冒頭で「みんな死ぬ」って言われてたのが鑑賞中ずっと尾を引いていた感じ。こんなに強くて強いバレー部員たちでも最後はみんな死んじゃうのか~と思いながら見ていた。
けど実際のラストがああなのは、フェアではないなぁと思ってしまう。フェアでなくても別にいいのだけど。
優勝校のバレー部員のスパイクはハンターを倒せる。優勝校のバレー部員たちは戦闘スキルも備えている。そういう女子高生特有の無敵感が全面に出ててよかった。けど上述のブラフと噛み合わせが悪い。
モルガンヌのキャラ造形がだいぶ好きだった。ハズキ関連のやり取りが最高に最高。ハズキあんな死に方ある? あれは盲点だったわ。すごい。
それとコーチが小型犬に噛まれて、あの行動をするシーン、好きすぎた。あの伸び方は卑怯だろ。大好き。
全体的にもっとこう、要所要所の噛み合わせが良ければ、すごく面白い映画になったのではないかなという印象。要素はとても良かった。


スパイダーマン

2002年日本公開。2002年製作。原題「Spider-Man」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
傑作。完璧なヒーロー映画。
2021年に久々に鑑賞してみて、本当に素晴らしい映画だったのだなと再確認する。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という、ヒーローとしての在り方をピーターが学ぶ映画。「僕には関係ない」と言って見逃してやった強盗が、自分のおじを殺してしまうというショッキングな報いを契機に、ピーターは「よき隣人」として人々を救っていく。その対立構造として、ヴィランとして登場するグリーン・ゴブリン(=ノーマン・オズボーン)を富ある裕福な科学者であり社長という設定にすることで、肉体的なパワーを富・権力としてのパワーとも紐づかせ、ノブレス・オブリージュとしての要素も強めている。その息子、ハリーとの対立もめちゃくちゃ良い。裕福な家庭で育ったからこその純真さと心の優しさを持ちながらも、裕福な家庭で育ったからこその想像力の欠如も持ち合わせる。そんな言動がMJとの口論や職業への差別的な発言などに入っていて、つまりピーターの良き友人でありながらも、ノブレス・オブリージュを全うできない人物として、親の悪いところも引き継いでしまった子供として登場している。ラストシーンの彼は、ピーターを「唯一の家族」として抱き合っているにも関わらず、完全な決別を指し示していて、心が痛かった。
また細かい点で良かったところとして、逆さまのキスシーンはイマジネーションほとばしってるなって思った。スパイダーマンという設定をすごいくらいに活かした絵面になっている。
オーディションのことを知っていたのかと聞くMJにピーターが言った「うちの伯母が君のママから聞いた」という台詞も、細かいが人物設定に奥行きを感じさせて良かった。MJの母親はMJが高校生のときには既に家を出ていたようだが、隣家のメイとは個人的な連絡を取り続けていたということがわかるし、またMJのオーディションのことを彼女が知っていたということは、MJと彼女の母親の関係もまた切れていないということがわかる。たったひとつの台詞の中に、登場さえしていない人物との関係やその歴史を感じさせる、そんな台詞だった。
あと編集長、すぐ後ろにいるカメラマンピーターを咄嗟の嘘で庇ったの偉い。


スパイダーマン2

2004年日本公開。2004年製作。原題「Spider-Man 2」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
良い。全体的にウェットな作りで、スパイダーマンとピーター・パーカーという二つの自己の両立に悩みながら、ヒーローとしての一つの自分を見出していく作品。
顔が電車の乗客に知られ、一個のヒーローとしてだけでなく、一人の人間としての姿を見出され、乗客たちがピーターを庇ってDr.オクトパスの前に立つの、とても泣きそうになった。同じ理由で、火事現場に飛び込んだピーターが階下に落ちそうになったところを、助けた女の子に助けられるシーンも泣きそうになる。
ひいてはヴィランのオクトパスでさえ、最後は自分を取り戻し自らの行いの後始末をすることで、結果的にピーターを救っており、全体的にヒーローという象徴的な存在を、ピーターという一般的な人間と同化させることで、ヒーローとその他との相互的な助け合いの空間を生み出したような、そんな映画だった。前作がヒーロー映画1作目のお手本だとするなら、本作はヒーロー映画2作目のお手本だなと思う。本当に素晴らしい。
そんな中、前作のラストから別の道を辿っていったハリーが、いよいよ後戻りのできない領域に足を踏み込んでおり、今後の展開を否が応でも予感させる。ヒーローの親友がヴィランとして成長していく姿を、こうして2作かけてじっくり描いているの、とても残酷でとても楽しい。


スパイダーマン3

2007年日本公開。2007年製作。原題「Spider-Man 3」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
昔劇場で見たときに微妙だなと思っていた覚えがあったが、2021年にこうして見返してみて、当時と大きく印象は変わらず。ただし細かい要素要素としては良い映画だなぁと思った。
ラストの「僕はあなたを許す」も、親友ハリーとの紆余曲折も、自己内省と対応させたヴェノムとの戦いも、それぞれの要素は良いなぁとは思うが、どれもパイを食い合っており、それぞれの掘り下げが足りないという印象。
大家さんに怒鳴ったピーターのことを大家が「彼は良い青年だ。何かあったんだろう」と庇うの、日頃の行ない~ってなった。
途中までNetflixで鑑賞していたが、レストランでのフランス語を使っているシーンでの字幕がそのまま「フランス語」と書かれており、没入感の阻害甚だしかったので、途中からはAmazonプライムで視聴した。誰の翻訳によるものかは書いていなかったと思うが、Amazon版の字幕では「Bonsoir」を「ボンソワール」、「Bonne chance」を「ボン・シャンス」にルビを振って「幸運を」と訳されており、文脈に忠実に訳されている印象。少なくともこのすべてのフランス語を「フランス語」という字幕にするのとは比べ物にならない。他にもAmazon版では「刑務所仲間」と訳されているところをNetflixでは「同胞」と訳しており、最初Netflix版を見ていたときは「刑務所内の別の囚人のことだろう」と脳内補完する必要があった。


スパイダーマン: スパイダーバース

2019年日本公開。字幕/吹替。原題「Spider-Man: Into the Spider-Verse」
うわーこれ劇場で見たかったなーーー!(日本公開時日本におらず本国公開時日本にいた)
アニメーション表現がとことん面白い。カートゥーンネットワーク作品に親しんでいると既視感のある表現が多々あるにはあるが、その規模やアイディアは目を瞠るものがあるし、とにかく様々な表現の融合にぐらぐらする。アイディアは生み出すだけでなく組み合わせることによっても作ることができるのだという素晴らしい見本。
ストーリー面も、ヒーローの在り方を見せた素晴らしい内容だった。オーケーもう一度だけ説明するね。誰だってスパイダーマンになれる。最高。
あと好意的な話、もっとエピソードが欲しい。キャラをもっと掘り下げてほしい。そういう物足りなさが満足感の要素のひとつだというのは理解しているので、あくまで好意的な話。これでいちいちキャラごとにこれ以上話を追加していたら映画のクオリティは下がるのはわかっている。でもみんな魅力的オブ魅力的なのでもっと!もっとくれ!となってしまう。とても良かった。


スパイダーマン: ホームカミング

2017年日本公開。字幕/吹替。原題「Spider-Man: Homecoming」
面白かった! 従来の「スパイダーマン」とアイアンマンのガジェットギミックの融合。サポートAIと世間話するピーター・パーカーとか素晴らしすぎる。
それと進学校的な雰囲気もうまく形成されていた感じで良かった。ティーンエイジしてる(謎動詞)。


スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム

2019年日本公開。字幕。原題「Spider-Man: Far From Home」
エンドゲームをMCUの完結作と見るなら(実際には「インフィニティ・サーガ」というくくりらしいが)、本作はその後日談。いい感じに息を抜きながら見れるかつ、大迫力の映像を楽しめる。無数のドローンを相手取る戦闘シーンは、スパイダーマンの能力を活かして実に立体的に撮られていて、アトラクションのような楽しさがある。
5年経過しているが、その5年の間高校は機能していて、パッチンされなかった生徒は既に卒業しているのか、それとも今作のクラスメイトに16歳と21歳が混在しているのかがいまいちよくわからなかった。おそらく前者なのだろうが。前者だとしたら、ブラッドの成長ってどういう意味?……となっていたのだが、Wikiを見て納得。なるほど元々は5歳年下だったのね。
映画が始まる直前の、コロンビアの女神像のマッチカットと、SONYの文字への立体的なズームアップも好き。


すばらしき映画音楽たち

2017年日本公開。原題「Score: A Film Music Documentary」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
面白かった。映画が見たくなった。
ひっきりなしにインタビュー対象や引用映像が切り替わり、映画音楽に対する様々な意見や歴史的流れをまとめている。作曲者が指揮するより中で映画監督の表情を気にしたほうがいいという意見を出した直後に、作曲者だからこそ指揮もやりたい、演奏者の演奏の一部となりたいと話す作曲者もいて、それらの意見をぶつけあわせることなく綺麗にまとめているように思った。
とにかく情報量が濃く、内容的に面白かったが見ていて疲れもした。
音楽という観点に絞ってたくさんの映画が出てくる。見たい映画や見直したい映画が増える、良いドキュメンタリーだった。


素晴らしき哉、人生!

1946年アメリカ公開(1954年日本公開)。原題「It's a Wonderful Life」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
言わずもがなの大傑作。
人のために生きるということの難しさと、その善行にこそ報いあれという祈りを、惜しみなく描いている。
ポッターが罰せられずに話が終わるのが作劇的にも非常に素晴らしく、人のために生きてこそ幸せだという思いを込めながらも、決して人生の苦しさを無下にはしていないところが好きだった。世界は公平だなどという甘言に酔いしれるような真似は決してしない。悪事を働き他人を貶めた者であっても、富んでいるポッターに罰が下されるのは、生きている間は決してないだろう。貧富の差を無視せず描き、それでも人のために動いた主人公を讃えている。主人公のおかげで幸せになった人がこんなにいるのだよ、と見せている。救いを感じる物語だと思う。


スピーシーズ 種の起源

1995年日本公開。吹替/字幕。原題「Species」
設定が良い。宇宙から地球外生命体が飛来してきたわけではなく、情報が送られてきて、それを地球側が再現してみたら怪物になってしまった、という、地球外生命体の意思を感じるとともに、地球側の愚かさも浮き彫りにしている良き設定。


スペースバンパイア

1985年日本公開。字幕。原題「Lifeforce」
スピリチュアルだがスピリチュアル特有の臭さがない。味付けの利いたSF映画。
吸血鬼(吸精鬼)を宇宙由来の種とした発想と、それを成り立たせるための魅了能力や眷属、蝙蝠型の宇宙人などの諸設定が画からにじみ出ているのが良い。人の精魂がすっと抜けて空へと昇っていくシーンには、アイディア的に圧巻。
あと車を飛ばしているときのケイン(ピーター・ファース)が少し楽しそうな顔つきだったのが面白かった。


スマホを落としただけなのに

2018年公開。
予想していたよりはずっとしっかりした作りで、面白かった。
スマホに関する犯罪について手法を具体的に、かつ現実的に見せてくれているのもよかった。普段気にかけている人にとっては当たり前の防犯意識でも、ネットリテラシーがない人にとってはショッキングになるような、いい塩梅。前者の人でも「あるある」と楽しめるだろうし。
詐欺サイトのURLがSSL化されていなかったり、カクテルがオレンジ色だったところなど、細かいところにまで気が回っていてよい。
加賀谷学(千葉雄大)というITに強い刑事に、「気持ち悪い」キャラ造形を付与することで、クラッカーとホワイトハッカーとの対比をより鮮明に見せていると思った。おそらくIT関係について何も知らない興味がないという人の中には、IT技術を扱うことそのものに対して嫌悪感を懐いている人も多いように思われるが、その印象を逆手に取ったような演出運びにできている。犯人のミスリードとしても、「気持ち悪い」もの=技術も使い方次第なのだというメッセージ性としても。
あと個人差あるかもしれないけども拉致された後の北川景子の怯える演技が、違和感が強くてうーんとなっていた。脱力してしまう。しかしその叫びを声真似して茶化す犯人役の演技、とてもよい。それを見せるためのあの変な怯え方だったのかもしれない。
それと田中圭、いいよね。


スリー・ビルボード

2018年日本公開。字幕。原題「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」
泣きそう。
信仰の話、そして許しの話。


スリーピング ビューティー/禁断の悦び

2011年日本公開。字幕。原題「Sleeping Beauty」
やりたいことが明確に伝わる良い文芸映画だった。
原作である川端康成の「眠れる美女」は未読だが、Wikipediaで概要を見る限り、川端作品で多く見られる男性主権的な意識が強い小説であるようだ。それに対してこの映画では、第一~第三の“男”を設置し、視点を大きく覆すことで、原作と対になるように作られているように思う。原作未読なのでどこまで効果的に作られているのかはわかりませんけどね。
そしてバードマンの死に対する発露が、老人の死によって叫びという形で出てくるのが、なんとも、切ない。
しかしバードマン……おまえ「脱いでくれ」が最期の言葉でいいのか……。
あと三人目の男の布団のはがし方で笑った。テーブルクロス引きかよ。


スワロウテイル

1996年公開。
傑作。
日本という舞台で多言語が飛び交うのが面白いし、ときに同じセリフの中でも別の言語が混じっているのが気持ちよい。在日外国人や非母国語学習者の話し方などで実際に耳にする言い方でもあったので、物語の強度をすごく感じた。
刺青を入れる際、蝶を初めて見たときを思い出すシーンの色遣いが好き。岩井俊二監督だとなる。
それとCHARAのマイウェイに震える。すごいわ。


青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない

2019年公開。
鑑賞年月: 2019年6月
まーたスピンオフ映画と知らずに本編を見ていないスピンオフ映画を観てしまった(この雑感サイトでは「リズと青い鳥」以来2回目)。言うまでもないことかもしれませんが、本作は鴨志田一のライトノベル、青春ブタ野郎シリーズを原作とするアニメ作品「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」の続編的映画です。そうとは知らず映画館に赴き、あれれ?あれ?と思いながらの鑑賞となってしまった……。事前情報ゼロで映画選ぶの好きやねん……許して……。
「リズと青い鳥」は「響け!」アニメ本編を見ずとも成立する作りでしたが、それは特例中の特例。本作「青春ブタ野郎~」はさすがにそういう強度は持っておらず、作品の背景に敷いた設定は既に把握しているものとして話を進行させています(そのほうが本来都合が良い)。なので「思春期症候群」が一体どういうものなのか、終始わからないまま「ひとまずそういうもの」として受け入れて話を追いかけていましたが、それはともかく。
「思春期症候群」を発症した人物の主観により環境の在り方が決定され、それに応じて世界が書き換わるという非常においしい設定(と理解しました)。涼宮ハルヒの大量発生と考えるととんでもない設定ですね。認識論SFの定番ネタではありつつも、それを「思春期」の在り方と融合させて描いたのは面白いと思いました。ただ、それを恣意的に操作しようだとか、人を救うために使おうとした、あるいは使えると作中人物が想定した時点で、その魅力は失われてしまうなという印象がある。なのでそれを誤魔化すために、心臓という道具を用いて、誰の命を優先すべきかというこれまた美味しくわかりやすい二者択一に持ち込んだのは上手い。
そのうえ、自分の命を投げうとうとした選択は、主人公の最も愛する人物の死を招くという、面白い展開。「そうそうこれこれ!」という定番に面白い展開を綺麗に配置してくれているので、本編を見ておらず設定やキャラ自体はピンとこなくても、展開自体に楽しませてくれる良さがありました。この手の、どちらも選べないという状況で、きちんと主人公に一旦選ばせたというのも真摯で良いですね。
キャラにはまったく感情移入できなかったですし、どうしても大味に感じてしまいましたけども、それは絶対本編を見ていない自分がどうこう言えるものではない。劇場内でも泣いている人いましたし。きっと感動的。たぶん感動的。そういう映画との出会い方でした。


関ヶ原

2017年公開。
みんな早口。


セッション

2015年日本公開。字幕。原題「Whiplash」
うわー面白い!
フレッチャーのこの指導は明らかに人間として間違っているわけです。しかし一人の天才のため、音楽という世界全体への貢献のためという観点で見るのなら、この指導方法が必要となる可能性もある(と、フレッチャーは主張する)。そして実際に、天才・ニーマンはあの完璧なラストを物にするのです。
歪なのが、フレッチャー自身でさえ、100%自分の主張通りには動けず、一人の人間としてニーマンに接してしまうところ。ニーマンを騙したあの展開がですね。ニーマンのために他者を犠牲にはできても、自分自身を犠牲にすることはできずに、復讐心から天才を潰そうとした。まあ、天才だとはもう思っていなかった可能性もありますが。しかし目の前に現れた天才のドラムに、フレッチャー自身も復讐心を失い、倒れそうになったシンバルを直してしまうわけです。あの演奏時の、フレッチャーの一覧の表情での演技といったら素晴らしかった。
そしてこの、音楽によって極まった瞬間で、映画も幕を閉じるというの、さすがとしか言いようがない。


セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー

2018年日本公開。字幕。原題「Sergio&Sergei」
不思議な作りだったけど、自分の好みに合った良い映画でした。
ソ連崩壊により経済危機に陥ったキューバのアマチュア無線技士セルジオと、同じくソ連崩壊の混乱により宇宙ステーションから地球に帰れない状況に陥った宇宙飛行士セルゲイが、無線を通じて交友を深める話。
始まる前から“実際の出来事を基にした「架空の」話”と前置きがなされていて、その時点で好印象。
幻想的なシーンが入ったりとか、娘の語りの締めくくるタイミングのさっぱりさとか、ええなーとなってましたし、特に「不法侵入」のシーン、ふわふわと浮いていくのがひっじょうに楽しかった。


ゼロ・グラビティ

2013年日本公開。字幕。原題「Gravity」
面白い。


戦国自衛隊1549

2005年公開。
普通、「未来を夢見る」結論に達する作品が言うその「未来」は、視聴者にとっても未来であることが多いと思うのですが、本作は未来を現代に、現代(戦国時代)を過去に位置させることで、両面を見せることに成功しています。
まあ、ドンパチしてるのはやっぱり面白いですね。


洗骨

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
なんだこれ。おもしろ。
配役が上手すぎると思った。特に、神山亮司役に鈴木Q太郎さんを起用したのは一体どんな発想によるものなんだろう。ともすれば映画自体を壊しかねない雰囲気のキャラを、ぽとっと、この世界に組み入れる。すると案の定、笑いあり涙ありというようなオーソドックスな作りには決してならず、笑いが笑いでない、けれどもシリアスをきちんと崩してもいる謎の空間になっていて、この独特さはすごいと思った。笑いと涙は決して区分されるものではない。「そういうのやめて」と一蹴される、日常の一コマであるおふざけにある、というような見せ方。そのギャグ自体も、あまり面白くないように作っているのも上手い。面白いギャグはただギャグの質を上げるだけで作れるが(簡単に作れるという意味ではない)、この作品は作品に合致させるために、あえてつまらないギャグに制御している。
「洗骨」という風習自体も、とても面白く見た。四年後の死体(骨)を洗うという、その光景だけで素晴らしいし、細部の描写にもこだわりを感じる。
序盤の町の集会所のシーンが顕著だが、一種のドキュメンタリー風味の撮り方もところどころ見せていて、風土に入り込めるような作りになっている。それとは関係しないが、ぐるっと回りこむようなカメラワークも独特で好きだった。
あと、魚を網で囲むシーンも、すごかった。おそらくその土地の人間にとっては一大事な出来事で、どれだけ人間ドラマの葛藤を重ねても「それはたいへんだ!」と全員が駆け込み、海に飛び込む。そのBGMの快活さといい、素晴らしい映像だった。


センコロール コネクト

2019年公開。
2009年公開の「センコロール」と、新作「センコロール2」を合わせ「センコロール コネクト」という題で上映された映画。
印象でものをいうなら、曲が流れていない時間のほうが長いミュージックビデオみたいな映画だった。
すごく独特なテイストで話が進む。ストーリーはあくまで付属品のようなもので、作品を主に盛り立てるのはカメラワークとたまに挟まれるBGM。すごく淡々と話を運んでいるけれども内容自体は派手で、内容は派手だけども決して話で盛り上げようとしていない。それを良しとするかどうかは人の感性によるのだろうが、自分はあまり楽しめなかった。しかし重要なのが、楽しめはしなかったけれども、こういうの、とても好きなのだということ。
個体ごとに様々な能力を持つ、絶妙にブサイクでかわいいデザインの怪獣が何匹も出てくる。センコが最高にぶさ可愛くて大好きであるし、四角くてでかくて可愛いドローンとかとても可愛い。そのうえで、宇宙を漂っている超巨大なドローンを出すなどして、設定自体へのうまみもふんだんなく発揮させている。あのドローンを呼び出すときの鼻血の描写もとてもよかった。
それと、ジュブナイルな雰囲気を維持しつつも、シビアに死と隣り合わせであるのもいい。「センコロール」では敵の攻撃によって腕を切られたセンコが、主人であるテツの腕を食うことで、自分の腕を修復するシーンが出てくる。超巨大ドローンの攻撃もいつ死んでもおかしくはなかった内容であったし、作中では詳細は語られていないがシュウの片目が失われているらしいのが裏のエピソードを想起させる(ただ怪我しただけかもしれないけれども)。そのうえユキの本人では制御できない能力「ねじれ」の得体の知れなさと、彼女の等身大の女子高生らしい言動が、綺麗なギャップを生み出していて非常にそそられる。
個人的に前作の主題歌「LOVE&ROLL」が大好きなので、今回劇場で聴けるだろうかと期待していた節もあったのだが、残念ながら流れなかった。しかし今回の主題歌「#LOVE」も時代の歩みを思わせる曲になっていて、素晴らしい。
この映画、見た直後よりも見てしばらく経ってから良さに気づくやつだなーと、時間を置いてこうして感想をしたためながら、強く実感している。なんか意外とめっちゃすごい映画です。


センセイ君主

2018年公開。その他。
面白かった。エネルギーがあった。
最初は主人公の話し方についていけなかったが、だんだん話に入り込めていく。ドラゴンボールのスカウターを付けたり、心臓を捧げたりと、パロネタが無理なくがっつり押し込まれているのもよい。
竹内涼真が上着のチャックを下ろすところとか、鎖骨ちら見せするところ、上着を傘にするところの3か所で、いちいちスローモーションを使っていて面白かった。面白かったしめっちゃ好き。
そしてなんといってもJUDY AND MARYの「Over Drive」の使い方が素晴らしい! 歌詞が映画の内容と対応しているうえに、ラスト、水たまりに映った飛行機雲を飛び越えていくシーンに感心した。
ピアニスト、柴門秋香が現れてからの展開はとても面白く、職員室で柴門が主人公に話した内容は、教師と生徒であっても対等であるという中盤の台詞が体現している上手い部分だったように思う。


そうして私たちはプールに金魚を、

2017年劇場公開。英語字幕。
Vimeoの公式配信で視聴。
主演あかね役湯川ひなの、しかめっ面がとても絵になっている。
それと「奇跡」の比喩の連続がとてもいい塩梅を突いていて面白かった。いい比喩だった。
演出には自分に合わない部分も多々あったが、基本的に地域色の強い、鬱屈とした映像表現になっていて、好きな人は好きだろうなという感じ。
演出意図には首を傾げるにしても、カメラワーク自体はとても楽しかったので、その点でもよかった。


ソウルフル・ワールド

2020年Disney+配信開始。原題「Soul」
鑑賞年月: 2021年3月(字幕)
とてもいい映画だった。
こういうスピリチュアル系SF好きなんだよなぁ。(SFだと感じたものをすべてSFと言い張る厄介オタク)
あの世へ進む道から外れ、生まれる前の世界にたどり着くまでのシーンがまずとても楽しかった。モノクロの2001年宇宙の旅を見ているかのような興奮を覚えた。
本筋も非常に良い。夢を叶えたとして、その先の人生は? というところまで言及してしまえる。
ただ個人的に、この手のスピリチュアル系の作品が大勢の観客から受け入れられ、どころか好評を受けていることには驚いた。


続・終物語

2018年公開。
演出が10年くらい前の深夜アニメみたいで、その点で面白かった。画が豊富で、同監督の「ぱにぽにだっしゅ!」とか「化物語」とか思い出す。
話はつまらない。しかし「終物語」までの総復習になっていて、キャラクターに思い入れがある分、感じ入るものはあった。特に臥煙遠江の台詞は(時系列的に)花物語へと続く重要な情報だろう。
冒頭で阿良々木が語ったように、本当におまけという感じ。つまらない映画だが、観たことによる満足感が得られる。


空飛ぶタイヤ

2018年公開。
家族や警察組織にまで展開を拡大させ、人間ドラマとしても描かれていたドラマ版に比べ、こちらはそれを2時間映画にまとめあげるために、ひとつの組織に焦点を絞っている。巨大組織の底の知れなさがとてもよく出ていた映画だったと思う。
「見える顔」について意識的で、販売部の沢田は赤松運送の社長赤松に、赤松は遺族に、実情とは別の部分について直接的な批難を受けるところに、強いリアリティが出ている。最後まで赤松さん、狩野と対面しませんもんね。
そのうえで、カタルシスがとても良い。
あと話の前提の敷き方がすごくアッサリしていたのが面白かったです。門田への誤解が解けて、和解するシーン、一気だった。


ソラリス

2003年日本公開。字幕。原題「Solaris」
泣きそう。キリスト教映画として傑作。ラストのレアの台詞が確信犯(誤用)すぎて……。レアの目の演技もすごかった。
そもそも序盤から怖すぎでしょ。BGMといい画面といい、恐怖を掻き立てる要素満載。


ゾンビ

1979年日本公開。1978年製作。字幕。原題「Dawn of the Dead」
[ディレクターズ・カット版]
「地獄が満員で追い出された者たちだ」良い言葉だ。
この台詞に限らずピーター(ケン・フォリー)が好きだった。「行きたくない」という意思表示も、序盤の、ゾンビを撃ち殺す際に流した涙が説得力を持たせている。


ゾンビーバー

2015年日本公開。原題「Zombeavers」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
ゾーイ役のコートニー・パームがめちゃくちゃ可愛い。そもそも(演技含めて)表情作るのが頭ひとつ抜けて上手くて存在感があった。
ゾンビ化したビーバーが人々を襲うというお話。序盤はゾンビとは名ばかりで、ゾンビ関係なくただの狂暴ビーバーが暴れるという設定でも成り立つような話になっていたが、ラスト20分に入ってからの怒涛のゾンビ化には「そうきたか!」となってとても面白かった。「そうくる」のはタイトルからして元々期待していたのに、作品の作りが全然そうではなかったからと油断させておいて、でもやっぱりそうきたか、と驚かせる。一周回って新鮮に感じさせる作りになっていた。
ビーバーだから家に籠城しても家(木材)を噛み切って侵入してくるし、穴も掘る。そういうビーバーの特性を活かしたパニック物になっているのも好印象。


ゾンビーワールドへようこそ

2016年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「Scouts Guide to the Zombie Apocalypse」
男性器のちぎれるシーンが凝っていて笑う。某ピラニア映画でもあったなこういうの。
主人公たちはボーイスカウトで身につけたスキルでゾンビと立ち向かっていく。人が人を救うのに必要なのは知識とスキルである、というのが全編通して描かれていたのが良かったです。最初のゾンビを起こしてしまったのも、「DOD」(date of death)を人名だと勘違いしてしまった、清掃員の知識の欠如故でしょうし(知識というかコンテクスト的なアレではある、研究員の管理不充分=スキル不充分ともいえるかも)。
主人公たちのキャラも立ってて面白かったです。高校一年生らしさがよく出ていました。ゾンビのおっぱいに気を取られて、揉むにまで至るシーン、描写が丁寧すぎてここで噛まれるんじゃないかとヒヤヒヤものでした。
笑いを求めて観るゾンビ映画と怖さを求めて観るゾンビ映画があって、たぶん割合的には前者のほうが多いと思うのですが、その点で充分楽しめるゾンビ映画でした。
あと主演のタイ・シェリダンの顔が良かったです。


ゾンビシャーク 感染鮫

2016年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「Zombie Shark」
ええやん!おもろいやん!(感覚の麻痺)
サメがサメを襲い、ゾンビのように感染していく発想がまず良いですよね。そこ混ぜちゃったかーという感じ。一匹二匹で済んでいた序盤に比べて、途中からサメが大量に群がるようになるのを見るとちょっぴり絶望感を味わえます。
しかし人間も負けちゃいない! 人間サイドも普通の人間ゾンビに対するかのように、ナイフや芝刈り機でサメを退治していく! すげえ! なんだそれ!
そして終盤の姉のあの行動には、軍曹も唖然。
あと人間ドラマもある程度丁寧に工夫が凝らされていて、良かったです。姉に当たってしまう両親の、きっと姉にも愛情は伝わっているという妄信と、それに動じない姉妹愛、そのうえで過保護気味な姉からの妹の自立が組み込まれていて、良い感じでした。
その姉妹愛が形作られた上で、サメ映画であり、かつゾンビ映画であることを活かしたあのラスト。素晴らしい。
感覚の麻痺している方なら、スカムカルチャー的な意味ではなく純粋な気持ちで楽しめる映画だと思います。


ゾンビスクール!

2016年日本公開。2014年製作。原題「Cooties」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
面白かった。
こどもだけが感染するという設定が良い、またはその設定をうまく活かしている。
噛まれても大人は感染しないから、ラストのツイストがご都合主義じゃなくなっている。噛まれてもタフなウェイドなら生き延びられるかもしれないという説得力がある。ゾンビにならないとわかっているからウェイドの車へと走る突撃も安心して観れるし。(この乱戦で噛まれないわけがないと考える必要がない、噛まれてもいいのだから)
また、ゾンビといえど、考えて行動しているのも良かった。こども相手という特質を活かしている。いかにも、「ホーム・アローン」的な(とまで言うと言いすぎだが)戦略や対策をたててこどもゾンビが襲ってくる。扉を開け仲間のゾンビを校内に入れ、外部との通信を切断し、ブレーカーを落とす。考えて行動できるゾンビ、いいぞ。好きだぞ。臓器を遊具にしてるシーンも良かったし。こどもだからこその造形が、非常に合っていた。


ゾンビの中心で、愛をさけぶ

2019年日本公開。2018年製作。原題「Zoo」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
ゾンビ映画だが、ゾンビはほとんど出てこない。ゾンビが街にあふれかえり、自分の家に閉じこもった夫婦を、家の中だけで描いている。
渦中での絶望的な状況下で、失われていた夫婦の愛を取り戻していくプロットになっており、その点非常にまとまりよく描かれていて好印象だった。
のと、個々のエピソード自体は意外と笑えるものが多かったのも好印象。死んだと思って服やテレビを盗んでいた夫婦が家にやってくるエピソードなどとても面白かった。覚せい剤入りのクッキーを食べて、ぶるぶると体が震えたかと思うとピタッと震えが止まり、また急に震えだすところ、すげーってなる。


ゾンビランド

2010年日本公開。原題「Zombieland」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
まとまりの良いゾンビ映画だった。生き残るためのルールを課した主人公が、だんだんルールに縛られていくけれど、最終的にそれは「ゾンビ」と同じようなものだと悟り、ルールを柔軟に活かしていく。同じようにヒロインのウィチタもまた、妹以外は信用しないというルールを課していて、それが主人公と同じタイミングで変化していく。複数キャラの変化が同タイミングで交差する、話としてとてもまとまりが良い。
あとトゥインキーが食べたくなった。


ダークナイト

2008年日本公開。字幕。原題「The Dark Knight」
泣きそう。
途中から一気に面白くなっていって、最後になるともう凄かった。
バットマンのダークヒーローに至る過程をこれでもかと残酷に、かつ冷静に、かつ盛大に描き切っている。
ジョーカー(ヒース・レジャー)の怪演が本当に怖い。
あと個人的な話、初見時は冒頭の銀行強盗のひとりの声がリーアム・ニーソンの声だと思って驚いた(バスにはねられた強盗)。勘違いだったけど。でも似てません?


ダークナイト ライジング

2012年日本公開。字幕。原題「The Dark Knight Rises」
あー面白いー最後まで面白いー!


ターミナル

2004年日本公開。原題「The Terminal」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
クラコウジアがまるで実在する/した国のように思えてくる。すごく本物っぽいテイストだなぁという感じ。
ここでいう本物っぽいとは、実話をもとにした感動作!と言われても信じてしまえそうなぽさのこと。


ターミネーター2

1991年日本公開。字幕/吹替。原題「Terminator 2: Judgment Day」
傑作。


ターミネーター3

2003年日本公開。原題「Terminator 3: Rise of the Machines」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
やっぱ面白いな。ターミネーターの話題を見るとなぜか評価低いことが多いけど、自分は好き。ちゃんとしてるし、メッセージ性も強い(メッセージ性が必要という意味ではない)。
この作品のオチが個人的にとても大好きで、作劇のロマンだなぁとよく思っている。気に入らない人は気に入らないのだろうが、もうスカイネットを止められないと悟った父親が、せめて娘を助けるためにと嘘の情報を吹き込んだあの機転の利き方頭の回り方には、すごいなと思い浸る。
墓場から逃げ出したケイトを、T-Xが婚約者の姿で出迎えるシーン。殺すまであの姿のままでいるのが当然であろうに、まだ逃げられる距離があるところで本来の姿に戻ったところは若干興ざめだった。高性能CPUがそんなちゃちなミスをするなよ。ヒューマンエラーかよ。


ターミネーター4

2009年日本公開。字幕/吹替。原題「Terminator Salvation」
あれ?? めっちゃおもろいやん!!
確か公開当時に見たときはクソ映画オブクソ映画という認識だったと思うのだが、なぜだろう。この面白さがわからないなんて、当時の小伏はどうかしている。
「この映画つまらなかったんだよなー」と思いながら決めた再視聴だったので、思わぬ収穫だった。
荒廃した世界観の再現度が素晴らしいし、ダブル主人公としてとても熱い内容。素晴らしい。


ターミネーター: ニュー・フェイト

2019年日本公開。字幕。原題「Terminator: Dark Fate」
面白かった!
百合じゃん、これ。百合。GLではなく、百合の文脈でいうところの百合。飛行機内で未来のダニーについて話すグレースを見ていると涙が溢れそうになってとても良かった。その後のサラ・コナーの台詞も素晴らしい。素晴らしい……。
素晴らしい……。
それと「ターミネーター」シリーズ、今作の登場によって決定的に、映画ひとつひとつを「様々な時間軸(可能性)のうちの1つのお話」という扱いにできたというか、ジョン・コナーがあっさり死んでしまっていてもそういう未来もあったかもしれないねと思える点で、シリーズ物として完成したような気がしています。頓挫リブートは無駄ではなかった。ターミネータ3もターミネータ4も無駄ではなかった。これらはもうなかったことにされているのに、でもその存在を感じさせてくれる。今作の登場によってようやく、ターミネーター3以降のすべてのターミネーター映画が同人誌になった。そういう点で、非常に美味しい映画でした。


第9地区

2010年日本公開。字幕。原題「District 9」
おもろいやん! 人の飛び散る感じとかいかにもなB級映画感を出しているのに、キャラも良く、体制から反体制への転換も上手く、キャラも良い。主人公のどっちつかずな内面から急転、結局エイリアン側につくのがとても面白かった。あと息子が可愛い。クリスも可愛い。クリストファーというと知性の名前ですし、それをエイリアンの名前にしたというのは良い構図だと思いました。
あと、同僚によって事実が明るみに出ているのが、カタルシスがあって良かったです。


タイタニック

1997年日本公開。字幕。原題「Titanic」
さすがの名作。細かい人物描写が光る。
水に浮かぶ女性のシーンが印象的で、実に映像的。
しかしラストで捨てたのはモヤモヤ……。


大統領の理髪師

2005年日本公開。2004年製作。原題「효자동 이발사」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
10年以上前に見たときは優しい映画だなぁと思った覚えがあったけど、2020年に久々に見返してみて、ドン引きした。
コミカルな調子で描きつつも、政治権力の腐敗、韓国の暗黒の時代を直截的に取り出してみせた点で、ブラックユーモアのお手本のような作りになっている。制作者の怒りを強く感じた点で、やはり素晴らしい。
しかしまず驚いたのが、理髪師であり本作の主人公であるソン・ハンモが、さも当然のように強姦をしていること。その罰を受けるどころか、被害者は泣き寝入りし、彼の妻となったこと。その後の本編では彼は様々な言動を通して家族愛を見せていくが、そもそもは妊娠させ、産まない選択をしようとした妻に「四捨五入」の概念で無理やり産ませようとした彼の犯行から始まっている。最終的に彼女がハンモを許し、家族として受け入れているのだとしても、そこから始まるものを綺麗な「家族愛」というパッケージでコミカルに描いてくるのは、非常に苦しかった。
そしてこの歪んだ家族愛は(ハンモの発想の発端は)、劇中でも触れられている通り四捨五入改憲がもととなっている。劇中で「国を悪くするのは学がある者たちだ」という旨の発言を大統領がしていた通り、権力者にとっては「学のない者」こそ重宝しやすく、扱いやすい。都合の良い手ごまになってくれる。ハンモもまた息子が情報部に連れていかれ、拷問を受けていても、静かに大統領専属の理髪師を続けるばかりで、最後の最後まで、大統領が死んだ後でさえ、彼を聖人君子のように慕っているのだ。
この構図は、強姦した女性をそのまま妻として取り入れ、温かい家族愛を演出したこの家庭と同じになっている。
息子の脚はハンモが官邸を追い出されたシーンを境に回復を見せる、権力者へ意見を言ったことで構造的にはハンモのキャラクター性に大きな変化が現れ、物語が終結した形になるが、その「意見」というのが本当に些細なことでしかないのがまた厳しい。権力は絶対的に今も権力として残っていて、「意見」を言ったがためにハンモはリンチされてしまった。大統領が替わってもこの地獄は続く、ただ、その中でも明るく生きていこうとするラストシーンは、前述のとおりそもそもが強姦から始まっているので、もうどこから明るくいればいいのやら。
強い怒りと、しかし怒りに対して強く行動することのできないもどかしさ。そういう歪みが、非常に大きなズレとしてコミカルとシリアスを重ね合わせていた、そういう映画だった。


台湾、独り言

2017年DVDリリース。原題「自言自语」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
すごく良かった!
ケンジ(日本人)の演技が終始イライラさせて素晴らしい。英語で話しているインド人に対して「英語で話してくれるよね?」とか、英語で話してもらえている内容に対しての聞き取っているのかよくわからないような曖昧な相槌とか、言動の不一致とか。英語がうまく話せないのは仕方ない部分ではあろうが、その後日本語が話せるタイミングでのあの差別的な態度。それらを無自覚でおこなえているような演技ができているのが素晴らしい。
また、話のメインでもあるだろうジョン(韓国人)のエピソードにも、非常に共感できて良かった。○○人ってこうだよね、と色眼鏡で見られてしまう、それが三年も積もり積もればあれほどのストレスにもなろう。そして複数の言語が堪能であるのに服装と勤務時間外の行動を咎められる自身に対して、英語もろくに喋れない、中国語もわからない日本人への待遇を見て、怒るのも無理はない。
実際、台湾といえば日本人は気軽に移住しにいけるようなイメージはあり、台湾に限らず日本人が日本人の特権を振りかざすのも珍しい光景ではない。
あと筆でつんつんするのがツボだった。あるあるある。


タクシー運転手 約束は海を越えて

2018年日本公開。字幕。原題「택시운전사」
リボンの演出好き。
光州事件について調べてみようとは思える内容だったので、おそらく映画の製作趣旨として成功している。演出がしっかりしているなという印象です。


タクシードライバー

1976年日本公開。字幕。原題「Taxi Driver」
主人公の人物造形がきつくてきつくて仕方ない。
全然返事をしない、だんまりのあの会話が見ていてつらかったし、それ以外にも難しい性格が生きづらさとしてストーリーに反映されていた。
何か意志があって事を成すのではなくて、何かをしたいけど何をしたいのかはわからない、というあの状態。大統領候補暗殺をするつもりが売春宿の襲撃になり、それがまさかヒーロー扱いされるところには笑った。紙一重の倫理感がそこにあって、そこは時代で環境だなぁと思う。


タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

2012年日本公開。2010年製作。原題「Tucker & Dale vs. Evil」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
面白かった!!
タバコ吸う→吸入器吸う→吐くのとこ好き。
コミュニケーション不足を解決しようとした人だけが生き残ったのも、話の筋が通ってるなという印象。


旅のおわり世界のはじまり

2019年公開。
とても刺さる映画だった。刺さり具合でいえば今年ベストかも(2019年7月時点)。
慣れない国で全然道じゃない道を歩いちゃうのわかるってなるし、言葉の通じない国での不安と、それによる主人公の対話の拒絶、浮かび出る異物感みたいなのがぎっしり出てて良かった。前田敦子ってすごいんだなぁってなった。
対話が大事、という主張は真理ではあるけども、生存者バイアスではあるのだよなぁ、ということも考えてしまう。せわしなく、余裕がない人間にとって、その正論はつらい。でもそれは正論をぶつけてくることが悪いんではなくて、せわしなく、余裕がないその状況こそが悪いんだよなぁ、ということを考えてしまう。
ラストに見た白ヤギがあの白ヤギである可能性は低い。動物が完全に主人公の客体として機能していた歪みも、なんだかよかった。
「愛の賛歌」よかったなー。よかった。傑作。


ダンガル きっと、つよくなる

2018年日本公開。原題「Dangal」
鑑賞年月: 2019年6月(字幕)
娘たちが成長するまで、ずっと胸糞悪かった。「すべては娘たちのためだ」と言いつつ、マハヴィルは自分の野望しか見えていない。自分の夢をさも娘たちのためだと言わんばかりに理論武装して、野望を叶える手段として扱うのはどうしても受け入れがたい。そうでもしないと(強制的に動かさないと)嫁ぐことこそが女の幸せという思想を娘たちは無批判に受け入れてしまう、あるいは自分たちの行く末も知らぬままに嫁ぐほかに生きるすべのない人生に追い込まれてしまう、というのはわかるが、それとマハヴィルの虐待的行為とは別だろうと思う。たとえ結果的に女性の権利を勝ち取る成果を上げたとしても、娘たちの人生はそのための犠牲として機能したのだ、という現実は変わらない。そこを美談のように正当化するのは気持ちが悪い。成果と犠牲は別個に見たいものだった(ので、マハヴィルがギータの決勝戦を見れなかったのはその罰として配置したのではないかとも思ったが、それにしては罰が軽い)。
レスリングが娘たち本人の人生の一部として定着してからは、とても面白く見た。レスリングが親のものではなく本人のものとなった後は、娘たちもレスリングを手段として用い始める。マハヴィルとギータの戦いは見ていてひっじょうに楽しかった。あそこでようやく復讐の一部を果たせただろうし、試合直前のギータのあの復讐に燃えた目が本当に素晴らしい。
まあ、最後の最後で、「俺の誇りだ」という台詞を金メダルという結果に対して放ったことについては、序盤の胸糞悪さをぶり返させてアレだったが。大会中の試合自体も緊迫感が強くて、基本的には面白かった。生存者バイアス、金メダルバイアスだけども、結果自体は過程とは別に褒め称えたい。というか実話を基にしたという武装もされているので、あんまり突っ込んで言いたくない面もある……。
レスリングを教える技術が優れているという点と、親として優れている点は決して同一視はできないので、そのあたりの調整がもっと欲しかったなという印象でした。


ダンケルク

2017年日本公開。字幕。原題「Dunkirk」
砂浜組の三人が顔が可愛くて好き。
ラスト、ドイツ兵に捕えられた選択には生きようという意思が感じられてとても良かった。燃やしたのも格好いい。
時系列をいじったのも面白い点だったと思います。
ただ、新聞紙というガジェットを用いてドキュメンタリ風味を増長させたのはちょっと解せない。しかしエンタメ要素としての必要悪ではあるのかもしれないですね。イギリス万歳。
ほか、BGMに大いに不満。キャラ配置に多少の不満。
でもねえやっぱり顔がいいわ。あと出演者のPhilippe Hugo Guillet発言にはほおおーってなりました(ツイッターの話)。


ダンサー・イン・ザ・ダーク

2000年日本公開。字幕。原題「Dancer in the Dark」
見入ってしまった……。辛い……。
本当に胸が引き裂かれるような映画でした。


ダンスウィズミー

2019年公開。
あんまりミュージカルって感じの映画ではなく、どちらかというと懐メロメインみたいな作りなのは残念だったが、あっさりと何も考えずに観れる良い映画だった。


地球が静止する日

2008年日本公開。字幕。原題「The Day the Earth Stood Still」
言いたいことは分かる映画。しかし色々と疎か。科学者集めてどうするつもりだったのだろう……。
シリコンのナノマシンが物を解体していく様はセンスオブワンダーがある。
あと、最後にタイトルを回収するのはやはり良いものだと思う。
ただなぁ、登場人物の配置といい、構成の無駄といい、雰囲気映画一歩手前感が強く、面白いとは言い難い。


地球の静止する日

1952年日本公開。字幕。原題「The Day the Earth Stood Still」
後半は眠かったが、なかなか面白かった。
時代にうまく合っている。


ちはやふる -下の句-

2016年公開。
詩暢と新の関係が好き。
どすこいどすこいと押すところ、素晴らしい。


ちはやふる -結び-

2018年公開。
面白かった。
団体戦のドキドキ感が巧く演出されている。飛び道具どんと来いといった作りだが、こういう作品にはそれが合っている。
キャラがちらばっていた印象はあったが、映画単体で見るのではなく、奥行きのあるストーリーとして感じられる点はあるだろうと思った。詩暢ちゃんがネタキャラ化していても王者の風格さえ残っていればそれでいいのだ……。 自宅でDVDで観たのだが、これは劇場が似合う映画だったろうなと少し後悔している。映画館で観たら、聴いたら、また感想も違ったことだろう。


ちびまる子ちゃん 大野君と杉山君

1990年公開。
尊い。


ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年

2015年公開。
人と人とのつながりを丁寧に描いた作品。
大坂に来て最初の“善意の表現”には胸焼けがしたが、基本的にコンセプトに充実で良かった。
トータス松本の歌も良い。


沈黙 -サイレンス-

2017年日本公開。字幕。原題「Silence」
心に刺さる良い映画でした。沈黙の信仰と、神の沈黙。
パライソに“今”行けるという信徒たちとの話が印象的。井上が「キリスト教はこの国では姿を変えた」と言っていたが、それを含んだ発言だったように感じる。キチジローがつばを吐きかけるシーンで、井上が目をそむけたのも印象に残る。彼にも何らかの「沈黙」があったのかもしれない。
リーアム・ニーソンが好きです。


沈黙の戦艦

1993年日本公開。原題「Under Siege」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
すっきりよくまとまった、定番な感じのアクション映画。
しかしミズーリ艦隊の歴史やブッシュ大統領の映像などを利用して、「定番な感じのアクション映画」には見られない独特な雰囲気も感じさせる。
トミー・リー・ジョーンズがすごく良くて、あの格好で皴の目立つ顔なの、これもまた独特な雰囲気になるし、元CIA工作員という設定に説得力を生み出せている。
包丁を噛んで防いだところにムフフってなった。


帝一の國

2017年公開。
めっちゃ面白いやん!
コミカルで笑えるシーンが多くて、ついでに親と子という普遍性を持って涙を誘うシーンもある。演技が良い。


ディープ・ブルー

1999年日本公開。字幕/吹替。原題「Deep Blue Sea」
見入ってしまう。なんだかんだいって面白いですよね。
最後、ヒロインの「ママのところにいらっしゃい」(うろ覚え)からの逃げ出す小物臭さがとても良い。


ディープ・ブルー2

2018年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「Deep Blue Sea 2」
表記ルールに従って日本劇場未公開と書いたが、製作国アメリカでも劇場公開はされておらず、テレビ放送のために作られた映画である。テレビ映画といっても、この記事によるとワーナー・ブラザースが正式に打ち出した続編であるらしく、世界観も1作目とつながっている。
ただし舞台に似通ったものを感じるくらいで、作品内では1作目のストーリーへの言及はされていない。オオメジロザメを治験にして、人間の知能性を高める薬品を開発しようとする製薬会社が、サメの保護活動を行っている主人公などを招いて実験を進めようとするも、知能の上がったサメによってトラブルが引き起こされる。という1作目をなぞったストーリーが展開される。
話自体は普通だが、普通に面白かった。最後に食われたシーンの構図が良い。また、子ザメの存在感が良い。


デイ・オブ・ザ・デッド

2008年日本公開。字幕。原題「Day of the Dead」
空気感染というムリゲー感。火に弱すぎるのは笑えたが、そうでもしないとゲームバランスが破綻するのだろう。
主人公のサラ(ミーナ・スヴァーリ役)が可愛い。
生前の記憶が若干残っているという設定なので、軍人ゾンビが銃を撃つ。ヤバい。


デイジー・ミラー

1974年アメリカ公開(日本劇場未公開、リリース年不明)。字幕。原題「Daisy Miller」
序盤のマシンガンのような会話劇がセンスあって良かった。
時代の話。


ディストピア パンドラの少女

2017年日本公開。原題「The Girl with All the Gifts」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
面白かった!!
一風変わったコンセプトのゾンビ映画。設定からして素晴らしいし、そこからあのラストに持っていくのも、なるほどそうかとなる。
ヘレンの立場としては、どちらのほうが幸せだったのだろう、とも考えさせられる。自分はあのラストが怖くて仕方ない。


ディセンダント2

2017年日本放送(ディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー)。吹替。原題「Descendants2」
ラップバトルは楽しかった。王子の説得がご都合的。


ティモシーの小さな奇跡

2013年DVDリリース(日本劇場未公開)。吹替。原題「The Odd Life of Timothy Green」
ダメ親の二人。見ていてとてもイラっとしてくる二人だが、彼らの視点で“語らせる”ことで、「対話」に成功している。
何よりもティモシーが愛おしい。
植物好きの人が良かった。あと“芸術”と称して頭にチェリーを載せたの、好き。


デッドクリフ

2011年日本公開。字幕。原題「Vertige」
最後の英文字幕でおおーとなりました。バルカン半島に結びつけたのかなるほど。
クライミングのシーンが凝っていて面白かったです。殺人鬼アントンが現れてからは不明瞭感が抜けた分興ざめでしたが、前述のバルカン半島で良くなりました。最後良ければの理論ではある。
クロエの記憶が分かりにくい。緊急気道確保のミスだったようですが、殺したのかと思ってしまいました。
罪を犯す→死のコンボが目立っていましたが、そう考えるともう一人の女性が不憫すぎる。


デッドコースター

2003年日本公開。原題「Final Destination 2」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
好きやわぁ何度見ても。
本作の登場人物の全員が、前作の登場人物と何らかのかかわりがあったと明らかになるシーンが大好き。


テルマ

2018年日本公開。字幕。原題「Thelma」
大好き。そうそうこういうの! こういうテイストの能力物大好き!
ラストの、自らの全能感に浸っているテルマが素晴らしい……。神に許しを請うた時と打って変わって、まるで自らが神であるかのように振る舞うあの、微笑み! 素晴らしい。素晴らしい。
異能に目覚めた主人公の葛藤や戸惑い、そして周囲の人間(特に家族)が主人公をどう扱うか、ということをメインにした作品がものすごく好きで(例えば「アナと雪の女王」や、「DARKAER THAN BLACK」の柏木舞の話とか)、この映画もその流れに乗った好みでした。
また、GLとしても面白い! GLとは言っても、アンニャがテルマを愛しているのは、テルマがそう「願った」から。アンニャの意思による産物ではなく、一方の意思に依存して形作られたGL。そういうアンバランスで歪んだカップリングは創作物として面白いですし、好きですね。
冒頭字幕で注意されていた、明滅シーンの激しさ、実際強めでけっこうきつい明滅シーンがあるので(当社比)、そこはお気をつけて。


テルマエ・ロマエ

2012年公開。
ヒロインの言語能力の高さに笑う。こんなん引く手数多やん。
ルシウスの最後の台詞「みんなの代わりに」という言葉を引き出させたのが日本人(個<全体という性質)を連想させ、人間ドラマした構成になっている。


テルマエ・ロマエ II

2014年公開。
字幕がもはや開き直っているのでもはや許せる。
面白いなぁ。純粋に良く出来ている。


電気海月のインシデント

2019年公開。
鑑賞年月: 2021年6月
面白かった!
低予算ながらちゃんとした作りのハッカー映画。(こういうサイバー犯罪を取り扱った映画の「ちゃんとした作り」というのは、実際のところ予算関係なく脚本サイドのリテラシーによるものだろうから、低予算ながらというのも変な話かもしれないが。)サイバー犯罪を何でもありのファンタジーとして描くのではなく、実直にリアリティを保ちながら描き、そのうえで物語として飛躍してみせる、そんな旨味を感じさせてくれる映画だった。
構成も上手かったなという印象。章構成を活用し、淡々と進んでいるようで無駄なく整理された情報が入ってくる。エンドロールが終わった後に、「これが最後の集会だった」という台詞の真意が明らかになる構成も愛嬌。
ところどころ撮り方が面白いと感じた部分もあり。
またBGMの使い方も上手いなーという感じ。盛り上げたいところでしっかり盛り上がったし、逆にこっそりと忍び込むような場面では無音も活用して。終盤の直面対決も、アクションは緊迫感に欠ける面は多少あったが、BGMが上手くその緊迫感を補完できていると思った。
そして淡々とした演技も、本作のコンセプトであるリアリティとよく調和しているのもとても良かった。主演の境啓汰と愛佳のやり取りすごく芯のある地味さですごく良かったし、キャラクター的に絶妙な関係性も萌えた。というか2人とも顔が良いな。そのうち人気出てお茶の間の人にならねえかな。ってくらい愛着湧く感じだった。
QRコードで公式サイトに誘導されたのも笑う。ネットリテラシーがあればこのQRコード読み取るわけねぇのになーと思いながらまんまと引っかかりに行って引っかかってた。
面白かった。おすすめの1作。


トイ・ストーリー4

2019年日本公開。吹替。原題「Toy Story 4」
水たまりに映る月のショットから始まり、空に浮かぶ月で終わる。定番の、PIXARのIを踏みつけるライトの動画から始まり、こちらを向いたライトと水たまりの月のマッチカットから始めたところを見ても、その「月」の描写は示唆的だ。狭い水たまりに閉じ込められた月から、広い世界を照らす自由な月へと。この対比はとても綺麗で、ウッディの選択を後押ししている演出であるように思った。(冒頭の水たまりに映っていた月、もしかしたら街灯の丸い光だったかもしれない? 記憶違いだったら恥ずかしい。)
再登場したボー・ピープのたくましさも見ていてとても楽しかった。


透明人間

1934年日本公開。1933年製作。原題「The Invisible Man」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
この時代特有の素直な良い映画だった。(ずっと昔の映画はたいてい素直に見えるものだけど)
おかみさんの迫真の叫び声にびっくりする。
時代を考えると、透明人間を撮ろうとした映像手法に少し驚く。
あと効果が切れたときの本体がめっちゃイケメンでびっくりした。クロード・レインズ。


透明人間

2020年日本公開。2020年製作。原題「The Invisible Man」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
面白かった。
透明人間の特性を活かし、透明人間が本当に実在するのか、それとも主人公が見ている幻覚なのかと宙ぶらりんになっている前半部が非常に面白かった。そこから後半、透明人間の存在が個人ではなく集団的に認知できるようになってからは、一気に雰囲気が変わり戸惑ったが、それと同時にこういうのが見たかった気もしてきて、楽しかった。そういう一粒で二度おいしい映画。


トータル・リコール

2012年日本公開。原題「Total Recall」
鑑賞年月: 2021年2月(字幕)
同タイトルの映画のリメイク。舞台設定などは一部異なる(というより原作に忠実?)なようで、特に地球の内部を通るトンネルなどはリメイク元の映画では見た覚えのない設定。
生体認証があたりまえになった世界をうまく描けている感じがあり、その点で好きだった。銀行で本人確認に網膜を認証したり、指紋でロックを解除させたり。あまり演出を凝ることなく演出できているのもとてもいい。
コロニーのごちゃごちゃした貧困街っぽい美術背景も良かった。
ストーリーはそこまで楽しめたわけではなかったが、そういう細かな面白さがあったので全体的には好き。


時の面影

2021年Netflix配信開始。2021年製作。原題「The Dig」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
とても良い映画だった。
第二次世界大戦の開戦を目前にした1939年のイギリスでの、遺跡発掘の物語。
自然を大きく画面に取り込んだ、遠景のカットが何度も出てくる。画面上部を占める大きな空と、大地と、小さな人。また月を写すカットでさえ、月を画面右下に配置して、とにかく画面を広く取ろうとしていた。そうすることで、壮大な歴史の流れを想起させて、面白い。
一応は主人公らと対立構造にある大英博物館の教授などが、アングロ・サクソンの遺物だと確定するとブラウンとともに元気にはしゃいでいるのもすごく良かった。ここに限らず、それぞれ立場や思惑の違いはあれど、新発見による学者気質な喜びが滲み出ていてとても良かった。


時をかける少女

1983年公開。
鑑賞年月: 2021年5月
面白かった!
ラストシークエンスの質が高すぎる。深町を孫として育てていた祖母が習慣的に孫の道具を買い続けていたように、記憶を失っても、深町がいたときの言動の元となるようなものが残っていて、それがあんなにも哀愁を出している。それは主人公・和子も同様で、彼女の人生に何らかの影響を与え、ああして研究の道に進んでいるの、ロマンが強いなぁと思うし、それに最後。冒頭と同じ構図でぶつかった深町に、彼が誰かとは分からず廊下を進んでいくあの構図が、非常に美しくてうおーとなった。素晴らしかった。
モノクロから徐々にカラーに変わっていく冒頭の演出もとても好き。こういうしっかり王道の作品で、さらっと実験的な手法を織り交ぜても全然浮いてないし洒落ているように見えるの、大林監督作品のすごいところだなぁと想う。


時をかける少女

1997年公開。
鑑賞年月: 2021年5月
退屈だった。
主演・中本奈奈の顔を重点的に撮っており、そのうちのいくつかはリアクションショットの要領で技巧的に撮ろう/編集しようという意識を感じさせるものもあったが、ほとんどは画面の中央にどんと人物を添えて背景はぼかしてばかりのような、単調な構図の画面が続いてばかりだった。またストーリーも同様に、原作に比べて主人公のタイムリープ自体はごくわずかに抑えており、起伏がない。


時をかける少女

2006年公開。
面白い!
最後の友梨の台詞など、首を傾げてしまう演出はあるにはあったが、これだけ収集つかなく話を掻き乱したうえで、話をまとめ、そのうえさらに先のハッピーエンドを示してみせた、快作。面白かった。


ドクター・ストレンジ

2017年日本公開。原題「Doctor Strange」
鑑賞年月: 不明(字幕)
面白かった! 映像表現の集約!
鑑賞年月: 2021年4月(吹替)
久々に見たが、意外と忘れていることが多くて新鮮に楽しめた。
前回の感想でも書いたように、街がぐにゃりと歪んでいく映像表現が非常に楽しい。またタイム・ストーンを使っての時間の巻き戻しシーンも盛大に描けており面白い。今になって見てみると「インセプション」や「テネット」の系譜を思わせる。
エンシェント・ワンの最期がとても印象的。いくら長く生き永らえたとしても、自身の最期について用意ができているのかというとそれはまた別の話だと静かに語る姿はとても良かった。基本的にティルダ・スウィントンが冷静で物静かなのに表情豊かなエンシェント・ワンを演じきっており、とても面白い。
のと、だからこそ最初にドクター・ストレンジが求めていた手の震えや、腕時計のヒビについては最後まで治る/直ることなく結末を迎えたところが、素晴らしい。


ドクター・スリープ

2019年日本公開。字幕。原題「Doctor Sleep」
めちゃくちゃ面白かった。
名作「シャイニング」の今更の続編ということで、不安に思いながら見ていたのだが、前作を汚すことのない素晴らしい続編となっていた。
「頭の中」の光景も面白かったし、異能力者同士の対決の数々も非常に魅惑的に描かれている。
そして終盤にして、待ちに待った洋館のシーンになってからは、前作の記憶もあいまってとことん怖かった。素晴らしかった。
ただ敵が打たれ弱すぎるのが少し気になる。そんなんでよく長生きできたな。


ドクター・ドリトル

2020年日本公開。2020年製作。原題「Dolittle」
鑑賞年月: 2021年5月(46分まで字幕、以降は吹替で視聴)
個々のギャグ自体は良かったが、全体的に退屈だった。
おそらく自分がこの手の映画と相性が悪いのだろうが、強い睡魔に襲われて、一度休憩を挟みながらの鑑賞となった。
海中からドリトルを引き上げるロープが切れたシーンなどが顕著だが、結果的に助かっただけで主人公(や他の動物たち)の充分な貢献があったとは考えづらい場面で、しかし結果が良かったがために称賛される場面などがあって、そういうシーンのご都合主義さにうんざりする。
そういうマイナス評価を別にしても、リリーの父が船を贈呈しようと言う場面、バッジリー卿のポケットから毒を発見する場面など、絵面としても台詞としても単調に出来事ばかりを描いている場面が多く、眠気を誘う(「ぴったりの船を渡そう」「あった」など)。
また自分はAmazonプライムビデオで視聴しており劇場やDVDでどうだったのかは確認していないが、「甥おいっ子」「甘草カンゾウ」など、字幕のおそらくルビだと思われる個所が横並びに誤表記されており、何度も目についていた。そうでなくとも今の台詞ちょっと意味通ってなくない?と思う翻訳が見られ(まあものによっては別にそれでもいいとは思うのだが)、たまらず途中からは吹替で見ることに。
ただまあ最後の「他人を治すことでしか自分を治せない」という台詞がよくプロットに嵌っていて、愛する人を亡くしたドリトルの悲しみを、ドリトル自身が主人公との出会いと冒険を通して癒していく、そういう基本的な作りには忠実にできていたかなと思った。なので別段後味は悪くない。ただ退屈だったというだけで。


時計じかけのオレンジ

1972年日本公開。字幕。原題「A Clockwork Orange」
眼球に目薬さしつづけるシーンがきっつい。


止められるか、俺たちを

2018年公開。
ラストの若松の変化を見るに、脚本はもう少し工夫のしようもあったんじゃないかとは思ったが、全体的にとても良かった。
撮り方が良い。そして主演の門脇麦が良い。主人公・吉積めぐみの言葉では伝えきれない複雑な苦悩を、映像という表現で見せている。映画だからそりゃ映像なのだが、映像だからこその映像で撮れる作品って実際あまり多くはない。そういう作品だと、なんでもないように見えるシーンにも緊張感が出て面白くなるんですよね。そういうのを改めて実感する映画だった。


ドラえもん のび太の恐竜

1980年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
記念すべき第1作目のドラえもん映画。
全編を通して、繰り返し丸(〇)が効果的に使われている。


ドラえもん のび太の海底鬼岩城

1983年公開。
ポセイドンとバギーちゃんというふたつの人工知能を対比させることで、道具や兵器への人間の向き合い方が描かれている。バギーちゃんに優しく向き合ってきたしずかちゃんのピンチによって、バギーちゃんが奮い立たされるというのは、ポセイドンの報復システムと、根本的なところでは似通っている(実際やっていることは真逆ではあるが)。
それはそうと、バギーちゃんの台詞が面白い。人工知能の融通の利かなさと、妙な人間臭い口調とがマッチして、良いホラー空間が形成されていた。ジャイアンとスネ夫が死に瀕したときの、バギーちゃんの台詞は白眉である。また、序盤でテキオー灯を忘れたドラえもんが言い放った「人間は不便だな」という台詞とうまく対応している。
バミューダトライアングルを活用した設定といい、トイレのディテールといい、やはり良いドラえもん映画には古典SFのセンスが非常に受け入れやすく取り込まれていて、面白い。


ドラえもん のび太と雲の王国

1992年公開。
非常に完成度の高いドラえもん映画。メタファーに富んでいるうえ、上質なエンタメになっている。
環境問題を取り扱ったうえで、「対等に話し合うため」の武力や、王国を破壊できるいかにもなタンクまで用意されているのに、それらの要素は決して説教臭さを出さずにエンタメの一要素として配備されている。「未来は変えられる。未来は自分たちの行動次第」というメッセージを説教にするのではなく、展開上の台詞回しに組み込んでいるのが、大変良かった。TV版や漫画のエピソードを取り上げているのもサービス精神旺盛で良い。
王国を作るうえで、「お金がないんだ。しょうがないだろ」ということで資金繰りをおこなっているのも素晴らしい。
洪水シーンのBGMのアレンジも素晴らしかった。お馴染み武田鉄矢の主題歌も、名曲。


ドラえもん のび太の創世日記

1995年公開。
センスオブワンダーの塊。特にオチが最高。
宇宙創世についても、話の構成についてもディテールが丁寧で、このクオリティのSFを児童に届けられるというのは本当に贅沢で素晴らしいことだと思います。


ドラえもん のび太のひみつ道具博物館ミュージアム

2013年公開。
ドラえもん映画史上、最高に完成度が高い作品だと言っても過言ではない。
ひみつ道具というドラえもんでお馴染みのガジェットを、豪勢ににふんだんに用い、かつそれらを無駄なく緻密なまでにプロットに組み込んでいる。ひみつ道具の本来持つすこし・ふしぎな面白さを前面に出していて、たとえば改良型きこりの泉が人間を攻撃していく様は、ロボットの反乱の趣があって非常に楽しかった。
フルメタルが消滅するシーンで、フルメタル発見以前に発明されたひみつ道具(初期型どこでもドアや、初代ガードロボなど)や、そもそもフルメタルを使用されていない道具(ライセンスを持っていないクルトが制作したひみつ道具など)が消えていないのが、シナリオ的にも映像的にも徹底されていて、素晴らしい。
そのうえこの映画には、悪人が登場しない。悪人的立ち位置の人間は出てくるが、その悪人はのび太たちにとって仲間の立ち位置でもある。怪盗が盗みを働いた理由、悪事を働いた人間にもその理由を話させるということに成功していて、わかりやすくも、普段よりも一層階層のある話になっていたと思う。


ドラえもん 新・のび太の日本誕生

2016年公開。
ほぼ旧版と同じ内容。ただエンディングパートのママのシーンが顕著だが、作りが説教臭い。


ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険

2017年公開。
くぎゅう。ジブリへのオマージュを感じる。
退屈な映画。ダイジェストにするくらいならシナリオを削ったほうが良い。伏線回収とこじつけは別物だろうと思う。


ドラえもん のび太の月面探査記

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年3月
設定はとても良かったが、映画としては基本的につまらなかった。
自分が説教臭い映画が苦手だからというのが大きな理由だろうが、物語を通してこどもたちを教化しようという意図が強く感じられて、受け付けられなかった。
「想像力」というキーワードが重要な教化用語として登場しているが、作中での使い方に無理がある。相手の境遇を理解し、世の中をよりよく生きゆくための主動力として「想像力」を挙げるのは大事だし、とても理想的な話だとは思うが、空想科学的な想像力と、相手を思いやる気持ちをさす想像力との接続が強引。「想像力があれば会える」という台詞はフィクションを肯定しているようでもあって素敵だったが、それを「人の思いやり」によるものだとするドラえもんの台詞は、後述の理由でむしろ胸糞が悪い。
異説バッジの設定がものすごいと思った。通説を覆し世の中の暮らしぶりを変えてきた例として、ガリレイの地動説があげられているが、もし天動説が正しいという設定で異説バッジを付けたなら、世界はその通りになる。バッジをつけている人にとってはそう見える、というだけでなく、本当にその人周辺の物理現象が捻じ曲げられているのが凄まじい。たとえば月の空気。バッジをつけているときにどこでもドアで月に向かうと、気圧の変化は生じず自然にドアをくぐることができるが、ルカがバッジをつけていない状態でドアを開けると、急激な気圧差によって暴風が生じていた。また、バッジが外れると月面で息ができなくなる、という設定もまたそうだ。
冒頭、異説バッジを説明するパートで地球平面説の地球の端に来ていたが、あのとき地球の端に向かっていった船は、船員たちにとってはただの海であっても、船を目撃していたのび太たちにとっては宇宙へと落ちていく船になる。バッジの有無が生死を決めるのなら、あのまま船が落ちるのを見続けていたら、のび太たちにとってあの船員たちは死んでいることになっていたのろうか、と考えられ、おそろしい。
果たしてこの映画における異説バッジは「想像力」の助けになりえるのか? それは「人の思いやり」とは対極にあるものなのではないか? と考えざるを得ない。


囚われの美女

1983年製作。2018年日本公開。原題「La Belle Captive」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
「道ですれ違う人の大半は死人だよ」
思ったよりも意味がわかる前半部と、やっぱり意味がわからなかった後半部との落差が大きく、その点でなかなか乗り切れなかった印象。アラン・ロブ=グリエ監督作品だからわかりやすくはないだろうなぁ→お?意外とわかりやすいじゃん!→やっぱり本領発揮されてきたらわけわからんわ。という印象の変遷をたどる作品だった。
しかし交霊術の設定や、死人にとっては過去や未来、あるいは夢と現実の区別さえも無用の長物である点を、編集という映画の土台となる手法を逆手にとって物語に組み込んで見せた点で、この監督らしくて良かった。でももっとわかりやすいのかわかりにくいのか早いうちにハッキリしてくれ、とは思わんでもない。わかりやすい映画ならわかりやすい映画として見るし、わかりにくい映画ならばわかりにくい映画として楽しめるが、わかりやすい映画っぽい体で始まってわかりにくい映画で終わるのはちょっと、ついていけなかった。まあ鑑賞者である自分の不足かもしれないが。
というのも、本作は作中でも執拗に登場してきた通り、シュルレアリストの画家ルネ・マグリットの作品をモチーフにしている。ならばそこからストーリー性を見出そうとするのは、ありのままの現実を観客が自分勝手に再解釈しているに過ぎず、作品そのものを受容しているわけではない、かもしれない。いや、うーんでもやっぱりそれならもっとわかりにくくしてほしかった気はするな。
あと主演のダニエル・メズギッシュが個人的にめっちゃ良かった。この人の出演作、現時点では他に何も見たことはないけれど、いつか見るリストに入れておきたいところ。


1963年日本公開。原題「The Birds」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
モンスターパニック映画の原点。
カモメやカラスがどんどん集まっていき、ラストのカモメの量なんてもう本当に恐ろしかった。
終わり方には「えっ」となったが、後々考えてみるとホラー映画としてこれ以上ない終わり方。しかしそうなると前半1時間の冗長さの意味が薄くなるので、そこは時代を感じるなと思う。


ドリーム

2017年日本公開。字幕。原題「Hidden Figures」
めっちゃええやん。
NASAで活躍した黒人女性たちのサクセスストーリー。黒人として差別され、そのうえ女性として差別される状況を、実力をもって覆していく。というより、より厳密にいうなら、実力をもって一部の白人男性の理解と協力を得ることに成功する。
そのあたり、差別の描写がリアリスティックで良い。


トレイン・ミッション

2018年日本公開。字幕。原題「The Commuter」
面白かった! 「フライト・ゲーム」の監督と主演のタッグということで同じようなものを期待して観に行き、期待以上のものが観られて大満足でした。リーアム・ニーソン最高かよ。最高だよ。
「フライト・ゲーム」は911を具体的に背景に敷いた作品でしたが、今回は社会背景的要素は希釈して、推理面とアクション面をパワーアップさせています。アクションの小道具の連続がすごく気持ちいい。
ただ、主役に限らず、このご時世にヒロイズムを作ることへの意識、みたいなものが強く滲み出ていて、それが映画の出来の邪魔をしているのでは?と思う面がありました。車掌の「心中」をわざわざ入れたところとかそう。
でもそういうのを差し置いてとにかくリーアム・ニーソンが最高なので、最高ですよ。


トレマーズ

1990年日本公開。字幕/吹替。原題「Tremors」
とても好き。こういうのを見て育ちました。
こうして改めて見ると、やっぱり良いなぁと思うし、作り込みも丁寧で素敵だなと思う。モンスターパニック映画でかつ、上質なコメディーでもあるので、たくさん生き残るんですよね。その塩梅がとても良い。
最後のキスシーンは汚くて笑う。


翔んで埼玉

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
面白かった。真摯にバカやっている作品はやはり面白い。
こういう分野のギャグはとにかくリサーチと質が重要で、笑いと貶しのバランス感覚がおかしいと途端に破綻してしまう性質があるが、その点うまくクリアしている映画だと思った。
また作中作の使い方が上手い。ストーリー自体へのツッコミを無理なく挟めるうえ、漫画的世界と実写(現代)のそれぞれに合ったネタをフル活用することができる。


ナイト ミュージアム

2007年日本公開。吹替。原題「Night at the Museum」
終わり方かっこいい。


泣き虫しょったんの奇跡

2018年公開。日本語字幕。
実力の世界の厳しさ、限られた狭き門を目指す苦しさといった個人の話だけに留まらず、将棋界の古い体制に対する批判まで組み込まれていて、内容に富んだ映画だった。
ごくわずかな天才だけが入れる奨励会で、さらに良い成績を残さないとプロ棋士にはなれない実力の世界。狭き門をくぐり抜けることができず、ひとりまたひとりと志半ばで消えていくのが、丁寧に描かれている。そのうえで年齢制限のある奨励会でしかプロになれない体制に言及し、「それって本当に実力の世界なんですか?」とまで言わしめたのが、すごい。
とにかく丁寧に挫折した人たちのエピソードが挟まれるので、藤田からプロになる気はないかと言われた日の帰り、家でひとつ溜息をついた主人公のシーンで、うるっときてしまった。その後も胸に来る演技多数。
エピソードに関わらず、公開対局とそれ以外でのセットの違いなど、ディテールも丁寧に作られている。編入試験の五局目でようやくこれまでの登場人物が瀬川の挑戦に気付くのが、当時の報道面での将棋の扱いを思わせもした。
それと音楽が良かった。音楽が良かった。音楽に合わせたエンドロールの出し方なんてもう完璧である。
挫折した人間、まだ夢半ばの人間にそっと寄り添ってくれる、良い映画だった。


茄子 アンダルシアの夏

2003年公開。
たった47分、1レースの出来事を描いた作品なのに、とても濃厚だった。人間ドラマとして奥行きがあったのはもちろん、レース展開の描き方が豊富だったように思う。
「何もない故郷」の描き方が良かったなぁ。茄子の漬物が良い小道具になっている。


茄子 スーツケースの渡り鳥

2007年リリース。
名作「茄子 アンダルシアの夏」の続編。 あまり話のまとまりは良くないが、「オーラ」の話はとても共感するところがあり、ザンコーニが先頭に乗り出し日差しの広がる光景に目を見開くチョッチの様子が、とても印象的だった。マルコの死によって様々な選手たちが考え、悩み、行動に出た。その最たるものがザンコーニのあれだったのだな、それを見たチョッチだからこそ、壇上のインタビューでは地に足をつけた回答に抑えたのだろうなと、納得するものでした。


ナニー・マクフィーの魔法のステッキ

2006年日本公開。原題「Nanny McPhee」
鑑賞年月: 2020年11月(吹替)
人付き合いで鑑賞。でなければ最後まで見なかったと思う。
だいぶ気持ち悪かった。帝国主義って感じ(小並感)。
エヴァンジェリン(ケリー・マクドナルド)の犠牲を思いついたサイモン(トーマス・サングスター)が賢いと褒められているのわけがわからないし、たとえそれが本人が望んでいたことだとしても、本人には選択の余地もなくアデレードに連れていかれている点で違和感が大きい。最後の結婚式でのサイモンの提案(好意的に見れば"提案")も顕著だが、結婚という人生を左右するような選択を、本人にはほとんど選択できない形で、他者であるサイモンが選択(提案)していて、エヴァンジェリンの人身御供感が強かった。1度目はアデレードに、2度目はセドリック・ブラウン(コリン・ファース)にモノとして捧げられており、両者はエヴァンジェリン自身も望んでいたという点では結果オーライなのかもしれないが、自身で選べず、すべて他者の手段として利用されているところに、奴隷階級を抜け出したとしても永続的に残る身分の違いを感じさせてつらいところだった。そもそも、1度目の人身御供でセドリックはサイモンをほめたたえているのだから、セドリックのエヴァンジェリンへの好意はいかほどのものかとも思うし。
またクイックリー夫人の描き方と、対照的にこどもたちをしつけるほど顔が整っていくナニー・マクフィーもそうだが、ルッキズムここに極めりといったところも少しきつかった。悪役は醜く、善は美しく、そして善を行えば行なうほど美しくなるというコンセプトは、ままあるものだしいいのかもしれないが、本作の場合それが露骨すぎてもはや醜いから悪役、美しいから善という逆転現象にさえなりうる演出になっている。
あまりおすすめはできない映画。でも好きな人は好きなんだろうし、笑える人は笑えるんだろうな。


ニキータ

1991年日本公開。字幕。原題「Nikita」
名作。心の故郷のひとつ。


日日是好日

2018年公開。
これ、劇場で見たかったなぁ。音が繊細な、とてもいい映画だった。
すんごくリアルに寄り添って、淡、淡と茶の空間を見せてくれる。しっとりと身に染みてくる映画だった。
そういう点を評価しているので、父が亡くなったエピソードの演出が、創作物的なわざとらしさ(予定調和)が強くて瑕疵に見えてしまう。死が訪れる前の身内の違和感とか、ノンフィクションでも多用される演出ではあるのだけど、こういうピンと現実味が張り詰めている作品には邪魔に映ったかも。
黒木華さんいいよなぁ。「リップヴァンウィンクルの花嫁」のときもすごいと思ったけど、すごい。
そして期せずして、故・樹木希林さんの追悼的なストーリーにもなっている。


二ノ国

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年4月
つまらなかったけど、悪くない映画だった。
愛する人のためにどちらの命を犠牲にするか?という宣伝方式をとっていたが、それはミスリードで、実際のところは情報の精査取捨選択の話。


日本沈没

1973年公開。
鑑賞年月: 2020年7月
藤岡弘、(当時は藤岡弘)めっちゃ若いな。
科学者と政治家の立場から描き、有事の彼らの使命と責任が話の中心という感じ。
科学で「予言」はできぬけど、人はたいていそれを求めるから、たいへんだよな。
冒頭の地球の絵で「おおっ」となる。最初の5分間くらいずっと景色を映しているのセンスがあった。
また震災の描写が凝っていて、ガラスが目に刺さった人や黒こげの焼死体などをしっかり描いているのがまた「おおっ」となった。
勇敢なる水兵。


ニュー・シネマ・パラダイス

1989年日本公開。1988年製作。原題「Nuovo Cinema Paradiso」
鑑賞年月: 不明(字幕・124分版)
映画愛の詰まった映画。
映画館がすごく楽しそうな空間になっているのが伝わってきて、いいなぁとなる。まあときおり無法地帯とも化しているが。
ラストシーンは感心したが、せっかくなら愛ゆえのシーンだけに絞ればよかったのでは? という感が強い。強姦魔のごとく服をはぎとるシーンがあったので(元の映画は未見。)
主人公が成長してから、仔牛の撮影をしているところでうるっときた。


人魚の眠る家

2018年公開。
予想していたよりもずっと面白かった。もともとの期待値めっちゃ低かったのを鑑みても、いやはや面白かった!
2018年に予告を見たとき、娘に包丁をつきつけているとき刃が下を向いていたのにモヤっとしていたんだけども、なるほど首ではなく心臓を狙っていたからなのか。
脳死状態の可能性がある娘を介護する家族の葛藤がとても丁寧に描かれていた。


寝ても覚めても

2018年公開。
すごいものを見た。
隙がひとつもない。
隆平と向き合うタイミングに、2011年の震災を取り入れたすごさ。
朝子が亮平を追いかけ、二人の背を陽の光が追いかけていくシーンに驚く。あれをどうやって撮ったというんだ。
「高速下りたの?」に対する返答の違い(優しさの違い)に気付くまで、麦にすがってしまう主人公。麦が現れその手を取ってしまうタイミングだけでなく、隆平と麦が別人なのだと悟るタイミングさえおそろしく残酷で、苦しい。
氾濫した川のような感情を描き切った、快作。


ねらわれた学園

1981年公開。
鑑賞年月: 2020年8月
映像表現はほとんど楽しく作られていたが、展開はたるく、中だるみが多い印象。
自販機の前でカルピスを飲んでいるときの薬師丸ひろ子、その学級の番長みたいな出で立ちでとても良かった。個人的ベストショット。


バースデー・ワンダーランド

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
良質な幻想描写が光るアニメ映画。また、一要素として良質なスチームパンクでもある。
異世界への導入が丁寧であるし、その光景ひとつひとつが設定の奥行きを滲ませていた。非現実的な現象への登場人物の受け入れ方も、現実的な見方をする主人公上杉アカネ(松岡茉優)に対して、未知なる世界に純粋に目を輝かせる上杉チィ(杏)を出すことで、非常にスムーズな進行になっている。この、チィの自由な大人な感じというか、現実を見てきたからこそ非現実にワクワクする様子に個人的にも感情移入できて、良いキャラだった。
イリヤ・クブシノブさんの人間のキャラデザも非常に良く、瞳の奥に丸い輪郭が入っているのが特徴的な顔は、予告ポスターの時点から非常に目を引く造形だった。ただ、ザン・グやドロポなど人間と離れた造形については凡庸で、どこかで見たことあるなーと既視感を覚えながらの鑑賞となった。ストーリーとの親和性も低かったと思う(そのデザインである理由、物語上のつながりが薄い)。人間の造形が特徴的なのに対して、人外の造形が凡庸というのは意外と珍しい。
映像や設定だけで非常に楽しかったが、ストーリー自体はいまいち。主人公が脈絡なく、現実世界の汚さに比してこの世界は綺麗だと告げるところなど、あまりに説教臭く、キャラを殺している。小学生で語れることには限界がある。話術ではなくもっと主人公自身の気づきや変化を基にザン・グを説得していれば、もう少し締まった作品になったかなという印象。大人の上杉チィのキャラ造形がより活かせる場面だったのではないかとも思う。
後半、馬を活用したのは上手いと思った。無駄がない。川底で拾った貝殻がエンドロールの後日談でああいう使われ方をするのも面白かった。
また前述の通り、蒸気機関を開発したが人間が忙しなく働くことはなかった、という異世界の設定が面白い。発展はしたがさらなる発展を人類が求めなかったという方向性のスチームパンクになっているし、車のディテールもよい。石炭を後部座席の下に入れて消費する、空間の使い方が美しい。
あとこういうの言うのもなんなのだけども、「天気の子」同様、ギャグのつもりでセクハラを入れているのがなんだかなーと思ってしまう。商業的に考えてもデメリットが大きいと思うのだけど、どういう意図で入れているのだろう。どれだけ面白い映画でも、こういう本筋に関係ないところが原因で人に薦めるのを躊躇ってしまうことがあり、なんだかな、と思う。


ハード・ウェイ

1991年日本公開。字幕。原題「The Hard Way」
面白かった!!
スーパースターがリアルな役作りのために本物の警官に近づき、なんやかやありながらも捜査を共にする古き良きバディ物。古き良きバディ物として質が良いし、話のまとまりもよい、それにメタ映画としても安定して面白い作品になっている。
マイケル・J・フォックスが作り出すコメディ空間と、ジェームズ・ウッズが作り出すシリアス空間との見事なまでの融合。


ハードコア

2017年日本公開。字幕。原題「Hardcore Henry」
[初見時の感想]
めちゃくちゃ面白かった!!
全編一人称カメラで進むアクションに次ぐアクションに次ぐアクション。壁によじ登ったり車の下に隠れたり乗馬したりと、一人称カメラという手法を活かす展開になっていて、映像に入り込んでしまう作品でした。
人がこれでもかと死ぬのも楽しい。死に方もバリエーションがあって良かったです。リードで飼い主の腕(だけ)を引いて歩いている犬とか面白かった。
ラスボスとの戦い方も素晴らしい。人には目が二つあるということを一人称で実感できるとは。
あとこれ音楽笑うでしょ。ほんとずるい。めちゃくちゃ面白かったです。
[観返しての感想]
やっぱりめちゃくちゃ面白いな。一人称であることの新鮮さは、もちろん初見時にだけ得られるものではあるので、そういう意味での楽しさは半減していたのですが、それはそうとしても一人称を活かしたアクションが楽しくてしょうがない。
屋上でのシーン楽しすぎるんですよね。強化版サイボーグ兵士のあのバカみたいなわらわら感と、バリエーション豊かな戦い方。地形を利用してなるべく数の不利を受けないようにしての戦い方もあると思えば、手榴弾を盛大に使った頭の悪い(褒め言葉)戦い方もある。音楽のタイミングも素晴らしくて、アドレナリンを見つけたときの「Don't Stop Me Now」はほんと、テンション上がる。初見時は笑いが先に来てましたけどね。
あと例のシーン、初見時はたぶん見落としていたと思うのですが、ヘンリー笑っていたのですね。体のほとんどが機械になっても、ジミーの助けもあって、記憶が体を動かす。サイボーグを扱ったSFのこの王道展開。最高。


バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

2015年日本公開。原題「Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)」
鑑賞年月: 2020年3月(字幕)
批評が最後まで作品自体の批評を放棄しててつらみある。
恨みつらみがこもってんな、って感じ。


バーニング 劇場版

2019年日本公開。字幕。原題「버닝」
面白かった。見えないことを描き出す意図が明確。


パーフェクト ストーム

2000年日本公開。字幕/吹替。原題「The Perfect Storm」
これぞパーフェクトストーム。結果論しか言えない天災の悲劇。
波の、水の迫力がすごい。ラスト、ボビーだけ窓から出ていくシーンは非常に印象的で、美しかった。


ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから

2020年Netflix配信開始。原題「The Half of It」
鑑賞年月: 2020年5月(字幕)
こういう、倫理観の外側を高校生特有の未熟さで包み込むことで、独特な爽快さを出す類の青春映画が好きで、テイストとしては岩井映画に似たものを感じたりもした。すなわち大好きな部類なのだけど、正直、あまり手放しで楽しいとは思えなかった作品。
でもこういう友情ってあるんよね。あるある。ポールとエリー・チューは最初から共犯関係にあった分、キス未遂や教会での「告白」があっても友情を維持できて、逆にポールとアスターの関係はあのタイミングで完璧に壊れた。高校生だから維持できる共生という感じで、こういうのを見ると懐かしくなるなーとなる。と同時に、それじゃあかんやろ、と自分の中の倫理観が警報を鳴らしている。
ポールの行動原理がだいぶ謎だったのだけど、特にいじめ関連についてはエリーにとって救いになるような行動を複数回おこなっていて、その点エリーの信頼は得ているんだよな。またエリーも同様に、メインストーリーの行いによってポールからの信頼を得ている。でもアスターはそうではなくて、最後まで蚊帳の外で、信頼ではなく恋を基準に二人を見ている感じ。ポールとの関係は壊れたけどエリーとはこれからで、でも、そこの歪みが難しいよね、と思った。その意味で最後のキスを理解するのは難しい。
しかしラスト10分あたりに「The Turning Point」という看板を示すタイミングは良かったなと思う。これから高校を卒業し新しい環境で新しいことを知っていくなかで、価値観の変化や固定化もあるだろうけど、「面白いのはこれから」なんだよと。のでこの邦題は好き。


バーフバリ 伝説誕生

2017年日本公開。字幕。原題「Baahubali: The Beginning」
面白かったですが、眠くなる映画でもありました。時間感覚が独特ですね。
天にも届くような高さまで届く滝の上に、別の世界が広がっているというのはとてもロマンを感じます。


バーフバリ 王の凱旋

2017年日本公開。字幕。原題「Baahubali 2: The Conclusion」
面白かった! 最高! バーフバリ! バーフバリ! バーフバリ! バーフバリ!
話の展開としては、1よりも飛び抜けて面白い作りになっています。1を見て微妙だなぁと思った人でも、その主な理由が展開の冗長さにあるのなら、2は間違いなく見たほうがいいです。テンポも良く楽しいです。
アマレンドラ・バーフバリが、神が間違えたとしても母は決して間違えないと固く信じていた国母の、決定的な過ち。いままで信じてきたものと、自分が今信じているものとのズレに、バーフバリ自信も、うち悩んでいく。その中でのバラーラデーヴァの立ち回りが非常に賢くて、そのうえマヘンドラとの戦いでも相当な強さを見せるので、面白い。様々な葛藤と思惑が融合し、カッタッパの決死の遂行がおこなわれ、それでもなお、バーフバリの気高き精神が表出される。
指を四本使って、三本の矢を放つシーンや、クマラが覚醒するシーン、裁判のシーンなど、挙げきれないほど楽しかったです。細かいところを挙げるなら、デーヴァセーナを連れて国に入るときの、ゾウの像の周辺を飛んでいる白い鳥が、国の大きさを如実に表していて、素晴らしかった。
ひとしきりに楽しいエピソードの続く映画でした。最高に面白かったです。


バイオハザード

2002年日本公開。2002年製作。原題「Resident Evil」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
久々に見たが、こうして2020年代に見ても面白かった。主人公アリスが記憶を失っていながらも徐々にその正体の片鱗を見せていき、犬を相手に圧倒的なアクションを繰り広げるところなど、わかっていてもワクワクして見れる。
あとミシェル・ロドリゲスがすごく良い。(生存者と思っていた)ゾンビに囲まれて困惑しながら銃を向けている表情や、ウイルスが回り意識がもうろうとしている状況の見せ方など、天才。当時これを見て以降大好きな俳優のひとり。


バイオハザードII アポカリプス

2004年日本公開。2004年製作。原題「Resident Evil: Apocalypse」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
まっとうに面白かった。前作の直後(の直前)からストーリーを開始し、前作からの滑らかな接続になっているのがこの手の作品にしては珍しく、まず心地いいし、アクションも悪くない。
博士を殺す権限があの悪役になぜあるのかは謎だったが(基本的にアンブレラ社も会社ではあるはずなので)、それだけアリス計画が佳境に入ったということなのだろうか。


バイオハザードIII

2007年日本公開。2007年製作。原題「Resident Evil: Extinction」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
1作目と2作目がシームレスにつながっていたのに対し、本作は時系列を飛ばし、およそ世界中に(少なくとも全米中に)バイオハザードが拡散しきった世界観でストーリーが進められている。そのため内容に入っていくのが面倒な印象ではあった。
主人公アリスのクローンが大量に登場し、また前作までのアンブレラ社の実験により超能力を手に入れてしまったアリスの自己同一性が基本的なテーマになっている。


バイオハザードIV アフターライフ

2010年日本公開。2010年製作。原題「Resident Evil: Afterlife」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
このシリーズでこんなにゾンビ映画っぽい要素を感じられる作品を見れるとは思わなかった。面白かった。
堅牢なその性質を活かし、刑務所に逃げ込んだ生存者たちとのエピソード。閉鎖空間での生活やアンデッドの侵入など、とてもゾンビ映画っぽかった。


バイオハザードV リトリビューション

2012年日本公開。2012年製作。原題「Resident Evil: Retribution」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
面白かった。前作までの登場人物やそのクローンを再登場させるなど、ファンサービスが強い。本作は特に、ゲームチックだと感じ取れるような世界観や衣装が多く、その点で楽しかった。
再登場したジル・バレンタインの衣装と二丁拳銃の撃ち方はダサすぎてびっくりしたけど。
なんというか、主人公補正、主人公パワーを持っているキャラが複数登場しているのが良い感じ。


バイオハザード: ザ・ファイナル

2016年日本公開。2016年製作。原題「Resident Evil: The Final Chapter」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
だいぶやっつけ仕事でまとめ上げたなという印象。
前作のラスト、ホワイトハウスでの戦闘が空けた朝から物語は始まっているが、そもそもなぜこのときにアリスのみ生還し取り残されていたのかが謎。「ワシントンで殺しておけばよかった」とウェスカーが言っている通り、アリスが生存しているのはウェスカーの意図によるものらしいが、その理由が最後まで明かされることはなかった。そして前作で生き残った仲間たち(ジルやエイダ)のことも不自然になかったことにされているのも謎。
アリシア・マーカスの設定もこれまでの作品の設定との整合性に疑問がわく。T-ウイルスが完成したのが数十年も前のことであるなら、2作目に登場した車いすの博士とその娘もまたクローンだったということだろうか。だからあんなに簡単に社員に撃ち殺させることができたのだろうか。ただアリスの自己同一性については3作目でも触れられた通りこのシリーズの核となっている部分ではあったので、それにひとつの解答を出したのは誠実な作りだったのかなと思う。
アイザックス博士の最期のやっつけ感もすごい。自分のクローンからの攻撃は防げない仕組みになっていたのか、あるいは単に(ポケットに忍び込まれた手榴弾のように)ふいをつかれただけなのか、あんなに俊敏な動きでアリスと戦闘を交わしていたはずなのに自分のクローンにあっさりとナイフで何度も刺されてしまうのは滑稽で仕方なかった。
のと、散布材の抗ウイルス剤も、その散布の仕方でいいの?と目を疑ってしまった。風で飛ばされて世界中に行きわたるまでには数年かかるだろうという締めを出していたが、それならばレッドクイーンが提示した48時間というタイムリミットが意味をなさなくなる。
あと単純に面白さの面で、レーザートラップルームがいわゆる舐めプをしているのが非常に気になった。ワン隊長を殺したときのあの網目状のレーザーを出せよ、と。おそらく(3作目冒頭で見せた以外の)攻略法が思いつかなかったから作中に出せなかったのだろうが、あそこの興ざめ感は映画全体のあっけなさを代弁しているような印象になってしまっているな、と思った。
基本的になんだかんだいいながらも前作までの5作品はそれなりに面白かったので、無理に締めようとして締まりきらなくなってしまって、収集がつかなくなってしまったような本作は単純にやっつけ仕事だな、という印象。まあそれでも完結させただけ誠実なのか。好意的にそう捉えておくことで留飲を下げることにしよう。
あとクレアがガラス管から脱出する際、靴で抑えて衝撃がガラスに向くよう空間を埋めていたところが、とても好きだった。工夫が効いてる!ってなった。


バイス

2019年日本公開。原題「Vice」
鑑賞年月: 2019年5月(その他)
いままで見てきた様々な映像を想起させる。それは現在まで続いている。
釣りなどの自然系の映像を挟んだ表現がユーモラスで好きだった。
世代ごとに感じ取れる情報量にも違いは出るだろうから大小はあるだろうが、ディック・チェイニーというひとりの人生を映像化することによって、観客の人生を伏線せしめたうまみがあり、とても実感を湧かせてくる作品だった。
ただまあ個人的に、細かい表現などについては日本語字幕や吹替じゃないと自分の語学力では把握が難しかったなという印象。複数人に一気に喋られるとさすがに。ただそれはこの作品の良い点でもあって、台詞の応酬という感じでなく、実体の会話という感じだった。


バイバイマン

2017年日本公開。原題「The Bye Bye Man」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
面白かった。スタイリッシュなホラー映画。
「リング」を想起させる、その名を知ればウイルスのように周囲に広めてしまう、呪いの連鎖。


ハウルの動く城

2004年公開。
鑑賞年月: 2020年8月
ジブリが生み出した大傑作のひとつ。素晴らしかった。


パシフィック・リム

2013年日本公開。字幕。原題「Pacific Rim」
面白いわぁ。本当に質の良い怪獣ロボット映画。そのうえマルチユニバース的な設定といい、原子力発電のストーリーでの扱い方といい、従来とは一歩進んだものも描けている。
イェーガーの可動部の描写がとても良かった。くるっと一回転するときに腰の可動部が回転したりだとか、足元をささえる球体部が揺れたりだとか、細かいところまで作り込まれている。
カイダノフスキーは核弾頭を手配するというシナリオ上の役割はあったが、タン3兄弟は舞台設定を説明するためにしか存在しておらず、もったいない。この2組の見せ場があればなあとは少し思ったが、しかしまあ一本筋を立てるには、仕方ない。どちらのイェーガーも登場こそ少なかったが、ディテールに溢れていてとても良かった。


はじまりへの旅

2017年日本公開。原題「Captain Fantastic」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
とても面白かった。
個人的には、森でのあのような教育方針は宗教二世と同じようなもので、親の信念・思想を強要される虐待行為にしか思えなかったが、それを作中でも指摘させ、それぞれ立場の意見をぶちあわせ、そのうえで家族の絆を描き切ったところ、とても誠実な作りになっていると思った。こどもたちはいずれも神童並みの知識と言語化能力を養い、さらには野生動物をしとめたり岩壁を登れるほどの身体能力を育めているが、それは結果論に過ぎない。瓦が割れたときのように、岩壁が崩れるなどして事故死していたかもしれない。あるいは学校の代わりといえるほどの充分な知識を得られなかったかもしれない。それでもともすれば一方的な肯定/否定にならないように、それどれの長短所があるかのように見せるためにこどもたちへの(学力的な面での)教育に成功した形で描いたのだろうし、実際妹の家族とのやり取りはそのおかげで良いコメディシーンが多かった。


バタリアン

1986年日本公開。字幕。原題「The Return of the Living Dead」
「映画はウソか?」「悪くない質問だ」
ひとつの死体から、被害が拡大していく過程をメインに描いたゾンビ映画。
2010年代にこうして観てみると、意思疎通ができ、人(の脳みそを)食う理由を語ることさえできるゾンビの存在に、むしろ新鮮さを感じる。頭を破壊しても動くしね。でも確かに昔はゾンビのイメージといえば腕だけで動く絵が浮かびますもんね。そうだった、そういえばこうだったんだ、と膝を打つ名作だった。


バック・トゥ・ザ・フューチャー

1985年日本公開。字幕/吹替。原題「Back to the Future」
2018年現在にずいぶん久々に観たが、やはり非常に面白い!
一度介入した歴史は決して元に戻せないというのが根底にあって、そのうえで自らの望む未来を選択する。その辺りが現代になってもなお、他の映画と一線を画したエンターテインメントになっている。
クリストファー・ロイドの演技が好き。


バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2

1989年日本公開。字幕/吹替。原題「Back to the Future Part II」
パート1と続けて観ると、同じような展開にだれる。公開当時は4年のブランクがあったからまあ、広く楽しめられたのだろうが、1日2日の間隔で観るものではない。
それはそうと、こういう、未来的描写を観るのがとても楽しい映画でもある。
55年のビフが年鑑が本物だと知り、車の中でひとり確認してほくそ笑んでいるシーンがとてもお気に入り。一般の人間が、未知なる僥倖に出会ったときの演技がとても良く出来ている。


バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3

1990年日本公開。字幕/吹替。原題「Back to the Future Part III」
あー面白かった。時代考証してますよと言わんばかりの台詞のやり取りや描写が気持ちよいうえ、西部劇の時代に飛んでいるため、2作目までとの変化にも富んでいる。
2作目から引っ張られていた「1985年の交通事故」についても、この3作通してのマーティの成長が解決の鍵となっており、そこがとても良かった。物理的な回避ではなく、精神的な回避であって、物語の総括たりえている。
本当に上手く作ったものだと思う。


パッチギ!

2005年公開。
沢尻エリカの逮捕報道を受けて、プライムビデオから消される(かもしれない)前に慌てて視聴。いつか見るリストのひとつだった。
60年代っぽさはあまりよく伝わらなかったが、良いエンタメだった。音楽がとてもいい。
オダギリジョーいいよね。
本作にも登場する「赤土」というキーワードは朝鮮文学やその研究資料を読んでいるとたびたび目にする単語。言わずもがな朝鮮半島を表す常套句的な比喩である。


バッド・ジーニアス 危険な天才たち

2018年日本公開。字幕。原題「ฉลาดเกมส์โกง」
楽しくて哀しい映画だった。
教師の不正に対する対抗から始まったちょっとしたカンニングから、どんどん話が大きくなり後に引けなくなっていく犯罪心理と、その演出のポップさの配合具合が良い。
理不尽に抗うために働いた悪事であっても、もちろん裁かれるべきだが、格差ある中で元の理不尽が裁かれるわけではない。そこに高校生を据え青春物にすることで、より、格差の大きさを表せている。救いのない話。
話の繋げ方が独特だったなと思ったが、タイ映画自体をあまり観ていないので、自分の見識不足のせいかもしれない。


バッドボーイズ

1995年日本公開。原題「Bad Boys」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
つまらなかった。
同時代性の強い作品だったのだろうなと思う。1995年に見て面白くても、2020年に見たら終始退屈になってしまう。そういう映画はあってしかるべきだし、その点で楽しめなかったとしても作品に責任はないだろう。
一部のカメラワークは面白かったが、当然その新鮮さも25年経った今では型落ちになっている。


バットマン ビギンズ

2005年日本公開。字幕/吹替。原題「Batman Begins」
おもしれえ。すげえ。楽しい。


ハッピーフライト

2008年公開。
面白い。見せ方がとにかく上手いなと思います。話作りの上手さでもあり、見せ方の上手さ。豊富な取材量と関連性のわかりやすいシナリオに裏打ちされた、心躍るフライト映画でした。


パディントン

2016年日本公開。2014年製作。吹替。原題「Paddington」
キャラ造形がとても良い。最初からパディントンを気にかけるメアリー(サリー・ホーキンス)も、彼の受け入れに反対するヘンリー(ヒュー・ボネヴィル)の言動も、終始人のためを思っている。
否応にも、イギリスの移民問題に興味をいだかせるような作り。


バトル・オブ・ザ・セクシーズ

2018年日本公開。字幕。原題「Battle of the Sexes」
とても面白かった。
ボビー・リッグスの人物造形が極端で、話を盛り立てるのに大きく貢献している。
脚本の味付けがとても良くて、試合が始まる前から泣きそうになりながら見ていたし、話に入り込める場の一体感があった。
GL映画としても面白く、自覚の定まらないタイミングでの「キスしてもいい?」というワンクッションなど、好きなやりとりが続いていた。


バトルシップ

2012年日本公開。吹替。原題「Battleship」
この熱い展開大好き。
「ミズリー記念艦」の幕がめくれ落ちて、船鼻のミズリーの文字がズームアップされる演出、良い。あと「戦艦が簡単に沈むか」。
宇宙人が実に理性的というか、危険と認定されなければ決して向こうからは攻撃してきていない。
現住生物となるべく友好的に侵略したかったのか、あるいは環境への配慮か。


バトル・ロワイアル

2000年公開。
2017年現在に、先行資料として観るつもりで観たが、とても面白かった。藤原竜也だゼ。
冒頭の前回優勝者のシーンがブラフとして大いに機能している。川田くん好き。
センサーがうまく活用されなかったのがもったいない。
というか最後! 指名手配犯には「えっ」となりました。こりゃすごい……。
あと青酸カリからの疑心暗鬼がとても良かったです。


花とアリス

2004年公開。
[長編版]
こんなに突飛で独特なストーリーを、お洒落で綺麗に、そして広く受け入れられやすい語り口で撮りこなせてしまう画作りのすごさ。ほんとにすごいですよね。全然なんでもないシーンで泣きそうになってくる。
シリアスなシーンで落語(ギャグシーン)を入れると、ギャグシーンが背景としてシリアスに成り立つというのもすごい。
あと矢上風子(黒澤愛)の喋り方がめちゃくちゃ好きだった。黒澤愛さん、他の映画には出演されていないようだけども、この作品限りなんだろうか。


花とアリス殺人事件

2015年公開。
素晴らしかった!
そうだそうだこういうキャラなんだった、となるのも良かった。キャラ造形が徹底している。登場人物が生きている。
特にアリス役・蒼井優がすごい。女子中学生の声という難しい役をこなしきってみせている。
「花とアリス」でも印象に深かった、バレエのシーンを豪華に使い倒しているのも、サービス精神旺盛でよい。特にロトスコープというアニメと実写のいいとこどりのような技法で、立体的に星空を写したり、極度に色彩をいじったりしながらのバレエはとても様になっていたし、美しかった。他にも面白いカメラワーク多数。
それにしても荒井花、愛が重いキャラである……。
矢上風子は前作とは演者が別で、清水由紀さんが演じられたようだが、元の黒沢愛さんの声を再現したかのような話し方になっていて、そこもよかったと思う。


花と蛇ZERO

2014年公開。
ラストの展開が神懸っている。SFだよこれは。
緊縛シーンの完成度が高い。
便器からのカメラワークが面白かった。


ハナミズキ

2010年公開。
くっつくために別れるのは物語としてアレだとは思う。
別にええけど。


パニック・マーケット

2013年日本公開。原題「Bait」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
面白かった! 冒頭の水中から撮った波を見た時点でも「おっ?」と思わせるものがありましたが、その期待に見事に応えた、とてもよく練られたヒューマニズムパニック映画でした。
サメ映画の皮をかぶった被災映画、の皮を被ったサメ映画。
サメが普通にサメである(トンデモ設定には感じさせない)し、キャラも立っている。作中人物の生存者はサメ映画にしては多かったのに、被災というアイディアを使うことで、全然そんな印象を持たせていないのもいいですね。一人の死をある程度重く描けていて、またサメ映画的には軽く描けているくらいの塩梅を作れている。
ブレーカー落としたシーンがなぁ、あれ引っ張ったら感覚で人がついているかどうかわかるはずなので、最後までたぐりよせたのはちょっと殺意を感じますよね。殺意とまではいかなくても、無自覚に人を殺している。そこがな、ちょっとな。
あと犬を殺さないので素晴らしい。


パパのお弁当は世界一

2017年公開。
面白かったです。いちいち感動させようとしてくる作りなのですが、これは普通に感動しました。
父娘の、普通の親子なんだけど少し普通ではない感じがよく出ていましたね。二人の演技良かった。
エンディング曲の歌詞がいまいち本編に合っていないのがちょっと後味に影響あったかも。


パピヨン

2019年日本公開。原題「Papillon」
鑑賞年月: 2019年6月(字幕)
閉塞感という没入感。ハラハラドキドキさせるとか、ストーリーを追わせるとかではなくて、終始、狭いところに閉じ込められたような息苦しさを感じさせる、そういう映画でした。映画館という箱に閉じ込められている感覚が付きまといましたし、不思議な体感をしたなという感じ。


パラサイト

1999年日本公開。吹替/字幕。原題「The Faculty」
一時期よくテレビで放送していた思い出深い作品。SFオタクの慰め合いのような映画だが、そればかりに限らず内容も良くできたエイリアン映画だ。


パラサイト 半地下の家族

2020年日本公開。原題「기생충」
鑑賞年月: 2019年6月(その他)
めちゃくちゃ面白かった!!! 笑いながら見ていたのに、途中からやばかった……。やばかった。なんだこれ。やばかった……。
家族全員定職のない一家。その長男が、留学に行く友人の代わりにIT企業CEOの家で家庭教師をすることになり、そこから少しずつ、その家の人々を騙して家族全員が赤の他人としてその家に雇われていく話。
徹底して貧富の格差を描いている。
「持ってる」家の人々、基本的に善意で動くんだけども、想像力のなさがすごい。悪意なしに、「ない」人たちを踏みにじる。冒頭の窓の景色からしてそうだけども、富からは貧が「見えない」というのをうまく描いていて、その点去年のカンヌ国際映画祭で選出されていた「バーニング 劇場版」と通じるものがあった。


ハリー・ポッターと賢者の石

2001年日本公開。原題「Harry Potter and the Sorcerer's Stone」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
久々に見たが、エピソードを詰め込みに詰め込んでるなぁという印象が強かった。伯母の家で召使い同然に育てられてきた間の動物園のエピソードと入学案内の手紙が届くエピソード、入学に至るまでの魔法界での銀行とショッピング、入学後のレクリエーションに、数々の授業で見せられる魔法世界の造形描写やクィディッチの試合、そしてその間に起こるトロール侵入や森での出来事などの(ラストにつながる)問題の数々……。そこからの問題解決に至るまでの鍵の入手やチェスなどの様々な試練に至るまで、本当にいろいろな話が詰め込まれてあって、何度も見たことがある映画のはずなのに2時間半があっという間に過ぎていった。


ハリー・ポッターと秘密の部屋

2002年日本公開。原題「Harry Potter and the Chamber of Secrets」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
面白かった!
ホグワーツという歴史ある学校を舞台にしたからこそのワクワク感。探検できる魔法学校というロマンがこれでもかと出ている。


ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

2004年日本公開。原題「Harry Potter and the Prisoner of Azkaban」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
ラストの30分くらい、タイム・ターナーを使っての動きが面白かった。


ハリー・ポッターと炎のゴブレット

2005年日本公開。原題「Harry Potter and the Goblet of Fire」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
面白い。


ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

2007年日本公開。原題「Harry Potter and the Order of the Phoenix」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
ルーナ可愛い。
成長していくネビル好き。


ハリー・ポッターと謎のプリンス

2009年日本公開。原題「Harry Potter and the Half-Blood Prince」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
とても面白かった。ハリーポッターこんなに面白かったんやなとなる。
全編を通して言えることだが、恐怖に怯えてダンブルドアに杖を向けるマルフォイが良すぎる。とても好き。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1

2010年日本公開。原題「Harry Potter and the Deathly Hallows – Part 1」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
終盤のこの局面で(一時的な)仲間割れを入れるのも意外と良いものだなとなったりした。良い3人組だ。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

2011年日本公開。原題「Harry Potter and the Deathly Hallows – Part 2」
鑑賞年月: 2021年5月(その他)
最後までとても面白かった。
ネビルのあの場でのヴォルデモートへの反論、成長度合いがすさまじい。


パルプ・フィクション

1994年日本公開。字幕。原題「Pulp Fiction」
語りの心地良さ。
くだらない話で映画が成立するのは当然のことだが、当然のことをするのは難しい。そういう創作的な良さと、演者たちの語りの上手さに引き込まれる映画だった。


ハロージャドゥ

2016年韓国公開。日本公開年未定。原題「극장판 안녕 자두야」
鑑賞年月: 2021年1月
2016年製作の劇場版。テレビシリーズの「ハロージャドゥ」は未見。
前半は、ディズニー映画の「シンデレラ」3部作をうまく再現したパロディ。後半の「ヘンゼルとグレーテル」もきっとそうなのだろうが、この面については勉強不足のためよくわからず。ジャドゥというキャラクターが、強くたくましく食い意地を張りながら問題を解決しており、笑えるシーンも多かった。


ハンガー・ゲーム2

2013年日本公開。字幕。原題「The Hunger Games: Catching Fire」
プレイヤーの大半が仲間として動くのは熱いものがある。
登場人物の使い方に多少の難はあったが、それも次回作次第。続き物の側面が強いので、これ単体で評価するのは得策ではないだろう。


ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス

2015年日本公開。字幕。原題「The Hunger Games: Mockingjay - Part 1」
プロパガンダ映像を作る過程を丁寧に描くことで、カットニスの作中での必要性を強めている。単なる主人公補正ではない。
次回に期待。


ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション

2015年日本公開。字幕。原題「The Hunger Games: Mockingjay - Part 2」
うーん。まあ、うん。


阪急電車 片道15分の奇跡

2011年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
とても面白かった。
小林で降りて改札を出たときに通りすがった親子、親は見向きもしないのに女の子はずっとドレス姿を見てるの好き。
あと妄想パートの谷村美月が演技つよい。


犯罪都市

2018年日本公開。2017年製作。字幕。原題「범죄도시」
2時間サスペンスドラマみたいなチープな脚本と、めちゃくちゃ楽しいアクションが合わさって不思議な味わい。
脇役までみんなアクションが上手い。素晴らしい。
なんといってもマ・ドンソク! 強いぞマ・ドンソク! 逞しいぞマ・ドンソク! 可愛いぞマ・ドンソク!
そしてチャン・チェン役のユン・ゲサンも、冷酷でありつつ気迫に溢れる敵キャラを演じきっていて、とても良かった。
面白かった。


パンズ・ラビリンス

2007年日本公開。字幕。原題「El laberinto del fauno」
めちゃくちゃ面白かった。
スペイン内戦下、独裁思想に染まった大尉を新しい父親に迎えてしまう主人公。女性として、子供として、独裁政権下として、「従わされる」立場を強要されてしまう。そこへ、主人公の前に現れたのが、妖精、そしてパン、いわゆる童話の世界。主人公は地底の王国の姫であるとパンに持ち上げられ、3つの試練を持ち掛けられるが、途中からはまるで「従わされる」かのように試練と向き合っていく。
だから、終わり方が良かったなぁ。「従わされる」ことからの脱却を選んだ主人公は、地底の王国に適応する体としては救われて、地上の肉体としては、一方的な搾取で終わる。童話と現実との対比が美しく、そして、どちらの世界に身を置くかで、答えは変わってしまうのである……。


ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー

2018年日本公開。字幕。原題「Solo: A Star Wars Story」
過去編のスピンオフで新キャラを出すのって難しいですよね。本編で登場せず言及もされなかった理由を、どうしても説明/描写する必要が出てくる。そしてそういう加え付けが、全体の話作りに影響を与えているようにも思われて、残念でした。
でもミレニアム・ファルコンを手に入れた賭けの経緯など、元から語られていたエピソードの補完についてはニヤリとする部分が多く、そういう点ではスピンオフ本来の持ち味を出していた感じ。


ピーターラビット

2018年日本公開。字幕。原題「Peter Rabbit」
面白かった!
ウサギを愛好しているビアにとっては「ただのウサギ」で、ウサギを憎んでいるマグレガーにとってはただのウサギではないという歪み。そこを最も納まりの良いところに納める話作りの完璧さ。
そして爆薬の使い方がすごい。木が倒れ家を潰すシーン、楽しいわこれは。


ビー・バップ・ハイスクール

1985年公開。
クレーンは面白かった。
ドタバタ感は出ていると思う。


ビール・フェスタ~世界対抗・一気飲み選手権

2007年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「Beerfest」
バカやっている映画。しかしバカさが足りない。
カエルの精液を舐めるシーンとラムの尿をいかにもまずそうに飲むシーンはクレイジーで良かった。
スポーツものとして、ストーリー構成のツボをきちんと抑えているのは面白い。


美少女戦士セーラームーンR

1993年公開。
(同タイトルのアニメシリーズの感想ではなく、劇場版のほう。)
うおー面白かった。構成がすごい。めちゃくちゃすごい。詰め込みに詰め込んでいるのにそつがない。余裕に溢れていてなおかつ完璧にきまっている。これで60分か。すごいな。
アクションが楽しい映画でありつつも、「対話」をこそ重要視する作り。2019年現在に見たというのに先進的に感じるし、自分も見習わねばなぁとなった。何のために戦うのか、誰のために戦うのかということを考えれば、そりゃ対話が必要な場面では手を出さずに話をするべきで、でもそれを実現できる作品なんてそうそうあるものではないだろう。小惑星での終盤の展開はもう、手放しに面白くて、真摯だった。
序盤、亜美ちゃん(セーラーマーキュリー)の攻撃シーンだけ遅れて登場させたのも感心した。マーキュリーの能力はサポート寄りで、全員で無暗に攻撃するよりも、足場を狙う隙を他の3人が作ったほうが連携が取れる。
回想の入れ方もちょっと天才的すぎる。定石ではあるけど、こんなにも綺麗に挟めるんだ……最高……。「セーラームーン」シリーズ本編は当時つまむようにしか見ていなかった自分にも、その集大成のありかたが感じ取れる。決して本編の事前知識に甘えず、しかし本編を見ていればその積み重ねがさらなる感動をもたらすような作りになっている。劇場版映画の傑作だ。
性差について価値観の古さが表れている部分が多少あり、その点で見ていて不快になってしまう面はあったが、そこは時代的資料として納得すべきところなのだろう。同性愛そのものを「エッチ」と言ってしまうところや、エナジーを吸われたり胸元を掴まれているシーンで頬を赤らめた点など(木野まことだけならキャラ造形と捉えられるので違和感ないんですけどね)。


羊と鋼の森

2018年公開。
清涼剤のような映画。ピアノのハンマーを取り扱う描写の数々が印象的だった。


ピッチブラック

2000年日本公開。原題「Pitch Black」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
設定は良いなと思った。暗闇でのみ生息できる肉食動物、彼らが外に出られない3つの太陽、しかし22年ぶりに訪れる日食。
宇宙船が不時着した理由もそうだが、危険な状況を説明を省きスマートに象っていて好印象。
話は非常につまらない。


秘密結社鷹の爪 THE MOVIE~総統は二度死ぬ~

2007年公開。
いい塩梅に面白かった。メタはやはりうまく調理ができていれば面白い。メタネタ自体の面白さに頼るのではなく(たいていそれだと腑抜けになる)、そこに漫才的な面白さを加えた良さ。「和夫、いやルーク」とか好き。


秘密のラジオ・ガール

2012年日本放送(ディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー)。吹替。原題「Radio Rebel」
説教臭い点を除けば、オーソドックスな成長ストーリーで、ラジオしている。
敵役の女の子が必死なのが良かった。


ビューティフル・マインド

2002年日本公開。2001年製作。原題「A Beautiful Mind」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
事前情報なしで見たので(ゲーム理論などについては聞いたことがあっても、その発案者ジョン・ナッシュについても知らなかった)、驚いた。
暗号解読をテーマにしたよくあるスパイ物映画なのだろうかと思っていたのだが、まさかの展開で。それからはとても惹かれて見ていた。上手くその怖さを表現できていると思うし、そのうえで静かに、本当に静かに回復していく様は感動的でかつ残酷。


ピラニア

1978年日本公開。字幕。原題「Piranha」
行き過ぎた技術への警鐘、そういう古典SFの王道的作りがしっかりできていて、ラストの被害者たちの画作りには泣きそうになった。こどもも善人も容赦なく犠牲になる、無差別な被害が描けている。そのうえ、博士のあの台詞。皮肉の効いた良い作品だ。
砂のお城が崩れるシーンが印象的。


ピラニア3D

2011年日本公開。2010年製作。原題「Piranha 3D」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
めちゃくちゃ面白かった! パニック映画の傑作。
公開翌年ごろにDVDで見た作品で、当時は吹替でのみ視聴した。出川哲朗の演技が意外といい感じで、映画も面白かったなという記憶で、2020年現在に久々に再視聴。「面白かったな」だなんてものではなく、傑作だった。当時の自分は過小評価していた。
今度は字幕で見てみたが、出川さんが吹き替えたファロン保安官代理(ヴィング・レイムス)の自分の身を顧みず人を救う姿に、再度感動。吹替のほうは最後は「痛い」と漏らしていたが、字幕や実際の台詞だと悲痛な声を上げながらも絶命するまで周囲に避難を呼びかけていたのが、演技にニュアンスの違いが出ていて面白い。
それはそうと、本作はパニック映画の傑作である(大事なことなので二度三度)。最初はそれこそ、水中から撮った裸体、水中と水上の境を水面から撮ってみせた裸体、さらにはパラセーリングで空を飛ぶ裸体を映し出して、「おっぱいおっぱい」とバカ騒ぎする様子が非常に美しいカメラワークで撮られている。ところがそのカメラワークが、まったく同じ構図で地獄絵図へと変わるあの切り替わりの良さ! 同じ手法で、水中で血肉をむしばむピラニアの様子や、水中と水上でゆらゆら交互に揺れながら映された死体、さらにはパラセーリングで空中に浮かぶ、下半身を失った死体というように、ピラニアは容赦なく湖を地獄に変える。そのうえクライマックスのとことん人が死ぬシーンでは、飛んできた電線に体を引き裂かれて死ぬなど、パニックに乗じてピラニアに関係なく死んでいく人がいるのも乙だ。あとは、冒頭で嫌なやつとして登場した主人公の友達(コーディー・ロンゴ)が、自分が生きたいがためにボートで大勢の人をひき殺しながら岸を目指していたシーンが、こわがっている演技も相まって非常に人間臭くて素晴らしかった。これだよこれ、こういう阿鼻叫喚が見たかったんだよ!!!
おっぱいにしてもちんこを食いちぎるシーンにしても、笑える人は笑えるが苦手な人はとことん苦手な描写が満載の映画なので、その点はご注意を。
下品でかつクオリティの高い映画を観たいときにおススメです。


ピラニア リターンズ

2012年日本公開。原題「Piranha 3DD」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
すべてが前作よりもパワーダウンしているが、そんなことは織り込み済みで、意外としっかりした映画だなと思った。
傑作パニック映画の続編はたいていクソ映画なのだ。しかしその部類の中では、しっかりしている。前作ではしなかったこともやってしまおうという意欲が見られた。
たとえば男性器をくいちぎるシーンは前作でもあったが、今作では性行為中に、しかも膣内に潜んでいたピラニアに噛み千切られるのだから、発想の勝利である。
ファロン保安官が実は生きていたというのは解釈違い甚だしく興醒めだったが、チタン製の義足で完璧に防御したうえで、ピラニアを撃ちまくる様子は快感。このときのくどいほどのBGMの使い方も悪くなかった。
子供を轢き殺したのと、ピラニアに子供も襲わせたのも、前作ではしなかったことだ。(なお、前作のリメイク元である、1978年版の「ピラニア」では子供も襲われている。)巨乳に気を取られて命を落とすのも最高にばかばかしくて悪くない。
あと、実質ベイウォッチ。デビッド・ハッセルホフがデビッド・ハッセルホフ役で出演している。めちゃくちゃホームコメディ空間だった。
ラストのクリストファー・ロイドからの電話も、前作からの天丼ネタでありつつも、トンデモ要素をぶちこんできていてよい。


ひろしま

1953年公開。
原爆投下直後からの、命からがら移動していくもぽろぽろとひとりひとり死んでいく被爆者の光景がすさまじく、すごい映画だった。
音楽も素晴らしい。


ファーゴ

1996年日本公開。1996年製作。原題「Fargo」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
ジェリーを演じたウィリアム・H・メイシーの演技がめちゃくちゃ良かった。その場しのぎの嘘をついているときの焦った話しぶりや、考え足らずの言動の数々。
主人公だけに限らず、そんな言動がどんどんどんどん悪い方向に事態を進ませていき、どうしようもない結末へと至っていくの、とても面白かった。
「実話をもとにした映画である」という冒頭の架空の但し書きも、思っていたよりも観劇に影響が出る印象なのも面白かった。生き残った登場人物の証言を組み合わせれば充分再現できそうなエピソードでもあるし。見ている間、フィクションでありながらどの程度本物っぽく構成を立てるのだろうと気になっていたので、そういう面白さもあった。これはもちろん、事前知識としてこの冒頭がフィクションであると知っていたからだが、そうでなかった場合もまた別の印象を抱くことだろう。
あとスティーヴ・ブシェミ。この人好きなんですよね。この映画でもすごく好きな演じ方してて好きだった。いいよねスティーヴ・ブシェミ。いいよね。


ファースト・スクワッド

2009年日本公開。字幕。原題「Пе́рвый отря́д」
雰囲気があった。終わり方が好きだなぁ。
アクションは少し不満があったが、双子の戦術性は好き。


ファースト・マン

2019年日本公開。2018年製作。原題「First Man」
鑑賞年月: 2019年2月(字幕)
伝記だからこその良さを活かしていて、とても面白い映画だった。
ジェミニ8号の回転するシーン、非常に実感をもった怖さがあってとても良い。
また、それにも増して地球上でのエピソードが非常に面白くて良かった。
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
2021年に2度目の鑑賞。めちゃくちゃ面白かった。泣きそうになりながら見ていた。
執拗なほどヘッドルームを消して撮影していることに気づく。娘カレンを喪った哀しみから始まる本作は、終始哀惜と不安がつきまとう。主人公ニール・アームストロングの内面に直截的にフォーカスを当てるわけではないが、観客は彼の外面からその内面に強く感情移入する物語になっており、この撮影方法が本作のそのようなストーリーをこれでもかと強化している。
ラスト、月面でカレンの腕飾りを出したところ、そして月面の景色を眺める視点ショットと宇宙服に身を包んだニールの(顔の見えない)リアクションショットに重ねて、地球上の回想が挟まれるところ、涙なしには見れなかった。寡黙な性格なのか、エド・ホワイトの前で口を漏らしそうになったことを除いては、一度も死んだ娘の話をしない。記者会見でも「できるだけ多くの燃料を」と真面目な(あるいは彼なりの冗談としての)発言をするだけで、真実を話すことはなかった。けれど月面で映し出される彼の本音は、内面は、それはもうほとばしるほどに美しくて、泣きそう。
素晴らしい映画。非常に良かった。


ファイナル・デスティネーション

2001年日本公開。2000年製作。原題「Final Destination」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
小伏に多大なる影響を与えた傑作のうちのひとつ。大好きな作品。既に何度も鑑賞しているが、数年ぶりにまた鑑賞してやはり面白かった。
本作を通しての脅威を、いわゆる意思のある悪魔や実体のある怪物として描くのではなく、まるで運命やシステムを思わせるような「死」に設定しているのがまず良い。
神性をさえ感じさせる稀有なスプラッタホラー。死を告げる「サイン」がどこにあるか、この映画の影響で日常的に考えるようになった人は多いんではないかと思う。


ファイナル・デッドサーキット 3D

2009年日本公開。原題「The Final Destination」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
ファイナル・デスティネーションシリーズの良いところは、充分にマンネリズムを感じさせながらも、毎回なんだかんだ新しいアイディアを取り入れているところだなぁと改めて。


ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

2017年日本公開。字幕。原題「The Founder」
創業秘話を描いたよくあるサクセスストーリーだと思っていたので、ショッキングな内容に驚いた。
レイが「アメリカのために」と言ってチェーン化を促したのが印象的。メタファーがよく効いている。


ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅

2016年日本公開。吹替。原題「Fantastic Beasts and Where to Find Them」
いまいち乗れなかった。派手なのは良い。


ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生

2018年日本公開。吹替。原題「Fantastic Beasts: The Crimes of Grindelwald」
あれ???? え、これもしかしてめちゃくちゃ面白いのでは??????
めちゃくちゃ面白かった。いろんなシーンで泣きそうになった。
重厚も重厚な魔法社会の描写、離別、死。そして魔法生物の専門家という立場としての主人公の活躍。どれをとってもリアリティと説得力に満ち満ちている上に、派手である。派手であるだけではあまり意味がないが、これほどまでにリアリスティックな残酷さも兼ね備え、何重にも世界とキャラクターを組み立てているのだから、入り込まないわけがない。
「いかれてる」や兄弟抱き合うシーンなど、映画としての構成も完璧。
素晴らしかった。大好きな映画になった。


フィフス・エレメント

1997年日本公開。原題「The Fifth Element」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
一時期頻繁にテレビ放送されていた映画。なので思い出深い作品。
コミカルな描写が楽しく、SF活劇としても秀作で、良くできた一品。
ゾーグ好き。「また空っぽだ」のところ大好き。


プーと大人になった僕

2018年日本公開。字幕。原題「Christopher Robin」
めっちゃ良かった……。
ジム・カミングス声のプーさんに愛着を持っている世代でして、個人的には字幕が大正解でした。「“何もしない”をする」ことを、ラスト、ああいう形で回収させたことが、戦後のフランスを舞台にしたこととも、ストーリーの肝としても重要に繋がっていて、とても上手い話運びでした。
導入がすごく丁寧だったのも良かったなぁーと思います。


フォードvsフェラーリ

2020年日本公開。原題「Ford v Ferrari」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
現代社会に暮らす自分と照らし合わせて悔しくなったり熱くなった人も多いんじゃないかと思った。「組織」で働く人々へのエールともなる映画。どう頑張っても贅肉ばかりだ……。
「ターミネーター4」を見たときも思ったけど、クリスチャン・ベールってこういう男くさい顔をしているときがめちゃくちゃ映えますよね。
トライアンドエラーによるブラッシュアップには、実践の大事さ、現場の力がこもっている。
ル・マン中の描写に至ってはまるでチキンレースのような様相まで描いていて、とても熱量のある映画だった。


フォレスト・ガンプ/一期一会

1995年日本公開。1994年製作。原題「Forrest Gump」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
主人公フォレスト・ガンプの半生とともに顧みるアメリカの歴史。
実直に語られるエピソードの数々は、フォレストの温かさに癒されると同時に、辛く厳しい現実の残酷さを感じさせ、その融和が涙を誘う。
基本的に歴史の変遷を当時の映像の合成などを活用し、プロットと並走させることで、実感が得やすい内容になっている。もちろんこの手の映画を見るときは、それが歴史の一つの見方であるに過ぎず、過度な「国民の記憶」にならないよう務める必要がある点は釘を刺しておきたいが、この効果をもろに受けてフォレストの半生に寄り添って感情移入できる面白さがあった。
ダン・テイラー中尉(ゲイリー・シニーズ)の登場時、帰還後、さらにエビ漁が軌道に乗った後の変化の数々もとても胸に来る。
映画の作りとしては、まず冒頭の羽根がふわりと宙を舞いながらフォレストの足元に辿り着くシーンが、執拗かとさえ思えるほど丁寧に、その凝った演出に嫌でも気付かされるくらいにじっくりと描かれている。この時点で興味を惹かれる映画だった。羽根はラスト、フォレストの本からすり抜けまた飛び立っていくように、本編全体の構成を締める役目を持っている。のと同時に、ジェニーの墓の前でフォレストが語ったように、定まっている運命と、たゆたうように流れていく運命との両立を象徴しているかのようなモチーフとしても機能しており、上手い作りだと思った。
ジェニーの「不治の病」は最初、3年前にフォレストに求婚されても頷けなかったように、自分で自分を好きになれない低い自己肯定感の比喩だと思っていたのだが、本当に死んでしまってびっくりした。おそらくエイズのことをぼかして表現していたのだろうと思うが、癌や他の歴史的な出来事、商標などは直接的に描いているのに対し、ジェニーの死因はぼかして描いているのが不思議に思った。不思議というか、自分のように無用なミスリードを誘ってしまうおそれがあるし、本作の出来事を作り物めいたものにしてしまう一因になってしまう。


復活の日

1980年公開。
原作とラストが異なる。ラストの“奇跡”を見せるために、それ以外の要素をより都合「良くなく」したのだろうか。
ガッカリ映画として認識されている作品のように思うが、放射線オチがオチとして扱われていない(SFでない)ことに目を瞑れば、充分に素晴らしい映画だと思う。大きなものに目を瞑れば。
たとえば原作の場合であれば、いわゆるミーム的な観点で、2011年以前と以後とではオチの受け入れ方は大きく変わるかもしれない。しかしこの映画のほうはというと……という面はある。
原作とはやっていることが異なるので、同タイトルの別作品として観るのが良いだろう。
それはともあれ、良い演技をする外国人俳優たちに大満足。歌も良かった。
Life is beautiful.


フライト・ゲーム

2014年日本公開。字幕。原題「Non-Stop」
面白い! この手の、不透明感を演出する作品にしては細かい部分に正当性がある。2回観たのですが、登場人物の行動や起こる状況、台詞のダブルミーニングや伏線など、実に細かいところまで神経が行き届いていて、ストーリー作りの膂力の相当な高さが出ていました。
リーアム・ニーソンええわあ。


プライドと偏見

2006年日本公開。原題「Pride & Prejudice」
鑑賞年月: 2021年1月(字幕)
序盤は人物の関係や時代背景の把握に困難を要したが、中盤からはだいたい理解が整ってきて面白くなってくる。終盤はタイトルもストーリーもうまく収束して、面白かった。
ブランコのシーンみたいな、スローモーションで撮った動きのある視点ショットが印象的。全体的にカメラが小気味よく動いていた。


プライベート・ライアン

1998年日本公開。字幕。原題「Saving Private Ryan」
訳で笑ってしまう部分はあったが、それはともあれ戦場の激烈さを描き切った快作である。銃弾飛び交う戦場の恐ろしさが、これでもかと演出されている。


ブラック・クランズマン

2019年日本公開。2018年製作。原題「BlacKkKlansman」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
素晴らしい映画だった。
「アメリカ・ファースト」と言い出したところで吹き出して笑ってしまった。この場面に限らず、1970年代を描きながらも、全編を通して現代を見せている。そうして本編を寓意化させるだけに飽き足らず、最後には現実のドキュメンタリー映像も組み込むという怒りの顕れっぷり。映画を通して現状の差別を伝えようという意思が明確であるし、作品の質としてもそれがしっかりと保証されていた。自分が求める映画像そのものといった感じで、とても共感できたし、とても良かった。


ブラックパンサー

2018年日本公開。原題「Black Panther」
鑑賞年: 2018年(字幕)
ハイコンテクストな面はともあれ、映画の出来としては、微妙でした。
アクションはいまいち。
展開運びは丁寧で良かったけど、盛り上がりに欠ける(そもそも盛り上がりを狙った作りではないかも)。
ただキャラクターは良かったですね。キルモンガー好きです。クロウも良かった。事前知識的にはこの二人を見るためだけにこの映画を観ました。
ただエムバクがなぁ。いくらでも相互交渉が可能だったと思うのに、主人公共々まったく条件付けをせずにヒーロー的登場をさせたのは解せない。エムバク自体は良いキャラだった分尚更。
あと死亡シーンの押し売り過剰演出はNG。
鑑賞年月:2021年4月 (字幕)
劇場公開時に見たときは上の感想の通り微妙だなぁという印象だったのだけど、今回久々に見てみたらだいぶ面白くてびっくりした。
「賢者は橋を架け、愚者は壁を作る」なども映画を見ている観客の世界への良い皮肉。


プラネット・テラー in グラインドハウス

2007年日本公開。原題「Planet Terror」
鑑賞年月: 2020年9月(字幕)
面白かった。
「グランドハウス」の1編でもある作品。
映画愛に満ちている。後に実在化する「マチェーテ」の架空予告編も、途中のテープ紛失もラストのThe Endも、また映像のかすれも。どれも非常にノスタルジーに満ちていて面白かった。
また物語自体も良い。"人生で無駄なこと"が大活躍するアクションシーンも、義足銃の荒唐無稽さも、兄弟愛も。上質な低俗定番ストーリーを、前述の演出で味付けした良作。


フリークス

1932年日本公開。原題「Freaks」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
Amazonプライムで視聴。そちらでは公開当時の「怪物團」という邦題で表記されているが、よく知られているタイトルである「フリークス」とこのページでは表記することにする。
勧善懲悪モノとしてよく作られていて、障害者を騙し笑いものにし、資財のみならず命までを刈り取ろうとするクレオパトラたちに、集団で復讐する形となっている。そのうえ当事者であるハンスはラストシーンでその復讐に対する罪までをも悔いているのが、よくできている。
シャム双生児のエピソードが回収されていない、あるいは話の本筋と関係がないのが気になる。それぞれ別の男性と結婚した、という材料だけで話が終わってしまっている。本来は何らかのエピソードがあったのだろうか。
「1人が怒りを感じたら、全員が怒りを共有するのです」という台詞には、現代でもマイノリティや女性への周囲の無自覚な反応、に通ずるものを感じる。


プリンス・オブ・エジプト

1999年日本公開。1998年製作。原題「The Prince of Egypt」
鑑賞年月: 2020年10月(吹替)
出エジプト記のエジプトを出るまでの内容を原作に、モーセのキャラクター性に色付けして作られたアニメーション作品。
話の有名な肝だからというのもあるだろうが、水の表現がすごい。それ以外の絵とのギャップに驚く。
モーセとラメセスの兄弟としての葛藤が話のメインになっていて、キリスト教的映画としては意外とおざなりな印象。展開の省略としてミュージカル的手法をふんだんに使っており、出エジプト記の内容を知らない人はよもやいないだろうから、それよりもオリジナル部分を強調してみましたという感じか。20年近く前の映画であるためそれも頷けるが、現代のアメリカだとこの点作り方も変わるのだろうな、と思った。


プルガサリ 伝説の大怪獣

1985年製作。1998年日本公開。字幕。原題「불가사리」
北朝鮮の映画。しかし想像していたよりはずっとしっかりとした作りで楽しめた。
武器を作るために国から鉄を徴収される村。農具や釜がなければ生活ができない村人たちと、そんなことはお構いなしに生活を侵していく朝廷の軍人たち。そんなときに救世主として現れたのが怪獣プルガサリで、全編を通してプルガサリは村人の味方として活動する。
鉄を食うプルガサリを追い返そうとした最初と打って変わって、命の恩人だからと鉄を差し出す農民たちと、両タイミングでその真逆の反応をした主人公との変化の対比が面白い。また、ラストの主人公の行動とその結果の映像もすごく良かった。鐘に入ってぐしゃんこで飲み込まれるの、絵面の良さがすごい。
背景セットや建物の破壊の描写、怪獣の造形など、特撮要素も非常に出来が良かった。
あと棒に逆さづりにされた豚。実際の豚で目にすることがあろうとは思わなかった。


ブレイド

1999年日本公開。原題「Blade」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
なかなか濃い映画だった。
設定はありがちではあれど、調理が上手い。デイウォーカーとなったきっかけの母親との対峙や、治せる希望が出てもその対価に今の能力を失ってしまう点などなど、欲張りのように設定周辺のエピソードを詰め込み、そのうえしっかりまとまっている。
あとサングラスの演出がとても好きだった。
大勢の敵が出てくるわりには、戦闘のほとんどでそれを活かしきれず、対人アクションや1対2程度に抑えられていたのが少し物足りない。
それと、「神」がしょぼかったのが不満。科学の勝利ですな。
あ、あとあと、不意打ちの「ちんちんぶらぶらソーセージ」にはさすがに笑ってしまった。


ブレイド2

2002年日本公開。原題「Blade II」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
前作でも思ったことだが、大人数でのアクションが大人数でのアクションになっていない。ブレイドが一人に技をかけている間は他の敵はブレイドに攻撃せず、飛び込むタイミングを見計らっている。特に今作の場合は、隙があるはずのブレイドを前に「待機」している映り込みがたびたび見られて、その点であまりアクションを楽しめなかった。
ウィスラーが実は生きていたという設定にしたのはありっちゃありだろうが、なぜ自殺しても生きていたのか、もう少し説明があってもよかったんじゃないかとも思う。前作の映像を回想という形で流すだけで、その後なぜ生きていたのか、あの銃声はなんだったのかという説明は、観客の想像に委ねている。そうしてウィスラーに対する不明瞭さを出すことで、生身の人間とは別の何かを感じさせ、実は寝返ったんじゃないかと観客に疑わせる良いガジェットになっていた。しかしそれはそれとして、ワンフレーズ程度あのとき致命傷にはならなかったのだなど語らせることはできたんじゃないかと思う。
あとスカッドの中盤の台詞が上手くて、「女二人に腹を噛まれて」といった台詞に、噛まれたのになぜ人間なのか?と違和感が出て、その違和感が終盤の展開で氷解する。さりげない、良い伏線の敷き方だったと思う。
青を基調にした映像が多かったが、ぎらぎらしていて少し見づらい部分もあった分、雰囲気よし視認性わるしといった印象。
それと光線爆弾の威力が想像以上に絵的に面白く、光に焼かれたリーパーズの死体が、もはや原爆のメタファーなのではないかと疑ってしまうほどの威力を思わせた。ほか、ラストの日の光を浴びての灰になり方が美しい。前作もある程度そうだったが、本作はより一層、ヴァンパイアの死の描写が綺麗だったように思う。


プレデター

1987年日本公開。字幕/吹替。原題「Predator」
やっぱ面白いなぁ。何度観ても面白い。
登場人物全員キャラが立っている。友愛もある。


プレデター2

1991年日本公開。字幕/吹替。原題「Predator 2」
初めて観たとき、今度は都市部かよ、すげーと思ったものだが、何度見ても、まず同じ感想を懐く。今度は都市部かよすげー。
ロサンゼルスの治安の悪さがすごい。電車で一般人が一斉に拳銃を取り出すシーンには驚いたものだった。
ラファエル・アドリーニ。


プレデターズ

2010年日本公開。字幕/吹替。原題「Predators」
最初の10分の時点で面白い。素晴らしい。これまでの「プレデター」シリーズ全作に共通することだが、プレデター本体が現れるまでも非常に面白く、わくわくさせる作りになっている。


フローズン・タイム

2008年日本公開。字幕。原題「Cashback」
芸術と称して性欲を発散すんなよとは思ったが、最終的にはきちんとそれらが区別されていた感じなので良かった。
でもなあ、最後の3カット、静止させちゃだめだったんだろうか。静止した雪はとても美しかったが、その中で「動く」キスシーンをわざわざ3カットに分けて動かせたのは、意図が良くわからない。
基本的にはバイト仲間との愉快な日常物という感じで、その点で面白かった。マットが良いキャラ演じてるなぁ。


プロジェクト・パワー

2020年Netflix配信開始。原題「Project Power」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
導入はたるかったが、全体的に面白かった。異能映画。
ロビンの名前がロビンなのも憎い演出。
防弾ガラスの中から撮った外の戦闘シーンが特に最高。そこの新鮮さと奥まった迫力、すんごく楽しかった。
追いかけていたはずの写真の男があっさり倒せたり、アートの能力の内容がいまいち伝わらなかった(テッポウエビのプラズマ砲?)のはあれだったが、どちらもアクション的に良い絵面。ポップコーン片手に見たい映画。


プロメア

2019年公開。
鑑賞年月: 2019年6月
[初見の感想](劇場)
めっちゃ面白いやん!! 良かった!! いいぞう!!
ストーリーもとても熱くてよかったが、実感としてそれよりもまず美術が素晴らしい。美麗な炎と氷のブロックや、手書き風のキャラ絵との融合、そして圧倒的なアクション! TRIGGER作品は「キルラキル」しか見ていないが、その美術の圧倒的な個性と、その統率の良さにいたく感動するものだった。美術への感動が、熱いストーリーに乗せられて届けられるので、こんなにも贅沢なアニメ映画はそうそうないだろう。
キャラも良かった! リオ好き! リオ好き! リオ好き! 最初は変声機でも使っているのかと思うほど、声と姿とのギャップが気持ちよくて素晴らしかった。あるようでないようである塩梅。美少年のこの声。そして仲間思いで、炎の力が強い。怒りに身を任せたときの良さ。炎の龍というイメージも素晴らしかった。
プロメアの設定の開示の仕方は少したるかったかなという印象。ストーリーにはさほど関わらない設定ではあるが、情報として必要ではある、という塩梅にしては、少し説明が長い。ガロの居眠りの描写を二度入れざるを得ないほど。そこはさらなる洗練を求めたい。
それと捕らえられたバーニッシュ、あれだけ動力源にされたのになんで生きてるんや。妹のことしか考えていない姉が仕組んだオーバーフローで全員死んでもおかしくないやろ、というのは考えてしまった。ワープさえ成功しなければ大丈夫なのかもしれないけども。熱いストーリーなのは素晴らしいことだけども、熱さに頼ったやろ、という面が見受けられたのはあまり印象に良くない。
でも美術よかったなぁ。美術がよいからストーリーもよく感じられる、という感覚、滅多にあるもんじゃない。とても良かった。
鑑賞年月: 2020年8月
[2度目の感想](Amazonプライムビデオ)
めっちゃ面白かったという実感よりも、ストーリーは意外と微妙(だが絵が良すぎてストーリーもよく感じられる)という印象のほうが残っていた。
しかし今回、1年経って見返してみて、やっぱりめっちゃ面白いやんと実感。アマプラで見たが、見ていてやはり劇場で見たいなー!と思わせられた。劇場で見たい。見る。
2度目だからなのか、SF的説明もそこまでくどく感じられなかった。というかガロの居眠りの演出、減った?と思ってしまうくらいに説明がシャープに感じる。
ただそれでもプロメアが完全燃焼したあとのリオの台詞のように、どうしても説明がくどいと感じられる部分はあって、その点などで初見時にはひっかかっていたのだろうという感じ。つまり見れば見るほど面白くなる映画だ。
エリスの自己(または妹)中心的な破滅的な行動にはやはりもう一度見ても破滅的だなと思う。のと、「なんで生きてるんや」という疑問に関しては序盤、洞窟でリオたちが説明していたことに気づく。
劇場で見返したいなー!


プロメテウス

2012年日本公開。字幕。原題「Prometheus」
つまらなかった。
帝王切開のシーンのおどろおどろしさは好き。あと「子犬」の造形にワクワク。


ベイウォッチ

2017年DVDリリース(日本劇場未公開)。字幕。原題「Baywatch」
役割上では若干浮いているキャラもいましたが、基本的にキャラ配置に意識的で面白かったです。ミッチ役のドウェイン・ジョンソンを目当てで観たのですが、ザック・エフロン演じるブロディや、ジョン・バス演じるロニー、ケリー・ロールバッハのC.J.など、良いキャラが多くて楽しめました。
ライフガードでかつ、警察ではない(=一般人である)ということを強調するためか、なるべく敵サイドを殺すことなくストーリーを進行させたのが良かったな、と思います。この辺が差別化できている。なので最後ラスボスを殺してしまったのは、少しもったいない。
ブロディが段々ミッチに信頼を寄せていく過程として、人を救助するエピソードが盛り込まれていましたが、それが同時に敵サイドの動きと連動しているのが脚本がこなれてて良かったですね。ひとつのエピソードに役割を複数持たせている。
エピローグの新隊長C.J.(パメラ・アンダーソン)の登場には、ドラマ版ベイウォッチを知らないと頭が「?」になると思う。ファンサービスではあるのかもしれませんが、この映画が初めて触れた「ベイウォッチ」である自分にとっては、内輪感が強かったです。


ペイチェック 消された記憶

2004年日本公開。原題「Paycheck」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
面白かった!
この手の時代のこの手の映画って公開当時は面白くても今見ると微妙、ってことが多いと思うのですが、本作は面白かった。過去の自分の掌の上で、与えられたアイテムを駆使してピンチを切り抜ける様子はゲームチックで楽しいですし、アクションもそつなく楽しい出来だった。なぜただのエンジニアである主人公があんなにアクションできるのかはおいといて。
未来を予測できるマシンのディテールが、宇宙のセンスオブワンダーに任せているのも少しポイント高いところ。良いSFだった。


ベイビー・ドライバー

2017年日本公開。原題「Baby Driver」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった。音楽の使い方がとてもうまい。
音楽の使い方がうまいからなのか、映像にまったく無駄を感じなくて、約2時間がとても濃厚に感じた。
ただドクの突然の改心がよくわからない。女連れであることを知って「昔を思い出した」と語っていたが、彼女の登場はその思い出が突き動かされるほどの大きなきっかけなのだろうか。


白頭山ペクトゥサン大噴火

2021年日本公開。原題「백두산」
鑑賞年月: 2019年12月
やっぱり災害系映画はお国柄が出るなぁ。
白頭山の噴火による大地震により、ビルは崩れ津波は起こり、突如大混乱に陥る朝鮮半島。白頭山のマグマ溜りが4層あることから、4次にわたって噴火が起こることがわかり、4度目の噴火が起きるともはや国がなくなってしまうほどの揺れになるという。
そこで登場するのが、まさかの核爆弾。韓国の大統領は、教授のシミュレーションに賭け、北朝鮮のICBMを盗み出し白頭山で爆発させて噴火の威力を抑える計画を実行する。しかし白頭山は北朝鮮と中国との境界線付近にある山であり、そこで核爆弾を利用するなんて話にならないと、米軍は反発し、韓国軍の暴挙を防ごうと動きだす。さらに中華系のマフィアグループが核爆弾を手に入れられそうなその状況に興味を示し、また一次地震後もICBMを守るため残留していた北朝鮮軍の抵抗も加わり、話は様々な思惑入り乱れる戦場と化す。
ディザスター映画のつもりで見に行ったら上記のような戦争映画だったので、なんか、あれー?ってなった。でもよくよく考えてみればこれも災害系映画に違いはなく、ただお国柄によるテイスティングの違いなのだ。 でもそれを抜きにしてもちょっと、味付けが雑。


ペット

2016年日本公開。吹替。原題「The Secret Life of Pets」
この手の動物物にしてはド派手なアクションが多く、コメディ色も充分で飽きなかった。
首輪戻ってこなかったね。


ヘレディタリー/継承

2018年日本公開。字幕。原題「Hereditary」
思っていたんとは違ったが、よくできていて良かった。
事前評判でハードルを上げてしまったのが悪い。たとえば「過去最高のホラー映画」という評があったときに、(他のすべてのジャンルと同じように)期待すべきはその怖さではなく完成度であるだろうが、自分は怖さを期待してしまった。
表情や景色を、静かに映していくカットの数々が素晴らしかった。緊張感を増していたし、怖さでいえばラストの盛り上がりよりもそれらのほうが上だったように思う。ラスト、兄の肉体に宿った妹が王として崇められるシーンは、怖さや面白さといった実感的な部分は薄かったが、話の整合性の高さと、その正体の顕れに良さを感じる面はあったと思う。
電柱のシーンは至高。
祖母(アニーにとっては母)の書き置きのメモが、思い返してみると実にうまいミスリードにもなっている。
屋根裏でアニーが自分の首を何度も刺すシーンは、滑稽に見えてしまった。


ペンギン・ハイウェイ

2018年公開。
めちゃくちゃ面白かった。
がっつりSFであるし、小学生のひと夏の思い出の感じとの相性がすごく良い。


ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

2018年日本公開。字幕。原題「The Post」
報道の理想を描こうとしている。その前提がないと苦しいだろうな、と思います。


暴走族サヨナラ

2013年日本劇場公開。英語字幕。原題「Sayonara Speed Tribes」
千葉の暴走族、SpecterのOBに密着したドキュメンタリー映画。けっこう面白かった。
彼が暴走族に入ったきっかけや、今の暴走族に対する不満、彼の現在の生活内容などについて、語られている。
暴走族を引退後、ヤクザ経営のボクサーとして生計を立てながらも、今の暴走族の若者たちは喧嘩をしないからいけない、特攻服はこれまで守り抜いてきた重みがあるから、その歴史を知らない今の若者には着てほしくない、とレンズを通して語っていく。
そしてヤクザから手を切り天理教の道へと入った後日談でさえも、大事そうに特攻服の写真を撮り溜めていくのが、印象的だった。
エンディングで流れた、ケニアで現地の人に広げられるSpecterの旗の写真の場違いさには、もはや芸術性を感じる。


ホーム・アローン

1991年日本公開。吹替。原題「Home Alone」
楽しい。痛い。楽しい。痛い。楽しい。優しい。


僕の中のあいつ

2019年日本公開。原題「내안의 그놈」
面白かったけど、途中から話の方向性がおかしくなっている。大人の事情であれもこれもと要望に応えたシーンを作っているうちに収拾つかなくなったんだろうか。


僕はイエス様が嫌い

2019年公開。
最初にキリスト教に触れたこどもが考える、ありがちな勘違いを素直に示した映画。素直に作られた作品なのだろうが、主人公の行動原理について考えさせられるところが多く、しかしその考えさせられる部分が果たして作品の主題に沿っているのか?と考えると首をかしげてしまうような、深いのか浅いのかよくわからないような映画だった。
たぶん、そんじょそこらの映画だったなら、主人公のありがちな勘違いに主人公が気づくとか、少し理解が深まるとか、そういう話の締め方を選択しただろうと思う。しかしこの映画ではそういうお約束的展開は切り捨てて、単純に主人公の素朴な思いをそのまま形にできている。なのでキリスト教映画として見るのではなくて、単なるひとつの経験を描いた、ノスタルジックなエンタメ作品として見たほうがしっくりくるだろうとは思うが、タイトルから期待した内容とは少し距離が離れすぎた。
事故の唐突さは良かったな。すんごくリアルで、おそろしい。
小さいイエス・キリストは面白くて良かった。あの、祈りの拳を振り下ろすためのサイズ感だったことを思うと素晴らしい発想だと思うし、あのシーンは印象的でよかった。


ぼくらの七日間戦争

1988年公開。
面白かった。
見晴らし台で啖呵を切るとき、もう少し学校の体制への不満を言葉に出してもよさそうなのにな、とつい思ってしまうあたりは、自分も「わからない大人」の範疇になってしまうか。彼らは彼らの方法で言葉を発している、親の中にはその言葉を汲み取れる人もいる。その描写がリアルでよかった。
それでかつ、機動隊に打ち勝ってようやく認められるところも。にしてもあの花火はどうやって用意したんや。すごいな。


ポセイドン・アドベンチャー

1973年日本公開。吹替。原題「The Poseidon Adventure」
信仰し、ただ待つか or 行動するかという選択。
ここでいう行動は、キリスト教的な告白と似通ったものを感じる。信仰はその発露によって成される、という話。
主人公の結末が意外だった。


ポッピンQ

2016年公開。
SHOW BY ROCK!!とアプリ内でコラボしていて興味を持ちました。
楽しい映画ではありましたが、ラストの続編予告が台無し。


ボヘミアン・ラプソディ

2018年日本公開。字幕。原題「Bohemian Rhapsody」
胸がいっぱいになる素晴らしい映画だった。
音楽の良さを引き立てる編集の巧さ。そして主演たちの演技の凄さ!
話作りの細かい点については気になる点もあったが、何を言っても最後のライヴエイド!!!。
もはやこれはライブビューイングですし、もはやこれは虚構のマジックによるタイムテレビです。
とても素晴らしかった。音楽の力ってすげー。


ホワイトナイツ/白夜

1986年日本公開。字幕。原題「White Nights」
名作。めっちゃ面白いし、ずっと見ていたくなる魅力がある。
冒頭のダンスシーンから一気に引き込まれる。素晴らしい。


マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2012年日本公開。字幕。原題「The Iron Lady」
サッチャーの伝記映画。
初の女性議員の高い声に対するトーンポリシングと、終盤予定表の誤字を執拗に責めるサッチャーの対比。
就任中と老後のエピソードを目まぐるしく交代させる演出は、単調な内容から観客を脱落させない最低限の手法として機能している。


マーキュリー・ライジング

1998年日本公開。字幕/吹替。原題「Mercury Rising」
鑑賞年月: 2020年7月
昔よくTV放送してた映画。2020年に久しぶりに見たが、こんなに静かな映画だったという記憶ではなかったので、驚いた。
静か。展開がとにかく静か。人は死ぬしガンアクションもあるが、とにかく地味に進行させていく。それらは話のメインではなく、アートとサイモンの交流が重要だからなのだろうが、かといって彼らの交流を丁寧に描いているというわけでもない。
終盤、ガラスの破片でやられる敵役のシーンがすごく印象的で、今回久々に見てもそのシーンのあっけなさと派手な絵面との両立に良さを感じていた。
ただ基本的に、まとまりが悪いなぁという感じ。


マーズ・アタック!

1997年日本公開。1996年製作。原題「Mars Attacks!」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
カルト的人気を誇る映画としてよく知られている作品。いつか見るリストのひとつだった。
結論から先に言えばさほど乗れるほど面白くもなかったし、スカム的に楽しめるほどひどい出来でもなかったが、宇宙人の造形は良かったと思った。核爆弾をヘリウムのように吸い込むシーンなど、「マスク」みがあって面白い。(翻訳機が合っているとするならだが)友好を唱えながら銃を撃ちまくるのも面白かった。
最初はいわゆる誤訳による食い違いかと思っていたものが、実はそうではなくどうやら本当に侵略しに来たらしい、と伝える演出(地球人と同じコードで大笑いする)もチープで好きな感じ。
キャスティングが豪華だが、中でもマイケル・J・フォックスが出演しているのに驚いた。


マイ・インターン

2015年日本公開。原題「The Intern」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
ロバート・デ・ニーロのほうがインターンだったのか。タイトルやジャケットで想像していたのとは真逆で、新鮮だった。
とてもコミカルで、明るい気持ちになれる作品。


マイティ・ソー

2011年日本公開。字幕。原題「Thor」
未知との遭遇にワクワクする科学者っていいよね。
それと、こういう兄弟の葛藤モノ大好き。ソーもロキもキャラ造形がとても優れていて、行動原理がしっかり描写されているので引き込まれた。ソーの無知ながらの行動と、そこから物を知っていき成長していく様子も、ロキの内に秘めた強い感情もとてもうまく演じられていて、大好き! ってなった。ええわぁこの二人。ええわぁ。
今回のS.H.I.E.L.D.、これまで以上に話に密接にかかわってきているのに、何にもしていないのは笑える。でもデストロイヤーの攻撃に感づいてすぐに撤退するあたりの行動力にはやはり有能さを感じる。有能だけど何もしていないってそれ萌えキャラの理論だよね。


マイティ・ソー/ダーク・ワールド

2014年日本公開。字幕。原題「Thor: The Dark World」
ロキ大好き~~~~~! ロキーー! いいぞロキー!! いえーいロキー!
ロキ(トム・ヒドルストン)の良さがこれでもかと詰まっている。もちろん他のを鑑みても全体的に面白かったが、ロキのこの作品への貢献度はすさまじいものがあるだろう。ロキ~~。
これ、結局ソーは反逆罪の許しを乞わないまま地球に居残った放蕩息子ということになるよね。すごい策士だな。すごい。
それはそうと、惑星間を行き来するアクションもとても楽しかった。ワクワクするよこういうの。面白い。
葬式のシーンの画も素晴らしかった。
あとエンドクレジットの後のパート、キスシーンの後にあれを持ってくるのはずるい。笑うやんこんなの。


マイティ・ソー バトルロイヤル

2017年日本公開。字幕/吹替。原題「Thor: Ragnarok」
面白かった。
「最強のアベンジャー」で笑う。


マガディーラ 勇者転生

2018年日本公開(本国公開は2009年)。字幕。原題「Magadheera」
一粒で何度でも美味しい映画。面白かった!
「バーフバリ」は親世代と子世代の物語でしたが、こちらは前世と現世の物語。400年の時を経てよみがえる、因縁の物語。
「バーフバリ」のノリでバイクを乗り回しヘリを飛ばすので、楽しくないわけがない。そのうえでダンスもあり、アクションもあり、恋愛もある。 これだけ詰め込んでいるにも関わらず、話のまとまりの良さがとても優れていたのも好きでした。「バーフバリ」だと、その敵どこから湧いてきたん?と思ってしまうような唐突さを感じることもありましたが、こちらにはそれがなく、すべてに理由付けがなされている。絵が現れるシーン、熱いわ。
とても面白かったです。見て!


曲がれ!スプーン

2009年公開。
とても良かった。
コメディ要素はいまいちだったが、それよりも心沁みる人情劇として見たうえで出来が良い。
超能力といういかようにも派手にできる要素を、あくまで質素に使い地味な人間ドラマに仕立て上げている。素晴らしい采配だと思ったし、実際、心に残るラストだった。
それとエンドロールに入った瞬間、イントロが流れた時点で何の曲かすぐにわかるほど大好きな曲に遭遇して、びっくりした。COSMIC BOXってこの映画の主題歌だったのか。驚いた。


マグダラのマリア

2018年DVDリリース(日本劇場未公開)。2018年製作。字幕。原題「Mary Magdalene」
こういう新解釈系も良いですね。


マスカレード・ホテル

2019年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
意外と良質な映画だった。
エピソードを重ねることで、ホテルというの面白さをよく引き出している。
松たか子の一人二役もすごい。


マスク

1995年日本公開。原題「The Mask」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
よくテレビ放送していた映画。2020年に久々に視聴。
カートゥーン的表現と実写を組み合わせた作品で、表現の面白さが随所に現れている。マスクの行動にいちいち効果音が入るのが丁寧で面白いし、今見るとチープな映像効果も、実写とのギャップになる分いつまでも色あせることがない。
ジム・キャリーの演技が本当に良くて、マスク着用時と本人のときとは演者が違うのかとさえ思った。派手な演技はもちろん声色も大きく演じ分けていて、演技の幅広さを感じる。
序盤でスタンリーの冴えないところを、いくつものエピソードに重ねて丁寧に描いたのも、その演技の幅広さを見せる要因になっている。脚本の上手さと演技の上手さが合わさって最強。
あとマイロ(マックス)大好き。"Smart dog."


真っ赤な星

2018年公開。
とても良かった。家に居場所のない中学生ようと、男性に都合よく利用され続けてきた元看護師の弥生。弥生が陽を保護する形から始まる、共依存関係でかつ、一緒にいても自分を傷つけてしまうGL。
話の接続が強引な部分があり、その点でケータイ小説の文化を思い出したりもしたが、性別による格差を真正面から描いている点でとても誠実さを感じる。
また、アフターピルの言及がなかったりなど、別の観点でも首を傾げるところがあったが、しかし責任ある行動がとれる大人がひとりもいなかったからこういう演出になったんだなと、納得がいく。


マッドマックス

1979年日本公開。字幕。原題「Mad Max」
暴走族っぷりがある。


マッドマックス2

1981年日本公開。字幕。原題「Mad Max2: The Road Warrior」
おもしれー。
ヒューマンガスめっちゃ好き。
フェラル・キッドのブーメランもめっちゃ好き。


マトリックス

1999年日本公開。原題「The Matrix」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
2020年に久々に鑑賞。古い映画だなぁと思った。
先進性がメインの作品は、どうしても時の流とともに(質として)古びてしまう。それはそれだけこの作品が以降の作品に影響を与え、より洗練され、よりインパクトのある作品のきっかけになったからこそだろうが、だからこそこの2020年に楽しむことはできない作品。


マニカルニカ ジャーンシーの女王

2020年日本公開。原題「Manikarnika: The Queen of Jhansi」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
壮絶。
ジャーンシーの女王、ラクシュミー・バーイーを主人公とした伝記映画。東インド会社(イギリス)に統治されていたインドを独立させようと、自ら剣を持ち軍勢に立ち向かった伝説のような一生が描かれている。
見事な剣術を見せたり、伝統的に蔑ろにされてきた女性の権利を守ったりと、マニカルニカは見事な英雄像を見せる。しかしこの映画の他と違うところは、その英雄的言動が、諸刃の剣であると示しているところだ。
見事なまでに民衆を扇動し、勝てない戦いでも最後の最後まで抵抗し、多くの者を犠牲にする。兵士の不足を補うために女性を集め剣を教え、身重の女性には自爆させる。一人でも多くのイギリス兵を殺し、インドの独立を目指すために。
民あってこその国ではないのか、と個人的には思うのだが、マニカルニカは強い信念をもって国を守ろうとする。どれだけの犠牲を払っても、決して折れず、最後の最後まで剣を振り続ける。主演カンガナー・ラーナーウトによる鋭く力強い目線は、女王の仮面をかぶった悪魔にさえ見えてくる。
とにかく凄まじい執念で、これほどの戦争映画はそう見られるものではないと思った。


魔法にかけられて

2008年日本公開。吹替。原題「Enchanted」
序盤がやはり胸糞悪い。
終わり方は好き。


マリッジ・ストーリー

2019年Netflix独占配信開始。字幕。原題「Marriage Story」
鑑賞年月: 2020年1月
素晴らしい映画だった。結婚による抑圧や制約の苦しさ、離婚の労力と精神両面での苦しさ、そしてその狭間で苦しむ子供がすべてが配分良く描かれている。誰も得をしない、お互い相手を過剰に傷つけるつもりはない、けれど元の夫婦関係に戻るなんてありえない、というバランス感覚を維持したまま、離婚調停の厳しさが描かれている。弁護士の描き方も面白く、裁判に勝つことを最優先にする弁護士が大勢いる中で、依頼人の人生を俯瞰したうえでの目的を追及する、一見すると頼りなく実際に頼りない弁護士も登場する。
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライヴァーの迫真の演技が見もの。この二人の技量によって二段も三段も質を高めている映画だ。特に白い部屋での言い争いのシーンは、まさに最高潮だった。


マ・レイニーのブラックボトム

2020年Netflix配信開始。原題「Ma Rainey's Black Bottom」
鑑賞年月: 2021年3月(字幕)
下層と上層の区分をお洒落に撮り切った作品。
特にゲイツ牧師の話をした直後の、極端なローアングルでの線路裏のカットが印象的。
リハーサル室は地下に配置され、レヴィーが何度も抜け出そうとした扉の先もまた下層でしかなく、彼は封鎖された空間で空(地上)を見上げるしかない。
ラストのレヴィーの行動もそうだが、悲劇や小競り合いはほとんど黒人同士で起こっており、白人は彼らの存在に気づきもしない。だからこそトレドが序盤で言ったように「黒人全体のためになることをやる」ことが必要なのだろうが、実際のところそのような構図を取ることさえ難しい。
戯曲が原作だからか、会話メインで話が進んでいるシーンが多かったが、それと合わせて上記のようなカメラワークと編集の技巧も組み合わさることでとても映画らしい映画を見たなという感じだった。とても良かった。


マンイーター

2012年日本公開。2007年製作。原題「Rogue」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕・アンレイテッドバージョン)
面白かったー!
まれに見る上質なワニ映画。
蜘蛛の巣にかかった虫、水面の小枝に捕まる虫など、モンタージュのお手本かと思えるようなカットを挟みこみ、さらには最後には主人公が水面から這い上がる虫を目撃することで同化さえさせている。
一か所だけ少し気持ちの悪い想定線の飛び越えはあったが(主人公が水中でケイトを探した後、岸辺へと泳いでいくシーン)、それ以外は本当に意図が十分すぎるほどに伝わってくる映像づくりに徹せられていて、非常にシームレスに見れる映画だった。
演技も軒並み良いし、編集も上手いし、音楽も効果的。ワニの造形もすごくしっかりしてるように見える。素晴らしかった。お手本のようなワニ映画だった。素晴らしかった。
Amazonプライムで見れるのが「アンレイテッドバージョン」というものだったのでそちらで見たが、死体の造形も凝っていた。痛々しく牙が刺さっただろう顔面や、そこに湧いた蛆虫など、よく作られている。
ワニ映画見たいって人はぜひ見てみて。おすすめの1作です。


マン・オブ・スティール

2013年日本公開。原題「Man of Steel」
鑑賞年月: 2020年6月(字幕)
面白かった!
地球上でのアクションシーンが楽しい。


マンハント

2018年日本公開。日本語版(一部字幕一部吹替)。原題「追捕」
えーしょうもな。割と楽しみにしてた映画だったんですがちょっと、すごく眠い。
何がしたかったんだろう。ほんと何がしたかったんだろう……。
しかし一点だけ、手錠付きのアクションシーンは非常に見応えがありました。弾倉を入れ替えるシーン尊すぎる。


万引き家族

2018年公開。
子役の2人(城桧吏、佐々木みゆ)を含め主要キャスト全員の演技がすごくて、驚いた。特に佐々木みゆ、こんな天才がいたのかと思った。まさにそこにあるかのような演出で、観客に現実を突き付けてくる。そのためこの映画には現実との接点が執拗なまでに多い。「ゆり」の境遇については、公開時のタイミングとしても、例の事件を思い浮かべてしまうほかないだろう。社会上の制度さえ、血の信仰が下敷きになっていると自覚させられてしまうどうしようもなさ。犯罪に正当性を持たせることはできないが、家族の「つながり」自体が犯罪性を持っているとき、それらはより顕著な形で現れる。
良いシーンばかりだったが、例の信代(安藤サクラ)が顔を手で拭うシーンは白眉。


ミス・アメリカーナ

2020年Netflix独占配信開始。原題「Miss Americana」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
テイラー・スウィフトにフォーカスしたドキュメンタリー映画。
表現者の苦悩と、責任、誹謗中傷と性差による抑圧、そして人権のために立ち上がる勇気を描いている。
テイラー・スウィフトといえば個人的に、アルバム『1989』を聴いたときに、こんなに懐かしくなる新曲があるのかと印象深かった覚えがある。新しいのに懐かしい、という撞着語法のような音楽体験がぴったり合う歌手だと思う。
親切を信条にしてきたと本人が語るように、真面目に音楽を作り続け、聴き手のための「日記」を届け続けてきたテイラー・スウィフト(「音楽とは日記」という比喩、他のアーティストもよく取り出す比喩だが、個人的にとても好きだ)。しかし成功すれば成功するほど、周囲の攻撃は大きなものとなる。その数々が本当に苦しいものばかりで、画面を見続けて飽きることがなかった。
そうして語られる彼女の変化と決断のさまは、表現者として非常に勇気をもらえる内容だ。


ミスト

2008年日本公開。字幕。原題「The Mist」
やばい。
最後に出てきた巨大な怪物、あれを見たらもうどうしようもできないと思っちゃいますよね。あれすごくかっこよくてよかった。
やばいなぁ。
エンドロールのヘリコプターの音もすごい余韻の助けになっている。


ミスミソウ

2018年公開。
ところどころ良いシーンがあって良かった。教師がアレに巻き込まれるところ好きです。きちんと登場人物という感じで、「友達」という感じ。
いかにもなスプラッタ邦画な演出はともあれ、キャラの立ち位置も良い感じに作られてて、けっこう面白かったです。音楽に頼りすぎではありますけどね。
小黒妙子が好き。ああ、いじめに発展するときこういう立ち位置のことあるよね、と説得力がありました。野崎春花の妙子への接し方も含めて、このキャラがいてこそ一段映画の質が上がっている感じがあります。
だから終わり方が好き。
これ漫画だとめちゃくちゃ面白いだろうな、と思ってしまう、納得のストーリーでした。


未知との遭遇

1978年日本公開。1977年製作。原題「Close Encounters of the Third Kind」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
[オリジナル劇場版]
父親と母親のちがい(強い言葉でいえば、役割格差)がよく出ているなぁという感じ。
何度も繰り返され耳になじむ音楽がとても良かった。


みつこと宇宙こぶ

2018年劇場公開。
こぶが気になる女子中学生、みつこ。こぶに感じる神秘と、宇宙の神秘とをつなぎ合わせて、そこに亀の甲羅を組み合わせたのが上手いなと思った。小松未来と金田悠希の演技も良い。


ミッション:インポッシブル

1996年日本公開。吹替。原題「Mission: Impossible」
スパイ大作戦世代には辛い内容なのだろうが、信頼していた上官が裏切り者だったというプロットは単純に好みだ。ジムおじいちゃんのアクションが良い。
あとインターネットの描写が好き。


ミッション:インポッシブル2

2000年日本公開。吹替。原題「Mission: Impossible 2」
叙情的な前半と、アクション全開の後半との二部構成。
スカーフを掴んだシーンと、車が大破するのをいちいちスローモーションで映したところが好き。足元に拳銃が隠れていたのはいまいち良く分からない。


ミッション:インポッシブル3

2006年日本公開。吹替。原題「Mission: Impossible III」
この映画を初めて観たときの衝撃を、もう思い出すことはできない……(数えきれないほど観返したため)。「ミッション:インポッシブル」シリーズへの信頼を確かなものにした傑作。面白い。最高。ほんと好き。とても好き。
冒頭で読唇術をさせたことや、婚約者の職業を医師にしたことなど、物語の違和感を消すためのディテールがつぶさに配置されている。
脚本のお手本とでもいうようなどんでん返しのやり方、そして最高に楽しいアクション! 最高に楽しいアクション! 最高に楽しいアクション!


ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル

2011年日本公開。吹替。原題「Mission: Impossible – Ghost Protocol」
安定感のあるアクションとガジェットの面白さ。
銃の分解めっちゃカッコいい。
暗殺者サビーヌ・モロー(レア・セドゥ)がとても良いキャラ造形だったので、あっけない幕引きにそそられる。


ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

2015年日本公開。吹替。原題「Mission: Impossible – Rogue Nation」
おもっしろいわあ。
ラストシーンめっちゃ良いですよね。ショーン・ハリスの演技といい、レベッカ・ファーガソンのハグといい(ここでわざわざキスをするような陳腐な作りではない安心感、好き!)。「ミッション:インポッシブル」シリーズの安定感にはほんと、目を瞠るものがある。ずっと楽しいんだもんなぁ、スルメだよなぁ。
序盤から飛行輸送機にしがみつくハイペースアクション。バイクアクションもめっちゃ進化している。


ミッション:インポッシブル/フォールアウト

2018年日本公開。吹替。原題「Mission: Impossible – Fallout」
好きーーーー!
とても好き。我らがトム・クルーズ! やったー!
ミッションインポッシブルシリーズは吹替がよいと思っている派で、DAIGOの吹替が心配だったが、慣れてきたらいい感じだった。というかオーガスト・ウォーカー萌えキャラすぎない? 「酸素ボンベ、落としたのか?」可愛すぎ。
アクションずっと好き。建物を飛び越えヘリにしがみつく! 好き! 好き!
それにしてもストーリーが集大成感ある。続編のハードル高そうだけど大丈夫か。
いやぁでもほんと、信頼のミッションインポッシブルでした。


ミッドサマー

2020年日本公開。その他。原題「Midsommar」
すんごい映画だった。ずっと楽しかった。
共感の対比が美しい。冒頭、家族を失った主人公(フローレンス・ピュー)はひとりで泣き崩れ、恋人であるクリスチャン・ヒューズ(ジャック・レイナー)に慰めてもらう。泣き崩れるのは当然主人公ひとりであり、恋人は同情こそすれその悲しみを我が物にまですることはできない。これが終盤になると、主人公と感情のつながった「家族」たちが、主人公の悲しみに呼応し、一緒に呼吸し、一緒に泣き崩れるという、あの異様な光景! しかし主人公やあの村の人にとってはそれが救いであるのかもしれず……。
クリスチャン・ヒューズのそうそうこいういうやついるよな感もとてもよかった。あちらこちらにいい顔をし、その発言は撞着を起こし、人の研究を後追いで真似し……。実際に遭遇したらめちゃくちゃ嫌な人間性だが、こういう喋り方のキャラクター、創作物的にとても大好き。
そしてカメラワーク大好き。天地がひっくり返る動きや、部屋の中なのにすーっとスライドしていく撮り方。スクリーンを見ているだけで楽しくなる。
本当にずっと楽しかった。ありがとうアリ・アスター監督。
やはり創作物に求めているのはなんだかんだいってやはり完成度なんだなぁという思いがあるので、アリ・アスター監督への信頼感がぐいぐい上がって青天井である。すごいわ。すごい。


ミッドナイト・イン・パリ

2012年日本公開。字幕。原題「Midnight in Paris」
タイムスリップにタイムスリップを重ねたのは素晴らしい。2010年代から1920年代へ、1920年代から1890年代へ。
過去への憧れは際限がない。かといって現在に満足できるのかというとそれはまた別の話だ。


ミッドナイト・ランナー

2018年日本公開。原題「청년경찰」
鑑賞年月: 2021年1月(字幕)
面白かった!!
コミカルでかつ、犯罪の根の深さはドシリアス。メリハリがめちゃくちゃよく効いてる。
主演2人のテンポのいいやり取りが心地よかったし、前半の内容が実践という形で現れる構成もとても良かった。


水戸黄門漫遊記 人喰い狒々

1956年公開。
ロックだ。
水戸黄門対人喰い狒々のアクションシーンを見れたのが満足。お蝶さん(千原しのぶ)が美しい。


ミュウツーの逆襲 EVOLUTION

2019年公開。
泣きそうになりながら見ていた。原作映画の焼き回しといえば焼き回しだが、当時には作りえなかっただろう3DCG表現とカメラワークが満載。
ミュウとミュウツーの攻撃に挟まれ、石化するあの名シーンも、CG特有の良さがふんだんに出されている。
ポケモンはそのままながら、当時存在しなかった技が出てくるのもよかった。


未来のミライ

2018年公開。
「今」だからこそ家父長制を肯定的に描き、子育てに関する父親と母親の大きな役割格差と、従順な子をこそ良しとする価値観を浮き彫りにして見せた、興味深い作品だったと思う。現実にこうだったらめちゃくちゃ嫌だが、まあフィクションならこういうのがあってもいいよね。
最初はてっきり、この父親も映画を通して成長していくのかとばかり思っていたが、最後に笑えない冗談を放つほど子育てについては添える程度のお手伝いさん感覚で、驚いた。
また、駅のシーン、迷子のアナウンスを聞いて、子のほうが親のほうへと訪ねていく描写にも驚かされる。このシーンを見る限りでは上記のコンセプトは意図的な演出だったのだろう。子どもの権利は軽視され、守られることなく自己責任を求められるような、そんな「未来」を描ききれていて、素晴らしいディストピアだと思った。
あと階段状の変わった建築物に住んでいるので、くんちゃんが段差を下りるたびに転ばないか心配だった。転んだら危なそうなところにも鉢植え置いてるし。
現在と未来のくんちゃんが同じ空間に存在し、あまつさえ会話しているシーンを入れるのならば、現在の未来のミライも同時に存在させても良かったのでは、と思ってしまう。
それにしても、金があるっていいなー。


ムーラン

1998年日本公開。原題「Mulan」
鑑賞年月: 2021年3月(吹替)
とても面白かった。
90年代でここまできちんと男尊女卑を基盤にした映画が作れたのだなと驚く。
ラスト、結婚できて良かったね、みたいな終わり方になったらどうしようかと不安だったが、結果的にだいぶ抑えた展開になっていたのも非常に良かった。相手が英雄だからか、シャンもわきまえているし。


ムーラン2

2004年DVDリリース(日本劇場未公開)。吹替。原題「Mulan II」
鑑賞年月: 2021年3月(吹替)
前作は良かったが、対して本作はここまで来ると露骨なオリエンタリズムという感じで、どうしても引いた目で見てしまう。
見合い制度や東洋的な価値観の束縛から人々を解放させていくことと、それらを完全に廃止しなければならないとするのとは似ているようで全然違う。


メアリと魔女の花

2017年公開。
ジブリ作品のリスペクトが随所にあって楽しかったです。


名探偵コナン 時計じかけの摩天楼

1997年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
「名探偵コナン」の劇場版第1作にして素晴らしい傑作。
お手本のような三幕八場構成になっている。小規模な爆弾から大規模な爆弾へとどんどん無理なく難易度が上がっていくこと、犯人を捕まえ本来の目的を達成したときには既に別の大きな課題(蘭の救出)が発生していること、序盤から繰り返される赤と青の意識的な対比など、大まかな流れから細かな演出まで、とても有機的につながっている。


名探偵コナン 14番目の標的ターゲット

1998年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
毛利小五郎に焦点を当てた映画(として見た)。
毛利小五郎が妻と別居/警官を辞したきっかけとなったエピソードが明かされる内容についてはとても泣きそうになった。
主要キャラクターが狙われるというのは新鮮で良かったが、どれも殺意が少ない(本命の相手ではない)感じが伏線であることは認めつつも物足りなさの要因にもなっていて、難しいところだと思った。


名探偵コナン 世紀末の魔術師

1999年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
めちゃくちゃ面白かった。
怪盗キッドがメインキャラクターとして登場していることもあってか、殺人犯探しの謎解きというよりは秘宝の謎を探るトレジャー的な要素が強い。ロマノフ王朝、ラスプーチンなどの歴史上の要素をうまく混ぜ合わせていることからもその印象が強められる。秘宝が映し出した「答え」はとても泣きそうになった。香坂夏美のキャラ造詣がささやかながらすごく良くて、欲に目がくらまない大らかさ懐の深さを(特に終盤の)言動で感じられて良かった。あとセルゲイ・オフチンニコフもめっちゃいいよね。


名探偵コナン 瞳の中の暗殺者

2000年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
爆発シーンがない。
どちらかというと(4作目にして言うのもおかしいかもしれないが)原点回帰という感じで、新一と蘭の人間関係に焦点を当てながら、推理を中軸に置いたシナリオになっている。テンポよく話が進むわけでもなく、前作までの3作品と比べて犯行も地味だったので、前半は少し退屈ではあった。
ただ終盤がすごく面白い。コナンが氷のアトラクションをスケボーで走り抜け蘭たちのいるところまでショートカットするシーンがお気に入り。
噴水のシーンでは、なぜ犯人が噴水が止むまで発砲を待ったのかがよくわからなかったが、あれくらいの水でも銃弾の勢いは抑えられてしまうものなのだろうか。


名探偵コナン 天国へのカウントダウン

2001年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
面白かった!!
劇場版1作目「時計じかけの摩天楼」の内容に少し言及を入れることで、劇場版映画としての続編感が他の作品に比べて一層強いなと感じた作品。それでかつ、灰原哀のキャラ造詣を掘り下げて、黒の組織の犯行とメインプロットでのゲストキャラクターの犯行を交差させるアイディア、そして爆発! これらが重なり合ってとても楽しい映画に仕上がっていた。
ビルが爆破された後の、蘭の身のこなしがとても楽しいのも良い。これまでの劇場映画だと、蘭は記憶喪失になったり溺れかけて衰弱したりと、その身体能力が(作劇上)制限されることが多かったが、本作ではがっつりその身体能力の高さを見せてくれる。エレベーターの天井に上がる身のこなしとかすごいシュッとしてる。


名探偵コナン ベイカーストリートの亡霊

2002年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
めちゃくちゃ面白かった!!!
コナン映画の中で一番好きな映画。今回久々に鑑賞してみて、やはりめちゃくちゃ面白かった。
ヴァーチャルリアリティゲームを題材にしたSFでありつつ、「血縁」をテーマに映画全体を包み飾っている。だから今回小五郎ではなく工藤優作が活躍するし、切り裂きジャックも親へのトラウマをもとに犯行に走る。血(ジャック・ザ・リッパーの遺伝子)によって始まった事件を、血(工藤親子、ワイン)によって解決するという構成も憎い。
そのうえ少年探偵団だけでなく、ゲストキャラの少年たちも成長していくのがテーマとも合っていてとても良かった。人助けって気持ちいいんだなって気づく少年、良すぎる。その点で、諸星秀樹がヒロキに乗っ取られていたと明かされたところは、納得はすれど悲しかった。あんなに悪ガキだった諸星少年が、「おれたちにみんなの命がかかってるんだ」とコナンに啖呵を切るところなんて感涙ものだったが、結局諸星少年には何も残らないまま、眠っていただけだった。映画を通して唯一成長できなかった子になってしまったわけで、そこが悲しいなと改めて見ても思う。
それはそれとして、SF的なテーマを現代日本に適用させ、「血」というキーワードを巧みに重ね合わせて見せた快作だった。素晴らしかった。


名探偵コナン 迷宮の十字路クロスロード

2003年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
コナン映画の中でも思い入れが深く大好きな作品なのだけど、今回久々に鑑賞して、こだま監督作品の中では少し勢いに劣るかという評価になった。爆発しないからだろうか。(でも放火はするのでコナン映画的には爆発にカウントしたい)
ただ完成度はとても高い。服部平次の初恋をエピソードに絡めつつ、京都の通り名を題材にした謎解きが繰り広げられる。これまでの作品同様、登場人物の細かな所作や発言が推理のための材料となっており、フェアな推理に近い。そうして服部と和葉の恋愛をメインに据えながらも、蘭と新一のエピソードも差し込まれており、そつがない。


名探偵コナン 銀翼の奇術師マジシャン

2004年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
劇場版第8作目。ここから山本泰一郎が監督を引き受けている。
本作は珍しく、いわゆるシナリオ上の"目的"が設定されていない。怪盗キッドから宝石を守り抜くという一応の目的は序盤に開示されているが、本編を通してその目的が意識されることはまったくない。怪盗キッドが実際に関係するのはこの映画の序盤3分の1ほどの内容であって、その後は飛行機内での単品の殺人事件、そして飛行機墜落の危機といったように段階的に話の目的が変わっており、怪盗キッドから宝石を守るという(名目上の)目的は無視される。つまり本作は3つの別々の事件をひとつの映画としてつなぎ合わせたようなものになっており、コナン映画としてはだいぶ実験的な作りだといえる。
そのうえで、飛行機着陸の派手さからだろうか、意外にもこれが面白く、満足感が高いのがすごいと思った。シナリオとしての一本の筋が通っているわけでもなく、かといって別々のエピソードが相乗効果を出しているわけでもない(ように見える)。なのにキャラを基軸にして3つのエピソードを時系列順に繋げ合わせることで、コナンとキッドの協力も、蘭から新一への告白も、楽しめるものになっている。


名探偵コナン 水平線上の陰謀ストラテジー

2005年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
面白かった!
推理面としての面白さはこれまでの劇場版9作のなかでトップかもしれない。少なくともトップクラス。というのも(以後ネタバレ)、本作は倒叙ミステリでありながら、その形式を逆手に取り、叙述ミステリとしての姿も隠している。
コナンが犯人のミスリードにひっかかり、いつもはいわゆるへぼ探偵である小五郎が真実を先に見抜くというのは、本当に意外だった。新鮮だったし、そういうのもありなのかとなった。
欲張りに小五郎のアクションシーンも加えられている。とにかく小五郎のための映画。いいぞいいぞ。


名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌レクイエム

2006年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
10年ぶりくらいに見たが、他のコナン映画と違いおおよその内容を覚えていた。
ただしモニターに映る2つの点の伏線や、キッドが園子にあれを返しに来たからラストあのとき近くにいれたんだなとか、そういう細かい部分を見つけるのが楽しい映画だった。
また、テレビアニメ219話「集められた名探偵! 工藤新一vs怪盗キッド」の後半のエピソードが個人的に大好きなのだが、その登場人物である名探偵、茂木遥史と篠原恵美が名前と顔だけ登場している。


名探偵コナン から紅の恋歌ラブレター

2017年公開。
やっぱ映画は爆発でしょって気概が感じられて好きです。


名探偵コナン ゼロの執行人

2018年公開。
安室さんが良かった。安室さんを楽しむ映画です。車のシーン凄い。
その他ストーリー構成などは微妙。「相棒」の一部エピソードを担当した脚本家が今回担当されていると話題になっていましたが、さほど「相棒」の良さが出たストーリーではないです。
「去年の冬、きみと別れ」もそうでしたが、登場人物の“積極的な”自供をもってプロットの解決とするのは退屈だと思います。「去年の~」はまだ、自供そのものが復讐の役割も果たすという巧さがありましたが、こちらは何もない。しかもそれが連続的に展開されていたので、尚更に退屈でした。
でも繰り返しますが安室さんのカーアクションはとても良かったです。エンディング曲の入りも素晴らしかった。


名探偵コナン 紺青のフィスト

2019年公開。
鑑賞年月: 2021年4月
ちょっと中途半端かなという印象。推理よりも京極さん周りの人間関係とアクションがメインという受け止め方をしたが、それにしては推理パートに時間をかけすぎているのと、それにしては作中での推理の比重が低いというバランスの悪さ。笑えるシーンは多かったが、個人的にはもっとはっちゃけてほしかったし、いっそのことバカミスを目指してもよかったんじゃないかと思う。
それはそれとして、京極さんと園子はとても良かったなという感じ。京極さんと一緒でウキウキして、お嬢様らしい横暴な行動に走る園子ってめっちゃいいね。園子のお嬢様キャラめっちゃ良いね、と気づきを得た映画だった。豪華な中庭に「まあまあね」と言ったり、すぐさま祖父に連絡して京極のスポンサーになったり、お嬢様だからこそできる展開運びと言動が多々あってとても良かった。でももっとそういうの見たかった。


名探偵ピカチュウ

2019年日本公開。原題「Pokemon: Detective Pikachu」
鑑賞年月: 2019年5月(その他)
ずっと画面を見るのが楽しい映画でした。細部に命が宿っているというか、ポケモン愛に満ち溢れていて、素晴らしかった。日常に溶け込むポケモンの風景がこれでもかと実写化されていて、ポケモン本体のCGの精巧さも含めて、とても良かったです。
ストーリー自体にはあまり楽しめず。ポケモンの存在感だけで充分すぎるほどに楽しさを出せているのに、それに慣れさせるより先に「人間とポケモンの融合」という一ひねりを入れてきて、先走っている感覚が強かった。デジモンに例えるなら(なぜデジモン)、シリーズ1・2作目のデジモン本来の要素と、3作目のデジモンと人間の融合とを、この映画では一本の映画に詰め込んでしまったような。そういう欲張り感があって、話への没入感には少し阻害があったかなという印象です。つまり根本的な話なのでんなこた知らねえでいいんですけどね。融合ネタ自体はマサキの頃からあったものですから、この題材この原作を採用したこと自体については本来文句を言える筋合いはないです。
にしてもピカチュウめっちゃ可愛かったな! あの歌ってるシーン大好き! 他も全部好き! ふわもふ! ふわもふすぎる! すごい!
ポケモンバトルの内容も概ねとても良かったです。ゲンガーとカメックスのバトルめっちゃ良かった。それとメタモンがすごくかっこいい。ビルから落とされても鳥ポケモンになって舞い戻ってくるの。かっこよすぎる。
ドダイトスのシーンも素晴らしかった。ドダイトスの背中に乗る想像しちゃうのめっちゃわかる。それを形にしちゃうんだからもう最高。
エンドロールで流れた「Electricity」も良かった。
あと英語で先生のことsenseiっていうんやね。ふふってなった。


女神の見えざる手

2017年日本公開。字幕。原題「Miss Sloane」
ひゃー。すごいどんでん返し。
そのうえ、主人公のセリフでも語られていたが、パーソナリティにかかわるような過去のエピソードを見せなかったのが上手い。見せてしまった途端に陳腐になるものを、徹底的に排除して、主人公の言動をこそメインに本筋を固めてみせた。快作。


メタモルフォーゼ/変身

2021年日本公開。2019年製作。原題「변신」
鑑賞年月: 2019年9月
良かった。「エクソシスト」や「哭声/コクソン」の系譜にある映画。
そのうえでとてもエンタメしている。
家族の誰かに成り代わっていく演技が全員とても良かったし、面白かった。


メッセージ

2017年日本公開。字幕。原題「Arrival」
面白い! こういうのは形にできたことそれだけで面白い。
叙述トリック的手法にもすっかり騙された。
サピア=ウォーフの仮説。


メリー・ポピンズ

1965年日本公開。字幕。原題「Mary Poppins」
素晴らしい。


メリー・ポピンズ リターンズ

2019年日本公開。字幕。原題「Mary Poppins Returns」
ほんとにリターンズという感じで、前作と同じようなことをやってくれる映画でした。同じことをやったうえで、前作のこどもたちを親世代に置くことで新しい味わいを出している感じ。
世知辛い中でああいうことができるのが「メリー・ポピンズ」の良さだと思っているので、「リターンズ」のこのオチだと一周回って世知辛くて、それがよいなぁとなった。親キャラの使い方が劇画ですし。
曲に関しては新しいものばかりで、その点で懐かしみとかは感じられなかったんだけども、一部前作の曲や歌詞をうまいタイミングで出しててええなぁとなった。それを除いても音の洪水だった。もう少し音の数を減らしても良かったんじゃないかとは思ったが、素人なのでどこがどうとはいえない。
全体的にどうしても手放しに良かったとは言いにくい感触で、でも、良くなかったとも言いたくない出来。タイミングの問題かもしれない。


メン・イン・ブラック

1997年日本公開。原題「Men in Black」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
良質なコメディSF映画。
こういう映画って科学的考証はともあれ、センスオブワンダーも一緒にないがしろにしてしまいがちだと思うのだが、本作はその点非常に優れている。銀河が地球よりも大きいとは限らない、というミクロ宇宙的な見方はそれを映像に表現するだけで素晴らしくワクワクできるものになるし、この手のコメディ映画にしては、それを全面に出したシーンをラストに持ってくるなど、コメディでありながらSF的面白さもメインに持ってこようとしている意欲が感じられる。
また、主演の二人、ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズがとても良くて、良いコンビだなーと思いながら見ていた。トミー・リー・ジョーンズの、いかにも演技で笑ってるところ、ほんと好き。とても好き。役者のイメージで見ていると、そういう顔できたんだ、となる。


メン・イン・ブラック2

2002年日本公開。原題「Men in Black II」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
前作にも増して、トミー・リー・ジョーンズの楽しい演技が楽しい映画。MiB時代の記憶をなくしている郵便局長時点の顔、記憶を取り戻した後の様々なリアクション、過去の恋人を思い出して涙を流すシーンなど、表情豊かな仏頂面を見せてくれて、楽しめる。
オチも良くて、多層構造の世界をセンスオブワンダーとして描いてみせた前作を活かして、今作はそのパロディで締めている。いやはやすごい世界だな。


メン・イン・ブラック3

2012年日本公開。原題「Men in Black 3」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
面白かった!!
前作から10年たってからの新作ということで、キャラクターもそれ相応に歳をとっている。Zの追悼から始まる本作だが、そのうえ、Jの自室には壁一面大のフランクの白黒写真が飾られてあった、暗に既にフランクも亡くなっていることを示していて、グッと来た。J、フランクのことそんなに大好きだったんだな。
タイムスリップ物のツボを押さえていて、特にラスト、主人公のパーソナリティ的な部分にまでつながってくるところなどとても良かった。
グリフィン(マイケル・スタールバーグ)のキャラもとても大好き。


燃えよ剣

1966年公開。
鑑賞年月: 2020年7月
面白かった。
土方歳三のキャラ造形が独特。


最も普通の恋愛

2020年日本公開。原題「가장 보통의 연애」
1985年生まれの二人。制作年の2019年が舞台として34歳前後といったところ。34歳で毎晩のように記憶をなくすまで飲み、あんなに長い夜を過ごせるのか、イヤイヤそれはないでしょどんな体力だよ、と思ってしまうが、彼らが広告代理店の社員であることを考えると妙に納得してしまう。日本国外でもそういうイメージなのか、偶然の一致なのかはわからないが。
徹底的に男女の不均衡を描けている。タメ口で話しかけてくる同世代の男性社員に対してヒロインもタメ口で返すところや、「男と女は同じだよ。そう教わらなかったのか?」と返すところなど、34年間生きてきて培ってきた強さを男性陣に返す良さはあったが、それに対して男性主人公のほうは終始34歳のガキだった。それが映画的に悪いという意味ではなく、そういう不均衡の中で、ヒロインの考える「女はみんな同じ女だし、男はみんな同じ男」という諦念を最後まで覆すこともなく、ひとつのラブロマンスが完成されているのが素晴らしい。
女性器や男性器を指す俗称を大声で発したり、コンドームで遊んだりと、創作物的に攻めている表現も見られたが、特に前者のシーンは後に実は酔っていなかったという展開に持っていくので、バランスが悪いなという印象。作劇的な調整と、入れたいシーンとの兼ね合いがあまりうまくいっていない。


モスラ対ゴジラ

1964年公開。
鑑賞年月: 2020年2月
「モスラ」(1961)と同じキャストが小美人を演じている。「モスラ」同様に耳に残る歌声に懐かしくなった。
インファント島上陸直後の、動いているカメ?の骨がまた印象的。あのカメには何らかの設定があったんだろうか、と気になるのだが、調べてもいまいちわからない。ただ「インファント島の怪骨」という名称でファンには親しまれているらしい。
基本的に主人公らの頼みを、小美人でさえも引き受けようとしないところが良かったが、鶴の一声ならぬモスラの一声で状況が変わったのが、なんとも言い難い。
モスラの幼虫の糸ってやはり何度見ても強力だよなぁ、とも思った。また、岩陰に隠れて巧みにゴジラの攻撃をかわしながら糸を吐く2匹が、まるでガンアクションをしているかのようで、とても楽しめた。


モダン・タイムス

1936年製作。1938年日本公開。原題「Modern Times」
鑑賞年月: 2021年3月(字幕)
良かった。


ももいろそらを

2012年公開。
鑑賞年月: 2019年5月(英語字幕)
めっちゃ良かった。
こういう創作的に突出した作品は大好きだし、話の展開もその邪魔をしていない。最後、ピンクをモノクロのままにしたのもとても良かったなー。
主人公川島いづみ(池田愛)の口調もとても良かった。最初は北野武の物まねみたいで違和感が強かったが、だんだんそこからキャラ造形の妙が滲み出てきて良い。
他の人の感想で、BGMがないという指摘があり、ハッとする。すごく引き込まれてその違和感を持てなかった。BGMのない、素の空間に気づけば馴染んでいたと思う。
最後の主人公の反省も、その直後の佐藤光輝のツッコミでうまく「それっぽさ」を中和できている。
とても良かった。ぜひ見て。


モンスター・ホテル クルーズ船の恋は危険がいっぱい?!

2018年日本公開。吹替。原題「Hotel Transylvania 3: Summer Vacation」
面白く作ってあるのはわかるけど、まったく面白くなかった。これ子供たちは楽しめてるんだろうか。
2箇所良い点があって、メイヴィスのあどけなさを今回でも多めに残したことと、オオカミ夫妻の心理描写が親世代の観客に寄り添っていたこと。メイヴィスは親となり、それによる責任を持つ立場になっているわけだが、同時に親の恋愛に初心な戸惑いを見せる。子世代の感情移入を誘いながら、親という立場をも持たせたのは大変意義のある構造だと思う。また、オオカミ夫妻の描写がずっと素晴らしい。子育てから一時的に開放されたことの戸惑いと、その喜びが体いっぱいに表現されていて、良かった。麻酔で眠らされたことまで喜ぶのだから、彼らの子育ての気苦労の大きさは想像を絶することだろう。


誘拐の掟

2015年日本公開。原題「A Walk Among the Tombstones」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
やはりリーアム・ニーソンは最高だな。
"Oh, God,""Fxxk you"から始まる、リーゼント髭付きリーアムから映画が始まる。まずここで心掴まれた。素晴らしいヘアメイク。犯人の脚を撃ち抜き、階段をピョンピョン横に跳びながら下りていくところも最高。ものすごくいかつい風貌の警官を演じていて、その後に起こった出来事(回想で明らかになる)とのギャップを感じさせる。
基本的にあまりグロテスクな映像は出てこないが、描写自体はとてもグロテスク。直接的に見せることなく、そのグロさを伝えてくる点が、とても洒落てるなと思った(だからこそ、「手」にはほんと恐ろしく感じる)。
とにかくリーアム・ニーソンから漂う哀愁が素晴らしい。緊張感ある良いハードボイルドだった。
(メモ:サム・スペード、フィリップ・マーロウ)


遊星からの物体X

1982年日本公開。原題「The Thing」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
「物体」のビジュアルがとても良い。
終わり方もとても良い。


ゆれる人魚

2018年日本公開。2015年製作。原題「Córki dancingu」
鑑賞年月: 2020年6月(字幕)
面白かった!
音楽性の高い映画。ずっと音楽だった。


容疑者 室井慎次

2005年公開。
鑑賞年月: 2019年5月
展開はたるく、推理物としてもおざなりで、つまらない。つまらないけど、でもこのスピンオフすごく好きなんですよね。
室井慎次って基本的にめちゃくちゃ顔に出るんですよね。めちゃくちゃ顔に出るし、不器用だし、言葉もろくに操れないし、でもすごく正義漢。その彼の内面の一端、窮地に立たされたときの立ち回り、そして周囲のサポートの様子、周囲にどれだけ慕われているかをつなぎ合わせて作られている。
話全体として見るとどうしても面白いとは言えないんだけど、でも個々のシーンを取り上げてみるとああ室井慎次いいなぁ、と思わせてくれて、スピンオフ映画の目的とするキャラの良さの伝達はもう充分すぎるほどに出ているんだなぁ、となるわけです。
喫茶店で過去の恋人のことを語るシーンは素晴らしいし、雨のなか、倒れる室井慎次のシーンもとても印象的(蹴るアクションがあれだけど)。


妖星ゴラス

1962年公開。
鑑賞年月: 2020年8月
「コロンブスでガガーリンだ」という台詞が良くて、当時の観客にとってはタイムリーな話題を出しつつ、作中では歴史上の先駆者という扱いで語られている(コロンブスと同列のものとして扱われている)。この映画が公開されたのが、ガガーリンが人類初の有人宇宙飛行をなした翌年であることを考えると、ガガーリンを時の人という扱いにしたのではなく、歴史上の人物としてさらっと描いてみせたこのセリフはSF的印象が強まりとても良かった。
「流転の地球」がきっかけで鑑賞。地球を動かすというぶっとんだ発想を映画として見せてくれている。それだけでは絵面が弱いと思ったのだろう、ゴラスの接近による海水の大移動や地盤の崩壊などによる災害がメインとして撮られている印象。また、怪獣も出てくる。


ヨーロッパ横断特急

1966年製作。2018年日本公開。原題「Trans-Europ-Express」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
メタフィクションを取り入れた運び屋映画。(メタネタ自体は既に凡庸な類だったはずだが)映画という媒体に限っていえば、この年代にこの方式でメタフィクションを取り入れた作品を撮り切ったこと自体なかなかすごいことなのではないだろうか。
映画の構想を話し合う3人と、その構想の中に登場する登場人物が同一の世界に存在している。エリアス役の主演ジャン=ルイ・トランティニャンのことを3人は「トランティニャン」だと呼ぶし、作中ではジェームズ・ポンドのポスターも出てくるし。
ただしこの映画の一番面白いと感じる要素は、その撮影と編集にあるだろう。鏡合わせで3つになった被写体がおのおのの方向へと視線を向けるショットが何度も登場するほか、列車の窓から見る景色の点滅に合わせたジャンプカット、アラン・ロブ=グリエ節ともいえる不自然なタイミングでのバストショットの挿入など、映画の技法の存在感を肥大化させたような編集が続く。そしてそれらの演出がメタフィクションという要素と非常に親和性が高い。見事に観客を翻弄しているし、虚構であるという事実やプロットの練り直しなどの展開がもたらす不安定さが、そのまま主人公の不安と融和させて感じ入らせているのも素晴らしい。
主人公がSM雑誌に固執したり、任務中なのにSMプレイに夢中(?)になっているのはよくわからなかったが、性的倒錯は不安の裏返しともとれるだろうか。麻薬の運び屋という非現実的な役目を果たす不安感が、自身の欲望を満たしたい欲求と直結した? ともかくもその欲求を逆に利用されて最後は罠にはめられ、ああいう最期を遂げたのはついつい笑えて見てしまう。
それはそうと、キャバレー・イブでの鎖を絡めるシーン、列車の音や悲鳴などを組み合わせているのが非常に良かった。
またそこから、虚構と現実という構造を逆手にとって、あの気の抜けるようなラストを取り込んだのも予想外だった。


預言者

2014年製作。日本劇場未公開(2016年DVDリリース)。原題「The Prophet」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
いい映画だった。
言葉の美しさと、多様な映像表現が非常に親和性が高く、胸に残る映画だった。
種と実の比喩など、聖書の引用と思われる表現もみられた。キリスト映画であり、同時に、創作者への力強いエールとなる作品。
カリール・ジブラーンの著作は未読。読みたいものリストに入れておこう。


夜は短し歩けよ乙女

2017年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
文学系マチズモを綺麗なショーケースに閉じ込めたような映画。
クソみたいな社会だなと改めて思うが、それはそれとして映画自体はめちゃくちゃ面白かった。
大学生活が懐かしくなること必至で、大学生のバカ騒ぎ感が非常にうまく描かれている。
上田誠脚本の特徴がよく出ていて、小さな伏線ひとつひとつが、すべてつながって大きなストーリーラインを生み出している。中には孤独が生み出した竜巻のような、強引な回収もあるにはあるが、絵作りの面白さでうまく中和している。家に向かう道中、画面に浮かび上がる先輩(星野源)の顔には非常に笑った。
また、古本の扱いがとても好みだった。


ライオン・キング

2019年日本公開。原題「The Lion King」
鑑賞年月: 2020年1月(吹替)
は? 傑作やん。誰や残念映画呼ばわりしたやつ(感想は個々人の自由です)。
傑作と言ったが、傑作というには程遠いくらいにストーリー構成が微妙。吹替演技や歌も微妙。あとBGMに対して台詞の音量が小さく、音響設定がおかしいのでは、と思ってしまう(吹替で見たので、オリジナルの演技や音声がどうかは未確認)。ではなぜ傑作と呼んだのかといえば、ひとえにそのフルCGアニメーションが素晴らしすぎたからだ。なんやねんこれ。超実写版ってなるほどな。すげえなこれ。すごいわこれ。
ほんとに、本物の動物なのかと錯覚してしまう。けれど本物の動物では決してできないような映像がどんどこ出てくる。台詞に合わせて口を動かし、殺し合いもする。もちろん、そもそもそんなことはアニメーションであれば100年以上前から可能だったことだ。絵であれば紀元前から。実際にはありえない光景を、絵やその動きでは再現してきた。けれど本作「ライオン・キング」は、実際のところアニメーションでありながら、どう見ても、人間の目は実写として捉えてしまう。動物だけでなく、その美麗な背景でさえ、めぐりめくる空模様さえ、カメラで捉えた映像であるように錯覚してしまう。
もちろん、その映像技術がこの作品のためになっているか?と考えると、簡単に首肯はできない。アニメーション映画として、本作は「ライオン・キング」(1994)の面白さには到底及ばない。現実の動物にはできない動きをする、という、アニメーションであれば簡単に乗り越えられるハードルを、本作は一部でしか乗り越えられていない。しかしもし、「ライオン・キング」(1994)に並ぶストーリー構成やボイスアクト、音響を維持したままこの映像技術が使われていたとしたら。もし現実の動物にしか見えないCGでありながら、完璧にそんなことができたなら。そう思いを馳せるとすごくワクワクするし、久々に、今は未来に住んでいるのだと実感させてくれた。アニメーション映画の革命に至る転換点として、非常に重要な映画だと思った。たとえストーリーの面白さ自体にこの映像技術が不要だとしても、この技術自体がもたらしてくれた面白さと、作品の面白さを自分は区別したくない。そしてこの技術その一点だけの恩恵で、この映画を、自分は傑作だと感じた。
でも実際どうなんだろうな。費用対効果を考えると同じような映画が今後出てくれるかどうか。
もし出なかったらこの映画、オーパーツになりそう。


ライフ

2017年日本公開。字幕。原題「Life」
宇宙ホラー。とても楽しい映画でした。
途中までは上質なパニックホラー。「一人ずつ死んでいく」という王道的展開と、無重力空間のカメラワークが非常にマッチしていて面白かったです。
途中からは大仰なBGMと無駄に派手な演出(あれがこわれるところ)が折り重なり、興ざめする面はありましたが、オチが素晴らしかったので、終わりよければすべて良し!
細胞ひとつひとつが独立して生きており、それらが協力して一個体を形成しているという説明が序盤にありましたが、その設定が活かされなかったのが少し残念。


楽園の夜

2021年Netflix配信開始。2020年製作。原題「낙원의 밤」
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
面白かった。
家族を失った主人公テグと、家族を失ったジェヨン(チョン・ヨビン)。同じ境遇のようでいて対極の立場にある二人のショットの数々がとても感情移入を引いて、終盤に行くにつれて愛着を感じさせるキャラクターだった。マ理事もヤン社長もすごくそれぞれの思想で動いていて、活き活きしていた。
クトが死んだのち、車で逃避した先の映像などとても良い。済州島の美しい浜辺と空をこのタイミングでこのアングルで撮るのか、と面白かった。
そして最後の最後の展開が素晴らしい。うおーってなった。生きてくれー!!ともなった。
静かで退廃的でありながら、大胆に練り上げた良作。面白かった。


ラジオ・コバニ

2018年日本公開。2016年製作。字幕。原題「Radio Kobanî」
「ラッカは静かに虐殺されている」と併せてぜひ見てください、と言いたいところだが、「ラッカ」以上に露骨に死体が出てくるので、苦手な人は充分な注意が必要。
シリア北部、ダーイシュ(IS)から解放された街コバニの様子を描いたドキュメンタリー。
復興の前段階として、コバニ内の死体を片付けるシーンが出てくるが、その死体がリアルを通り越して「死体ってこんな形にさえなるんだ」と思わされる凄味があった。
また、二度の停電が映画の演出として上手い。終盤の、誕生日ケーキのろうそくの火を消して部屋が暗くなるも、火がまたついてしまう描写はとても暗喩が利いていた。


ラストスタンド

2013年日本公開。字幕。原題「The Last Stand」
おもろいやん。
銃撃戦がたまに静かで緊迫感も薄れるタイミングがあるのに、それでも中だるみを感じさせないようになっているのが良かった。敵側のモブ人間もしっかり考えて動いているのが伝わってきて、その点で他の映画とは一線を画している。
コルテスのキャラ造形もいい感じで、なるほど3代目という感じ。カーアクションも面白かった。


ラスト・デイズ・オン・マーズ

2014年日本公開。字幕。原題「The Last Days on Mars」
事前知識ゼロで観たので、こういう作品だったのかと驚きました。タイトルで察せるはずだったな。不覚。
映像の不透明さが好きです。水蒸気や暗闇、砂嵐などをガジェットに、見えない恐怖をふんだんに活用した映像になっていました。
また、終わらせ方が素晴らしい。このタイミングで終わったら素敵だなーと思ったら、本当にそのタイミングで終わってくれたので、そうそう!となりました。
なかなか面白かったです。


ラストレター

2020年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
これまでの岩井俊二作品のなかで、最もいまいちな作品。正直なところ残念な気持ちでいっぱいだったが、鑑賞中すすり泣いている観客が大勢いたことを考えるに、好きな監督だからと自分がハードルを上げすぎたせいでもあるかもしれない。
手紙という小道具をふんだんに活用し、初恋を回顧する作品。時系列を巧みに使い、高校時代のラブレターのやり取りと、現代での亡くなった人の代筆での文通を組み合わせている。複雑な構造の話を、まったく理解に難くない形に整備し、破綻なく作り上げている手腕には脱帽するが、どうしてもその完成度の高さと作品の面白さが結びつかなかった。
まず、乙坂鏡史郎(福山雅治)が気持ち悪い。特に序盤が気持ち悪い。初恋の相手で元恋人でもある未咲(の妹)に再会した興奮で、ぐいぐいと距離を詰めようとする心境はわかるが、裕里が既婚の子持ちとわかった直後のSNSの文面がどう見ても不倫の誘いでしかなく、いい歳をしたおじさんがする言動ではない。また、その気持ち悪いメッセージに対する裕里の返信もまた、おじさんの幻想という感が否めない(たとえ裕里にとって初恋の相手だとしても、言い方ってもんがあると思う)。どちらも少年少女の気持ちに立ち返り、少年少女のつもりで言動を起こしているのかもしれないが、そこの歪みが劇中のファーストコンタクトなのはどうしても受け入れがたかった。
また、裕里が波止場の住所を送った後に、東京くんだりから「来ちゃった」というノリで来てしまう無頓着さ。さすがに気持ち悪いし、裕里もその訪問に対してまず思うのが「化粧しなきゃ!」なのがちょっとすごい。この時点で乙坂は既に彼女が未咲でなく裕里であることに気づいていたようだが、そうだとしても、言動自体は軽率でしかなく、本当に少年少女の心なのだなぁと冷めた目線になってしまった。
本作は作劇上、乙坂と未咲が付き合っていた大学時代のエピソードをあえて排除し、未咲と阿藤の駆け落ちなども台詞で言及するだけに留めることで、「初恋」を綺麗にパッケージングしている。作劇としてそれ自体は良いと思ったが、恋人同士であった時期やその後の薄暗い出来事などを恣意的に隠し、高校時代の綺麗な初恋を「あの頃は良かった」とでも言うように回顧し憧憬として描いているところに、少なからぬ拒否反応を抱いてしまった。もちろん、綺麗な過去と対比して、現在の未咲は既に自殺しており、もう後戻りはできない状況になっている無念さも描けている。しかしなぜ乙坂が未咲を救えなかったのか、なぜ無念な結果となったのかを示す大学時代のエピソードはまるごと削られているため、その「無念さ」は無用の長物となっている。阿藤が言うように、「何の影響も与えていない」のだ。初恋はあくまで初恋で、綺麗なパッケージで回顧するばかりのもので、その後にあったはずの汚い部分は捨て置いてしまった。しかしその汚い部分にこそ「無念さ」の正体は潜んでいるはずで、本作はそこを意図的に無視している。
もちろん、彼らの無念がる様子を介して、観客は自身の過去を顧み、その空白に自分の人生を当てはめるかもしれない。そうして映画が補完され、描かないこと自体が手法として成立することもありえる。(そもそも大学時代のエピソード自体は入れると贅肉になってしまうので、入れなかったことは悪手ではない。)しかしそれはキャラクターに観客が感情移入すればこそありえることなのであって、たとえ福山雅治が演じていたとしても、言動がセクハラ不倫おじさんのキャラではどうにもならないだろう。
ただこの作りを補完するかのような、阿藤の「(未咲が死んだのは)俺のせいだが、お前のせいじゃない」という台詞は素晴らしかった。
演技はめちゃくちゃ良いときと変にちぐはぐなときとが混在していて不思議な感じ。夏休みが終わってもここにいてもいいよ、と話す颯香(森七菜)と、それを「嬉しいけど、重い」と返す鮎美(広瀬すず)のシーンなんてめちゃくちゃ良くて、自然なやり取りが最高だったが、その直後の「学校なんて行きたくないんだよ」という台詞が脚本に言わされている感が強く、今までのめちゃつよ演技はいずこに?と首を傾げてしまった。他にも、ラストの握手のシーンでの松たか子の抜けたようなはしゃぎ方、あれが良いと思う人も多いだろうが、自分はどうしても受け入れられなかった。乙坂にとっては、元恋人の死を受け入れ、前へ進もうとしたきっかけになってくれた裕里に対して感謝を伝えているシーンだが、裕里にとってはあくまで初恋の人との初めての接触で、その温度差に空しさを感じる。3度に渡るサインの描写も、初恋の「記念品」っぽさを強めているようで、作りに反して皮肉が強かった。
あと森七菜さんは、乙坂と鮎美が話しているときに、背景で唖然としたようなすごく自然な驚いた顔をしているのがめちゃくちゃすごかった。演技の鬼かよってなった。メインではなくほとんど映り込みのようなときに本領を発揮されている。めちゃくちゃすごいし、画面に命吹き込まれていた。
岩井作品特有の、手持ちのちょっとぶれるカメラワークはもともと好きなので今作でも好き。映画のひどい出来に絶望していたが、こういうカメラの画面になるとあぁ岩井作品だとなって少し安心したり安心できなかったりした。
卒業原稿に合わせて太陽の光を差すシーンも、ベタだけどすごく綺麗。
感想はひとまずこんな感じですが、もし本作が初岩井作品で、自分と同じような感想を抱いた方は、これに懲りずにぜひ別の岩井作品を見てほしい。本当はすごい映画を作る監督なんです。大好きな監督なのです。


ラヂオの時間

1997年公開。
作品を形にするのが一番大事で、それさえできれば届く人には届くんだよな、そこに救いがあるんだよなぁという感じ。
基本的には強い権力の話で、ひっどいなって思うんだけども、そこを批判的に描きながら喜劇に仕立て上げているのが巧い。


ラッカは静かに虐殺されている

2018年日本公開。字幕。原題「City of Ghosts」
見てください。
ダーイシュ(IS)によって占拠された、シリアの都市ラッカ。情報の発信は制限され、反抗の意思を疑われた者には制裁が加えられる。その中でこの惨状を伝え広めるために、市民たちで組織されたのが、RBSS、“ラッカは静かに虐殺されている”(Raqqa is Being Slaughtered Silently)だった。この映画は彼らRBSSの活動と心境を、迫真をもって記録した、ドキュメンタリー映画です。


ラブ&モンスターズ

2021年Netflix配信開始。原題「Love and Monsters」
鑑賞年月: 2021年5月(字幕)
よくまとまっていると思った。頼りない主人公が冒険を通して知らぬ間にみんなのヒーローになっていく。それは勇敢さを盛り合わせた文字通りのヒーローであると同時に、自身が描き続けてきた記録によって情報の提供主としてのヒーローの役割も果たせているのが現代風という印象がある。
でも実際あんなに周囲のコロニーに呼びかけてもよかったんだろうか。モンスターの情報を広く提供することで死傷者数は抑えられるかもしれないが、エイミーのコロニーのように老人ばかりの人たちもコロニーを出発しており、彼らが生き延びられるのかというと疑問が強く残ってしまう。しかしまあ彼らの場合、食料はほとんど奪われ、奪われた先の船も沈んでしまったから、出る選択肢しか残っていないのか。
モンスターはいろいろ造形が見られて良かった。女王蜂とかも地中をあんなに走ってくる類とは思わず驚いた。


ラプラスの魔女

2018年公開。
エンディングテーマ(Faded / Alan Walker)がとてもいい曲で目が冴えた。
推理物を期待した自分が馬鹿だったのかもな、と思っています。
それを抜きにしても、もう少し……。


ララミーから来た男

1955年日本公開。字幕。原題「The Man from Laramie」
面白かった。ジェームズ・スチュアートの良さがよく出ているカットも何度か出ていた。
田舎の陰湿さといえば聞こえはわかりやすいが、それが成立した背景と、時流による考え方の変化を的に置き、さらに他所(ララミー)からやってきた主人公を据えることで、構造的な人間ドラマに描けている。


ラ・ラ・ランド

2017年日本公開。字幕。原題「La La Land」
映像美がありました。


ラン・オールナイト

2015年日本公開。原題「Run All Night」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
面白かった!!
リーアム・ニーソンええよなぁ。めっちゃええわあ。
ボスであり、長い仲の友であり、子を持つ親同士でもあるショーンとのやり取りもとても良かった。こういうの大好きだわ。
アクションも安定の楽しさ。タイトルの通り走りに走っている。


ランペイジ 巨獣大乱闘

2018年日本公開。字幕。原題「Rampage」
結束バンドをちぎったシーンで笑う。ドウェイン・ジョンソンの正しい使い方を見た。
とても良い映画でした。動物と人間の友情。
ワニ好き。ワニ。
あとオオカミが飛ぶところ。子供のころに夢見たような、ヒュージョン怪獣のわくわく感が詰め込まれている。


ランボー

1982年日本公開。原題「First Blood」
鑑賞年月: 2019年11月(字幕)
最後のランボーの語り、泣きそうになった。素晴らしい映画。


ランボー/怒りの脱出

1985年日本公開。原題「Rambo: First Blood Part II」
鑑賞年月: 2020年5月(字幕)
すげえ。
アクションが軒並みパワーアップしている。罠や仕掛けの面白さ自体は前作に軍配が上がるだろうが、今回はがっつり軍人相手に、一人で無双していく派手さが楽しい。相手側の徹底的な攻撃も同様に面白かった。ヘリからの爆弾とか、逃げた先への徹底銃撃とか。
コー・バオの死亡フラグの回収がめちゃくちゃ早くて笑ってしまったんだけど、早すぎてもはや爽快だった。あっさりとランボーを怒らせる動機付けになってくれて、そこからの無双劇への良い導引になっている。


ランボー3/怒りのアフガン

1988年日本公開。原題「Rambo III」
鑑賞年月: 2020年5月(字幕)
つまらなかった。マンネリズムを感じる。
ただ「アフガン戦士たちに捧げる」とあるように、ストーリーとしてもアクションとしても、ランボーのワンマンプレイではなくある程度協力あってのものになっており、それでかつランボー主軸で動けてもいるので、バランスは良い。
ただその代償に明らかにパワーダウンを感じるので、そこがマンネリを助長させる。難しい。
大佐への拷問が(絵面としては)手ぬるいところにもいまいち乗り切れないところがあった。創作で手加減するとわりと目立つ。


ランボー ラスト・ブラッド

2020年日本公開。原題「Rambo: Last Blood」
鑑賞年月: 2019年12月(その他)
やりたい放題やってくれる映画だった。
最初はそれこそ、「96時間」みたいな救出劇なのかなと思っていたのだが、そんな温情は一切なかった。誘拐されたガブリエラはあっさり「商品」となり(最初の客が警官なのも容赦ない)、さらにランボーに刺激された犯罪組織によって薬漬けにされてしまう。中盤であっさりと彼女を取り返すことには成功するが、時すでに遅し、帰りの車の中で、ガブリエラは息を引き取ってしまう。
ランボーは復讐を決意し、1作目で見せたような数々のトラップを自宅の洞窟にしかけ、おびき寄せる。きちんとボス本人がやってくるように、ボスの兄弟の首を晒し者にして。
そこからの殺戮の数々は、もはやスプラッター描写が突き抜けすぎていて、「ファイナル・デスティネーション」シリーズを彷彿とさせるような人間の脆さと化していた。寝転がった体勢で振るった鉈で、脚を切断してしまうほど。
とにかく血しぶき、体の破裂に吹き飛ばし、いろんな殺害がてんこ盛り。ラストのあの有言実行での殺し方なんて、もう怒りの極みである。


リズと青い鳥

2018年公開。
素晴らしかった。泣きそうになりました。事前情報無しで観たので、映画が始まるまで「響け!ユーフォニアム」のスピンオフだったことも知らず、「響け!~」本編も見ていないのですが、一本の映画として完成されていた。
細かいしぐさや、足音、そして状況や人間関係を示す表情がとても丁寧に挟まれていて、把握にまったく無理がなかったです。
公開中に二度観たのですが、二度目に観たときも、冒頭のBGMでハッとなったり、突然泣く後輩の場面の素晴らしさに気付いたりと、良かった。
映像や音楽での演出がとにかく明確な必然性が伝わってきて、二人の主要人物の、それぞれリズと青い鳥を示す演出(冒頭の鳥のさえずりを入れるタイミングなど)にグッと来ていました。そこからの転換に至るまで、とても素晴らしかったです。


リセット

2011年日本公開。字幕。原題「Vanishing on 7th Street」
ハイコンテクスト寄り。そのくせに演出だけローコンテクスト(いや、それはいいのか?)。
クロアトアン。
こういう、先行テクストに依存した作りは自分としても(どちらかというと作者として)好物なので、親近感はあるが、しかしこの映画の場合、先行テクストを参照したところで腑に落ちないところがあるのが……。好意的に捉えるなら、より潜れる良さはあるのかもしれないが、あまり面白くはなかった。


リップヴァンウィンクルの花嫁

2016年公開。
鑑賞後おもわず「やばぁ」と口をついて出た。非常に面白かった。すごかった。
やっぱり岩井俊二監督はすごいなぁ。
黒木華の人に流されていく演技と、Coccoの演技とが合わさって、とんでもない領域。そこに綾野剛の得体の知れない信用できなさが加わった、恐ろしい映画である。
真白の、人の優しさを受けるために金を必要とするという語りが非常に悲しくて、身に染みた。幸せに上限があるの、わかる。


リディバイダー

2018年日本公開。字幕。原題「Kill Switch」
一人称視点(POV)と三人称視点を使い分けた作品。宇宙をコピーするというぶっとんだ美味しい発想によって、ふたつの世界でのストーリーが展開されるのですが、片方では一人称、もう片方では三人称とカメラの視点を切り替えています。どちらも主人公は同じで、カメラを切り替えつつ時系列もいじりながら進行される形。
自分、「DARKER THAN BLACK」が大好きなんですけど(唐突)、なのでこのぶっとんだ発想をいかにもサイエンス・フィクションであるといった顔でそれっぽい理論を打ち出して話を進行するの、好きなんですよね。そのうえで世界の存亡を巻き込んじゃうの。ストーリーは全然違いますけど「BEYOND: Two Souls」みたいな。
なのでこう、映像面でも、ストーリー面でも、まるで上質なゲームを体感しているかのようで、楽しかった。視覚に表示される画面を操作する感じとかFPSだ!って感じありますし、ストーリーは前述の通り洋ゲーだ!って感じある。
まあただ、アクションはあまり楽しい出来ではなかったです。いや、楽しかったですけど、期待は禁物。「ハードコア」のような考え込まれたPOVアクションを期待してしまうと、肩透かしになってしまう。でもその分洋ゲーぽさには他の作品の追従を許さない出来栄えになっているので、その点を楽しみにして見ると、大満足だと思います。
細かいことも大きなことも気にせずに、楽しく楽しめる映画です。


リトルプリンス 星の王子さまと私

2015年日本公開。原題「The Little Prince」
鑑賞年月: 2020年8月(その他)
良かった。
絵面の良さがほとばしっている。剣を突き立てて星が飛び出ていくシーン、大好き。
「星の王子様」自体には特に思い入れはないが、本作の主人公の存在によって、ようやく「星の王子様」の旅路が終わりを迎えることができるのは、読み手の想像力の讃美歌という感じがあって、悪くなかった。


[リミット]

2010年日本公開。字幕。原題「Buried」
快作。面白かった!
精神状態の演技。


リメンバー・ミー

2018年日本公開。字幕/吹替。原題「Coco」
素晴らしかった。うるっときた。
ライブ中の中継映像を無批判に真実と受け入れて、デラクルスの没落をエンタメ化していく観客の演出はしんどかったが、それ以外はとても良き。
毒親から逃げたと思ったら逃げた先も毒親だった、という最悪のシナリオを見せかけつつも、家族愛と、そのための対話の重要性をとくと描いた傑作。


リリイ・シュシュのすべて

2001年公開。
鑑賞年月: 2020年1月
胸糞ジュブナイル映画の金字塔。
最初は時系列の把握に戸惑うが、見続けていればカチリとプロットが噛みあうタイミングがあり、それから一気に面白くなる。
仲が良かったはずの友達の覚醒、それから始まる悪行の数々。中学生をレイプし、援交を強要し、金を巻き上げる。とても中学生の世界とは思えない暴力の数々が、映画を満たす。
登場人物の演技が軒並み良く、特に主要人物の3人(市原隼人、忍成修吾、蒼井優)が良かった。
リリイ・シュシュという架空の歌手を小道具に、緩く人物関係が生まれていくのも好印象。そしてインターネット掲示板という、雄一によってはただひとつの楽園であったはずの居場所が「現実」の浸食を受けて、あの結果になるのも、強く頷ける。


リング

1998年公開。
うひゃー面白い。映像技術を妙に凝るでもなく、話の巧さと映像の緊張感で映画を盛り立てている。


流転の地球

2019年Netflix独占配信開始。原題「流浪地球」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
設定がめちゃくちゃ面白かった。さすが劉慈欣。おそらく小説だともっとスペクタクルで説得力豊富に描かれているのだろうなと想像も易かった。
CGも迫力があり綺麗で、ストーリーも要所で盛り上げる力に満ちていてとても良かったが、たまに出る謎の演出不足が悪目立ちしていたなという印象。
特にラスト、パパが感動の決断を決行した後に、突然に隊長らが瓦礫に埋まっているのがついていけないというか、もっとシームレスにつなげられたやろそこ、とどうしても思ってしまう。
酒、すごく良かったなぁ。ああいう小道具がしっかりしていると良い映画を観たなぁと心から思えてしまう。あの酒は良かった。


ルパン三世 カリオストロの城

1979年公開。
鑑賞年月: 2020年7月
これが40年前か。すっごいな。
久々にしっかり見直したが、非常に楽しかった。


霊的ボリシェヴィキ

2018年公開。
めちゃくちゃ面白かったです。映画の中の空間と、映画を見ている自分がいる空間とが共有されていくような怖さがありました。
それを最初に感じたのが、笑い声のシーン。長尾(南谷朝子)の語りを受けて、突然登場人物が全員笑いだすのですが、ついこちらもそれにつられて顔が笑いそうになってくる。特に三田(伊藤洋三郎)と橘由紀子(韓英恵)の顔がそういう感じで、周りの笑いにつられて引き出されたような笑い方をしてくるので、こちらもそれにつられそうになる。その瞬間での、あれですから、まるで同じ空間で彼らと同じ体験をしたかのような錯覚を味わってしまう。
その後も意識的に空間同士をつなげようとするような演出が凝らされていて、たとえば登場人物が語っているときに、真正面とか斜め前から、距離をはかりながら撮られたカメラワークが、いかにも自分がその場に一緒に座っているかのように思わせてくる。登場人物同士が少し離れた距離でやり取りしている場面では、まるで自分で首を動かして、彼らを交互に見ているかのようなカメラワークもありました。それと暗闇。本当に全部真っ暗になるシーンがあるのですが、その瞬間に、画面の中の暗闇と、映画を見ている自分がいる暗闇とが結合してしまう(自分は劇場ではなく自宅で観ましたが、暗闇で見たほうがより楽しめる映画だという話を事前に聞いていましたので、部屋を暗くして見ていました)。
暗闇のシーンの前に、橘由紀子の語りに合わせて画面が静止するシーンがあるのですが、その演出も面白かったですね。空間の共有をより効果的に魅せるために、まず自分はスクリーンの外にいる人間であるのだという事実を、認識させる。そのうえで、霊気が集まった超常的空間が、スクリーンを見ているここにも及んでいるのではないかと思わせる。
そしてあのラストシーン。スクリーンから出てくる(我々観客のほうへと向かってくる)のではなく、奥行きの世界へと、出ていく。これは現実と融合していた映画の空間が、最後の最後になって訣別して、コティングリーの写真のように作り物として提示されたと取ることもできますし。あるいはその作り物であるはずの「化け物」が、誰も知らぬ間に外界(=こちら側)に放たれたと捉えることもできそうですね。「化け物」を木の枝だと知って彼らがガッカリしたシーンと、そこからのあのラストへの変化が対照的です。
演技もとても良かったです。どの語りもとても引き込まれましたし、台詞の少ない片岡(近藤笑菜)も立ち振る舞いに存在感がありました。シナリオ的に、同じ場にいる浅野(高木公佑)と片岡が自身の体験を語らないことは疑問に思いましたが、語らない分キャラの不透明さが出ていましたね。
緊張感がありましたし、最後の動きある展開も良かったですしと、終始面白い、素晴らしい映画でした。


レクイエム

2010年DVDリリース(日本劇場未公開)。原題「Five Minutes of Heaven」
鑑賞年月: 2019年5月(字幕)
リーアム・ニーソン目当てで観たが、リーアム・ニーソンも素晴らしいうえにジェームズ・ネスビットもとてもよかった。とてもよかった。
幼いときに兄を殺された場面を目の前で目撃し、犯人を止められなかったことを親に咎められるという強烈な体験をしたことが、33年経った今でも脳裏を占めている息苦しさ。
そして最後のこの「幸福の五分間」のシーン。なんと緊迫的で、真に迫っていることか。


レザボア・ドッグス

1993年日本公開。原題「Reservoir Dogs」
鑑賞年月: 2020年4月(字幕)
クエンティン・タランティーノ監督の作風をこのときから既に見出せる作品。
ガムテープを音楽に合わせて引き出すところがとても好き。


レッド・ドーン

2013年日本公開。字幕。原題「Red Dawn」
俺たちの戦いはこれからだ!
いやしかし、つまらない映画ではあったが、斬新なことをしたものだとは思う。


レッドプラネット

2001年日本公開。字幕。原題「Red Planet」
緊張感のある映画でした。
終わり方が不満。キスして体内に虫が入り込めばいいのに。
エイミー(調査ロボット)が初めに登場したとき、レンズが光の具合で人の目のように映っているのが映像的な面白さがあった。後は、うん……。
アシドーシス。


レッド・ブロンクス

1995年日本公開。吹替。原題「紅番區」
ジャッキー・チェンの名演技を豪快に使ったクソ映画。素晴らしい。
丁寧な作りの序盤と、もはや色々うっちゃったかのような終盤の急速な畳みっぷり。ラストのお尻丸出しボスはもはや愛嬌の域である。
あゝスラップスティック珍道中~。


レディ・バード

2018年日本公開。字幕。原題「Lady Bird」
面白かった。
サクラメントに対するレディ・バード、レディ・バード(クリスティン)に対する母親というように、「愛情」=「注意を払う」という構図を見せていた。
個人的に、金銭的な理由を第一に通う大学を決めた人間だったので、主人公レディ・バードの行動には懐かしみとともに感情移入するものがあった。
車内のシーンも効果的に使われている。
「戦争以外の悲劇もある」という台詞、若者の象徴みたいな言い方でいいなぁとなった。


レディ・プレイヤー1

2018年日本公開。字幕。原題「Ready Player One」
スティーヴン・スピルバーグ監督と学ぶネットリテラシー。
オープンワールドのVRゲームが舞台で、プロットも細かい点含めて誰もが思いつくような内容なのですが、とにかく派手かつ丁寧に作ろうという感じがあって、面白かったです。ディテール面でも映像面でも、物理で殴るみたいな完成度の高さ。
〈オアシス〉でやっていることが、(解像度や通信環境など質的なことを除けば)2045年が舞台の割には2018年現在でも実現していることばかりだなと思ったのですが、むしろ現代の延長線上にあるものを想像しやすいまま描くことで、この映画そのものが現代を見せる仲介にもなっているということにしばらくしてから気づきました。序盤の資源不足の説明からある程度の技術の停滞も想像できましたし、そこまで違和感はなかったです。
ソレントが主人公に銃を突きつけたときの、ソレントの反応が素晴らしかった。VR内では腹を満たせないように、肉体(=リアル)が資本ではあるけれど、VRはレトロゲームと同じように多くの人間を熱狂させてくれる媒体で(最後の、IOI研究員たち=オタクたちのあの熱狂ぶり良かった)、そこに価値を見出せないソレントでさえ、撃つのをあの瞬間躊躇った。オチは確かに言葉足らずな印象が強かったですが、その価値を最大限に認め、愛したうえでのあのハリデーの発言であるというのは、重要な点だと思います。それでもまあもう少し締まったオチだったらもっと良かったのになとは思いますけどね。面白かったです。
というか個人的にはメカゴジラ対ガンダムが観れただけで大満足なところあります。


ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

2016年日本公開。原題「Rogue One: A Star Wars Story」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
うおー面白い! 素晴らしい出来。
キャラクターの使い切りの良さが素晴らしい。スピンオフだからこそできる思い切りの良さ。こんなにも主役級の人物たちを、終盤にかけて一気に死なせていける楽しさ。畳みかけの良さ。とても楽しかった。
そのうえただ殺すのではなく、それぞれがそれぞれの役割を果たし、エピソード4の冒頭へと繋げていく。彼らの一人でも欠けたらエピソード4は始まらなかった。そういう凄味が詰まっている。


ロープ

1948年製作。1962年日本公開。原題「Rope」
鑑賞年月: 不明(字幕)
傑作。意味のあるカメラワークに支配されている。
最後のルパートの言葉の演技がずっしりと来る。
鑑賞年月: 2021年6月(字幕)
2021年に久々に鑑賞。小さい頃から何度も見ている映画だから、言うまでもないことだが、やはり何度見ても素晴らしい映画だった。
同一の室内を舞台にした(疑似)ワンカットの作品。(疑似)というのも、当時は技術的に80分間フィルムを回し続けることはできないため、ことあるごとに主に人の背中などで画面を暗闇で隠し、フィルムを取り替えてからまた背中の後ろから撮影を開始するなどして、ひとつなぎの映像に見えるように工夫されている。一か所だけ(ウィルソンが「Excuse me, sir」と話しかけるところ)、おそらくフィルム切れに間に合わなかったのか、はっきりとカットしてしまっている部分があるにはあるが、基本的に一秒の隙もなくひとつなぎに物語が進行されている。
上の感想でも書いた通り、室内に舞台を限定したワンカットということで、カメラは作中人物の後を追いかけて動いたり、あるいは静止してじっと人々のやり取りを見せたりと、自然とカメラの動きにも意識が向く。そんな中で、ラスト、ルパートが自身の推理を披露する場面での、過去の犯行を振り返っているかのようなカメラワークなど本当に素晴らしい。人が一切映っていないのに、そこにまるで犯人2人とデヴィッドのやり取りが目に浮かび上がってくるかのような、意識的な画面運び。
また冒頭付近にて、犯行後のパーティーは画家のサインのようなものだ、なければ壁にかけない絵画のようなものだと話すシーンにて、背後の壁に女性の絵がどっしりと構えている画面の構図もとても良かった。


ロケットマン

2019年日本公開。字幕。原題「Rocketman」
良かった。「ボヘミアン・ラプソディー」の監督によるセルフ二匹目のどじょうかと思っていたが、そんなことはなく、演出も構成もこの作品この主人公のために構築されていた。


ロスト・バケーション

2016年日本公開。字幕。原題「The Shallows」
面白かった!
海上が舞台だが、密室ゲームのような閉鎖的な空間。サメに足を噛まれ、サーフボードも失い、浅瀬などの限られた足場に留まるしかない状況。そういう限られた状況下で、様々なアイディアを駆使し生き残ろうと動き続ける主人公。その緊迫感にとてもハラハラさせられたし、どんどん衰弱していく様と、それでも希望を見出すたびに全力で動く活力が、手に汗握らせた。
ジャウム・コレット=セラ監督作品。「フライト・ゲーム」や「トレイン・ミッション」など、リーアム・ニーソン映画でおなじみの監督だったが、まさかサメ映画でもこんなにサスペンス立てた面白い映画を撮ってくれるとは思わなかった。最高。すごいな監督。ありがとう監督。
それとカモメが可愛すぎる。好き!
序盤のサーフィンのシーンが顕著だが、水の映し方もめちゃくちゃ綺麗で驚いていた。


ロスト・マネー 偽りの報酬

2019年DVDリリース(日本劇場未公開)。2018年製作。原題「Widows」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった!
女性の権利、男性に依存しない働きを目指す彼女らと、その動き自体を食い物にする男性陣。それが市長選で女性の起業を支援すると公言するジャック・マリガンと、主人公らが動くきっかけとなったハリー・ローリングス(リーアム・ニーソン)の二層で描かれている。
主要人物の4人のやり取りがとても心地よく、楽しかった。夫を失った者同士の、縛られた結束とプロフェッショナルさ。元々好きな俳優だったミシェル・ロドリゲスはもちろんのこと、エリザベス・デビッキもすごく存在感があったし、ヴィオラ・デイヴィスのベテランの演技も安定感があって良かった。あとアリスの母親(ジャッキー・ウィーヴァー)がめちゃくちゃ怖かった。すごい。
車ごと盗まれた後の行動とかもすごく好き。行動力!
あとタイトルとクレジットを出すレイアウトがめちゃくちゃオシャレだった。
言及されていた「カスター将軍の最後」(The Great Sioux Massacre)はちょっと見てみたい。


ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク

1997年日本公開。字幕/吹替。原題「The Lost World: Jurassic Park」
めっちゃ面白い。1で良いキャラだなぁと思ったイアン・マルコムが、まさかの主役で登場というのがまず良い。良いキャラしてますよねえマルコム博士。好きです。
あとローランドも好きです。良いよね……。
穴を掘ったらそこからラプトルが顔を突き出してくるシーン、分かっていてもビビる。
そしてなんといっても都市に降り立ったT-レックス! このやりすぎ感、ほんと好き! 楽しい! やった!
まあ改めて見ると、もう少し大袈裟に暴れてくれても良かったのにとは思いますけどね。
誰がなんと言おうと面白い怪獣映画です。


ロマンティックじゃない?

2019年Netflix配信開始。原題「Isn't It Romantic」
鑑賞年月: 2020年3月(字幕)
結論の出し方めちゃくちゃ好き。
途中まで(最初の70分くらい)はどっちつかずでとても退屈。どっちつかずというのは、ロマコメ映画を面白おかしく揶揄するパロディでありながら、同時にロマコメ映画そのものでもある、というバランスのこと。両立していたり、性差の不平等を詰める方向に舵を切ったり、あるいは一辺倒な量産型ロマコメ映画に振り切っていれば楽しいだろうが、この映画はそのどれもを試して、どれもに全力投球できていない。
しかしそんなマイナスイメージを覆してくれるほど、終盤が素晴らしかった。結論の出し方めちゃくちゃ好き。


ロンドンゾンビ紀行

2013年日本公開。字幕。原題「Cockneys vs Zombies」
ギャグとシリアスの配分が悪い。


ワールド・ウォーZ

2013年日本公開。字幕。原題「World War Z」
ブラピはかっこいい。ブラッド・ピットを見るための映画です。
イスラエルの壁を登るシーンは良かったです。


ワイルド・スピード

2001年日本公開。原題「The Fast and the Furious」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった。でもドミニクが結局犯人だった点に、いまいち動機が感じられなくて微妙だなとも思っている。結果的に主人公はドミニクのカリスマ性にほだされていたけど、実際のところはカッとなって人を殴るような男だし、トラック強盗をするようなワルだった。ドミニクを人間として知らない上司たちの決めつけが意外にも合っていて、ドミニクの人間性を認めた主人公は真実に気付けていなかった。この歪みはなるほどあまり見ない型で面白い。


ワイルド・スピードX2

2003年日本公開。原題「2 Fast 2 Furious」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
前作よりまとまりも良くて、カーアクションとしてもワクワクできて好きだった。
バディ物としても秀逸。かつての相棒が「今の相棒」になる回復の話でもある。


ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT

2006年日本公開。原題「The Fast and the Furious: Tokyo Drift」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
面白ーい! 素晴らしい!
未成年(しかも高校生)の新キャラを主人公にした新機軸で、でも話に完全に乗れるようにカーレース的展開を全うしたうえで、2作目までとの物語的接続も完璧にこなしている。
主人公くん、制服への反応も着こなし方もすごい良かった。制服萌えだった。
タカシがハンのこと好きすぎて涙流してるところもすごく良かった。キャラみんな良かった。ええわぁ。
東京を舞台設定にしたカーアクションも非常に新鮮で良かった。あんな狭い道路でよくやるわ、となる。渋谷の交差点も迫力満点。
あと、「ドリフト(drifting)」という言葉が日本生まれだったのをこの映画を通して初めて知る。


ワイルド・スピード MAX

2009年日本公開。原題「Fast & Furious」
鑑賞年月: 2020年7月(字幕)
前作より時系列を戻し、1作目「ワイルド・スピード」のコンビが再現されたシリーズ4作目。立ち返ったという意味で、原題の潔さが良い。
ハン(サン・カン)のメイクが前作との対応のためすごく若く組み立てられているのがまずスゴっとなった。
ただ、採用試験のレースが一番の盛り上がりだったなという印象。
ブラガを捕まえるに至ったのも、ジゼルの本当の情報提供であっという間のものだったし。まあそこは話のメインではないので、それはそれでいいのだが、だいぶあっさりめの味付け。ジゼル自体の描き方も曖昧に感じられたが、続編での登場を意識してのことだろうか。


ワイルド・スピード MEGA MAX

2011年日本公開。原題「Fast Five」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
カーレース要素は薄め。車を調達しに行くいつもの展開でも、レースシーン全カットなあたり潔くて笑ってしまった。
金庫の盗み方は一周回って好き。そんなんありかいな。
過去作品の登場人物が豪華に再集合していたが、やっていることはほとんど他の作品の脇役と同じなので、あんまりそういう特別感はなく。
ブライアンが完璧にお尋ね者になってしまったので、代わりといわんばかりの警官役としてドウェイン・ジョンソンが起用されたの、頼もしくて最高だった。だってドウェイン・ジョンソンだよ?


ワイルド・スピード EURO MISSION

2013年日本公開。原題「Fast & Furious 6」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
ついに戦車の登場だぜ!イェイ!
と思っていたら、ついに飛行機の登場だった。アクション面、派手さという点において、終盤にかけての盛り上がりが素晴らしかった。
どちらも攻略の決め手がワイヤーガンなのはどうかとは思うが。
ライリー・ヒックス(ジーナ・カラーノ)のアクションがめちゃくちゃ良くて、警官としても切れ者として描かれていたので、この展開は個人的にはうーんという感じ。しかしハンやジゼルもそうだが、キャラクターの数が煩雑にならぬよういわゆる間引きをしており、その意味ではまあこういうありふれた展開でも仕方ないかなという印象。しかしそれはそれとして素晴らしいキャラクターだった。アクション素晴らしすぎた。


ワイルド・スピード SKY MISSION

2015年日本公開。原題「Furious 7」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
ぐるりと回転するカメラワークを多量かつ巧みに使っている。何度使われてもなかなか飽きず、楽しかった。
そしてその使われ方が非常に豪華である。何度も、何度も車が空を飛ぶ! 冒頭でオコナーが子供に言った「車は空を飛ばない」という言葉を何重にも塗り重ねて否定するように、空を飛ぶ! 邦題がアピールしている通り執拗なほどの車の飛行(実は落下)シーンを様々な展開で見せてくれて、とても盛り上がった。
アクション面も上記のカメラワークを駆使し楽しい内容になっている。
また本作は、ブライアン・オコナー役のポール・ウォーカーの遺作でもある。まったくそのことを知らずに観ていたので、ラストの意味深な枝分かれのシーンは今後のシリーズ展開をまた1~3作目のような構成にする意思表示なのだろうかと受け取っていた。しかしラストの、ポールに捧ぐという言葉を見て、理解。素晴らしい演技をありがとうございました。
やむを得ない軌道修正によるものなのだろうが、オコナーの物語上の退場を示す演出として、「家庭」の姿を冒頭とラストで見せ、劇中でも「家庭」と「刺激」との対比をはかった脚本は非常に巧み。もし本人が生きていたとしても、納得して退場できるような、素晴らしい構成になっていたと思う。


ワイルド・スピード ICE BREAK

2017年日本公開。原題「The Fate of the Furious」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
カーアクションはさすがの面白さだったが、脚本的にはわりと台無し感が強い。
まずエレナの妊娠が後付けに思われて仕方ない。レティと再会してから何年も経っているはずだが、エレナとドミニクの間に生まれたこどもだという子がまだ幼児である点に違和感が強い。その場合レティと再会した「EURO MISSION」から今作までの間の時間は最大限見積もって(赤ん坊が2歳だとして)も3年以内ということになるが、ジャック(オコナーの息子)の成長度合いを見る限りそうとは考えにくい。また、ハネムーンから帰ってきたら告げるつもりだったというのもタイミングが謎である。エレナは「EURO MISSION」の後、「SKY MISSION」ではホブスの部下として派手なアクションを繰り広げている。両作ではジャックの年齢が明らかに違うため、「SKY MISSION」の時点でエレナは出産を済ませていたと考えられる。その場合シングルマザーのエレナに子供がいることをホブスが気づかないとは考えられないが、ホブスは「SKY MISSION」においても今作においても、エレナとその息子のことを想定しない。そもそも部下が連れ去られた事実をホブスが知らないとは考えにくい(もし知っていたのならそこから芋づる式にドミニクの動機も勘付くはず)。今作のエレナが休職または退職状態にあったとしても同様である。レティとヨリを戻した後もエレナとは浮気関係にあったのでは? と邪推さえできてしまう。
また、後付けであることを見逃したとしても、前作までの後味を一気に悪くしてしまう設定だ。ドミニクたちの派手で面白いストーリーの背景に、一人の女性の犠牲があったことを、どうしても考えてしまう。そもそもラストで、赤ん坊にブライアンと名前を付けたこともおかしい。前述の通り「SKY MISSION」の時点でエレナは出産していたはずなので、戸籍上でもエレナが役所に届け出た本来の名前があるはずだろうし、その場合時系列的にもエレナがブライアンという名前を付けたとは考え難い。また逆に生まれたばかりの子であった場合、浮気関係にあったこと以外では設定の整合性を持てなくなってしまう。また、本来の名前を聞く前に殺されてしまったため、新たにブライアンという名前を付けたという解釈も難しいだろう。ホブスが調べれば一発でわかることなのだから。また、本来の名前を認知したうえで、あえて引き取る過程で「ブライアン」に改名するという考えもあるだろうが、それもまたエレナの意志をないがしろにしており不気味である。
今作では、ブライアンの扱いがいわばメタ的な表現になっており、作中設定では生きているが、もう決してドミニクたちの前には現れない人ということになっている。それ自体はいいのだが、その設定を遵守するのは誰か? という点でも疑問が残る。ノーバディやその新人部下がブライアンの事情を慮ってやる必要性がほぼ皆無なのだ。刑務所からデッカード・ショウを招集するほど人材に困っているのなら、ドミニクの手の内を知っているブライアンを呼ばないのはおかしい。レティが「ブライアンとミアは巻き込めない」と語ったように、ファミリーの一員はそれでいいのだが、秘密工作組織の人員がそうでは辻褄が合わない。これではブライアンの綺麗さっぱりな退場を見せた前作が台無しだな、と思ってしまう。 脚本家が変わったのだろうなーと思ったら同じ人だし。前作までの功績を無視したような、なんだか悲しくなるような作品だった。急にキャラが安っぽく、作り物に成り下がった瞬間だった。
ただしカーアクションはさすがの面白さ。町中の車をハッキングして無人操作するシーンは圧巻だった。
ジェイソン・ステイサムの子守アクションも最高。


ワイルド・スピード/スーパーコンボ

2019年日本公開。原題「Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw」
鑑賞年月: 2020年8月(字幕)
ニトロを続々と使いだしたところが個人的ベストシークエンス。それまでは単にキャラを主軸とした、本編要素の薄いスピンオフという感じだったが、ここだけ急にワイルドスピードじゃん!ってなった。楽しかった。
ジェイソン・ステイサム演じるデッカード・ショウが、なんだか完全に「良い人」になってしまってヤな感じだなと思った。まあ自分のファミリーのために動いているときは元からこうなのだろうが(だからこそ本編では弟の復讐として主人公サイドとあれだけの激闘を繰り広げたのだろうが)、それはそうとしても良い人。ホブスはまだいいとしても、ドミニクたちともこのままなあなあになってつるんだりしたら嫌だなぁという感触がある。飛行機から助け出したこどもの様子を定期的に見に来るおじさんポジションになったらどうしよう。
二分割した画面で同時進行していく手法もとても面白かった。片方を見るともう片方の内容がうまく頭に入ってこなくて、でも俯瞰してみることも可能で、両者の視点がうまく接続したりする感じ。ダブル主人公物と合う手法だなと思う。


若おかみは小学生!

2018年公開。
とても良かった。その圧倒的な作画の精緻さと、人物造形とエピソードの醸し出す空気感に打ちのめされました。
背景の細やかさや、(特におばあちゃんの)眼鏡の屈折の描き込みも凄ければ、ウリ坊が握手を求めて顔を近づけるシーンや顔を洗って丸い鏡を覗き込んだときなどの主観的な視界の歪みまで表現されていて、作画に驚きました。親を亡くした事実があることと、その事実に対しての実感を持てないこととの摺り合わせを、そういう主観的な作画も交えて重ねていくことで、主人公おっこが少しずつ実感を取り戻していく作品。
こんなに力強い作品を作り上げるのは本当に大変なことだったろうと思う。素晴らしかった。
ただ、接客時のおっこの口調に敬語を多量に仕込むことで、おかみの教育の厳しさやおっこの努力の様子を表現しつつ、若おかみという役割付けを強調した作りになっているのに、ほとんどの女性キャラに「わよ」「のよ」口調を多用させたところが少し気になった。脚本の妥協なのか、考え方の違いなのかはわからないが、自分はこういう作りにはしたくないなと思ってしまう。
あと「ジンカンバンジージャンプ!」が名曲すぎるし、その前後の演出が好きすぎる。なんだこれ。最高。


わたしたちの家

2018年劇場公開。
尻上がりに面白くなっていく映画でした。最終的な盛り上がりはもう手放しに大好き。
ひとつの同一の「家」という空間で、まったく異なるストーリーが同時進行されていく作品。片方は母の再婚について悩む14歳の女の子の話で、もう片方は、記憶をなくした女性と、土壌汚染か何かの秘密を掴んだ女性による話。
この映画のストーリーが持つ面白さは大まかに二種類あります。二つの話がそれぞれ筋として持つ個別の面白さと、それらの話が同一の「家」で進行されることで見られる、二つの話の接続を楽しむ面白さ。そして素晴らしいのが、この映画はそのどちらの面白さにも、決して模範解答を提示してはいないことです。明かされる情報量が非常にスリムに作られています。
もちろん、しっかりとした筋が用意されて作られているのは感じます。セリのほうの話は分かりやすい親子の話でしたし、さなの話も、水道水を飲ませなかったシーン、「汚染されている」という台詞と、その証拠物と思われるものの引き渡し、電話の内容や夏樹の行動などを紐解いていくと、話の全容が見えてくるようになっている。しかしその全容を説明したりはしない。見えるものを見せるだけ。描写でしか見せないし、箱の中身のように、見えないものは見えない。「家」による二つの話の接続(前述の、後者の面白さ)もそうで、それらの世界がどのような関係にあったのか、説明はなされない。二つのストーリーは時系列が異なり、時間のズレが生じたことで接続したのか、はたまたパラレルワールドなのか、そういった具体的な設定が提示されることはない。そもそもこの映画にはストーリーという枠組み自体がそぐわないのかもしれないとさえ思えてしまいます。
そのうえで、二つの話は最後薄暗い二階で、後者の面白さのピークを迎える。それまで物音や障子の穴など小さな違和感でしかなかった接続が、花瓶を投げることで、大きな接続をもたらす。この花瓶は母親の恋人が、セリに似ていると言って買ったという花瓶です。花瓶の花はさなの世界へと移動し、セリの世界には、割れた花瓶とこぼれた水だけが残った。これほど情報量を絞った上で、こんなに盛り上がるラストを見せるなんてと、とても驚きました。
あとクリスマスツリーがすごく良かった。「えっ!」ってなりました。とても面白かった。


私はゴースト

2016年日本公開。2012年製作。原題「I Am a Ghost」
鑑賞年月: 2020年2月(字幕)
中盤まではとても好きだったけど、終盤の種明かしの明快さとオチの不明瞭さとの噛み合わせが悪くて、総合的にはあまり面白くはなかった。
これは素晴らしい作品だぞ!これは面白いことになるぞ!とワクワクさせてくれた中盤までに対して、終盤の凡庸さがどうしても、えーそれがやりたかっただけなの?と首を傾げてしまう。
幽霊にとっては生きている人間が幽霊(見えない)という設定がとても良くて、最初、幽霊視点のPOVなのかと思い込んでいた。しかし霊媒師との邂逅で、画面に映っている彼女こそが幽霊なのだと知り、そこからも意味のある場面のつなぎが心地よく見ていた。意味が分からない場面のつなぎ→意味がわかる同じ場面のつなぎ、という流れが面白かったし、同じ行動を別角度から撮ることによって、やっていたことが具体的に開示されていくのも心地よい。
多重人格により魂がふたつあって、同じ死体が元の幽霊が複数現れるという発想は良かったけど、謎の敷き方に対して答えの開示があっさりしていて、トリガーが足りない印象。
ドアの向こうの「無」の描写もとても良かった。ああいう画でズームアウトしていくのはよくあるけど、そこから再度ズームインしていくのは新鮮だったし、よくわからない怖さもあった。しかも近づいてみたら主人公叫んでいるし。良かった。
霊媒師といえど死んだことのない、生きている人間で、今まで「苦情がなかった」と話すのはあのオチが幽霊の通常の最期だからなのだろうか、などとも想像する。
定点でのカメラワークや、「因果を解き放たれた」後の描写などからは「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」(2017)を連想する。本作の中盤までの内容が気に入った方は、この作品も気に入るはずだ。
あと主演エミリー役のアンナ・イシダさん、日本人のお名前で驚いた。IMDbだと元SKE48の石田安奈さんと混同されてしまっているが、もちろん別人。
あとこれは完全に好みの問題だけど、加工したおどろおどろしい音声に対して、わざわざ翻訳字幕でも「~なんダ」というようにカタカナでの加工を付与する必要はあるんだろうか?と思う(小川公貴さん字幕)。もちろん聴覚障害者用の字幕などでは、音声での演出が伝わらない代わりに字幕で演出を加えるのは良い手だと思うが、音声で演出できていることを、わざわざ字幕でも加工するのは演出過剰になるんじゃないか、と思う。


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

2019年日本公開。原題「Once Upon a Time in Hollywood」
鑑賞年月: 2020年1月(字幕)
面白かった!!
前もって史実での出来事を事前知識として仕入れていたので、その分より楽しめたと思う。1960年代のハリウッドの歴史に、リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)とクリフ・ブース(ブラッド・ピット)という虚構のタッグを組み入れることで、なんとも捻りの効いた映画になっている。素晴らしい発想だし、独特な話運びも飽きない作りでとても楽しかった。さすが「パルプ・フィクション」を生み出した監督だなという感じで、つなぎのセンスがまったく損なわれていない。
台詞が飛んじゃって、休憩中に自分を鼓舞し、そしてあの怪演を見せるところ。この一連のシークエンスがお気に入り。トルーディ・フレイザー(ジュリア・バターズ)が「これまで生きてきて最高の演技だった」と褒めるところも、まだ8歳でしょという笑いも誘いつつも、すごく最高の褒め言葉になっていて、感動する。8歳といえどあんなにも熱心に演技をしている俳優に、今までで最高と言われたのだから。こんなに嬉しいことはないだろうと、見ている側も嬉しくなった。


ワンダー 君は太陽

2018年日本公開。吹替。原題「Wonder」
ええやん。
結論そこに置いちゃうんだという感じではあったが、ラストを除けば、個とその周囲を取り巻く個を丁寧に描いていて、人間ドラマに仕上がっていた。「なんでも自分の話だと思わないでよ」という台詞、良い出し方だ。


Inseparable Bros(邦題未定)

2019年製作。日本公開年未定。原題「나의 특별한 형제」
鑑賞年月: 2019年5月
とても良かった。
首から下が麻痺し動かすことができないセハ(シン・ハギュン)と、6歳ほどの知能であるという知的障害者のドング(イ・グァンス)。親を亡くし、または捨てられ、二人は児童養護施設「責任の家」で過ごす。セハの身の回りの世話はすべてをドングが行い、車いすの移動はもちろん、本のページをめくることから、トイレ、就寝中のねがえりに至るまで、ドングは献身を欠かさない。セハもまた、その知識と回る口でいじめられっ子であったドングを守り、養護施設の神父が亡くなってからは、住民たちを保護する役割を担っていた。
ところが神父亡き今、養護施設の運用は経済的にも困難で、ついに彼らは追い出されてしまう。その後のセハの金稼ぎのための企図や、彼らに対する社会の無理解、そして血筋のつながった人たちによる無理解がギャグと重ねるように厚塗りに描かれている。
ギャグの出来が良く、たとえば養護施設から追い出すために逃げ回る知的障害者を追いかけるシーン、逃げ回るその背中に「アンニョンハセヨ」と声をかけると、その当人は立ち止まり、追いかけてきた人に律儀に礼を返すところなんて、面白い。他にも印鑑を探すくだりなど、漫才のそれである。ギャグと社会風刺の相性の良さが如何なく現れている作品だ。
韓国社会ではボランティアってそんなに評価対象として有用なんだ、とか、やはり敬語を重んじる文化なんだなぁとなる面もあり。
また、時間の飛ばし方が独特なのも個人的に良かった。落ちそう、となったシーンから、既に落ちたセハを救出するシーンに移ったり、結婚式のシーンから唐突にその何年も先の葬式のシーンに飛ばしたり。その時間感覚に飲まれながらも、終盤になって、それが意図的な演出と気付く。よくできている。またエピソードを飛ばしたといっても人物造形はきちんとしていて、飛ばした間にふたりがどう成長してきたかもきちんと描写されているのが素晴らしい。説明せずに、描写しているのが。
そして一番最後のシーン、素晴らしかった。なんだこの空間。こんなの作れるんだ。天才。


トップページ感想一覧タイトル一覧表記ルール