(関野琴深の視点)
「な、なんで……さっき殺したはずなのに」
「だーかーらー。それ、幻覚」
「げん……かく?」
「そう驚かないぃ~。いやぁ、4人、5人かな……の協力プレイで関野琴深は殺されるのだ。はっはっは」
「協力プレイ?」
「名前挙げてみようか……。
ひとり、『ラッキー・ムーア』実際に標的の前に出る係。
ふたり、『ブロント』なにしたんだろ、こいつ。
さんにん『好井寛文』呪いを私からあなたへ渡す仲介役。
よにん、『向坂・ブルース・喜助』私の呪いが私に反復二乗法で返すための仲立ち。
ごにん、『山下久子』その反復法が使える魔法使い。
こうして、関野琴深は殺されるのであった」
「何を長々と……。今殺せばいいんでしょ」
「無理だね」
「無理って……」
「だって――物語はハッピーエンドじゃないと楽しくないじゃない」
言って――ラッキーは走る。
その右手には白く光るナイフ。
私の首は――気付けばもうなかった。
私が殺した999万9999人の亡霊が私をつれていく――
「チガウヨ」
ラッキーは呟く。
「あなたは――誰も殺していない。あなたはいままで長い長い夢をみていただけなんだから」
「ゆ――――め?」
「そう。あなたは厭な現実から目を背けて自分の世界で人を殺していただけ。
あなたはちょっと我慢弱いただの女の子。
あなたは――あなた自身を催眠術にかけた。
だから、ま。
殺人鬼以外殺せないんだけどね、私は」
ふと、自分の顔を触る。
「死んで――ない」
「あたりまえじゃん。これナイフじゃなくてアルミだもん」
私は。
私は――
私こと、関野琴深はいやな子だった。
自分の嫌いなことからは、苦手なことからは自分勝手に逃げてきた。
それは――無意識に私の「詩」になっていて――
気付けば私は止まれなかった。
厭な人は殺す、それが当たり前になっていた。
でも――人を殺したら警察に連れて行かれちゃう。
だから――自分の世界を創った。
そこで――ずっと自分を騙してた。
ずっと――私は。
「私は――」
「うん?」
「私は、生きてもいいんでしょうか」
金髪の女性は笑って答える。
「当たり前じゃん。なにも悪いことしてない子には、お仕置きだってないんだから」
きっと、このとき私は泣いていたと思う。
でも、泣き虫の私にとって涙は、もう大切なものじゃなくなっていた。