-


トップへ戻る目次に戻る短編一覧に戻る


13▼ ふたりはひとり


 ふたりはひとり

 ふと そんな言葉が甦る
 それはずっと昔のことで
 確かあれは……

 俺は個室でひとりきり
 いいや そんなことはない
 ベッドにはクラスメイトが眠ってて
 俺はなんだか恥ずかしくて その顔を見れないでいる

 そんな今の状況から
 ずっと昔のことを思い出す

 あれはそう
 アイツと一緒にキャンプに行ったとき
 小学生のとき
 俺の家族と アイツの家族
 俺たちはなぜか一緒のテントで

 ふたりはひとり

 例えば今みたいに
 実際にはふたりいるのに
 そのうちひとりは意識がなくて
 ふたりであるのにまるでひとりで
 そう
 あのとき確か……

 それを遮るように
 クラスメイトのこえが俺の耳をくすぐった




トップへ戻る目次に戻る短編一覧に戻る
© 2012 Kobuse Fumio