おりじなる小説MAKER A面


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[16]

「でも、それって物語――その事件自体、矛盾してないか?」
「矛盾?」
「お前らエルフ軍と俺らが喧嘩しようとしていたときに俺たちは消えたんだろ?」
「あぁ、それがどうした、ジルバ」
「おかしいじゃないか。そこには俺もいたんだろう? でも、俺は病室にいたんだぜ? お前らと喧嘩して傷を負ったはずなんだ。お前らと喧嘩していたとき俺はいて、戦っている最中に俺らは消えたらしいが、俺は怪我を負って病室にいたんだ。意味が分かるか? エル。俺はお前らと喧嘩した後だったが、お前らにとっては、喧嘩している最中だったことになる」
「待て待て。考えさせろ…………つまり、喧嘩して怪我したジルバがいて、怪我せずに俺たちの目の前で消えたジルバもいるってことか?」
「あぁ。俺たち両方が嘘をついてないかぎり、そういうことになる」
「どういうことだよ……つぅか、お前らの中で一番頭いいのって、実はお前なのか?」
「いくら難しいからって話を逸らすな」

 ルシファー。
 ルファの前のエルフ軍リーダーだ。僕、エルはまだ会ったことがない。
 どうもある潰れた村の再建を手伝うために、エルフ軍を離れたらしいが。
 もともとエルフ軍はとても大きな魔法系集団で、ナントカがナントカになって百以上の軍や個人に別れたそうだ。まぁ、大昔の話だが……。
「おっ、馬車が来るぞ」
 ルファがそう言った。
 その馬車はルファの前に止まり、中から四十代ぐらいの男性が降りてきた。
「ルシファー、お待ちしておりました。どうぞこちらへ……」
「いや、ここでいいだろう。厄介事が起こったそうで」
「はい。そこで、ルシファーの協力が必要と判断いたしまして……」
「まったく……おぬしにはもう会わんと思っていたが、どうも縁というものはそう簡単に切れないらしい。で、その問題とは……」
「エリーに伝えたはずですが……」
「エリー? あぁ、あいつはエリーというのか。なかなかの馬鹿っぷりだったぞ。言ってることが全然分からんかった」
「……では、私から申しましょう」
 この軍には……もしかして馬鹿しかいないのか?
「我々と同盟関係? を保っている近くの軍が、我らの目の前で急に消えてしまったのです。我々は異次元世界……いえ、三次元上でのパラレルワールドへ飛ばされたとにらんでいます」
「ふむ。なら話は簡単だ。そいつらを一箇所に集めさせて『原因』にそれを認知させればよい」
「あの……それをどうすればいいのかが……」
「何!? 知らんだと!?」
「はぁ、だからこうしてルシファーを……」
「ええい、この軍には馬鹿しかおらんのか」
「……」
 ソウカ、オレモバカダッタノカ。
「まぁ、いい。これくらい、赤子の手を捻るよりも、そこの雑草を抜くことよりも、1+1よりも簡単……ではないか。とりあえず簡単なことだ。おぬしらはわしの指示にしたがえばよい」
「はぁ」
「今のは返事か? ため息か?」
「いえ、いやはい! 了解しました」
 と、いうことで、ルシファーという男を僕、エルは、初めて見た。
 どうも予想と違うな……。

(物語の進展おっせえなぁ……[17]へ続くっちゃあ続くけど)

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