おりじなる小説MAKER A面


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[19]

「ここだ……」
 俺、クロウと某碁会所オーナー箱根仁蔵は、ある家に着いた。
「ここに、リンがいるってのか」
「いや、リンという娘を知っている野郎がいる家だ」
 ピンポーン、とチャイムを鳴らす仁蔵。
「はい」
 ドアを開け出てきたのは、ゆるふわ~とした茶髪で(どんな髪かは想像におまかせ)、紡いだような(この表現も分かりにくいな)唇、まぁ、いってみれば女優さんのような顔立ち。スタイルもよく、もしかして今回で一番美人じゃねぇ? という、大学生らしき女性だった。
「? お前、誰だ?」
 仁蔵がそんなことを訊く。
 って、あれ?
「えーと、駈乃に用ですか?」
「お、そうだ。ここはクノの家であってんだろうな」
「はぁ、はい」
「ちょくら、そいつに用があるんだが……」
「ええと、今出かけてますが……」
 おいおい、女を置き去りかよ、と仁蔵は思いつつ、とりあえず何か話す。
「クノとは、どういう関係で」
 いや、訊かんくてもわかるが……
「彼氏です。駈乃は」
 警戒しつつ、彼女はそう答えた。
「ええと、俺はクノとは長い付き合いになるんだが……」
「ええっと……もしかして箱根さん……ですか」
「おお! そうだ。箱根仁蔵とは俺のことだ」
「んじゃ、帰ってください」
「は?」
「いや、そっち側の人なんでしょ。箱根さん」
「いや、たしかによくそう誤解されるが、俺は純粋生粋な一般人だ!」
「へぇ……」
 警戒を解かない美人……。
「リンという娘を知っているか?」
 このままでは追い返されることはみえみえなので、箱根は本題を持ちかけた。言い方を変えれば、最後の手段(の一歩手前)を使った。
「リン? あの関西弁の?」
「あっ」
 そうなのか? と、クロウに目を遣る。
 しかし、クロウは「関西弁」の意味も分かっていないご様子だった……。
 そんな、三秒間の沈黙を破ったのは彼女の携帯電話だった。
「あ、もしもし。くーたん、何か来てるんだけど」
 くーたんと呼ばれているのか、あいつは。
「ん? あ、そう」
 通話が切れる。
「リンちゃんを探しているんなら、私の家へどうぞ」
 と、いうことで、彼女は駈乃家の鍵をしめ、クロウ・箱根仁蔵は、彼女――関野琴深――の家へ向かった。

([20]へ続く)

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