おりじなる小説MAKER A面


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[39]

「で、ここはどこなんです?」
「さあ」
「さあって……」
「お前、家族はいるか」
「いいえ。両親とも他界しました」
「なら、いなくなって心配するようなやつもいないわけか」
「彼女いないこと前提ですか……」
「いないんだろ?」
「まぁ、そうですけど」
「なら、邪魔なのは仕事だけだな」
「で、さっきから何をおっしゃってるのか……」
「いや、人員不足でさ。本職を手伝ってもらおうと思って」
「本職って……教員やっておきながら他に仕事を持ってるんですか、天辺さんは」
「ああ。まぁ、公にはしてないがな」
「それで、その仕事とは何なんです?」
「うん? 内容がよければ手伝ってくれるのか?」
「ええ、まぁ。教員に支障がなければ」
 何言ってんだ、私は。
「よし…………ここだけの話、俺は他の世界から来たんだ」
「はい?」
「いや、だから、俺は異世界から来たんだよ」
「ええっと、言ってることがよくわかりませんが」
 もしかしてこの人脳に問題があるのかも。だからあれだけ嫌われてるんだな。
「まぁ、信じなくてもいい。手伝ってくれればいいんだから。よし、金の話をしよう」
「ああ、はい」
「時給10万でどうだ?」
「は?」
「……足りないか」
「いやいやいや。今度は詐欺ですか。それともやっぱり脳に問題でもあるんじゃないですか? 『時給』って意味解ってるんですか?」
「ああ。解ってるとも。俺は真面目に言ってるんだ。それほど重要な、世界の未来に係わる仕事なんだ」
「分かりましたよ。要するに大切な仕事なんでしょ」
「よし、じゃ、内容を教える。お前は、雄二を見張ってたらいい。それだけだ」
「雄二? 1年2組の井上雄二ですか? その子がなんで」
「そいつはそろそろ他の世界に飛ぶことになると思うから、そいつが飛ばされるとき俺たちもそっちへ行けるようにしておくんだ」
「ええっと、またその話ですか」
「とりあえず、分かったな。一瞬たりとも雄二に目を離さず、監視しておくんだ」
「それって、もろ教職に支障きたしてるじゃないですか」
「だから、時給10万で許してくれ」
「冗談じゃない。こんなことして何が目的なんですか。いや、もし確固とした目的があったとしても、僕は嫌です。辞退させていただきます」
「………そうか。まぁ、いい。とりあえず口止め料として20万払っとくから、今のは忘れろ」
「…………まぁ、いいでしょう。何をするつもりかは解りませんが、雄二達に迷惑をかけないでくださいね」
「分かった分かった。さっさと行け」
 少し物語に深入りしてしまった好井だが、財布が一気に膨らんだ寛文だが、「雄二に何かあるのかもしれない。天辺をこれから注意深く見ておかないと」と、雄二の身を案じる好井寛文だった。
 えっと……こいつは何なんだろうな。

 実はもうこのとき、ブロントは危険な状況に陥っていた。
 のは、後で記す。

([40]へ続く)

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