5年前。
ジルバはこの世界、井上雄二の暮らすこの世界へやって来た。というより、飛ばされた。
それについては、いままで何度も記したはずだから、言うまでもないが、問題なのは、あのとき皆が飛ばされたときジルバだけが、ブロントたちが飛ばされた世界の5年前に飛ばされたことだった。
それは、運命というより偶然で。
ジルバだけ、実質ひとりぼっちになっていた。
そんななか、竹が、ジルバに声をかけた。
ブロントは、やっと驚きの表情を見つける。
「ジル……バ?」
ブロントは、呟く。
訳が解らない。死ね、殺せ、死ね、殺せ、死ね、殺せ……ブロントの頭の中にそんな大いなる力をもった「言葉」が巡る。
気づけば壱は、いや、ジルバは――
死んでいた。
雄二が家に帰ってくるまで、ブロントは、その場でただじっと、脇目もふらず泣いていた。
([44]へ続く……え? [43]の間違いじゃないかって? ふふふ……)