おりじなる小説MAKER A面


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[49]

 人というものは、とことん愚かな生き物だ。
 仲間というものの定義に、宗教学者、哲学者、もちろん一般人もよく悩んでいるそうだが、私もそのうちに入るのだが、仲間というものは、仲間だと認識したその瞬間に仲間になるのであり、それにつきまとわれるのが人というものである。そう、私は思う。
 九割九分九厘の人間は、だから仲間というものに振り回されることになるのであろう。
「その他」を抜く残りの0.04%の人間は、きっと偉人となることであろう。その人が人ならばの話だが。
 そんな感じのことを、ルシファーは私に初めて会ったとき語ったはずだ。
 私はそのとき軽く聞き流していたが、今となっては、その意味が分かる気がする。
 だから――
 私、ルファは、倒さねばならないのだろう。あの精神年齢おじいちゃんの中年男を。
「お前は、ルファたちとは親交関係にあったんだっけか。どうだ? お前は自分があいつらにとって必要な存在だと思うか?」
「二人称が『おぬし』から『お前』になってるぞ」
「どう思う?」
 先ほどから、ルシファーとジルバが、口喧嘩のように話し合っている。
「思わないね。人は一人で生きていくもんだ。仲間ってのは、その手助けをするだけで、そいつの人生をどうこうする資格はない」
「ふん。なら、お前がいなくても何も支障はないということだな?」
「いいや。案外その手助けが一番重要だったりする」
「しかし。しかしはたしてお前がそれに属するのか? 逆なんじゃないのか? お前は――『敵』なんじゃないのか」
「…………俺は――」
「わしはなんでも知ってるぞ。お前は、敵だ。5年間、他世界に暮らし自分の偽者を作り、この事故を事件に仕立て上げようとした」
「なっ」
 驚きの表情を隠せないジルバ。
「お前は今日、5年前の他世界に飛ばされた。そこで5年という時間を費やし、またこちらの世界の今日に帰ってきた」
 口を走らせるルシファー。
 草々は揺らぎ、木々は身震い。
 空には雲が、まばらに流される。
 石は佇み、ジルバの顔はこわばった。
 つぅかこんな重要なシーンで描写の練習とかするなよな、作者。……というか、ツッコむなよな、作者。
 もうちっと、シリアスにいこうぜ?
「俺は――」
 下を向き、淡々とジルバは言う。
「俺は、敵ではない。ただ、設定がそんなふうに見えるだけ。たしかに『敵』と認識されたその時、そいつは敵になるしかないのだが、俺は、敵じゃない。お前らの――敵ではない」
「ほお。では、何の敵というのかね?」
 何の。
「誰の」ではなく「何の」と、ルシファーは言った。私、ルファはその些細な違和感に気づいたが、ジルバはそんなことには全く気づいていないようだった。
「俺は…………世界の……敵だ」
「世界」
 ルシファーは、もとから答えを知っていたかのように反復する。
 そんなルシファーの表情にも、口調にも、ジルバは気づかない。
「俺は――」

(次回は……そうだな、仁蔵の物語を続けようと思う。大丈夫。世界はかならず接がるから。[50]へ続きます)

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