「!? 雄二!? 大丈夫か!?」
一回の台詞で感嘆符・疑問符3回ずつ使うブロント。
ビコウス(Because)、雄二が突然気絶したからだ。
んじゃ、視点雄二にするね。
僕はゆっくりと目を開ける。
「ここは……」
「ここビョーイン♪」
ブロントが答える。
あ、この展開。
……ベタだなぁ。
全てのアニメにおいてこんなシーンあるんじゃないか?
僕は、病院のベットに横たえていた。
しかも……個室!
「あ、朋さん情報によると、『演出の都合と、それによる新キャラの防止。あと、お約束だから』という理由で、病室を個室にしてもらったらしいよ」
ちっ。我が母ながら、気が利くなぁ!
「で、僕はなんでこんなとこに……」
いや、知ってんだけど。
この台詞もお約束だから。
きかなきゃなんねぇんだよな……うん。
「えっと、気絶したから」
「あ、さいですか」
「入院だってさ」
「へぇ!?」
素で驚く僕。
ちょ、そんなの聞いてない。
こらこら。主人公を入院させるな。
あ、これもベタな展開じゃねぇかこんにゃろう!
アニメにおいて、軸となる登場人物は必ず一人は入院せねばならない、的な規則なんてねぇだろ!
あー、久々にツッコんだ。
くそお。ボケあってのツッコみだな。
で、なんで「ツッコ」までカタカナで「み」はひらがななんだ?
突っ込みでもツッコミでもいいじゃんかよ!
打つのめんどいんだよ!
ちっ。これは作者の俺に対する嫌がらせか?
あ、雄二の一人称は「僕」じゃねぇか!
何だよ最近。ギャグパートかよ。
この作品の趣旨はなんだった。
そう、運命とか世界とかについてもっと考えてもらうためだ!
なのに……ギャグパートになってる……。
? まてよ、ボケあってのツッコみなんだったら、ツッコみあってのボケっていってもいいわけか。
つまり、僕井上雄二がツッコまなければ、ギャグは成立しない!
「画鋲がガビョ―ン!」
両手で上向きの三角(ブロントは矛のつもり)で何か意味分からんこと叫び始めた。
誰がかって?
そりゃ、僕、雄二だろ。あたりまえだろ。
「て、なんでやねん!」
うわっ! ひとりボケツッコミ!
あ、「み」が「ミ」になった!
もう、なんなんだよ!
入院するって聞いただけで雄二君興奮しちゃってるよ!
絶対今度のてんみり小説でネタにしてやる!
なんでここで「てんみり」なんだよ! つーかなんでひらがななんだよ!
「ひらがななんだよ」てなんか読みにくいわ!
「元気そうで何よりだ」
男の声がする、いや、ブロントの声じゃない。
低く、透き通らない鈍い声、というか、天辺武雄の声だった。
というか、なんかそこにいるんですケド。
「うわおっ! あんただれ?」
素で驚くブロント。それとu17もこのとき驚いたんだって、武雄が登場したの。
ちくしょう、作者即興で話進めすぎなんだよ。
後々困るぞ。
「どうも。はじめまして。俺は、こいつの師である天辺武雄という者だ」
堂々とそうブロントに自己紹介する先生……。
師て何ですか! 師て!
「そして、ジルバに今までこの5年間教えてきた。いや、ジルバを…かな?」
「はぁ!?」
いちいち大げさなリアクションをとるブロント。
ほんと、無断だよ。……じゃなかった。タイプミス、無駄なんだよ。
…………。
タイプミスくらい消せよ! 作者!
「あの、お前が殺したジルバは、ジルバではない。あれは偽者だ。ジルバが俺の協力により神聖に真正に作ったロボットだ」
「……?? ろぼっと? 何それ」
「電動式人形」
手短に説明します僕は。
「????????????????」
いや、そんな疑問符並べられても困るんです、はい。
「あのジルバは喋らなかっただろう。それは、喋らないんじゃなくて、喋れないんだ」
「何を……」
まあ動揺するブロント。
「だから、ジルバはちゃんと生きている。そう落ち込むな。俺はそれだけ言いに来た」
そう言い、静かにドアを開け、そそくさと消える武雄。
で、なんだったんだ?
「ジルバは……生きている……」
ブロントは下を向き、何も見えない、何も見ないかのように瞬きせずにそう呟く。
「だから」
男は言う。
て、はい!?
「君達はそういう人間なんだね」
男。視力が悪いくせに眼鏡をかけずにコンタクトレンズもつけずにそれで仕事できんのか、ていうのにもかかわらず、裸眼で生活する教師。つまりは、好井寛文は、唐突に現れ、唐突にそう言った。
横には、国語担当の山下久子先生もいる。
「力になろう」
男は言う。
山下久子は、まるで儚い運命を受け入れるかのように、口をつぐみ、赤い目で我らを見据える。
それは、まるで異国の使者のように見えた。
([54]へ続く)