〔キーンコーンカーンコーン〕
とりあえず面倒臭いことは親に任せて、学校へは行った。
「よう、関野」
「う~ん、おはよ~う♪」
「なんだ。キャラチェンか、何かいいことでもあったのか?」
「そうなんだよ。さすがは井上雄二。よくぞ見抜いた。実は、女神に逢ったんだ」
「女神?」
うん、と関野はのんびりと、ぼんやりとうなずいた。
「いや~、しかもな、そのお方は今俺の家に泊まってたりすんんだ」
「何だよ、『すんんだ』って。『するんだ』だろ?」
「まぁどっちでもいいけどさ。そのお方はこれまたビックリ。リンなんだ。リン」
「リン?」
「うん」
リン……。どっかで聞いたことある名前だな。どこだっけ。近所のおばあちゃんじゃないよな。なにかとてつもなく大きな見落としをしている気がする……。
「あ、そういや天辺が雄二を呼んでたぞ」
「あ、そうか。分かったありがとう、後で行っとく」
「今すぐ行けよ」
「さっきの鐘が聞こえなかったのか? 今、朝礼の時間じゃないか。もう教卓で先生が語ってるじゃないか」
「じゃあ俺ら堂々とおしゃべりしてるってわけか」
「おう、そういうことだ」
朝礼が終わり(礼も何もしてないが)、僕は職員室へ向かった。理科1分野(物理・化学)担当の、天辺武雄先生は僕に気づくとすぐにニタニタした顔で口走った。
「家に変質者が出たらしいな」
「さぁ、僕は見てないから分かりませんけど、家はたしかにズタボロでした」
「それで、その変質者だが……お前の母さんから顔とかの特徴を聞いてないのか」
先生は(周りに聞こえないように?)もともと低い声を、いっそう薄めてそう言った。
「青い髪と緑髪と金髪の未成年か20代3人と聞いています」
「そうかそうか、やっぱりそうか。分かった。ありがとう、もう戻っていいぞ」
「あぁ、はい」
少し引っかかるような言い方だったが、正直言ってあまりこの人とは関わりたくない。教員の中でもあまり好かれていないようだし。
というわけで、「天辺武雄の奇妙な行動」part1でした(って「おりじなる小説MAKER」乗っ取るんじゃねぇ)。
教室に戻ってみたら、席についている生徒はひとりもいなかった。皆窓側に詰め寄ってなんだなんだと外を眺めている。
そんな光景を目にした私、1年2組担当、好井寛文も、外を眺めてみた。井上なんて今朝はあんなに関野と喋っていたのに、怯えたような、こわがっているような、深刻な、しかし興味深そうに窓の外を見つめている。
関野の方とはというと、ポカ~ンと唖然とした顔で、それでも外を凝視している。
それに、もう僕の目にもそいつらは映っていた。
「おい、ここに何のようだよ」
「馬鹿言え、見ろあの人の多さを。窓際だけでいっぱいだぞ。そんな建物にはたいてい食いものがあるはずなんだよ。それに見ろ、あの太陽を。北にあるときは昼なんだよ」
「いちおう誤解を防ぐためにツッコんどくけど……南だよ、ミドリ」
「うっせぇな! ブルースは黙ってろ。そこに食いものがあるのは正解だろ?」
そうして、ブロント・ミドリ・ブルースは好井寛文、関野洋一、勿論井上雄二も通っている中学校の門を飛び越えた。
([9]へ続く)