おりじなる小説MAKER B面


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5.

 私は――
 私は。
「私は、いままで、殺人鬼だけを殺してきたんだ」
 ラッキー・ムーアは叫ぶ。
「ふん。ならばおぬしはわしを殺すことは不可能だな。私は殺人鬼ではない」
 ルシファーは答える。
「いいや、あんたは明らかに殺人鬼だね。私は知ってるよ。あんたはいままで数え切れない人を殺した」
「わしは殺人鬼ではないが、おぬしは殺人鬼であろう。殺すなら自分の方ではないのか?」
 私は――
 私は。
「私はなあ。殺殺人鬼鬼、略して『殺人鬼』なんだよ!」
 ラッキーはズボンの後ろポケットから特製のナイフを慣れた手つきで取り出し、流れに沿ってナイフを流す。
 ルシファーの首が飛ぶ。
(お前は、これでもう殺人鬼だ)
 とたんに何か声がする。
 ラッキーの足元に、なにか黒い影が浮かび上がる。
 そこから影と同じ色の、腕がにょろっと出てきて、ラッキーの脚を掴み、沈む。
 沈む。
 ラッキーは引きずりこまれる。
「いや――」
 私は――
「いやだ……。いやだ!」
 ラッキーは影に吸収されていく。
「いやだ! 助けて! ササァーーーーー!!」
 最後に。
 最後に愛した男の名を叫び、ラッキーは消える。

 そこでラッキーは起きた。
「やっと起きた。もう、おねぼうさんね」
 体が自由に動かない――
 両手を杭が貫いていて、脚は縛られてる。
 十字の銅像に。
 ああ、そうか。
 そこでようやくいままでの経緯を思い出す。
「ササって誰? カレシ?」
 目の前には、関野琴深。
 白い墓石を椅子にしている。
 その墓石には――!

佐々木笹(ささき・ささ)ここに眠る。

「お前ぇ!」
 殺す――!
「周りをごらんよ」
 冷静に彼女は言う。
 気付くと、関野琴深の周りには、白い墓石が100……1000……10000――
「ここにあるのは、わたしが殺した人の墓」
 彼女は自分の椅子を指差す。
「これが、ひとつめ。そして――」
 その人差し指を、ラッキーへ向ける。
「あなたで――テンミリオン」
「いや……だ」
 何。
 なぜだか涙が止まらない。
 さっき暴れたせいで両手は血だらけだ。
 でも――なぜだろう。
 全然、痛くない。
「ばいばい」
 琴深はラッキーの頭に手を載せる。
 ラッキーの首がへし折れる。
 殺人鬼、没。

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