山下さんの話によると、「世界」に乱れが生じたらしい。
それは意図的なもので、竹という者が中心となる5人組の仕業のようだが、内4人は死亡、1人はそもそも名前だけの参加で計画のことを知ってもいなかったようだ。
その5人のことも、詳細に説明してくれた。
まず、壱。
本名はジルバ。5年前テンミリオンという別世界から彷徨いこんだらしいが、後述の竹に助けられたらしい。
ブロントという青年に殺される。
偽者の人形疑惑あり。
次に、弐。
本名不明。
保護者の病気を治すべく、金を必要として後述の参のもとで働くことになった。
マゼンダという少女との死闘の末死去。
次、参。
本名ルシファー。エルフ軍の元リーダー。
テンミリオンの世界では「世界殺し」のラッキーに殺される。
この世界では自害したことになっている。
次、竹。
この計画の中心人物。
本名天辺武雄。雄二の通う中学校の理科担当教師。
この世界でルシファーと共に自害。
最後に、満。
本名井上雄二。
「世界を創る能力」があり、それを竹に目をつけられ、事実テンミリオンの世界を創った張本人。
「で、えっと……。僕らと何の関係が?」
「冷めてるわね。それで小説家? あなたたちは運が悪かっただけ。強いて言うなら、ラッキーのせいかしら」
山下久子は言う。
「ラッキーがあなたたちに呪いをかけたみたいだから」
ふと、今朝のラッキーさんを思い出す。
「その呪い、解いてあげてもいいけど」
「出来るんですかっ!?」
「うん。解く、というよりも返す。その呪いを倍にしてラッキーに返す」
「……、お願いします」
迷うが、会って一日経たないくらいの人だ。それに、解かないと自分の身が危ない。
「分かった」
山下さんは僕の額に手を遣る。
そういえばリンは僕の部屋へ行った。数分前のことだ。
山下さんも止めなかったので、特に気にしなかったが……。
原稿に悪戯してないよな……?
山下さんが手を放す。
「出来た。終わり」
童顔の彼女はそっけなくそう言う。
そのころ、ラッキーは――