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10

 男も、マゼンダに合わせて地面に腰を下ろした。あぐらを掻く。足の交差しているところに手を置いて、前に屈む。くつろいでいるようにも見えた。
「まず、どこからそんな発想になったんだ。仲間だなんて。笑わせられるね。いまおれを殺せば、きみは勝者となり、このゲームは終わるというのに」
 どことなく温かい空間。マゼンダは曖昧な空を仰いだ。太陽は見えない。
「ゲームが終わって、どうなるの」
「…………」
「私は帰れるの?」
 男は視線を所在なげに泳がせる。彼にも分からないのだ。
「このバカげた状況のなかでは、ゲームを終わらせることさえ信頼できることではない。私はまだ、あんたを信じてるわけじゃないだから。……いま、点数は四対三。私がマッチポイント。私のほうに余裕があるこの状況で、あなたが追い込まれているこの状況で……」
 マゼンダは息を吸って、吐いた。
「仲間がイヤなら、私の捕虜になりなさい。私の奴隷になりなさい。私の、支配下に、入りなさい」
 マゼンダは顔を伏せた。そのまま言葉を続ける。
「あなたの傍に、トラップ魔法を仕掛けています。あなたは私の言うことを聞かなければなりません。あなたの命は私が握っているのです。だから、あなたは、私に協力しなければなりません。もしあなたが私に刃向かう場合、私はあなたを容赦なく殺害します。その場合、あなたの失点は五になり、もしあなたの言葉が本当であるなら、あなたは負け、おそらく永久に命を失うでしょう。――」
 トラップなど仕掛けていない。彼も、二度も同じ失敗をする男ではなかった。しかし、男は、逡巡するように辺りを眺め、最終的にマゼンダの赤い髪に帰結した。顔を伏せたまま、起こそうとしない上半身が、小刻みに震えている。
「赤くなってるのか?」
 男の不用意な発言に、マゼンダはびくんと肩を跳ね上げた。
「か、勘違いしないでよね。これは私にとっての最善の策で、別にあんたのためにもならないかもしれないし、むしろ損になるかもしれないし、あれ、そうじゃなくて……」
 筋の通ったことを言っているようで、マゼンダも話しながら考えをまとめるタイプのようである。男はふっと溜息をついて、
「じゃあここで、家庭でも作るか?」
 と言って苦笑いのような笑いをするのだった。殴られたのは言うまでもない。

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