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08

 その先で、彼はあぐらを掻いて待っていた。なおも続く草原のうえ。マゼンダはその変わらぬ温い光に、ひさしを作った。
「よう」
 男に火傷の痕はない。飄々とした様子は相変わらずで、マゼンダはぐっと唇を引き締めた。
「確認したいことがある」
 早々にマゼンダは言った。男はほんの少し瞳孔を広げるが、マゼンダは気付かない。
「あんたが言ったことは、本当のこと?」
「ああ、なんだその話か……」
「は」
「愛のプロポーズされるのかと身構えたのに」
(なんでやねん)
 マゼンダの拳をかたく握り締める様子に、男は軽く苦笑いした。
「信じてくれないという懸念は、ないでもなかった。最初は信じてくれていたみたいだったんだけどな。時間が経つとってやつか。逆か」
 男は独り言を言っているのかマゼンダに話しかけているのか定かでない口調で、思考を垂れ流してゆく。
「でもなぁ……。たとえばおれが嘘をついていると仮定して考えてみる。実はこれはゲームではなくて、マゼンダ、きみを捕まえてここに連れ込んだ正体は実はおれで、なんらかの目的でおれと戦わせているとする。その場合、きみはおれの言ったことを信じずに、そのままに行動せずに、おれの予期せぬ行動をしないと助からないことになる。なにもかもおれの手中では、つまらないだろう。おれはそれで楽しそうだと思うがなぁ。……って、なんだか言葉がまとまらねぇな。だから、きみはおれの玩具になっているわけだ」
 男は話しながら考えをまとめるタイプの人間のようで、口は減る様子がない。マゼンダはさきほど拳を大げさに握る素振りをしている間に、もう片方の手を背に隠していた。男は拳のほうに目が行ったため、そのことには気付かなかったようである。
「そんで、おれが本当のことを言っていると仮定してみる。おれもきみも被害者で、おれたちはいわゆるデスゲーム、B級スプラッタ映画の登場人物ような境遇に立たされている。生き残るには、他の被害者を殺すしか方法はない。なんて愉快な犯行なんだろうな。自分の手を血に染めることなく、楽に、殺人を愉しむってことじゃないか。いまも誰かがおれたちを監視していて、流血はまだかまだかと――」
「どちらにしても私はあんたを倒せばいいってことだね!」
 片手が仕込んだトラップが、作動する。男の首が飛んでいった。

[4-3]


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