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04

「夢のなかだ。夢のなか、そうだここは夢なんだ。痛みは感じるがそれは触覚という感覚を脳が錯覚しているにすぎない。痛みは夢のなかでも味わうことができるんだ。本当さ、本当だ。現におれは痛い。いまものすごく痛い。顔が焼けそうだ。ああ、ほら、呼吸も絶え絶えだろうそうだろう。大変に見えるだろう死にそうに見えるだろう。だがおれはフェアプレイこそがスポーツの第一条件だと考えているのだ。分かるか。分からないだろうな。まだ説明していないのだから。いや! そう怒ったような顔をするな。まじで怖い。……すなわち、だから、これはスポーツなのだ。ゲーム、試合だよ。夢のなかであって試合のなかだ。試合中だ。――おれたちは捕獲されたんだよ。捕捉されたんだ捕縛されたんだ捕まったんだ。なににって。夢に。夢だ。夢だ。これは夢なんだ夢なんだ。……本当さ、本当だ。証拠? おれが証拠だ。おれの記憶が。が。おれは既に一度死んでいる。おまえに殺されたんだからな。痛かったぞ今ほどじゃないけどさ。おまえ炎しか使えないのか。この赤毛女。見ろよおれの顔真っ赤だろ。なぜだと思う。へへっ、火傷してるからだよ。おれはフェアプレイ精神 imaにのっとって、こうして治癒魔法を駆使して、おまえに語りかけてやってんだよ。……なんだよ構えるんじゃねぇよ。おれの思念力じゃあせいぜい、死ぬのを遅らせるしかできねぇ。こんな大怪我。治るほうがおかしいってもんだぜ。ははは。ははは。おれはフェアプレイ精神にのっとってるんだ。フェアプレイだ。公平な。公平だ。おれは一度おまえに殺されているがな、でもな、おれはもっとおまえを殺しているんだぜ。驚いたろ。おい驚けよ。なんだよ話聞いてるのかよ警戒を解けよ襲わねえよ。ここは夢のなかだ。おれたちは意識だけこの夢に連れ去られたのさ。意識がだれかに捕まったわけだ。今頃おれの体はどうなってるやら……。おそらく催眠術の類じゃないかと睨んでいるんだが、おれはその方面の魔法には疎くてなぁ。これはどうやらゲームだ。おれが最初におまえを殺したとき、おれに、まるで記憶を思い出したかのようにその情報がやってきたんだ。意識誘導。記憶操作。いやおれは門外漢なんだがな。おまえはどうなんだ。そういう知識はないのか。……まあいいや。おれはどうせ話し終えれば死ぬから、まあせいぜい警戒しながら聞いておけ。このゲームのルールは難解で簡単。相手を五回殺せばいい。五回だ。先に五回殺したほうが、勝利。平和にいえば五点先取ってやつだ。先取だからな。デュースとか延長とかはない。簡単だろう。ただし最初の一点目を取らなかったほうは、一度死ぬごとに記憶がリセットされて、このゲームの概要、ルールを知らないままに試合が始まる。だからおまえは、おれと違っていちいち戸惑い、いちいちおれを忘れ、いちいち……。ええと、だからな、おれはフェアプレイ精神にのっとって、おまえにこうして助言しているわけだ。いまおまえは三回殺されている。あと二回死ねばおまえの負けだ。負ければどうなるか。難解で簡単。死って一体なんなんだろうな。哲学だよな。おまえは死ぬんだ」

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